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転生したらチートになった親友と俺  作者: 日風翔夏
第1章 こうして俺らはチートになる
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こうして俺らはチートになった

これで第1章は終了です。

これからもゆっくり更新していく予定ですのでよろしくお願いします。

<Side of Katsuki>

戦争が終結しました、さながら関ケ原の戦いだ。半日ほどで終わってしまったからな。

しかし、裏切りとかそんな暇はなく、とにかく戦死者が多かった。アレスが大量に殺したのもあるけれど、ゾエが屠ったのもかなりの人数いることが分かった。

「戦後処理はこちらにお任せください」

リンダさんはそう言って意気揚々と帰って行ったのだけれど、うん、高校生で政治経済多少習っててよかったと今思ったよホントに。

俺は世界史を取っていたが、その分こういった外交問題としての戦争はまあ、見慣れているというか。あくまでも教科書の字を追っていただけだったとはいえ、知識としてはそれなりだ。大学受験も視野に入れていた分、ちゃんと頭に入っているし。

「勝、お前どうしちゃったのマジで」

「俺が聞きたいよ……」

ゾエはがっくりとうなだれた。というのも、ゾエが殺していたのは見境なくというよりも、ベテラン戦士だったらしいのだ。アテナとアレスが言うには、手練れを先に倒せばその分指揮系統に乱れが出るらしい。新人に小隊のリーダーを任せるのではなく、ベテランのやつの指示に従わせる。そういう指揮系統を取っていたらしい。

「ゾーエーはガキでも戦神ってこった。ただ、ちと俺寄りに生まれたな。残念だ」

「まったくだ、無意識にやられるとこちら側もかなりそれに合わせられるだけの実力を持ったものを用意しなくてはならない」

アレスとアテナはそう言っていた。

アレスは直感が全て、というタイプ。アテナは考えて全てを掌で躍らせる、というタイプ。ゾエはアレス寄りということだから、今回のベテラン狙いは直感で”ああ、あいつちょっと動きが良いな”ぐらいでやっていったんだろう。

アテナみたいにしっかり考えるタイプのやつがついていないとまあ、アレスみたいに自滅するということだ。アレスの場合は強すぎて話にならないが、これからはこんな精霊が出てくると面倒だということだ、アレスとアテナどちらも強力になった分、この世界の精霊に多少変化があるだろうとアテナが言っていた。

精霊は神とはいえ下級神で、不死身ではないのだ。

「ひとまずこれでアレスとゼウスの御家騒動は終わったってことでいいのか?」

「ああ、残りのわだかまりは本人たち同士でいくらでも解決できるさ」

ゾエはさっそく丸投げの構えに入っていた。

「アレスに掛かってたアレスが掛けた封印。そしてゼウスが掛けた封印。いっぺんにどっちも外したから、ファミリアはしばらく安静にしてろってさ」

「そうか」

「でも、国境付近にいると危ないかもなって話にはなった」

ゾエの言葉に俺は、そうだろうなと同意を示した。

そもそもアレスは侵略戦争を司る。近くに国がある場所にアレスのファミリアがいていいことはあまりないだろう。

「ってことは、俺も移動になるよな」

「ああ」

「……」

鉄郎がどうするかによるんだよなあ。ゾエは俺と来るって話をつけてきたみたいだったけれど。あと、アレスも一緒に来るそうだ。オリンポスにいたら緊張状態になった国境にも影響を及ぼすから、地上に降りてほとぼりが冷めるのを待つとのこと。

アテナも相手を刺激しないために地上に降りるそうだ。

「……ねえ」

「レイナ?」

すっかり回復したレイナがやって来た。

「どうした?」

「あなたたち、どこへ行くの?」

ここには残れないんでしょう、とレイナは言う。

「ああ……迷宮都市に行こうと思ってる」

俺は答えた。

迷宮都市というのは、迷宮攻略を生業として成り立つ都市のことだそうだ。迷宮都市は基本的にとてつもなくでかいダンジョンを抱えている。ダンジョンは生き物だ。ダンジョンの本体はよくわかっていないらしいが、ダンジョン自体は自然発生するものだ。ダンジョンは魔物を作る。もちろん、それだけが魔物の発生源ではないが、とにかく、都市の中にダンジョンができる場合がある。そうなればダンジョンの魔物が出てこないように討伐隊が組まれる。こういうところでファミリアは稼ぐらしい。

内側に魔力の補給源がうじゃうじゃいるのだから、無敵の結界を誇っているとか。こちらは神の力に頼らずに結界が張れるからな。

「じゃあ、私もついていっていいかしら」

「え? 別にいいけど……な?」

「おう」

ゾエを見ると構わんと返事が返ってくる。レイナに視線を戻すと、レイナは笑った。

「よかった。どこかの迷宮都市に移ってってディオニュソスに言われちゃって」

「そうか。一緒に行けるな」

「ええ」

地上で、特に神殿を持っている状態で、力を使わないある一定の方法があるそうである。封印というほどのものではないけれど、神の力を使わないようにする誓約みたいなものが迷宮都市には働いている。おそらく下に伸びている階層構造上、ハデスの支配下に置かれるために働くのではないだろうか。

