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転生したらチートになった親友と俺  作者: 日風翔夏
第1章 こうして俺らはチートになる
20/33

解呪

2話目連ちゃん投下です。感想お待ちしております。

「あ……」

倒れた勝己、突き飛ばされて無事だった鉄郎。鉄郎は慌てて勝己に這い寄った。

「勝己、勝己っ!!」

涙が零れ落ち始めた鉄郎の表情を窺いながら、ハクは静かに立ち去った。白くたくましい馬に乗った女が鉄郎に近付いてくる。

「無事か、テツロー」

「……っ」

鉄郎は顔を上げた。睨みつけるように。女はそんな表情をされるとは思っておらず、驚いたように固まった。

「ど、どうした、テツロー?」

「……ッ、何もねえよ!!」

ここで彼女に当たるのはおかしい、彼女はきっと自分を心配して力を使ったのだと分かって理解しているからこそ、鉄郎にはつらかった。

「勝己、ごめん……ごめんな、ごめんな……!」

ただ謝ることしかできない。無論そんなことをしていれば狙われるに決まっているのだ、女―――エレンは静かにその美しい装飾の施された剣を振り上げた。

「お前たち、やつらはアレスのファミリアだ!! アレスを狙え、そうすればこの狂戦士どもは鎮まるっ!!」

エレンは叫び、周りの男たちの槍がアレスの方を向いた。アレスは戦場に直接降り立っている。その傍のナイフを構えた少年に男たちは目を留める。こっちの方が厄介だとすら思っているのだ、こいつが守っているアレスに近付くことなどできはしない。

