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転生したらチートになった親友と俺  作者: 日風翔夏
第1章 こうして俺らはチートになる
5/33

ギルド

2025/07/04 編集しました。

<Side of Katsuki>

目を覚ましたら、アレスがゾエと一緒に食事の準備をしていて、傭兵のオッサンたちも中に入ってきていた。


「まさか一緒になるとはなあ。お前、名前はなんていうんだ?」

「俺は勝己。あんたは?」

「俺はゲリタスだ」


あの時俺を睨んできていたスキンヘッドでタトゥーを肩にいれているオッサンだった。ゲリタスはもうアレスの加護を受けて30年になるそうな。なんだよ中年太りしないのかって言ったら、アレスの加護は太らせちゃくれないぜと笑っていた。家庭も持っているらしい。でも家族はヘラとアテナの加護を受けさせたという。


「妻はもともとヘラの加護を受けてたからよかったんだが、娘と息子が俺と同じ加護を受けたがって困ったぜ」

「へー。なんかマイナスがあるんすか?」

「マイナスだらけだ。俺は昔っから荒くれ者のグループで過ごしてたからよ、家族は戦火で死んでたし、殺しもやった後でとてもヘルメスのトコに行く気にはならねえ、腕っぷしには自信があったから、アレスの加護を求めたってこった。独り身じゃねえとアレスのとこには来ねえな、普通」


ゲリタスが言うには、アレスの加護は上手くアレス自身が調節できないため、決まった分量の加護を与えるけれど、その加護に見合うだけの実力がないと死んでしまうのだそうだ。大体、敵に後先考えずに突っ込んでいって。


「そりゃ子供には受けさせたくないっすね」

「だろ? 俺は生き残ってるからいい。でもな、大体アレスの加護を受けたもの(ファミリア)は1ヶ月以内に死ぬんだよ。2ヶ月保ったら傭兵稼業で死ぬことはほとんどねえ、それくらいアレスは強力だ。かわりに、何度も戦闘のたびに神殿に来て加護の強めてもらったり弱めてもらったりしねーといけねえ」


ゲリタスはにやりと笑った。


「お前さんにゃ、もう1人加護を受けさせてくれそうな奴がくっついてるけどな」


横目でゲリタスがゾエを見た。そっか、ゾエは神になったんだ。でも神様稼業大変じゃねえのかな。いや、家業か。ゾエが加護をくれるのかどうかについては、正直あんまり気にしてない。俺の中ではやっぱり、勝は友人なのだ。ゾエと呼んではいるが、あくまでもこれは神としての名前でしかなくて。ちょっとずつゾーエー・クスィフォスという神として、受け入れるために、渾名にした。


アレスは皆で食事をとるのが好きらしい。一番人数が多い町の神殿でいつも食事をとっているそうな。つーことはここが一番多いのか。


「アレス、お母さんとこで飯食わねえの?」

「また父様が人間の女に色目使ったから今日は全員外に出てるよ」

「懲りねーなゼウス」

「いや、アレはエロスが悪い」


ゾエが苦笑する。エロスってあれか、キューピッドか。何をしたんだ。


「エロスが、アテナの願いを聞き入れたのさ」

「アテナが色恋沙汰に首を突っ込むとは思えないが……」

「ゼウスについてはアレスへの監禁未遂容疑でネメシスが前々から目をつけてたらしい。昨日俺がちょっと離れたすきにね、アテナに現行犯でひっ捕らえられていったよ」

「ゼウス、愛の方向が違う気がする」

「父様は俺にはいつもあんなんだぞ」

「それが怖いの!! アレスのセ○ムはいないのか!」


いやたぶんそれお前とアテナだよ。

アレスも笑ってるけど傭兵のオッサンたちは苦笑している。ゲリタスが苦笑して言った。


「そういや、アレスに手を出そうとした若いのがデイモスとフォボスに滅多切りにされたことがあったなあ」

「や、その話しないでくださいよゲリタスさん! ちゃんと反省してるんですから!」

「まあ、もう15年も前の話だからな~」


いや、アレス綺麗だけどそういう対象に見ちゃうの!? 195はある巨漢だぞ?

