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第6話 パパとママみたいに…

 放課後がやってきた。待ちに待った放課後だ。

「凪、部室に寄っていくんでしょ?」

「うん」

「私もちょっとだけ、顔出してみようかな~~」

 え?


「めずらしい。本の整頓だけだよ?きっと面白くないよ?」

「でも、星の本って、面白いかもしれないし」

 ええ?

「前に千鶴、星座占いの本もあるかもって言ってたことあったよね?あれ、峰岸先輩に聞いたら、そういうのはないって言ってたよ」


「あ~~~、星占いじゃなくて、星の本。空君が興味持ってたじゃない?私も星の本って、もしかして面白いのかな~~って思っちゃって」

「空君って呼ぶようになったの?」

「あ、うん。だって、谷田部君だけ鉄ちゃんって呼ぶのも変かなって」

「ふうん」


「凪も鉄ちゃんって呼べば?」

「やだ」

「そんなに嫌い?」

「うん」

「凪、けっこう好き嫌いハッキリしてるんだね」


「あ、そ、そういうわけじゃないけど…。私が鉄ちゃんなんて呼んだら、向こうが嫌がりそうだから」

「なるほど、そうかもね」

 千鶴はそう言うと、なんだか嬉しそうに廊下を歩き出した。

 いったい、いきなりどうしちゃったのかな。


「こんにちは」

 千鶴は明るい声でそう言いながら、部室に入った。部室にはすでに空君も峰岸先輩もいた。

「あれ?小浜さん」

 峰岸先輩が相当驚いたのか、こっちを向いて目を丸くしている。


「あ、ちょっとだけなら、時間があるから寄ってみました」

「そうなんだ。ありがとう」

 ほら、峰岸先輩、顔を赤くして喜んじゃってる。わかりやすいよね。でも、千鶴にはわかっていないみたいだけど。


「この辺の本は、どこに置けばいいですか?」

 空君がダンボールの中を覗きながら、峰岸先輩に聞いた。

「ああ、それはあとでいいや。それより、本棚にある本を一回出して、順番に並べ直して欲しいんだ」

「はい」


 空君は言われた通り、本棚の本をとっては床に置きを繰り返した。

「手伝うね」

 私も隣で、本を取り出す作業をし始めた。


「空君、空君はどの本を借りていくの?」

 千鶴は、私と空君を見ながら、唐突にそう聞いた。

「え?」

「どんな本に興味があるの?」


「まだ、わかんないです。全部終わってから考えます」

 空君は淡々とそう答えると、また作業を始めた。

「そうなんだ~~~。私、どんな星の本がいいのかわからないから、空君に聞いてみたかったんだけどな」

「あれ?小浜さん、星の本、興味あるの?」

 峰岸先輩がまた目を丸くしてそう聞いた。

 