少年は苦々しく笑っている、こちらもまた鉄郎と目を合わせてきて、鉄郎は泣き叫んだ。

「勝っ、どうしよう俺っ、」

アレスに話しかけ、アレスの手を引いて血に濡れて死体に埋め尽くされた道を歩いてくる少年は、エレンの目には異常に映った。

「駄目だ、テツロー! そいつはっ、」

鉄郎は手を伸ばして少年の名を呼ぶ。アレスの槍がひらめく、エレンは叫んだ。

「【絶風壁】!!」

アレスの槍がエレンの魔法を容易く切り裂いた。戦場の声は次第に小さくなっていく。

「勝っ……」

「馬鹿だな、鉄郎。戦場においてこんなの、殺してって言ってるようなもんじゃねーか」

「だって、だっ、て、ッ……」

呼吸もままならぬほどに泣きじゃくる鉄郎の肩を元気づけるように叩く勝と呼ばれる少年は、その青紫色の髪が特徴的で、エレンは唇を噛んだ。

「勝己がっ……」

「あー、いや、勝己は大丈夫だから。本当は勝己がお前と戦う予定だったっぽいけどさ」

「……え?」

鉄郎は理解できないという表情を浮かべた、勝と呼ばれる少年は笑って告げた。

「悪いけど、戦姫エレン殿とお見受けします。俺と勝負しませんか」

勝ははっきりとエレンを見て言う。エレンはうなずいた。

「わかった。兵を引いてくれ」

「何を言ってるんだ」

アレスが口を開く。

「ここは帝国領、貴様らは伯爵領の人間だろうが。全滅させるに決まってるだろ」

「なっ、」

「黒い馬のはアポロンにやられてたぜ。生かすのはお前とそこでボロクソ泣いてる俺のファミリアだけだ」

アレスの言葉は至極当然のことだったため、受け入れるほかなかったのだが、エレンは怒りの形相を浮かべた。

「やはりあなたには情けというものがない。兵を皆殺しにするしか能のない野蛮な神だ」

「何とでも言え、手前がいかに今までチャンバラやってきただけだったか想像つくわ、それで戦姫とか笑かすな」

「まあ落ち着けお前ら」

勝がエレンとアレスの仲裁に入る。

「うるさいッ」

「わっ。まあ、守られてきたお姫様だって思ったのは認めるけどな。捕虜にするぐらいいいんじゃないのか」

「アポロンが端っから銀の弓を射っているということの意味は?」

勝は息を吐いた。

「生存者なんぞいらん、だな。道理でアルテミスも容赦がない」

「デイモスとフォボスは敗残兵の追撃に向かった。徹底的にやる気だろあいつら」

「すべては神のみぞ知るってか。こんな理不尽で死ぬのな、俺達って」

アレスは勝の頭に手を置く。

「もうお前はこいつらとは違う」

「わかってるさ」

勝はエレンに向き直る。鉄郎の肩を再びポンと叩き、静かにナイフを構えた。エレンは抜きっぱなしの剣を持ち直し、声を上げた。

「アレスの従者ごときに負けはしないっ!!」

「んじゃ負けた時の言い訳も考えとけよ」

勝は青黒い光を放つ球体をまわりに浮かべ始める。アレスは鉄郎の背をポンと叩いて、勝己を姫抱きで抱えるとその場を離れていった。

「【風刃】!」

エレンの剣から魔法が放たれ、目には見えない風の刃が勝を襲った。

「アレスのファミリアもレイナさんもやってくれちゃってさあ、その見えない刃って厄介だよなー」

勝は呑気にそう言って、右手で払いのける仕草をした。

「!?」

エレンは驚愕の表情を浮かべた。そんなまさか、魔法を今ので打ち消されたというのか、と。勝は笑って口を開いた。

「自己紹介がまだだったな。俺はゾーエー・クスィフォス。とりあえず、神様らしい」

エレンは聞き覚えの無い名に、帝国は神が多いと改めて思った。だが、はてと思う。クスィフォス―――“刃”ではなかったか?

「っ!」

勝てるわけがない、そう思った瞬間。

「逃げてみる?」

ささやく明るい少年の声。振り返ってはいけない、フォボスとデイモスが来ていると頭では分かっているが、間合いの内側に入ってくることを許してしまった。

「逃げてよかったのに」

「……お前、生け捕り」

「おいこらデイモス、フォボス、邪魔すんな」

目の前のゾーエーは笑っている。

「ちぇ、」

「どうせ、ヒーリング、いる」

「おう、そんときゃ頼むわ」

ナイフを持った手―――左手をゾーエーがゆっくりと振った。その瞬間に体に大きな衝撃が走ったエレンは、鮮血が己の身体からほとばしるのを見た。

「?」

「戦場においてはチートだな、俺」

袈裟掛けに体を切られたのだとエレンは悟った。どうして、何も見えなかったのになどと思うよりも先に悟った。

「……刃の神か……!」

「正解。これ初陣でよく調節できないから、どっか欠損しても恨まないでくれよ」

軽くナイフを振っていとも簡単にエレンの四肢の腱を切り裂いたゾーエー、苦痛に声を上げることすらできなくなったエレンかそのまま失神した。

「……生け捕り成功?」

「袈裟掛けに切ってんじゃねーよヒーリング大変なのに!」

「ごめん」

辺り一帯が血の海に沈み、生きているものはほとんどいない。

「神託通りだな、ここまで酷いと思ってなかったけど」

ゾーエーは苦笑した。






エレンが目を覚ました時、すぐ横には鉄郎がいた。

「テツロー……?」

「起きたか、エレン」

鉄郎は苦笑し、「捕まった」と言った。エレンは自分の身体を確認した。手足は縛られているものの、袈裟掛けに切られた身体はしっかりと治癒魔法がかけられており、足の腱のみ修復されずに傷が残っていた。

「……彼らは何を」

エレンは目の前で行われている何かに対して問う。鉄郎は、「神様にかかっていた封印を外すんだって」と答えた。

近くに大量の死体があり、ハゲワシが近くに陣取っていた。

「葬儀のために、とはいきそうにないな」

「やられ損だろ、伯爵は何考えてたんだか」

鉄郎はこちらに来て1週間ほどしかたっておらず、災難としか言いようがなかった。エレンは申し訳なさで胸がいっぱいになった。自分の部隊に配属されたがためにこんなことになってしまった。アレスのファミリアは特に攻撃的になりやすいうえに、味方と断言できないため信用はなく殺すならばまず彼らとなる。アレス本人がいるため殺される確率は低いと言えるが、まったくゼロではないのだ。

