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転生したらチートになった親友と俺  作者: 日風翔夏
第1章 こうして俺らはチートになる
15/33

カウントダウン

遅くなりました……

本当に不定期ですみません

かなり開いちゃったので2話行きます!

「これはっ……」

アポロンは息を呑んだ。ヘルメスの傷が消え去っている。ゾーエーを見ると、ゾーエーも驚いた目をしていて、彼の権能の一部にはそういう力もあるのだとアポロンは理解した。

「傷が、消えた」

「……ゾーエー、おそらくこれも君の力だ……」

ハデスがアレスに近付き、ヘルメスを受け取る。

「ヘルメスはなんだかんだでアポロンとアルテミスよりも早くからアレスの変化に敏感になっていたからな」

「ヘルメスとアレスが仲良くなるなら、俺すっごく嬉しい」

ディオニュソスが笑って言い、ポセイドンは持ち前の涙脆さを発揮して声を何とか抑えながら泣いていた。アレスはゾーエーを抱きしめた。

「アレス、」

「なんも言うな、ゾーエー。……嬉しいんだよ、こんな、俺のことで本気になるやつ、デイモスたち以外で初めて見た」

ゾーエーは笑う。

「俺、アレスのこと大好きだからさ」

アテナが居なくてよかった、彼女だったらこの惨劇を止めようとしていたかもしれない、などとヘファイストスは思った。アフロディテと目を見合わせ、席を立つ。ゾーエーが来るとなぜか席を降りたくなるのが不思議なところである。

アフロディテも下りてきてヘファイストスを支え、ゾーエーの許へ向かう。

「俺たちのように父上たちもうまくいけばいいのだがな」

ヘファイストスの苦笑にゾーエーは意味を理解して苦笑を返す。

「難しいと思うけど……ゼウスは大丈夫だと思うね。あんなこと言ったけど、前よりは一歩か二歩ぐらいアレスとの距離は縮まっているはずだから」

ね、とゾーエーはゼウスを見る。ゼウスはヘラと抱き合って泣きじゃくっている真っ最中だった。

「ヘラは、とりあえずヘベとエイレイテュイアに話聞けマジで。お兄様自慢聞かせてって言ったらめっちゃ語るタイプだから絶対」

「っ、ええ、わかったわ」

こればっかりは時間をかけて癒していくしかないからね、とアポロンが言うと、ゾーエーはうなずく。

「人間は、相手に言いたいことを言うばかりじゃなく、相手の話を聞けって教えられる。ああところでハデス、俺この後アローアダイに会いに行きたいんだけど」

「? 構わないが」

何をしに行くのかと訝しげな表情をするハデスに、アレスが叫んだ。

「駄目だ、行かせるな! 行かれるといろいろ困る、主に俺が!」

「毎回私にだけは本音をぶつけてくる子だな」

ハデスはそう言って笑い、アレスの頭を撫でる。ゾーエーはやはり、神様というのは年下を撫でるのが好きなのだと思った。

「アローアダイの話は本当にお前が情けなく書かれていたからな」

「ギガスたちも一緒だけど! ていうか、うん、ちょっとゾーエー権能出しっぱにしとけよ」

アレスが言うのでゾーエーはうなずいて権能をそのままにしていた。アレスはゼウスだけでなく皆を見回して言った。

「さすがにもうアレは捨てられたなって思ったから。いやむしろヘルメスが来た時なんで死なせてくれないのかって思っちまうくらいだったから」

「アレス、ヘルメスが眠っててよかったな、それ今のヘルメスだったら袈裟懸けに一撃逝ってたと思うぞ」

「だから今言ってんだよ」

否、ちゃんとゼウスに一撃入っている。

「さ、探したのに……!」

「見つかる何時間くらい前?」

「僕はそこまで薄情じゃないよアレスっ!?」

とうとうゼウスが王座を駆け下りてきてしまった。アレスに抱き着いて泣きじゃくる、顔は少年と青年の間ほどなものだから身長が高いアレスの方が兄に見えなくもない。

「ああ、じゃあ見つかる2、3日前かな」

「……アレス、お前僕を何だと思ってるの……?」

「神々の王」

「正当王子が御乱心!!」

ゼウスは泣きながらアレスを抱きしめる。ここまですれ違いが酷いと意図してやっているのではないかと言いたくなるが、アレスがいろいろ考えて物を言うわけないというとんでもない前提の下でゼウスたちはアレスを見ている、実際それで間違っていないのが少し痛いところだ。ポセイドンが問う。

