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なんとかなりますわ!


 


 とある国の貴族の家に、ティーナと言うご令嬢が暮らしていました。働き者のお父さまと、美しく優しいお母さまに、愛情たっぷりに育てられていたのです。


 しかし、ティーナが12歳になった年の冬、突然お母さまが病に倒れ、天に召されると、お母さまを深く愛していたお父さまは、ショックから仕事にのめり込み、ティーナと会うこともなくなってしました。


 翌年には再婚までしてしまい、13歳のティーナには、新しく、継母と継兄ができたのです。


 ふたりとも、最初はとても優しく、ティーナの事を可愛がってくれましたが、3ヶ月もすると、家の跡継ぎである継子邪魔になりました。すると、お父さまが家にいないことをいい事に、ティーナにメイドの仕事をさせ始め、ドレスではなく、メイド服を着せ、シンデレラ(灰かぶり)と呼び、きれいな部屋から追い出し、部屋を屋根裏部屋に移したのです。


 ティーナの味方をする使用人はすぐにクビにされ、2ヶ月でティーナの味方はいなくなりました。


 継母はそれだけではなく、ティーナのことを、お父さまに死んだと伝え、結婚すらさせようとはしなかったのです。


 ですが、ティーナはそれでへこたれるような娘ではありませんでした。


 お母さまにもしもの時にと仕込まれた家事能力を発揮し、アッと言う間に他のメイドからの尊敬を集め、メイド服を素敵なドレスにアレンジし、屋根裏部屋をも可愛らしいお姫様仕様の部屋へと生まれ変わらせたのです。


  全て、「なんとかなりますわ!」と言いながら…。


 嫌がらせが少しも通じないティーナへ、継母と継兄は苛立ちを募らせていました。すると、ちょうどそこへ、王宮から舞踏会への招待状が届きました。なぜかティーナの分もです。


 継兄は、ティーナにそれを見せつけ、嫌味を言いました。


「行きたいか?だが、お前の貧相なドレスでは、王宮になんて行くことはできないだろう!招待状はくれてやる。せいぜい指を咥えてみてやがれ!」


 ティーナは喜びました。ドレスなんて、自分で仕立てれば、いくらでも作ることができます。お針子を夢見ていた自分に、王宮で流行最先端のドレスを見る機会ができたからです。


 寝る間も惜しんで作られたドレスは、ティーナの美しさをさらに引き出すデザインで、その姿を見た男なら、軒並み惚れそうな完成度。


 しかし、ティーナは気づいてしまったのです。王宮へ行く手段がない事に…。


 「その悩み、解決します!」


 どこからともなくほうきに乗って現れたのは、魔女でした。魔女は、美味しいパイを食べさせてくれたら、王宮へ送ってくれると言ったので、ティーナはアップルパイを差し出しました。


 しっとり甘いアップルパイを魔女はとても気に入り、ドレスに似合う装飾品とともに、立派な馬車を用意してくれました。


「でも、気をつけて、12時になると、靴もネックレスも指輪も消えてしまうの。あ、馬車だけはプレゼントするわ!」


 魔女にお礼を言って、ティーナは王宮へ向かいました。実は、舞踏会は、王子さまの嫁探しも兼ねていたので、令嬢たちは、我先にと王子さまに群がっています。


 ティーナが大広間に着き、扉を開くと、そこはとても煌びやかな世界でした。沢山の流行のドレスに感動しているティーナに、周りの貴族たちも感動していました。なぜなら、ティーナが美しすぎるからです。


 そうこうしているうちに、12時が迫ってきました。王子さまは、令嬢たちの間にいて、ティーナに気づきません。ついでに言うと、継母たちも気づきませんでした。


 ティーナは満足し、家に帰ると、身の周りの道具を大きめのバッグに詰め込み、家を出ました。お針子として働くためです。






数年後、こんな噂が国中に広まりました。





「ティーナというとても美しい女性が営む仕立屋は、仕事が丁寧な上、どんな依頼にも答えてくれる、間違いなく国一番の仕立て屋である」




と。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 素敵なおとぎ話ですね♡ [一言] お姫様は、お友達の魔女がいて幸せだったと思います。 お友達って大事だなあ、と改めて感じました。 魔女も一緒に幸せになったところも読みたかったです♪ 可愛ら…
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