今のうちに逃げろと言いたいところだが、エレンの馬は賢い。アテナが敵方にいる状態で彼らの領土にいる以上、アテナの支配から逃れることはまずできないだろう。

「よー」

すたすたとこちらに歩いてくる人物の顔を見てエレンは驚愕した。

「なっ、なぜ生きている!?」

「起きたんだな、戦姫とやら。俺は勝己、鉄郎とは友達ね」

鉄郎は先に勝己の安否の確認をしていたのか、全く動じておらず、先ほど見せたあの狼狽ぶりはどこへやら、である。

「……エレンだ。……それで、なぜ生きている。まともに食らったはずだ」

「あー、あれね、まあ聞いて分かると思うけど俺も転生者なんすよ。特典付きで」

「!」

エレンは鉄郎を見た。

「鉄郎のチート、何だっけ?」

「俺は単純な筋力強化なんだけど」

「アレスの加護ド真ん中だな。それでアレスのとこにいれられたわけか」

「そう」

打ち解けて話しているということもあるが、その前に見せていた態度から見て彼らが友人だったことは間違いない。エレンは肩の力を抜いた。

「先ほどはすまなかったな」

「いいよ、戦場なんてあんなもんだろ」

勝己の言葉にエレンはほっと胸をなでおろした。この後のことを考えるといろいろと要求されかねないが、その時はその時である。

「……この儀式は、何のために行うのだ。何故神が封じられている」

「本人たちの御家事情だよ。アレスがアテナ含めゼウスたちに掛けた記憶の封印を解く。ヘファイストスとアフロディテ、ハデス、タナトス辺りは記憶はまともなままだったらしいけれどな、アテナ以前に生まれた神々は全滅だ。この意味わかるか」

「……封印などと言うのだから、能力の制限がかかっていたということか」

「正解だ」

エレンは一番想像したくなかったことが答えになっていることを悟ってうなだれた。

「今までだって恐ろしく強かったのに、ますます強くなるのか」

「少なくともアレスとアテナは馬鹿みたいに強くなるって話だ。ま、ヘンな制限はとっとと失くしてもらうに限る」

「勝も制限受けてたんだろ?」

「おかげでアイツボロボロになっちまってんだぞ。マジ心配したわ」

「確かに」

勝己は鉄郎の横に座り込んだ。

「手伝いとかいいのか?」

「素人はすっこんでろ! ってアレスに叱られたわ」

「マジか」


アレスとアテナは術式の限りなく中央部分にいることになるため、アポロンとアルテミス、ヘルメス、ディオニュソス、アフロディテ、ヘファイストス、術式の影響を受けていない者が周囲をいじるしかない。

「アポロン、もう少し右だ」

「ここか?」

「そこ、ヘリオス」

「むむ」

ヘファイストスの指示に従ってアポロンが太陽神の名を刻む。同じように、アルテミスは月の女神セレネの名を対称の位置に刻んでいく。

「アレスも面倒なものを組んでいるな」

「これがアレスにできる精一杯の封印ということよ。全部直感で組んでいくから最悪の封印術使っちゃってるし。アレス、アテナ、しばらく私のお人形になってもらうんだから!」

「アフロディテ、それは勘弁してほしい」

「仕事に支障の出ない程度ならば構わんよ」

刻まれた名の上にアポロンはヘリオドールを置く。

「ハデスが協力してくれてなかったらどうなっていたことか」

「まずアレスの人脈で第一に上がるのがハデスだからね、彼がいいと判断するまではアレスを守るために彼が最大の防御壁だったわけだ」

ヘルメスはそう言って指示を待つ。

「ヘルメス、そこはウラノスだ。ターコイズ」

「はーい」

「ヘファイストス、トルマリンとって」

「はいはい」

アフロディテの足元にはゼウスと刻まれている。黙々と円陣を描き続ける彼らはよくもまあこんな盛大な術式を覚えているものだとアポロンとアルテミスは顔を見合わせた。一方まったく指示を受けずに黙々と作業をしているのがディオニュソスである。

