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転生したらチートになった親友と俺  作者: 日風翔夏
第1章 こうして俺らはチートになる
8/33

神々とのお食事会

ブックマークありがとうございます!


2025/07/12 編集しました。

<Side of Katsuki>

換金場へ向かい、隆志のパーティメンバーから換金の仕方を教わった。換金場のカウンターは12個あって、ここまで12神になぞらえるんだねと感心すらした。わざわざモチーフも描いてあった。そこでアレスのところが一番大きい理由を聞いたら、どうやら一般人からの換金依頼もアレスのカウンターが受け付けるらしい。なんだそりゃと俺が首を傾げると、女魔導士のヘルガが言った。


「ヘルメスのカウンターは商人や盗賊ギルドの人間が多いし、アポロンも狩人、吟遊詩人、あとパーティに所属している治癒術師も受け付けてるし。ポセイドンのカウンターなんかは暇そうなのにね、意外と混んでるの。結局人数が少なそうなアレスのトコに回るらしいのよ。でも、アレスのファミリアはすごい量の魔晶石を持ってくるから結局混む、と」


俺らがいい例だ、と示された。俺とゾエの袋にはゴロゴロとこの辺で狩りをしたにしては多い魔晶石と、決して少なくはない神晶石が入っている。ちなみに神晶石は小指の先っぽ程度のものが4つ、小指の長さ程度のものが2つだ。


「普通そんなに取れないって。ハデスの加護でもついてる? あ、でもハデスは地下だけか……」


たぶん違うよ。トレハンの間違いだろう。某ゲームの盗賊のスキルを思い出した。俺たちは別にシーフじゃございませ―――いや、1人居る。ネフライトはヘルメスのとこ所属とか言ってた。きっとネフライトがトレハン持ってるんだ。そんなことを考えてみておかしくなって笑ってしまった。

換金したら銀貨2枚と銅貨10枚になって出てきた。


「銀貨だ!」

「すげ、初めての狩りでこれかよ」

「「やべえ超嬉しい」」


並んでいる人たちの列の邪魔にならないところにまで行って、俺とゾエはなんか抱き合った。いや、興奮した。


「お前ら珍しいなー。普通戦闘中にえらい興奮して相手に突っ込んでいくんだけどよ」

「嬉しくて興奮してます!」

「食料品が大体銅貨の単位じゃん、どうするコレ」

「いやもうこれは貯めるしか」


何に貯めようか、と言ったら、ゾエがくすっと笑った。


「技巧の神が何かお考えのようだ」

「んじゃ、任せようか」


俺たちの会話を聞いていてか、隆志が驚いたように目を見開いていた。隆志たちが行きつけているという食事処に行く。俺たちはまだ神殿から出たこともなかったよと言ったら、笑われた。


「でも神殿でのスタートとかそうないよなぁ」

「パーティメンバーにアスクレピオスのファミリアがいるといいんだけどねえ」

「?」


理解できず首を傾げると、騎士のルイが答えてくれた。


「アスクレピオスのファミリアは、瀕死の相手を仮死状態に移行させて、アスクレピオスの神殿でのみ蘇生じみたことを許される。死んだら終わりだ。失血死になるときはもうどうしようもねえんだがな」

「ああ、つまり死者を甦らせまくってハデスの怒りを買った神話の」

「そうだ」


ちなみに、隆志のパーティの新人は2人、まったく喋ってくれようとしないけれど、女自由治癒術師のユリア、女狩人、しかもエルフのレイナの2人で、レイナと聞いてピンときた。


「隆志、レイナさんって」

「ああ、彼女も転生者だ。日本人しか名前で判断できないものだから、構えなくてね。ただ、彼女はちょっと深い訳があって人間が苦手なんだ」


本物のエルフじゃんとか思ったけれど、どうせロクなことじゃないのはもうテンプレだと思う。どうせ奴隷だとか愛玩用だとかそんなもんだと思う。あ、なんかそんなこと考えたら胸糞悪くなってきた。