 そりゃそうだよね。去年1年間、星の本に興味も持たなきゃ、部室にもほとんど顔を出さなかった千鶴が、いきなりそんなことを言いだしたら驚くよね。私もびっくりだ。

「あ、なんだか、空君がやけに興味を持ったみたいだから、そんなに星って面白いのかなあって思って」

「……相川君が?」

 先輩が怪訝な顔をして、空君を見た。


 空君は今の話を聞いていたのか、いなかったのか、まったく無視して作業を黙々と進めている。私も、ほんのちょっと先輩と千鶴の顔を交互に見たけど、作業を再開した。


「じゃあ、私、やっぱり帰ろうかな。あんまり時間がないし、なんだか、いても邪魔かも知れないし。それじゃ、お先に!」

 千鶴はそう言うと、さっさと部室を出て行ってしまった。


「何しに来たのかな、千鶴」

 私がぼそっとそう言うと、峰岸先輩は私の方を見て、

「小浜さん、星、興味持ったのかなあ」

とつぶやいた。

 千鶴が星に興味を持ったら、先輩、嬉しいんだろうな。


「あ、この本」

 黙って作業をしていた空君が、突然手にした本を見てつぶやいた。

「何?」

 峰岸先輩が、その本の表紙を見ると、

「ああ、これね。相川君も興味持った?」

と空君に聞いた。


「星空や、オーロラの写真を集めた写真集。けっこう有名な写真家なんだよね」

「はい、知ってます。僕の父も好きなので」

「あ、そうなんだ!」


「この写真家、海の夕景の写真も撮りますよね」

「うん。その写真集はここにないけどね」

「うちには、そっちの写真集があります。それで、この写真家を知ったんです」

「そうか。相川君のお父さんは海が好きなんだね」


「はい。あ、僕の父は、サーファーなんです」

「君もしてるの?サーフィン」

「はい」

「それで日に焼けて、髪もちょっと焼けてるのか」

「はい」


 空君は「はい」としか言わなかったけど、ちょっと嬉しそうだ。

「その写真集いいよ、持って帰って家で見てくれても。お父さんにも見せてあげたら?」

「いいですか?」

「うん。いいよ」


「あ、ありがとうございます」

 空君は丁寧にお礼を言うと、また嬉しそうに口元をほころばせた。ああ、可愛い。こんな笑顔久しぶりに見た。

 こんな笑顔がこんな近くで見られるなんて、すっごく嬉しいかも!