「頑張んねーとな」

「アレスがさ、わざと他のアレスファミリアのいない迷宮都市を選んだんだよ。頑張ろうな」

「神殿あるとかないとか聞いてないから、ディオニュソスはないかもしれない……」

そんときゃそん時だ、と返すと、まあどうにでもなるわよと返ってきた。なかなかにレイナは図太い神経しているかもしれないな。

俺たちはさっそく支度を始めた。とはいっても、どうせ持っていくものなんて特にないのだが。武器と食糧で終わりだ。

ああ、その前に。

「ちょっとお供え物でも買ってくるわ」

「どうした急に」

「いや、いろいろ世話になったのに結局何も祈ってねえなって思ったからさ」

「勝己って変なとこ律儀だよな」

「そうか?」

俺はついてくると言ったレイナとともに買い物に出かけた。






戦後処理のために政務に追われるリンダのもとに、獣人の少年が現れた。

「入るぞ」

「もう入ってるじゃないですか、ハク様」

相手の名を呼び、リンダは席を立つ。いきなりここに現れたということは、誰も彼を見ていないだろう。茶は自分で入れることにする。

「どう、調子は?」

「向こうの領土割譲で終わりそうですよ」

「そっか、よかったよかった」

ハクは笑った。傍目から見ていればあどけない少年の笑顔だが、実際の彼の年齢がどれほどなのかは、人間には想像もつかない。リンダは紅茶を入れて、ハクの前に出す。

「俺猫舌なのに~」

「そうは言われましても、香りが落ちてしまいますよ」

ふうふうと息を吹きかけて冷まして口に運ぶハクを見て、リンダは微笑ましく思った。自分が跡を継ぐどころか、父が跡を継ぐ前からすでに今の政治的地位にいた男である。

「そう言えば、アンテロス様はいったいどうなさいました?」

「アンテロスは、親父さんについて行くってさ。エロスがいる迷宮都市をアレスが選んだらしい」

「そうですか……」

アンテロスは戦闘には向かないが、回復要員としてはかなり使える加護を与える1柱である。アレスの家族が戦闘系で固まっている気がするのは致し方ないことであろう。

「それと、捕虜2人については、アレスが連れていくとのことですが」

「あ、そうなんだ……ま、そっちの方が皆仕事しやすいだろうしなあ……」

ハクはソファに寝転がる。

「皆?」

「新しく神に召し上げられたらしい子がいたんだけどさ。強いのなんのって。アレはたぶんアレスと同じお仕事するんじゃないかな」

「……?」

ハクは、あ、と言って口を押さえた。

「これは人間にする話じゃなかった」

「まあ……神々の眷属のお話でしたか。忘れておきますね」

「うん、そうしてくれると助かるよ」

ハクは欠伸をして伸びをする。

「お疲れですね」

「うん……アレスのファミリア、強かった」

鉄郎のことを指しているのだと瞬時に察したリンダは、机の中から赤い石――神晶石を取り出して、砕いた。

「眠りの神ヒュプノスよ、彼に疲れと傷を癒す安らかな眠りをお与えください」

「あ……ありがと……」

ハクにはさっそく眠気が襲って来たらしく、すうすうと寝息を立て始めた。

「ヒュプノス、ありがとうございました」

リンダはタオルケットをハクに掛けて、窓を開け放った。戦の後の、死体を焼き払った臭いは風に乗って向こう側へ流れていく。きっと風の神々が何か気を利かせてくれたのだろうとリンダは思って、書類の整理に戻った。






<Side of Zoe>

「急に呼びつけてごめんよ」

俺は急に招集をかけられたのでオリンポスに戻ってきたところだ。ゼウスが俺になんか仕事を任せたいとか言い出したからなんだけれど、そりゃあ、俺を神に召し上げた理由がそもそも解決の方向に向かっているのだから次の仕事が来るのは当たり前だと思う。

「いいよ別に、どうせ荷物まとめてただけだし」

「うん、そう言ってくれると助かるよ」

ゼウスはブレスレットを見せてきた。

「?」

「これで、神気を感知されないようにできる」

感知されるやつがいるところに行く?

どういう目的なのか聞かなくてはな。

「こんなもの渡すってことは、神気を感じると逃げるやつが相手ってことかな?」

「ああ、大体はそんなところだ」

ゼウスは俺にブレスレットを渡して、改めて口を開いた。

「……今回のニャルラトテップの一件で改めてわかったことだが――我々以外の神々がチート転生を勝手にさせているようなんだ」

「……」

え?