俺は理解が追いつかんぜ。ゾエを見たら、苦笑する。んで、小声で言ってきた。

アレスは気に入ったらよく引っ付いてくるからそういう対象に見ちゃう人が多いらしい。


「わけわからん」

「ネットで見たことあるけどさ、ほら、こないだ俺らがやってた荷物持ちのアレ、あれもそっち系の話になるらしい」

「マジかよ……」


ゾエが勝だったころの話。

買い物して帰る途中で会った、俺は本屋から出たところで、大荷物を両手に抱えた勝を見かけた。反対側だったけど、帰る方一緒だしと思って、横断歩道を渡って、話しかけて、荷物を半分持って、一緒に話しながら帰った。


「あれのどこが!?」

「だよなあ、全然理解できない!」


俺荷物あんまなかったし普通だろ?


「え、それをそっち系だというんですって、なんでそうなるのイリス!?」


噴水に虹がかかっていて、虹の女神、伝令神イリスが来ていることを教えてくれた。そういえば、ゾエは日本刀みたいな武器とチョーカーをつけている。チョーカーはトネリコの木のモチーフで、狼とハゲワシかな、そういったモチーフが綺麗に細工されていた。


「それどうした?」

「ああ、これヘファイストスが、反動抑えるのに作ってくれた。頼みに行く前から作ってるところが、ヘファイストスすごいと思うよ」

「神殿寄って礼言って行こうかな」

「はは。それがいいかも知んね」


今日はとりあえず町を見て回って、ギルドに行って登録をしてもらおうと思う。


「今日の予定は?」

「ギルドへの登録が先かな。ゾエは?」

「お前と一緒に行動していいってさ。神殿にはかなず来いって言ってたけど」

「ギルドに登録しとけ、ゾーエー」

「わかった」


アレスからの許可も下りたので俺たちは、ゲリタスの道案内で町を見て回ることにして、食事を終えた。


「俺の剣そろそろ研ぎに出さにゃならんからな」

「ヘファイストスのファミリアのところへ?」

「そうだな。武具の調整は大体はヘファイストスのファミリアに頼む」


ゲリタスの後について行きながら俺とゾエはあたりを見回す。布切れ、糸、ビーズ。手芸用品屋さんや鉱物の鑑定士もいるようだ。一緒に並ぶなよ。食料品売りの通りはちょっと離れているらしい。

歩いていると巨大な建物の前に出た。ギリシア風だな、とつぶやくと、神が関わっているところは大体こうらしい、とゾエが言った。


「この造りの建物がギルドだ。ギルドは必ず真っ白な化粧石が使ってある、あとここの柱の数が横6、縦3の18本だ」

「18?」

「オリンポス12神はそれぞれの守護するギルドがあるからな。ゼウスの魔導士ギルド、ポセイドンの槍兵ギルド、ヘラの監視者ギルド、デメテルの料理士ギルド、ヘスティアの固定治癒術士ギルド、アテナの衛兵育成ギルド、ヘファイストスの鍛冶師ギルド、アルテミスの狩人ギルド、女限定な。アポロンが男の狩人ギルドと吟遊詩人ギルド、ヘルメスは商人ギルドと盗賊ギルドだな。アフロディテの着付け士ギルド、アレスの傭兵ギルド。オリンポス12神のギルドは以上だ。この他に、アスクレピオスの自由治癒術士ギルド、ハデスの理術士ギルド、ペルセフォネの法術士ギルド、ネメシスの暗殺者ギルド、ヘラクレスの自由ギルド、クロノスの統括ギルド」


このクロノスはゼウスの親の方じゃなくて、息子の方のクロノスだ、とゾエが教えてくれた。クロノス2柱もいるのかよって思ったら所謂日本語だから同じ音に聞こえるだけで綴りが違うのだそうだ。そして基本的には統括ギルドがこのギルドの本体ということらしい。クロノスの権能というよりは、その下で一緒に働いているらしいハルモニアという調和の女神の力によるところが大きいらしいが。


槍兵ギルドと衛兵育成ギルドの差は武器だけだとか。どちらもエリートコース、とのこと。アテナは守護に強いと、そういうことのようだ。着付け士というのは、コーディネーターのことだけれど、どうやら、戦闘員の装備を見てくれるらしい。ほとんど表に出てこない鍛冶士ギルドの面々は着付け士ギルドの面々がいてくれると助かる、らしい。それただの引き籠り?