「彼女もチート持ち」

「……私のこと、勝手にしゃべらないで、リーダー」

「あう、ごめんよ」


苦笑した隆志はじゃあ、直接話して、と俺たちとレイナさんが向かい合う位置に席に座らせたんだよね。食事処“マーガレット”、いい雰囲気の店だけれどゴロツキもいるようだ。ちなみにアレスのファミリアではなかった。アレスのファミリアと思われているようだけれど、いい迷惑だな。


「……何を話せというの?」

「うーん。まあ、じゃあ話してもいいことだけ話してくれるか? 俺は無悪勝己。高校3年生だった。こっちは親友の慄木勝だった」

「……過去形なのね」

「今の名前はゾーエー・クスィフォスっていうんだ」


ゾエも自己紹介を終えたところで、レイナさんは息を吐いた。


「三崎玲奈だったわ。高校3年、目が覚めたのは一昨日、見ての通りエルフになっちゃって、名前はレーナ・エドルヴィン」


名前似てる。いや、きっと似せてもらえたんだろう。でも、それって前世というべき日本での自分と今の自分考えるときつくないか?


「……え、ちょっと待って。目を覚ましたのが一昨日?」

「ええ。ポセイドンの手違いで起きた地震、だったっけ? あれでぷちっと」

「あー。俺らもぷちっといったタチです」

「え」


話してる内容があれなのでゲリタスやヘルガが目を白黒させている。ポセイドンの名前が出たから余計にだろう。隆志が苦笑した。


「ポセイドンの手違いって……日本でまともに地震起こされたら震度7とかになっちゃうんじゃ」

「あー、どうだったんだろうな。俺らが死んだ方が本震だったと信じたいわ」

「あれは突き上げと長時間揺れだったと思う、さすがに地震で全体の死者が2人なんて甘い話はなかったな」


ゾエは呟いた。


「……火山が刺激されないといいけどな」

「ヘファイストスに頼もう? 心配なのはわかるから」


ゾエ、というか勝には妹が2人いたからな。心配なんだろう。そうこうしているうちに唐突に閃光が店の外に走って、入って来たのは煌びやかな服装をした―――神々。


「あれっ! いらっしゃいませ!」


女将がびっくりしてるじゃないか。地味なヘファイストスと黒いフード付きローブで顔を隠しているアレス。でも他が、主にアポロンが眩しい、というか月桂樹っぽいもの被ってるからあんたアポロンだろう。


「アポロン、さすがに眩しいと思うぞ……」

「私はアレ兄がそのローブを脱がねばならん状況をあえて作ってみているのだが」

「この確信犯が」

「アポロン、ちょっとほんとに眩しい、なんか着てよ露出部分抑えてちょうだい」

右肩出しキトンはちょっとね、アポロン!


ゾエがはあと息を吐いてポンと鮮やかな赤いショールを出した。


「これを着ろアポロン。色についての文句は受け付けないぞ」

「くっ、準備のいいっ……!」

「あんたもそのローブ食事しにくいだろ」

「……お前気が利くよな。このローブは脱がねーよ、もう言い寄られんのは嫌だ」


ゴロツキに前科があるようだ、行けセ○ム。

大人数になると女将さんに隆志が言ってはいたんだが、ここまで多くなると恐ろしいな。


「ローブ姿でアレスの口調が荒くなるのは見慣れなくて新鮮かもしれんな」

「笑いごっちゃねえぜ……」


アレスは苦い顔をした、アレスには悪いがお前身長高すぎて俺ら170後半の身長のやつからはフードの中身見えてますわ。つか、俺の身長は178センチで、ゾエは174センチだ。辺りを見回してみても、俺らはでかい部類に入ることが分かった。栄養状態の問題なのだろう。


アレスの身長は大体195センチ、と思っていたが、もっと200に近いんじゃないか?いや、それよりもヘファイストスがでかい。アレスよりちょい低いけど脚まっすぐしてなくてこれだろ、こっちは200越えてるな。


席に全員が着くと、ネフライトいれて16人になった。


「楽しんでる?」

『はい!』


ヘルメスと名乗った茶髪尻尾と半裸マントの神、サンダルと帽子はちゃんと持っていた、ケリュケイオンもあるがさっさと帽子と一緒にしまってしまった。ネフライトのことを気にかけていたようだ。