「じゃあようアレス、お前、ヘラとゼウスが行方分からなくなったらどうするんだ? ヘラだったら?」

「自分で近辺探して、見つからなかったらヘベとエイレイテュイアに話聞いてまた探して、イリスんとこ行ってヘルメス頼って無理だったら軍隊召喚」

「だよな。お前それやるよな。ついでに冥界まで探せるもんなお前。じゃあゼウスだったら?」

続けて尋ねれはアレスはこともなげに答える。

「とりあえず女を疑う。1ヶ月待つ。帰ってこなかったら探し始める。ヘリオスんとこ行って、ヘカテんとこ行って、タルタロスも覗くかな。地上はやっぱ軍隊召喚」

「聞いたかゼウス、アレスは最低でも2か月以内にお前らを探し出す気でいるぞ」

ハデスがゼウスを見る。

「13ヶ月はないわー」

「痛い、ハデ兄、ポセ兄痛い!」

ここまではっきり言われると本当に親思いというかもはやただの御人好し、とアルテミスが息を吐いた。

「アレスは本当に人が好過ぎる。軍神でさえなければもっと信仰を集められたかもしれないのに」

「逆だろ。軍神として生まれるから、メティスの生む男児のような予言がなかったんだ」

「!」

アレスは笑って言った。

「馬鹿でも阿保でも、獣でも何でもいいさ。皆に迷惑かけずに生きる方法はまだ探し中なんだけど、もうちょっと近くにいていいか?」

嗚呼、この言葉がなければどんなによかっただろうとゼウスはアレスを抱きしめる力を強めた。

「アレス、そんなことを言うな。いつだっていていいんだ、迷惑なんかかけてなんぼだろう」

「え……」

アレスは首を傾げた。これはまずいと判断したヘスティアとデメテルが降りてくる。ポセイドンとヘラも降りてきた。

「え、じゃないぞアレス? とりあえず言ってみろ」

ポセイドンに促されてアレスは口を開いた。

「……ガキの頃は、女王はずっと言ってた。“まったく手がかかる、へべやエイレイテュイアのようにもっと大人しくしていられないのかしら”って」

「ヘーラー?」

「もうっ、5000年も前に言った言葉をその後も守る必要があるのっ!?」

「……守ったら、女王が少しは俺のこと褒めてくれるかなって。はは、馬鹿みたい、いや、馬鹿か」

「アレス止めようその話! ヘラがザックリ逝ったぁああああ!」

「女王!」

「アレスとりあえずその他人行儀な呼び方止めてあげて!」

アポロンとアルテミスは大騒ぎになった中央を、少し離れてみているハデスに視線を向けた。ハデスは苦笑して見せた。

アレスをつつくとゼウスとヘラが傷付いていく、しかしこんな話を今の今までしていなかった方が悪いのだ。もうだいぶ前からポセイドンは企画を練っていた。アレスがあまりにひどく傷ついていることに気付くのが遅すぎた、それでもいいのだ、傷付いているアレスを少しでも癒すことが出来るならばとハデスはポセイドンに協力した。

だが、とハデスは思う。

こんなことに巻き込めば、何かしら自分が選ばれて殺されたような気がしてくるのが人間というものだ。ハデスには、ゾーエーがそうなってしまうのではないかという不安があった。自分は選ばれたなどと言う妄想は払拭してやらねばならない。冥界へ赴きたいというゾーエーの意思は、今のハデスにはありがたかった。

「お前たち、とりあえずもう収まりそうだから私は冥府へ戻る。ゾーエー、行くぞ」

「ああ! じゃ、あと頼むな、ヘファイストス、アフロディテ!」

「わかった」

「任せて!」

本来ここへ来た目的はアレスに施された封印をなぜ一気にぶち壊すことになったのかということだったが、一番外側にあったハデスの封印を壊してみたら中が全て壊れていたなどというとんでもない報告を聞く羽目になった。だが、もういろいろと悩む必要もなくなるだろう。今まで封印していた原因をゾーエーが取り除こうとしているのだから。