理術師というのは銃を使う魔導士のことらしい。科学者っぽいものだとゾエが言った。

傭兵ギルドは致死率が高いとのこと、そりゃさっきの話聞いたら通じるけどな。監視者ギルドはどうやら偵察なんかもできるらしい。遠隔操作魔法を生業とするのだそうだ。


「ギルドどこ行く?」

「やっぱ傭兵かなあ。傭兵って一言で言ってるが、どの武器でもいいってことじゃん」

「まあな。ゾーエーは?」

「俺も傭兵かなあ」


ということで、中に入って傭兵ギルドの方へ向かった。そこには沢山の人がごった返していて、すげえなあと思った。俺こんな大勢の人修学旅行で奈良で見た気がする。


「あら、どうしたの御義父さん」

「よう、ルルリナ」


ゲリタスが声をかけられた方を振り返ると、美人さんがいた。ルルリナというらしいその人は、傭兵ギルドの受付をしていた。


「新人が入ってよぉ。登録しに来たってわけだ」

「ああ、そうなんだ。アレスのファミリア?」

「はい」

「……若死にしそうだわ。傭兵ギルドなんておやめなさい」

「なんだかデジャヴを感じる」


アレスの神殿に入ろうとした時と同じじゃんか。ルルリナさんは本気の目だったけれども。


「貴方、見たところ実戦経験なさそうだもの。悪いことは言わないわ、やめておくことね」

「悪いな、こいつアマゾネスなんだわ。んで俺の息子の別居中の妻」

「アマゾネスは家庭なんて持たないわ」


女の子と男の子が生まれてしまったので男の子を殺すのも忍びなく、いったんアマゾネスの集団を離れているところなのだそうだ。


「でもこのままだと食いっぱぐれるよ、いつまでもアレスの神殿の世話になるわけにはいかないし」

「……だからって死ぬ確率を自分から上げることないじゃないの」

「あはは……傭兵ギルドの仕事って大体パーティの欠員を補填するとかそういうものですか?」

「そうよ。低いレベルのパーティはどちらかというとレベルの高い傭兵を欲しがるものだし、あなたたちには仕事なんてない」

「言い過ぎだぞ、ルルリナ」


正論なんだろうなこれ。言ってることが優しいから、まあいいかって思ってしまう。俺とゾエは顔を見合わせた。


「それでもここがいいんです」

「似たようなことは自由ギルドもやってるわ」

「ヘラクレスって強いですよね。でも俺アレスのファミリアなんでここで行きます」

「……本当にいいのね?」

「はい」


ルルリナさんははあと息を吐いて、登録石を渡すから絶対になくしちゃだめよと言って、俺たちに透明な石を渡してきた。


「それに色が着くまで握ってて」


言われるままに握っていたら、色の付いた光が出てきた。俺は海色、ゾエは……。


「まるでヘマタイトだな」

「うん、自分でも思ったわ」


ぴかりん。鉄のごとき青光り、素晴らしい鏡のような。


「アレスの石のような……待って、まさかあなた、アレスの眷属なの?」

「眷属というか……まあ、はい、下で働かせていただき始めたばかりですけど」


ゾエは笑った。ルルリナさんは青ざめる。


「早く言ってくださらないと!」


慌てて支度を始めた。眷属というのは、神に仕えるもののことを言うらしい。神官みたいなものだという。たくさんの神々の中でたった1柱だけを選んでいるという点で、稀有な存在らしい。


「ゾエ、眷属、か? お前」

「たぶん眷属ではないけど……ま、いいんじゃね?」


いいのかそれ??

俺たちは中に通されて、小さめの祭壇がしつらえてある。祭壇は4種類。一番使い込んであるのが分かるのは祭壇が赤黒く固まっているモノ、あからさまにアレスの祭壇だった。他の祭壇には何もなくて、おそらく血をかけるとかいう物騒なアレスや、特殊なのがいるディオニュソスやアルテミスあたりが別使用になっているんだろう。


「鉄剣の立っている祭壇に、自分の血をかけてください」


そう言われてナイフを渡された。その時、きぃん、と音がした。祭壇に、全身武装の男が立っていた。武装自体は重装備なだけだけれど、雰囲気がえらくおぞましい。ルルリナが跪いた。


「アレス神」

「えっ」


マジですか。アレスらしい全身武装のが俺の頭を撫でた。ああそうか、と思った。ゾエの血はイコルになってる可能性が高い、神の体は確か特殊なのでしか傷付かない……いや、そもそも、ゾエって刃の神だよな?


