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転生したらチートになった親友と俺  作者: 日風翔夏
第2章 迷宮都市編
30/33

ダンジョン探検④

お久しぶりです。


<Side of Katsuki>

ゾエから俺の心の内が丸聞こえだと教えられて、体感1時間後。俺は無事心の内を隠蔽することに成功した。ゾエのやつ流石神様、最初からカンストしたのを持っているだなんて。もっとも、アイツの場合は上がっても誰も教えられる状況になかったってのも大きそうだけど。ゼウスたちがあれだけ大わらわしてたのに余裕のあった神がいるとは思えない。

ダンジョンを進んで、現在2階。

ゴブリンが消えて、ジャイアントアントが出てきた。

まあ、ジャイアントアント系、というだけで、地上にいる通常種とは別物のようだ。

『レッドジャイアントアント Lv5 弱い』

この弱いってのやめないか。まあいいけど。

身体が全体的に赤っぽい。そしてジャイアントアントよりでかい。これあれか。ムネアカオオアリかなんかか。

今度は毒を吐きかけてくるのが多くなってきた。どうやら、顎はそこまで強くないようだ。いや、アレスの加護で怪力化してて、それを見抜かれてるのだろうか?

『わり、今鑑定食らった』

『アレスの加護は見抜かれたな』

向こうも鑑定持ちかよ。まあいいけど。ちなみに、1個小隊として5匹で行動してるからやらない方がいい気がする。

『ここは素直に撤退で』

『同感』

『賛成』

『んじゃ、逃げますか』

俺たちはレッドジャイアントアントから逃げ出した。

ちなみに後に分かったことなのだが、このレッドジャイアントアントは1個小隊がやられると大群で押し寄せてくるそうである。やめてー。

逃げて正解だったということらしい。

俺たちは必死になって逃げ惑っているパーティを見ながら横を悠々と通り過ぎた。レッドジャイアントアントはなんにでも噛みつきに行くタイプじゃなさそうだ。

『エネミーの得意・弱点属性とざっくりした相手の攻撃力・防御力しか分かんねーのがな』

『中って性能確かめろってことだろ』

『死ぬわ!! お前がやれよ!?』

『最悪の場合はやるさ』

鉄郎とそんなことを言い合いながら進んで、ちょっと広いところに出た。そこで俺たちは、巨漢を見た。筋骨隆々の、巨漢。けれど、その身体は傷だらけだった。

薬草とかあったっけ。あ、ちょっとあるわ。

鑑定を掛けてみた。

『ミノタウロス Lv87 ユニーク 強い』

いきなり最下層のボスっぽいの出ましたー。

でも人型というか。

つか、怪我し過ぎだろ。

『……ちょっと行ってくるわ』

『行ってらっしゃい』

ネフライト、レイナ、鉄郎は後ろで固まって、俺とゾエが巨漢に近付く。

巨漢は被り物をしていて、顔は見えない。

「おぉぁあああああああ!!」

吠えた。

『恐怖効果ミス』

ゾエの声が聞こえた。ふむ、吠えて相手を委縮させるのは当然だよな、怪我してるし。

ん?

ユニーク?