皆は料理を注文するけれど、アレスは横から摘ませてもらう、とだけ小さく言った。やはりまだちゃんとモノを食う気にはなれんか、とアポロンは苦笑いだ。


「で、病名は?」

「鬱だよ、極度のね。ただの卑屈と言ってしまいたかったのに、とんでもないことになってしまったよ」

「そこ、その辛気臭い話は外でしろ」


運ばれてきた料理に夢中になるアテナとアルテミス、アルテミスの席を壁際、アテナの奥にしたのはアレスで、アルテミスはアレスが仕切ったことに不満を漏らしたがアテナは意図が分かったらしくなだめに掛かっていた。

そらそうだよな。


「……アポロン、なぜ私はこの位置に?」

「そんなの決まっているだろう、お前が近付いた男たちに矢を射ってしまうのが恐ろしくなかったらアレスは軍神やめてるよ」

「……狭い」

「ごめ『アレス様お酒いります?』あ、はい」


見事な遮りっぷりだな。ネフライトって意外と高齢なのかもしれない。アレスのことをずっと見ていたような口ぶりだし。


アレスってさ、ぬけてるんじゃね、とアテナに言ったら、ああ、そこが可愛いのだ、アレス兄様は、と返ってきた。周りの男たちがこちらをちらちらと見やる。それに気付くとアテナやアポロンは笑いかけている。おそらくファミリアなのだろう。というか、神様って案外簡単に降りてくるものなのか、と疑問に思ったので再びアテナに質問。