今なんて言った?

チート野郎と戦えって言ったよね?

「それ結論だから。言ってないから」

「ちょっと待てよ! 要するにそういうことだろ!? 俺はいいけど、まさか他のメンツまで巻き込むなんて許さないからな!?」

「あれ、嫌だ! じゃないんだ!?」

ゼウスは驚いて目を見開いた後、笑った。

「そこは大丈夫だよ、ゾーエーと組んで戦ってもらうのは勝己君だけだ。勝己君には皆からのギフトがある」

「……勝己がいいよって言ったらな」

「うん、ありがとう、ゾーエー」

ゼウスはそう言って、勝己にメッセージを送った。

すぐに勝己は応えて、神殿の祭壇のところまで出てきた。

「アレスの神殿は皆入れるから楽でいいね!」

『そうですね』

勝己にはこのままいろいろと贈り物をするらしい。祭壇に座ってていいよと言われた勝己はおとなしく祭壇に座っている。


最初に来たのは当たり前だがアレスだった。俺に何も言うなと念を押して、アレスはいきなりチートを勝己に付与した。付与したのは、”絶対ぶった切る力”。満足気なアレスだった。

次に来たのはアテナだった。付与したのは”絶対防御”物理も魔法も効かなくしたそうである。神器も止められるよ!とのこと。

ヘルメスは”嘘を見抜く力”、実用的ですな。

ポセイドンは”水中における加護”、溺れないってことらしい。

デメテルは”土を多少なりともいじる力”、そんな長期間何やれっていうんだろう。

ヘスティアは”拠点での急速な回復にわをかける”、なんとも言えないネーミングだったが要するにモン○ンのホームベース状態ってことだよな。

アポロンは”矢除けの加護”、おや、どこかの青タイツの兄貴が使ってた気がする。

アルテミスは”百発百中”弓矢とかの飛び道具限定だけどこれは大きいな。

ヘファイストスが”武具の手入れ”助かる、俺も手が回らないかもしれないし。

アフロディテは”人を見分ける”、トラブルに巻き込まれないようにしてくれるみたいだ。

最後にヘラがやってきて、”誰もかけることのない家庭”。ほうほう、なかなかいい加護ではないですか。結婚しろと。

ヘラまで終わると、ゼウスが”これらの加護を勝己の生きている限り永続させる”という加護をつけた。

「……」

これを間近で見ていた俺の感想はどうなると思う?

絶句だよ。

「どうした、ゾーエー?」

「……いや、チートってこういうやつのことを言うんだろうなって」

俺の比じゃねえわ。これぞチートの権化だろ。

「まあ、ほら。私たちが本当はかけてあげたいうちの片方が神様だからね」

「へえー」

「お前のことだけどね?」

「死なない体になった時点で最強チートだわ」

これ以上はごめんこうむる。

『なんかいろんな加護がついたんだけど……こんなにいろいろ貰っていいのか?』

「無論だよ。我々の与えるチート能力と我々以外の神々が与えるチート能力には雲泥の差がある。彼らは1つしか持っていなくとも、我々のチート能力はそこまで強力ではないからね、1つで張り合うには限度がある――アレスとアテナだけはもともとこの任についているから他の神々と同等のチート能力を付与することが出来る」

おや、言い方に少し引っかかるな。

「ステュクスに誓ったのか?」

「いや、そうではないが、我々は我々が能力を付与したものが暴走した際にすぐに止めることが出来るようにと考えているだけだ」

ゼウスはそう言い切って、おや、と振り返った。俺も振り返ったが、そこにはアスクレピオスが立っていた。

「アスクレピオス?」

「私からの加護も加えていただけますか」

「ああ、構わないよ」

アスクレピオスが与えたのは”自己再生力の強化”だった。見る見るうちに傷が塞がって、とまではいかないらしいが、それに類似する加護らしい。

「見事なチートが完成したな。絵にかいたようなチートだ」

「ふむ。しかし……ああそうだゾーエー、お前にはこれを」

「?」

勝己を見て感想を言ったらゼウスから本を渡された。手に持つとふっと消えてしまった。

「なんだこれ?」

「相手が他の神々のチートか否かを判別するものだ。トールとイシュタル女神にだけは反応しないから気をつけなさい」

「はいよ」

トールとイシュタルはそれぞれアレスとアフロディテに近しいせいだろう。

「アレスは地上では力を使わないのか?」

「ああ、あの子は使わないだろうね。チートをぶっ潰す時は思いっきりやるんだが」

俺は苦笑する。ゼウスはもう行っていい、と俺に告げて立ち去る。

「勝己」

『どうした?』

「がんばろーな」

『おう』


この翌日俺たちは出発し、4日かけて迷宮都市”ザドルガン”に辿り着いた。


感想等、お待ちしております。

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