 峰岸先輩もすっかり気をよくして、ご機嫌で作業を始めた。そして、1時間後、本棚の整頓が全部終わった。

「終わったね、お疲れ様。あ、なんか冷たいものでも買ってこようか」

「僕が行ってきます」

「そう?悪いね、相川君」


 空君が部室を出た。私は慌てて部費の小銭を持って、後を追った。

「空君、お金なら部費から出せるから」

 ポケットから小銭を出そうとしている空君にそう言うと、空君は私の方を見た。


「あ…」

「空君は何を飲むの?ポカリ?」

「うん」

「じゃあ、私もそうしよう。先輩は缶コーヒーの微糖」


「もしかして、部長っていつも微糖の缶コーヒー?」

「うん、そう」

「そっか」

 空君はぼそっとそう言うと、ガチャンと落ちてきたポカリを自販機から取り出した。


 そして、先輩の缶コーヒーも空君が持って、とぼとぼと二人でゆっくり廊下を歩きだした。

「峰岸部長って…」

「うん?」

「なんか、いい人だよね」


「うん」

「凪も、そう思う?」

「え?うん。優しいし、いい人だよね」

「……部長、凪のこと、わかってたよね」


「え?」

「性格とか、いろいろと」

「そ、そうかな。そんなに私、部活に熱心に出ていないし、そんなに先輩とも話をしたわけでもないんだけど」

「…でも、よくわかってるって感じだったよ」


「……」

 空君?なんでいきなり、そんなことを言いだしたのかな。

「凪って…」

「え?」


「……なんでもない」

「…?」

 なんだろう。何を聞きたかったのかな。なんだか、気になる。でも、聞けない。

 空君は私から視線を外し、歩く速度をほんのちょっと速めた。だから、もう話しかけづらくなった。


 部室に戻り、3人でなんとなく話をしながら、缶コーヒーとポカリを飲んだ。飲み終えると、

「じゃ、今日は本当にお疲れ様。今度は、ゴールデンウイーク中に一回、星の観察を夜にしようかなって思ってるんだ。また、ちゃんと決まったら、連絡するよ」

と峰岸先輩はそう言ってから、

「あ、でも、休み中だと、二人とも忙しいかな?」

と聞いてきた。


「いえ。特にたいした用事は…。朝だと父とサーフィンをするかもしれないですけど」

 空君は、淡々とそう答えた。

「そうか。じゃ、榎本さんは?」

「私も、特に何も」


「じゃあ、小浜さんと谷田部君の予定も聞いておいてもらえるかな」

 先輩にそう言われ、私たちは「はい」と頷いた。そして部室を後にした。空君は先輩から借りた写真集を、大事そうに脇に抱えて廊下を歩きだした。


「それ、良かったね」

「え?」

「好きな写真家の本なんでしょう?」

「俺がってわけじゃない。父さんが好きなんだ」


「じゃ、もしかして櫂さんのために借りたの?」

「うん。あ、でも、星空やオーロラの写真に興味があるかどうかはわかんないけど」

 そうなんだ。自分のためじゃなかったんだ。ああ、なんだかこういうところが昔から変わっていない。


 空君って、あんまり我が強くないっていうか、欲が薄いっていうか、自分の欲より、人のために動いちゃうところあったもんね。


「きっと櫂さん、喜ぶよ」

 私がそう言うと、空君はちらっとこっちを見て、すぐに視線を外し反対側を見た。

 う、なんで反対側に顔を向けちゃったのかな。私、変なこと言っちゃったかな。


 私と空君は、特に何を話すわけでもなく、それから二人で歩幅を合わせ、のんびりと駅に向かって歩いた。黙って二人で改札を抜け、黙って二人で電車に乗り込み、ドアの付近に二人で立った。


「ゴールデンウイーク、まりんぶるーは賑やかになるね」

 突然そう言うと、空君はちらっと私を見て、

「うん。そうだね」

と相槌を打った。


 空君はまりんぶるーに来るのかな。江ノ島から杏樹お姉ちゃんや(正確にはおばさんだけど)、杏樹お姉ちゃんの旦那さんのやすお兄ちゃんや、子供の舞花ちゃんも来る。


「舞花ちゃん、お正月に来た時より大きくなったかな」

「……」

 あれ?黙っちゃった。やっぱり、空君、来る気ないのかな。


 空君はそのあとも黙ってしまった。ああ、また沈黙だ。ううん。こんなにそばにいるんだから、今までに比べたら、すんごい進歩。奇跡的なことなんだけど。

 それに、空君は自転車に乗ってからも、黙ってはいるものの、私と速さを合わせて走ってくれた。

 こんなことも、今までなかった。後ろから追い抜かれることはあっても、一緒にこうやって走ってくれるなんて。


 これ、もしかして、ものすご~~い進歩じゃない?

 そして、私の家の前で私が自転車を止めると、

「また明日」

とぽつりと空君は言って、シャ~~~ッと軽やかに自転車を走らせ、行ってしまった。


 また明日って言ってくれた。嬉しすぎるかも。

 ああ!なんにも会話がなかった数年間。これは、もしかしてもしかすると、昔みたいに仲良くなれる兆しかも!


 私はドキドキしながら家の中に入って、喜びながら部屋に行った。そして、

「あ、しまった。私は空君に何も挨拶しなかった!」

とそこで気がついた。


 ああ!本当に私は、どこかいっつも抜けている。


 そして6時を過ぎると、部活から碧が帰ってきた。

「疲れた~~~。凪、いるの~~?」 

 碧のでかい声が1階から聞こえてきた。でも、そんなのも無視して部屋にいると、碧が2階にやってきた。


「凪?」

 ノックしてすぐにドアを開け、

「なんだよ、いるんじゃん」

と、碧は机に向かってぼけっとしていた私にそう言った。


「何してんの?」

「別に」

「風呂、先に入るけど、いい?」

「うん。いいよ」


「……なんかあったの?」

「え?べ、別に」

 空君と話せて嬉しくて、顔がにやけそうになっていたけど、必死に普通の顔を装った。

「ふ~~ん…」

 碧が私の顔を黙って見てから、

「落ち込んでる顔じゃないみたいだな」

とつぶやいて自分の部屋に行った。


 なんだ~~、あいつ。あ、まさか、また私がいじめとかにあってると思ったのかな。江ノ島でいじめにあって、私がへこんでいた時、碧、すごく心配していたもんなあ。

 そういえば、いつも生意気だけど、私が元気なさそうだと、「なんかあった?」って、必ず聞いてくる。そういうところは、前と変わっていないんだな…。


 それから1時間して、ママがまりんぶるーから帰ってきた。ママはランチの時間帯と、ディナーの支度を手伝っている。昼間より夜の方が、人があまり入らないので、支度だけを手伝って家に帰ってくるんだけど、それから夕飯の準備なので、我が家は夕飯が8時過ぎになる。でも、ちょうどパパが水族館から帰る時間と重なるので、毎日家族4人で夕飯を食べることができる。