『ユニークって』

『こいつは最初のミノタウロスだよ。名前は覚えてるか?』

『当たり前だろ』

ユニーク、ということは、これは固有の名前を持っているということになるらしい。それ言うなら俺もユニークだよなあ。

迷宮、といったら有名なミノタウロス。アリアドネの糸玉のエピソードに残る、テセウスの英雄譚にて倒される、ミノス王の妻の息子。

その名は。

「「アステリオス」」

掴みかかって来ようとしたミノタウロスは動きを止めた。よく見たら被り物の方もかなりボロボロだ。兜の役目を負っていたのだろう。

結構でかいな。3メートルはあろうかという巨人だ。いや、アローアダイは17メートルだったっけか。

『回復魔術とか使えねーの?』

『俺はまだ無理……』

『はよスキル上げかねー』

回復魔術がスキルとしてまだ出てないし、俺たちにこの傷はどうしようもないな。

「あー……うー……」

俺とゾエはミノタウロスに近付いた。ミノタウロス――アステリオスはゾエが神であることを感じ取ったのやら、大人しくしている。

「アステリオス」

ゾエはアステリオスに手を伸ばした。アステリオスはその手を振り払わなかった。俺はその横にしゃがんだ。持ち物の中に薬草が入っている。薬草を取り出してアステリオスに見せた。アステリオスは後ろの3人のことも警戒しているようだったので安心してもらうために彼らにはかなり後ろに下がってもらった。モンスターが来ないといいんだが。

そして俺たちは何とかアステリオスの傷の手当てをしたのだった。


アステリオスはなかなかのイケメンでした。

「くそ、白目が黒いやつがこんなに可愛いなんて思わなかった……!!」

「たまに勝己と勝って女子みたいなこと言うよな」

鉄郎から何やらツッコミを入れられたが気にしたら負けだ。うん、負けだ。

ゾエによると、カドモスがこっちに来ることにしたそうで。しばらくしたら、黒髪に赤のメッシュが入った、金色の瞳の、ラフな格好をしたイケメンがやってきた。

「よ、ゾーエー」

「お疲れ、カドモス」

カドモスさん。うん、アレスの封印解いて以来っすね。

「カツキも、元気そうで何より。アステリオス、お前も、庭で会って以来か」

「うー……カドモス……」

アステリオスはカドモスが苦手なのだろうか。俺に隠れるなよ、お前の方がでかいのに。

「テセウスとアリアドネが、お前が庭からいなくなったことに気付いて大騒ぎだったんだ。姉貴の所へ戻ろう」

アリアドネのとこってことはディオニュソスのとこに戻るっちゅーことですな。包帯だらけになったアステリオスは、首を左右に振った。

「どうした?」

「もうちょっと、ここにいたい」

めっちゃ子供っぽくてかわいいんですけど!!

ちまかったころの弟を思い出して悶絶した俺を、鉄郎が冷めた目で見てた。やーめーろーよーそーのー目ー!

「……仕方ないな。気が済んだら戻るんだぞ」

「はーい」

「アステリオスはいっぱい食べるからな、お金稼ぎ頑張れ?」

「なんでそこで疑問形なのか教えてもらおうか?」

カドモスが案外お茶目なんですが。稼ぎの手伝いをするということで、カドモスもしばらく一緒にダンジョン探検をすることになった。

「カドモスっていつもはエリュシオンにいるんじゃねーの?」

俺がさっきの会話で気になったところを問いかけると、カドモスはうなずいた。

「いつもはな。でも、半分人間だったやつで神に召し上げられたのと、英雄として過ごしたやつとではだいぶ行き先が違う。俺の場合は英雄路線、庭ってとこに直行。エリュシオンへは庭を経由して行ってる」

「ハルモニアは?」

「あの子は座を経由する」

庭とか座とか、よくわからんわ。

「ちなみに、ゾエは庭と座が混じってる。ま、アヴリオスという世界そのものの成り立ちを知りたければ庭と座について調べてみるといい」

まだそこまで手が回ってないので別にいいです。

アステリオスが見つけたレッサーストーカーを皆でのしてちょっとずつスキルを上げていって、俺たちの暗視がカンストした。

生産系のスキルもあるらしい。俺たちは戦闘ばっかするからお目にかからないかもしれないけど、とカドモスに言われた。コスト次第では自分で作る可能性だってあるけどさ。レイナなんか矢は何本あっても足りないわけだし。