「ああ、気が向けば来るぞ。父様は酷いがな、ヘラ様は全く降りてこない。それぞれだよ」


アテナは注文したスパゲッティを頬張りながら言う。


「私とアレスは戦があれば必ず降りてくる。まあ、50年前のはアレスがかなり気に病んだが」

「俺が原因で、とか?」

「そうだ。アレスは戦があればすぐ自分のせいにされてきたからな、ちょっとした喧噪も自分の影響だと思うことが多い。なあ、アレス?」

「さっさと認めちまった方が楽なんだよ。いや、あの押しかけてきたやつらに抵抗した500年、俺頑張った方だと思うわ」


アレスからはそんな反応が返ってきた。アレスは皿に少しサラダを取って黙々食べていた、あんま食べたくないならアンブロシアだけでも食べなさいよ。


「まったくだな。ちょっとした家出はあの頃からだったな」

「さすがに今回の300年はやり過ぎだったと思うが」


アポロンが口を出す。


「才能と権能に恵まれた超出来のいい輝かしき双子の片割れよ、あんたにゃ永遠に俺の気持ちなんざ理解できないさ」

「そうかもしれないが……父上があまりにも」

「どーでもいいんだよ父様は。つーか俺居なくて清々してたんじゃねーの? 実際のところどうよ?」

「いや、アレス、父様はかなりしょげていたぞ」

「はは、表面だけならなんとでも」

「食事中にする話じゃねえよあんたらそれ別のとこでやってくれ」


俺が思わず言うと、すまん、とアテナ、ごめん、とアレス、すまないな、と会話にほぼ参加していなかったヘファイストスが言った。

というより、こんな話を俺たちの前でするのは俺たちに気を許しているせいだろうとゾエが囁いた。オリンポスでは気を張っている神々の方が多いらしい。


「そういえば、皆は誰のファミリアなんだ?」


隆志が重くなった空気を払拭するように明るめに言った。


「ああ、俺たちはアレスのファミリアだ」


俺が答えると、そうか、と隆志は頷く。


「全員傭兵ギルドなのか?」

「ああ。ゲリタス、他にもっと長い人いるのか?」

「あー、アレックスが俺より2年長いな。ほら、チリチリがいたろ」

「あのドレッドヘアの? 若そうなのに」

「よく前からいたファミリアたちは童顔だのなんだの言ってたがな」


あんたは普通にスパイス焼のチキン頼んだんだね。ゲリタスは大ベテランだからいろいろ習ってるところ、と説明すると、レイナさんやヘルガはそっかあ、と呟くように言った。


「僕はアテナのファミリアだ。盾を使わないのはちょっと申し訳ないけれどね」


隆志が言う。アテナがじっと隆志を見て言った。


「そう思うなら片手剣に転向しなさい」

「まだすべての特技のスキルをカンストしてないです」

「やっぱ目指すよね、カンスト」


ゾエが同調した。アイツもゲームはやり込む派だったからな。


「私はゼウス様のファミリア。ひとついいかしら、どうして貴方達は神々を様付けで呼ばないの?」


ヘルガが問うてくる。俺とゾエは顔を見合わせた。そんなの、物語しか残っていない世界から来たからですが。とは言えないな。


「うーん、あんまり身近に感じてなかったというか。俺たちの居たところはオリンポスの神々を信仰するって感じじゃなかったから」

「支部が面倒みてた地域だったんだって」


たぶん名前出してもわからないだろうから名前は出さなかった。ヘルガはそうか、と何か納得したように引き下がってくれた。


「俺はアポロンのファミリアだ。弓矢はちょっと、もともと引くのが苦手でね、剣を使わせてもらっている」


ルイが言った。へえ、アポロンのファミリアも騎士とかなれるんだ。アポロンは小さく息を吐いて、「銃は高いしボウガンもあまり中てられない子でね、ちょっと悲しい」。あんたの権能で加護してそれなら本当はもっと酷いんだろうな。


「あたしはアルテミス様のファミリア。もともとは近くの村で猟師として暮らしてたんだけど、ドラゴンが近くに出ちゃって、皆ばらばらに逃げたんだ。食い扶持ないから、狩人になりました」

「なるほど、大変だな」


ドラゴンと聞いてアレスが少ししょげた気がした。


「私はディオニュソスのファミリアよ。……どうしてきてくれなかったのかしら」


レイナさんがしょげた、アレスが口を開いた。


「ディオニュソスは必死で今どこかのエルフのために髪留めのデザインをしているところだ」

「え?」

「なんだアレス、ディオニュソスのところへ行っていたのか?」

「来たがっていたからな。なかなか来ないから覗きに行ったら、今日中にデザインしないとヘファ兄の仕事がたくさん入って注文受けてもらえなくなるって喚いてたぞ」


このタイミング、絶対レイナさん用だな。アレスがそういった意味のことを暗にレイナさんに言っていた、レイナさんは両手で顔を覆った。


「不覚っ……!」

「アリアドネの件といい、ディオニュソスはホントにフェミニストだなぁ」


ゾエがへらりと笑った。


「ふー、お腹いっぱい」


ヘルガが笑って言った。俺の驚きはアテナといいアレスといいザルと言うか枠、酔わないのかこいつらと思うほど呑めるらしいと知ったことだった。アレスはあまり呑もうとしていなかったし、何か食べないとあんまり酒って呑まない方がいいんじゃなかったっけ。アテナの方は食うし呑むしほんと酒に強い神だった。


アポロンはすっかり酔っている、ヘルメスが、運ぶの自分なんですけど、と何かブチブチ言っていた。アフロディテは会話にほとんど参加していなかったけれど、アレスを気遣っているのが分かっていたしヘファイストスの方の面倒を甲斐甲斐しく看ていて、ああなんだいい女神なんだなと思ってしまったのだった。


最後の方はディオニュソスも現れて、ひとりにしてごめんよおとレイナさんに抱き着いていた。そのあとアレスの方に寄っていくから、流石曾祖父と曾孫、なんて思った。



皆が食事を終え、ちょっと駄弁って、一通り楽しんだ後。


「ああ、ところで」

「?」


別れ際、隆志が言った。


「明日はパンテオンに集まろうじゃないか。ダンジョンについては知っているかい?」

「いえ……」


俺が否定すると、よかった、と隆志は言った。


「明日はダンジョンについて最低限伝えておきたいことがあるんだ。じゃあ、僕らはこれで」

「ああ、ありがとう、隆志!」


手を振って別れ、俺とゲリタスは歩き出した。ゾエは一緒に来なかった。

閃光が走って、神々が消えた。


「いいのか?」

「神殿でも声は聞けるさ。それに、さっきの会話を聞いてて相棒が黙ってられるわけがない」


なあ、そうだろ?


アレスが皆に気遣われているわけが何かある。アイツはそれを確かめに行った。

俺とゲリタスは2人ぼっちでアレスの神殿への帰路についた。


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