ぐるぐるする俺の思考をわかっているのか、アレスは甲冑の眼元を開けて、その綺麗なサファイアブルーの瞳を見せてくれた。優しげな光が宿っている。そのくせしてこの威圧感。軍神パないわ。


「あ、れす……」

『やっぱてめえらにこのカッコはきついか。なんもしねえよ。ゾーエー、てめえはおそらく刃物で傷付くことはない。それだけ言いに来た』


アレスの口調は随分と変わっていた。きっとこれが表向きの残忍な軍神アレスの姿なのだろう。ゾエはうなずいた。

アレスはゾエも撫でて、ゲリタスの肩を叩いて、姿を消す。


「……はは、すげえ、お前らマジでアレスのお気に入りなのな」


ゲリタスが言った。ルルリナさんはやっとこ顔を上げる。


「ふぅ、押しつぶされるかと思ったわ」

「やっぱアレスは人前に出るときの威圧感がパねえよなぁ!」

「そうね。まあ基本的に、群れている魔物を蹴散らす効果のあるモノだから」

「アレスにとっちゃ、とりあえず向かってきそうな人間全部威嚇しとけってことなんだろうがよぉ」


心配性だよね、とゲリタスとルルリナは顔を見合わせて言った。やっぱりそこに帰結するんだな。

アレスのファミリアはせいぜい50いるか居ないかくらいらしい。この世界の人口がどれぐらいかは知らねーけど、アテナなんかは500とか余裕らしい。流石だな。

俺は鉄剣に手首を切って出した血をかけて、アレスの怒鳴り声を聞く羽目になった。


『馬鹿野郎!! なんでこう皆関節切るかな!!?』


血なんてちょっとでいいのに、と喚くアレス、指先切ればよかったのかあ、これだけ血がかかってたから結構かけなきゃいけねーと思ってしまったじゃないか。

ゾエは両手合わせて合掌してた。まあ、祈れって言われても拝むよな、日本人だし。


「あら……貴方たち、転移者かしら?」


それを見ていたルルリナさんが口を開いた。


「はあ、まあそんなもんですね」

「そうなんだ。たまにとんでもない強さの人とかいるけど、それなら安心ね。これ以上死なれると本当にアレスが凹んじゃうから」

「アレスもたいがい人間好きですよね」

「ただの御人好しなのよ。自分の神殿に入ろうとする子を脅して帰すのもそのせいだし」


あ、やっぱりあれアレスの差し金だったんだ。ゲリタスを見ると、ゲリタスは苦笑いを浮かべていた。


「やっぱ俺らもな、死にたかねえんだよ。でも若いうまく調整の効いてないのが突っ込んでいくと、庇っちまう。庇ってベテランまで死ぬってわけだ。いいことなんかありゃしない。こないだも2人それで死んだ」


傭兵は常に死と隣り合わせだとかなんかかっこいい風に言ってたやつがいたけど、よっぽど残酷だな。守護方陣、本当にいいチートをもらったと思う。生きるためなら逃げ足か防御だと思ったから。


あの時思い出していたのは勝とのギリシア神話についての話で。

アレスって扱い酷くね。それは俺も思ったわ。もともと別のトコの神様だったらしい。そうなんだ、じゃあきっとそいつら強かったんだな。アレスってただのいいお父さんに見えるんだけど。短気なのは使用だろうけど、娘と息子が絡んだ話以外はアテナとアフロディテ絡みしかないな。ゼウスのこれ全部マジだったらどうやってこんないいお父さんが生まれたのか知りたいな。反面教師だろ。

うん。ロクな会話してない。ゼウスをひたすらけなしていた気がする。


「さて。転移者にはフェアリーがついていることがほとんどなのだけれど……」


受付に戻ってきた俺たちはとりあえずネフライトを呼んだ。ネフライトは俺のヒマティオンのひだの中に埋まって眠っていた。


「寝てる」

「じゃあお邪魔しちゃ悪いわね。まず、ここの通貨についてだけれど、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で聖銀貨1枚、聖銀貨100枚で聖金貨1枚。ミスリル貨は竜人相手だと必ず必要になる。獣人は物々交換以外には応じない。次に、魔晶石。これは魔物が必ず落とすものだけれど、これはこの町の守護結界の維持に使われる。だから年中欲しいってわけ」

「なるほど」


だから魔晶石がいるわけだな。それにしても、魔人族、会ってみたいなあ。ゾエも同じ考えだったみたいで、顔を見合わせてニッと笑った。


「じゃあ、早速行ってきます!」

「気を付けてね~」

「俺もついて行くから大丈夫だって」

「怪我させたらただじゃおかないですよ、御義父さん」


まあこの後武器を見に行くんですけどね。とりあえずナイフでも持っとかないとね。


読んでいただいてありがとうございます。

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