「あ、そうだ」

「?」

「お前たち今鑑定はスキルを使っているよな?」

「うん」

カドモスの問いにうなずくと、カドモスはこう言った。

「スキルだと拒絶されるから、強制的に、尚且つ相手に感じ取られない方法を伝授する」

「ほう」

そんなんあるなら先に言ってくれよ。

「ただし、これを使うには、魔力感知と魔力操作のスキルで下地を作っておかないといけない。あるか?」

「魔力操作はまだ」

「私たちはどっちも持ってない」

「要練習だ。3人ともスキルが習得できたら俺に報告よろしく」

魔力関連を言っていたということは、おそらく解析魔術とかその類なのだろう。

しかしまさか、強制的に調べることが出来るモノが存在するとはな。

ん?また魔術と魔法か。

「魔法と魔術って?」

「魔法の下位互換が魔術だ。まだアヴリオスは見ての通り、神代の時代。魔法の方が圧倒的大半を占めている」

「魔法って、すごいやつことを言うのか」

「そうだな」

知りたいことが多すぎてヤバいな。

「そうだな、好きな元素を言ってみろ」

カドモスに言われ、俺たちはちょっと相談して、火に決めた。

「火の例で」

「火か。そうだな、火なら、魔術では火を灯し、魔法では皆知ってる天空の城の光の矢みたいなものだな。規模をもっと小さくして、土のある場所でならば火山の再現が出来たりする」

ヘファイストスが怒りそうだな。

「魔術というのは、科学的に世界を理解しようとし始めると生まれてくるものだ。どんどん神秘が失われていく」

「信仰心とか、そういったものってことか?」

「ああ。これ、お前たちが転生者だから言ってるんだぞ。お前たちは魔法を使えない可能性が高い」

「「「なるほど」」」

ゾエにもなるともう神力ごり押しで魔法に昇華可能だそうだが、俺たち程度の魔力量じゃ無理。科学を理解していて、神秘を信じきれないやつに魔法は使えないそうだ。

「ま、だからこそ、地球は魔法が消えてしまったんだがな」

「なんかあれだな。綱引き」

「まさしくそうだ」

人間が認識することが動力源足りえるなら、神を信じれば神は存在する。神を知っているならば神は存在する。

たとえその正体が空気中の摩擦によって生まれた静電気の塊が大地に引き寄せられて摩擦を引き起こし、発光し、発熱しただけのものだったとしても。

たとえその正体が惑星のプレート運動によって起きる巨大なひずみを解消するために起こる反発運動により発生するものだったとしても。

「ゼウスとポセイドンが弱体化するから止めなさい」

「もしかしてあれか。科学で解明できないところまで遡ったらいやでも魔法になるのか」

「そうだな。宇宙の誕生が有からか無からかという話はかなり議論されていたようだが」

もはや探検よりもスキルと魔法についての講義になってますがな。

ともかく、めんどいのは嫌なので、俺たちが使えるのは魔術ということにしておこう。んで、神様が使うのが魔法。これでいいじゃん。

「魔術は科学だから、科学知識で強くできるぞ」

「めんどくせぇ……解体されるくせに強化できるってどういうこと」

「これぞ魔導の謎、ってな」

ウチのスパルトイは魔法の産物だよ、とカドモスが言った。スパルトイはカドモスがアレスの竜を殺しちゃったときにその牙から生まれた兵士たちのことだ。地面に埋めたら生えた竜牙兵。うん、魔法だわ。

要は、どうあってもそんなもの無いに決まっているのにあってしまった、その神秘を起こすことが魔法と呼ぶ基準らしい。

「カドモス、これだけはみんなつかえる」

「あ、ああ、そうだな」

アステリオスが持っていたバッグを指した。

「これ、マジックポーチ」

「へー。今の会話の流れだとそれ魔法ってなるけど」

「うん」

まあ、そうでしょうな。

「アイテムボックスと呼ばれる類のものも魔法にあたる。だが、分かっていると思うが、ギリシアの神々の権能によるものではない」

天空のウラノス、大地のガイア、混沌というか原初のカオス、愛のエロス、闇のエレボス、夜のニュクス、死のタナトス、眠りのヒュプノス。時のクロノスもここだったかね。

「アイテムボックスを形作る権能を持っているのは、元々この世界のおおもとになった世界の創世記に出てくる竜神だ。彼はカオスと同等でありながら、それらを作り出し、それらがそこにあることのできる“空間世界”と“存在”と“概念”を一手に司っている」