「ディオニュソスは分かるのか?」

「ザグレウスがいるからわかるんだと思う」

「アレス、これ作った時はザグレウスいたのか?」

「いや。まだザグレウスはいなかった。俺を経由したときに知ったんじゃねえかと思うが。アテナ、そこヒュプノス、ゴシェナイト」

「わかった」

神々の名を刻み続けるアレスたち、もう終盤に差し掛かったところである。

「つか、どんだけ神々の名前覚えてるの」

「全員に名前借りに行ったんだよ。いやー、エロスの涙目はホント悪いことしたな」

「わかってるくせに原初神のところにまで行っちゃうんだから。クロノス泣いてたわぁ」

「はは、ああ、ヘルメスそこクロノス、ブラックオパール。ああ、そこΧ! Κじゃねえ!」

「ぎゃあああ!」

「アポロンそこΚでクロノスね。ツァボライト」

「わかった」

「じゃあここはカイロスかしら」

「そうよ。カイロスはホワイトオパール」

石を次々と置いていく、アレスとアテナも徐々に中央を詰めてきて、そろそろすべて埋まるだろうか。何も知らないゾーエーだけが外側にいる。ギリシア文字を知らないので仕方ない。

「つか、ギリシア文字使うのな」

「残念ながら地球が一番文字に触れる時間が長かったもんでな」

アレスは苦笑した。ハデスの名の上にオニキスを置いて、デイモスとフォボスの名を刻む。

「俺らの名前もあるの!?」

「そうね、この時はもう2人とも生まれてたわ」

ハルモニアもな、とアレスが言ったところで、鮮烈な光が大地を裂いた。

「お、やっと来たみたいだね」

ヘファイストスが笑う。光が収まるとそこには金髪を風になびかせる少女と黒髪に赤メッシュの入った青年が立っていた。

「ハデスより宝石を譲り受けてきた」

「カドモス、ご苦労! ペツォッタイト、ヘソナイト」

「もうそこまで書いたのか。はい」

デイモスにペツォッタイト、フォボスにヘソナイトを置き、ハルモニアの名を刻んでいく。ハルモニアは持っていた袋の中からグリーンスフェーンを取り出す。

「お、上等じゃねーか」

「父様も、だいぶ口調が戻って来たね。よかった」

「……心配かけたな」

「いいの、大神や女王様が心配しない分、私たちが父様の心配するんだもん」

アレスはハルモニアからグリーンスフェーンを受け取って置くと、ハルモニアの頭を撫でる。風が吹いてアレスの緋色の髪がなびく。

「さ、あとは俺とアテナだけだ。離れてろ」

「うん」

ハルモニアはそっとその場を離れていく。アレスとアテナは足元に自分たちの名前を刻んでいく。

「カドモス、ペリドットとヘマタイト!」

「おう!」

カドモスはアレスに無遠慮に石を投げつけた。いや、投げなければ届かないほどに術式が巨大なのだ。

術式を掻き終えて組み終えたアポロン、アルテミス、ヘルメス、ディオニュソス、アフロディテが少し離れているヘファイストスの元へ戻ってくる。

「ゾーエー、お前は何月生まれだった」

「3月だよ」

「……なんの偶然だろうな」

「あーね」

ゾーエーは笑って、アクアマリンを受け取った。アレスとアテナは中央に立ち、静かに呟く。

「我らを縛るすべての鎖を断ち切らん」

「封じられし武神の神格よ、呼びかけに応えよ」

ヘファイストスとアフロディテが言った。

「「我らは其方の神格を受け入れることをステュクスに誓おう」」

そして名乗る。ヘファイストス、アフロディテ。アポロンがそれに続く。アルテミス、ヘルメス、ディオニュソス。地響きや荒波の唸り、遠くで轟く雷の音。神々が応えているとゾーエーは勝己に説明をよこした。