<Side of Katsuki>

神々の会議だなんて言ったってなあ。外を見るとそこには真っ青な空が広がっていた。

「どうせ話し合いが終わるまで暇なんだし、換金場に行く?」

「そうだな」

レイナは俺と同じことを考えていたようだ。それを聞いていたらしいアテナファミリアのやつが言った。

「神々への敬意を払え、会議中ならば待つべきだ!」

「時は金なりって言うでしょ。大体ここパンテオンなのよ、お金の話してもいいでしょ、ヘルメス関連なんだし」

「ふん、やはり魔人は魔人か!」

「何ようるさいわね!! あんたらなんかと居たらこっちも馬鹿になる、ほっといて!」

なるほど、レイナが人間を嫌うようになったのはこれもありそうだな。

「ふん、そのエルフと行くのか、アレスのファミリア」

「そうだけど何か?」

「信心のないやつだな」

「生憎と信じてなかったもんで」

日本の神も仏もおおらかだったのに。見たことないけど。

俺とレイナは換金のためにパンテオンを出た。換金場に向かうと、ギルドの運営人がバタついていた。

「どうしたのかしら」

「……アテナの力が弱まって結界が崩壊したとか」

「それ可能性高いからで冗談ってことにしておいて」

「ああ、俺も言ってからビビってるわ」

想像したらぞっとする、というのは想像するからだ、実際どれほどの被害があるのかを俺たちは知らない。

「それにしても、こんなことで信心ないとか言われるんだな、ここ」

「仕方ないわよ、日本人はかなり宗教におおらかだっていうじゃない。そういうことだと思うわ」

「ま、日本人万歳だな。ファミリアにはなったけど他の神様崇めるぐらいの精神あるわ」

「アルテミスのファミリアはそれしない方がいいけどね。アレスのファミリアは、なんていうの……自由過ぎて。アフロディテ並みに自由らしいの。デュオニュソスは私に直接言ってきたの、アレスだったら祈ってもいいよ! って。なんでかわかる?」

「ひいおじいちゃんらしいぞ」

「本当、それ?」

しばらくバタついているギルドの運営人を眺めて、俺とレイナは換金場に入った。俺はまたアレスのカウンターに行った。そこについてくるレイナ。ああそうか、ここにはディオニュソスのカウンター無いのか。

「換金お願いします」

「はい」

ごろごろと袋をひっくり返して出した魔晶石を乗せたボードが引っ込んで銀貨が3枚、銅貨が17枚出てきた。わあい。銀貨は1枚で銅貨100枚、食料品の値段は、葉野菜がほとんど銅貨10枚ぐらいの値段。服はさすがにちょっと高くて、銅貨50枚分ぐらいする。

まだ神殿から出てないから使わないけどな!

俺の後ろにいたレイナも換金してもらう。

「アレスファミリアではありませんね」

「ディオニュソスファミリアです」

「わかりました」

カウンターはそういうことは確かめるのな。レイナの方は銀貨が8枚になった。

「戻りましょ」

「ああ」

そう返したけれど、俺の横を通った、書類を大量に抱えていた少女が俺にぶち当たって倒れた。

「きゃっ!」

「うお」

どしゃどしゃと紙が散らばる音、同い年くらいの女子が倒れていた。黒いマントを被っている。

「イタタタ……」

「おい、大丈夫か?」

しゃがんで手を差し伸べると、その子は慌てて俺を見て、さあっと青ざめた。

「あ……、あ、こ、殺さないで……」

物騒な話になって来たなオイ。手をとってくれそうになかったので俺は手を引っ込めて、散らばった書類をかき集めた。レイナも無言で書類を集めてくれていた。

「あ……」

「レイナ、悪いな」

「いいわ。困ったときはお互いさまでしょ」

ああ、日本の常識が通じる人が近くにいて助かった。

それにしても、どうやらアレスのファミリアはビビられるものらしい。ちょっと悲しいかな!

「アレスってそんな怖いか?」

「この子戦闘系じゃないもの、それにアレスはちょっと力がバカ上がりしてるから。まあ、女の子にとってはディオニュソスも天敵みたいなものだから」

「明らかに俺を見てましたが」

「それは災難ね」

書類を集めてみて、相当な量があることに気付く。こんな量をこの子1人で運んでたのか。集め終わった書類をもって少女の方を見ると、少女は呆けた顔をしていた。

「おーい?」

「大丈夫?」

少女ははっとなって立ち上がった。

「ご、ごめんなさっ、ししし失礼しますっ!」

礼をして立ち去ろうとする少女、おーいこの書類はどうするんだ?