「ママ、手伝うね」

 私は宿題が大変な時や、試験前は夕飯の手伝いをしないけれど、あとは暇をしているので、ママの手伝いをする。本当なら、家族全員の夕飯を私が作ってもいいんだけど、どうもお料理は得意じゃない。

 ママとパパは、とっても上手なんだけどなあ。


「あのね、ママ」

「なあに?」

「空君、天文学部に入ったって言ったでしょ?」

「うん」


「今日も部室の本の整頓を手伝いに来て、帰りも一緒だったんだ」

「空君と?」

「うん。空君と普通に話せたの」

「そう!よかったね、凪」


 ママが嬉しそうに私を見た。

「う、うん。空君、口数少ないから、たまに沈黙になっちゃうんだけど、でも、すぐ隣にいるのが嬉しかったんだ」

「良かったね、凪」

「うん」


 それからも、空君が櫂さんの好きな写真家の本を、嬉しそうに持ち帰ったことや、今度の星の観察には空君も行くかもしれないって話をママにした。ママは、うんうんって、ニコニコしながら聞いてくれた。


「また、空君と昔みたいに、仲良くなれるかな」

 私がそう言うと、ママは、

「なれると思うよ?」

と優しい声でそう言ってくれた。


「そうなったら、すごく嬉しいな…。でも、まだちょっと、怖いな」

「嫌われたり、無視されるのが?」

「…うん。だから、話す時も、ドキドキしちゃって」

「わかる!わかるよ、凪!!!」


 ママが持っていた包丁を離し、私の手を両手で握り締め、

「こんなこと言って嫌われないかな、とか、呆れないかな、とか、いろいろと考えちゃって怖いよね。それに、ドキドキしちゃうよね!」

と力を込めて言ってきた。


「それ、ママがパパと出会った頃の話?」

「そう!ママもいっつも怖くってドキドキしながら話してた。ううん。最初は話しかけることもできなくって」

「遠くから見ていただけ?」

「そう!パパは最初、菜摘のことが好きだったって話したことあるよね?」

「うん」


「菜摘にはすごく素敵な笑顔を向けて、私には笑顔を向けてくれなかったから、悲しいっていうか、切ないっていうか…。遠くからその笑顔を見られるだけでもいいって思いながらも、やっぱり自分にも笑顔を向けて欲しかったんだよね」

「そ、それで、ママはどうしたの?」


「う…。なんか、いっつもくら~~く落ち込んで家に帰ってた…気がする」

「そっか。やっぱり私ってママに性格も似てるんだね」

「凪も、話せないで落ち込んで、暗くなってたりしたもんね」

「うん」

 ママには、空君に無視されて悲しがっていたこととか、全部話してあるからなあ。


「でも、大丈夫だよ。部も同じになって、きっとこれからもっともっと、空君と話したりするようになるよ」

「そ、そうだよね?」

「うん!大丈夫!」

 ママはにっこりと笑ってくれた。私も一緒に微笑んでいた。


 ママはいつも、私の言うことに、「わかる!」と言ってくれる。そして、最後には優しく微笑んで、元気づけてくれる。親子っていうよりも、友達みたいで、私はママのことが大好きだ。きっと、ずうっとこんな関係が続くんだろうな。