「さあ、ゾーエー」

ゾーエーはうなずき、その左手で一閃空を切る。次の瞬間、アレスとアテナの周りに光る鎖が出現し、ばらばらに砕け散った。

「おはよう、ギリシアの神々。今度は家族を大事にな」

ゾーエーは笑ってそう言った。

足元に刻まれていた神々の名が輝く。次第にそれらすべてが消えて行って、アレスとアテナがゾーエーの方を向いた。

「喧嘩、少しぐらいならいいんじゃないのか」

ゾーエーが言った瞬間、あたりに鉄と木の柱が乱立した。

「アレス兄様ああああああお話が違いますよね騙しましたねなんてあくどい欺き方をなさるのですかっ!!」

「親父の雷に打たれんのは俺だけで十分なんだよ意味わかってんのかあのままほっといたら親父に殺されてたかもしれねーんだぞ愛娘にしてもらえたじゃねーか喜べ!!」

「喜べるわけないでしょう私がこうやっていろいろ言いだす前に何とかしよう、ああそうだヒュプノスとレト使っちゃえ的なノリでやったでしょう!!」

「ヒュプノスをレトの前でフルボッコな!! どっちも権能貸してくれたわヒュプノス最後まで呪詛吐いてたけどな!!」

アレスの手に光が収束し、フォボスのものよりも一回りほど大きなデュアルアックスになった。アテナの方はいつも通りのメドゥーサの首付きアイギスである。

「こんな無茶をすれば当たり前ですっ、ああ貴方はこんなにも優しく強いお方だったのにこんな愚か者を演じていらしただなんてっ!!」

「だあああっ、もう俺のことはいいっ!! お前の体は安定してるのか!?」

アレスとアテナの応酬が徐々に論点をずらしていく。ゾーエーは苦笑してそれを眺めていた。

「う、わ!?」

「くっ!」

「きゃ!」

フォボス、デイモス、ハルモニアが声を上げた。アレスがそちらを気にしてアテナからワンパンチ貰うわけだが。

「避けてくださいませ!」

「無茶言うな!」

「手を痛めました!!」

「ヒーリングするからとりあえずアイギスを放せ!!」

喧嘩腰の会話を繰り広げる戦神たちを放っておいて、ゾーエーと勝己はデイモスたちに寄っていった。

「どうしたの」

「うー……」

フォボスがうなる。デイモスはその手をひらひらと振っている。痛みを飛ばすように手をひとしきり振ったデイモスは、口を開いた。

「……権能、制御、楽」

「おー。アレスと同じで権能の制御に制限がかかってたのかもしれないな」

ゾーエーはそう言ってハルモニアを見た。ハルモニアはカドモスに支えられている。

「なんというか……今まで以上に豪胆になったと言うか」

「念話中?」

「そんなものだ」

カドモスは苦笑する。カドモス本人には何の制限もかかっていなかったのだから当たり前で、ハルモニアは制限を受けているため少々神力に乱れが出ているらしい。

「カドモスにはじきに余波が来る。ディオメデス、出て来いっ、アンテロスもいるだろう?」

アレスの声がすぐ近くでしたために勝己が驚いてそちらを見ると、アレスがアテナを背負ってそこに立っていた。

「……アテナ、大丈夫?」

「腹に一撃……」

「アレスやり過ぎじゃねえの」

「アイギスの上からだったんだぞ」

そんなことを言いながらアレスはあたりを見回した。閃光とともにディオメデスが姿を現し、上空からは純白の翼を広げた赤毛の少年が降りてくる。

「下手な神託を真に受けた人間は末恐ろしいものだな」

「まったくだね」

ディオメデスと少年は顔を見合わせた。アレスはゾーエーと勝己の方を見た。

「こっちの赤毛、こいつはアンテロス。まあ、ウチの末っ子だ」

「ゼウスとはえらい違いだよな、皆兄弟居ないのに、お前も遊び人扱いなのに子供が1柱の女神に集中してる辺りが」

ゾーエーは率直な感想を述べる。辺りが血にまみれていなかったら最高だったろうなんて勝己は思った。思うだけだった。

「怪我人連れて戻るぞ。俺のファミリアは誰も死んでない、まだ、な」

「儀式より怪我人優先しろとか言えなかったのが辛いな」

神々のチャリオットで全員回収して町へと戻る道中。黒い人影を見たゾーエーは小さく舌打ちした。


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