「なあちょっと!」

「ひっ、」

走り出してしまった。俺とレイナは顔を見合わせて、少女の後を追いかけた。とはいっても、歩きでなんだけど。

「漫画で見るようなテンプレドジっ子だったわね」

「普通は逃げるじゃなくてキョドってペコペコ頭下げるか、恥ずかしさのあまり逆に『どこ見て歩いてんのよ』とか言うんだろうけど」

「あなた、声マネしないのね」

「あんまりしないな、俺は」

少女が入って言った部屋から怒鳴り声、

「書類はどうしたっ!!」

「申し訳ございません!」

俺とレイナはちょっと足早にその部屋に辿り着いた。え、なんで誰も俺たちを止めなかったのかって?書類のせいだろ。山だぞ。

「ご、ごめんなさい……」

「ええい使えん獣人だっ、」

その声で俺とレイナ、なぜかはわからない、同時にぶっちん。

「ねえ今の聞いた? これがここの人間の本性よ」

「はっはぁ、いいもん聞かしてもらったぜド畜生」

俺は赤、レイナは紫の光に包まれた。

ぴしゃんと音がした。レイナが肩を震わせた。

「鞭よ」

中から声がする、弱々しい声。

「やめ、やめてください御主人様っ……!」

ノックをして、入れと命令口調で言ってきた男の声。俺はドアに足をかけて、刀を抜いた。

「本気?」

「そういうレイナもナイフ投げる気満々じゃないか」

獣人ってことはアレスの信奉者だろう?それがアレスのファミリアを怖がる理由として考えが及んだのは2つ。

まず、アレス本人が行った戦場にいたこと。その時目の前でアレスに親兄弟を屠られたか。

次に、アレスのファミリアに捕まったか。こっちの可能性は高いよな?

そして最後の可能性。アレスとかそんなん関係なく、人間怖い。

ガアァンッ

ドアを蹴破って中に入ると、鞭で叩かれて服が裂けたさっきの少女。

「胸糞悪い会話をどーも?」

「ここがギルドじゃなければ殺してやるところなのに」

「なっ……!?」

中年太りのオッサンが立っていた。少女は這いずって壁際へと向かう。

「すんませんねえ、その子俺とぶつかってビビったみたいなんですよ。それとも、役に立たないんだったら俺が買いますよ、いくらぐらいにします? あんま俺も金無いですけどね」

自然と笑顔で言えた。たぶん、俺超怖いスマイルしてる自覚ある。

「ふん、銀貨3枚ぐらいの価値にはなるだろう。……だが、なぜここまで入って来た?」

「いや、その子が落とした書類持ってきただけなんで」

俺はさっさと銀貨を3枚渡して壁際に逃げていた獣人の少女に近付いた。その瞬間、少女の手が、獣化した。

「来にゃいでくださいにゃっ!!」

にゃんこだったようだ。フードが取れて、綺麗なダークブラウンの髪が見えた。耳が下向いて、猫が威嚇するときにするみたいになっていて、尻尾がボワボワと逆立って、髪の毛もちょっと逆立ってるかな。

「こんなに怯えて……」

「俺じゃなくてレイナに買ってもらえばよかったかな?」

「私だったら舐められて釣り上げられるに決まってるでしょ。胸糞悪いからさっさと出ましょ」

「そうだな」

俺はにゃんこ獣人に手を差し伸べた。にゃんこ獣人が猫パンチしてきた。爪を出せばいいのに出さない。それとも出せないのだろうか。

刀をしまってレイナに預ける。丸腰の状態で近付いていくと、今度はひたすら怯え始めた。

「来にゃいでぇ……」

「何もしないから。ちょっとだけ我慢、な」

俺はそっとにゃんこ獣人を抱きかかえて、部屋を出た。

「オッサン、書類はここに置いてるから。じゃあな、召使を鞭で叩いてないで仕事しろ」

ハデスとタナトス並みに仕事しろ。


外に出たとたん、にゃんこ獣人は暴れ始めた。俺はにゃんこ獣人を放す。

「!」

「もう捕まんなよ」

奴隷用らしき首輪がついているので首輪を破壊した。

「……逃がして、くれるの……?」

「そう言ってるだろ。さ、行け」

にゃんこ獣人は小さく礼をして、走り去っていった。

「いいの、あの子に銀貨3枚もかけたのに」

「いいさ、生きててくれりゃ。つーか、300円であの子買った気分だったわ」

「まあ、そうよね。いいわ、私にはできなかったことをしたんだもの、山分けってことで」

レイナはそう言って俺に銀貨1枚と銅貨を50枚、束にしているらしい、それをくれた。

「え、なんで」

「いいから受け取って」

レイナが俺の財布に押し込んだ銀貨と銅貨。

少しばかり胸がほっこりして、じゃあ、帰ろうか。帰りましょう。俺たちはパンテオンへの道を戻った。


この時俺はあることを失念していた。それにこの時点で気付いていたら、よかったのだろうけれど。まだこの時の俺は気付かないまま。


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