 そして、パパも大好き。


「ただいま~~~~!」

 パパが帰ってきた。

「あ、帰ってきた!」

 毎回、毎回、ママはパパが帰ってくると、喜んで玄関に迎えに飛んでいく。


「おかえりなさ~~~い」

「ただいま、桃子ちゃん!」

 そして、玄関でハグをする。そこに邪魔をしに行く勇気はない。だから、リビングにパパが来るまで、私は静かに待っている。


「ただいま、な~~ぎ」

 パパがリビングにやってくると、

「おかえりなさい、パパ!」

と、私もパパにハグをする。これ、千鶴に言ったら驚かれた。でも、凪のパパだったら、私も毎回抱きつくかもって言って羨ましがっていた。


「おかえり~~~~」

 碧が2階からおりてきた。

「ただいま~~!碧」

 パパが碧の髪をくしゃくしゃってすると、

「それ、やめてくれる?」

と碧は嫌がった。でも、本当はパパにそんなことをしてもらえるのが、碧は嬉しいんだ。だって、いっつも「やめてくれる?」と言ったあと、口元が緩んでいる。


「今日は夕飯なあに?桃子ちゃん」

「今日は中華。酢豚と、野菜炒めと、卵スープと…」

「うわ!酢豚食いたいって思ってた!以心伝心だ!」

 パパがめちゃくちゃ喜んでいる。


「本当?」

「うん!手、洗ってくるから、すぐにご飯にしようね?」

「うん!あ、凪も碧も、手伝って!」

 ママは顔を赤らめて嬉しそうにそう言った。ああ、パパに喜んでもらって、嬉しいんだなあ。


「うまい!」

「うめ~~!」

 碧とパパがほとんど同時に、酢豚を口にいれ、目を細めてそう言った。


「桃子ちゃんが作る酢豚、最高」

 ああ、ベタ褒め…。

「母さんが作る野菜炒めも、うまいよね、父さん」

 碧も、ママ大好きっ子だからなあ。


「凪も手伝ってくれたんだよ」

「凪も?」

「でも、私、なかなかお料理上手になれないよ…」

 そう言うと、パパはにこ~~っと笑って、

「大丈夫!」

と励ましてくれた。


「凪は母さんより、ぶきっちょだからな~~。うまくなるまで、時間がかかるんじゃないの?」

 碧がそんな生意気なことを言った。

「え~~!凪の方がずっと私より、器用だと思うけどなあ」

 ママが碧にそう言った。


「得意分野がちょっと違うだけだよ。凪はきっと、時間をかけてお料理を覚えていくタイプかもよ?でも、桃子ちゃんがてんでダメだった、ゲームとか、運動とかは得意だもんね?」

「ひ、聖君、ひどいよ。てんでダメだったって…」


「あはは。ごめんごめん。桃子ちゃん、運動神経鈍いと思ってたけど、俺と一緒にダイビングできるようになったし、運転だって上手だし…。たまにスピード出しすぎそうになるけど、それだけは注意して欲しいけど」

「き、気をつけてるもん」


「桃子ちゃん、運転すると人変わるからなあ。男っぽくなっちゃうから。って、本来は桃子ちゃん、強いもんなあ。運転すると本当の桃子ちゃんが現れるのかもね」

「も、もう~~。聖君、その強いっていうのは言わないで」

「え~~、いいじゃん!」


 ああ、また始まった。二人だけの会話。二人だけの世界。こんな時、私と碧は、黙々とご飯を食べ、ダイニングから離れてリビングに移動する。


「ああ、毎回のことだけど、聞いてらんない」

 私がぼそっと絨毯に座りそう言うと、隣にゴロンと寝転がった碧も、

「もう、勝手にしてくれって感じだよなあ」

と呟いた。


「あはは!桃子ちゃん、真っ赤だ~~」

「もう~~、聖君、からかわないでよ~~~!」

 まだやってる。ほんと、碧じゃないけど、勝手にしてくれ。

 でも、やっぱり羨ましいな。私も、絶対に、パパとママみたいな仲のいい夫婦になるんだ。


 なんて決意をしながら、頭に浮かんだのは空君の顔…。

 はあ。でも、空君と思いが通じ合うなんて、夢のまた夢だよねえ…。




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