「スケールでかいななんだそれ」

「さあな、カオスとタルタロスとお茶するくらい古い神格らしい」

「カオスよりもずっとおおきいってガイアがいってた」

まじかよ。なにそれーってレイナや鉄郎ともいろいろ言いながら、俺たちは3階に下りる直前の所まで来て、今日はそこで引き返すことにした。

「今日はここまでかな」

「こっからリターンだぞー」

「ちょっと休憩しようよ」

「だな」

俺たちはこの世界――つまり、地球にはいなかった神の話を聞いて盛り上がった。

「そうだな。俺の権能ということで、竜族の話をしようか」

カドモスがそういって語ってくれた。


この世界――アヴリオスというのは、いくつもある世界の中の1つに過ぎないが、その中でも規模としてはかなり小さいそうだ。ちなみに地球のある世界よりもずっと小さな規模の世界なのだとか。

アヴリオスにはないが、お隣の世界には世界樹が存在しているそうだ。

その世界樹よりもずっとずっと古くから存在するのが、アイテムボックスの神様(笑)で、存在するという自称と概念をいっぺんに内包している――うん、よくわからない。

つまり、彼(お嫁さんがいるらしい)は存在するだけで世界が1個創れるとかそのレベルの存在らしい。スケールでかすぎて話にならない。

ともかく、このアイテムボックスの神様(笑)は竜の形だという。アヴリオスに存在する竜族は彼の眷属が含まれているのだそうだ。

含まれているという言い方なのは、ドラゴンのうちすべてが彼の眷属ではないからで、彼のメインは竜人の方だという。ここで魔人族来ますか。

彼の眷属にはとにかく手を出さないこと、これが鉄則。別に手を出しても何もないが、早めに切り上げて謝罪をした方がいい。不死身の神様ボディの持ち主だそうである。

アヴリオスとお隣さんでは、お隣さんの方が先に生まれた世界で、さらに、高次元の存在だという。精霊たちがごく普通にその辺を闊歩しているような世界だとか。アヴリオスでそんなことになったら、人類は蒸発するそうだ。エネルギーが莫大過ぎて、人間はおろか、魔物だって、生身の血肉を持っている生物は全て蒸発する運命にあるのだとか。

そんな危険な世界を、地球人の俺たちの魂で転生させるとしたら、最も次元的に近いアヴリオスになる、と。

ゼウスたちのオリンポスは、そのでかい方の世界にかなり近いそうだ。天界で繋がってるんだとか。うん、どこでも空は繋がってる。


「竜人族だけは敵に回すな。黒いのが出てきたらゼウス大神でも敵わん。いや、ハデス様はおろか、アレスでも敵わんだろう。戦争無敗、戦闘民族。彼らの中には神殺しが何人もいる」

カドモスの説明聴いてるだけでこっちはビビっちゃってるんですけど??

どうしてくれんの??

「はは、まあ、“自分”を認めてもらえればこれ以上ない味方になってくれる。あと、おかしな話だが、多少の裏切りには目を瞑ってくれる傾向がある」

「それ絶対前に情報掴んでるパターンだろ」

「ああ、どうやってるのかは知らんが」

全然笑えない種族が出てきたことで、俺たちは仰天するしかない。だがまあ、ほら。

しばらく会いそうになくね?

「ちなみに、この国の王族はアレス系の竜人だ」

「そうだアレスの子供も竜になるんだった!!」

すっかり忘れておりました。

そんなことを話しながら俺たちはダンジョンから戻ったのだった。


ここに出てくる竜に関しては完全なオリジナルです。


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