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あとがき

■はじめて感じた性への目覚め


私の通っていた幼稚園は教育熱心なうえに規律が厳しくて、よくおもらしする子がいました。中には前を平然と押さえて、漏らしてしまう子もいたりしました。


特に異性である男の子がおもらしする様子には、いつも私はドキッとさせられていました。その後、私は、その子のことが急に気になりだしたり、特別な気持ちを持ったりしました。


幼稚園は生まれて初めて共同生活を経験する場所です。普通に過ごしているだけでも男の子という性への憧れが芽生えるのに、その子たちが服を着たまま、してはいけないことをして、恥ずかしい部分を濡らしたり、汚したりしてしまうことにのを目のあたりにして、きっと人生で初めてエロティシズムに目覚めたのかもしれません。


■セックスアピールへの憧れ


幼稚園では「おもらし」は日常的に起こる出来事でしたが、おもらしした子やそれを目のあたりにした子たちにしてみれば、それは大きな「事件」でした。


私の通っていた幼稚園では、おもらしした子は男女を問わず、教室の片隅など、見ようと思えば見えるところで先生に濡れた服やパンツを脱がされて、タオルで拭かれたあと、服が乾くまでその日一日ブルマーのような形をした毛糸のパンツを穿かされていました。それは誰が見ても一目でおもらししたと分かるものした。


子供とはいえ、服を脱がされ、ブルマーを穿かされるというのは、それなりに恥ずかしそうでしたし、気の毒でした。でも、私はそういう子のことを可哀想に思いながら、心のどこかで、自分もそうされることに憧れていました。


漏らした子たちは男の子も女の子も、園服の裾からブルマーに包まれた可愛いおしりを見せながら、楽器の時間も、外でのお遊戯の時間も、堂々と立ち居振る舞いをしていたのです。まるで漏らしたことを見せつけるかのような振る舞いに、私はいっそうドキッとさせられました。そして、おもらしという恥ずかしいことをしてしまったのと引き換えに、他の人をそれだけ「衝撃的に」魅了できることが、羨ましく思えたのです。


■仕舞われた刺激的な記憶


それでも私にとって、おもらしという行為はわざとしようと思っても決してできないことでした。でも、条件さえ重なればいつ誰を襲うか分からない、自分ももしかしたらいつか漏らしちゃうかも・・・、そう思ったのも確かでした。そして、それはある日突然やって来ました。トイレに入ったとき、その日は上着の下にロンパースを穿いてしまっていて、そのままでは脱ぐことができないことが分かり、パニックになってトイレから出てきてしまったのです。そして次の時間、先生の話の途中で我慢できなくなり、先生を見つめながら椅子に座ったままおしっこをしてしまいました。


でも不思議なことに、その先のことは全く覚えていないのです。きっと他の人と同じように、教室で先生に服を脱がされ、タオルで拭かれ、ブルマーに似た毛糸のパンツを穿かされたに違いないのに、他人のことはよく覚えていても自分がおもらししたときのことは全く記憶していないのです。


きっとあまりに恥ずかしくて刺激の強い記憶は、幼い子の心から表面的には消え去るように出来ているのかもしれません。


でも、それは心の奥に仕舞い込まれていただけで、私が少し大きくなってからおもらししたときに、それが思い返されることがありました。おしっこへ行けないパニック、限界を迎えて漏らす切ない瞬間、温かくなるパンツ、脱がされていく恥ずかしさ、そういう場面場面で、心では忘れていても身体が覚えていたのです。


また、体育の授業でブルマーを穿いたときなどにも、毛糸のパンツを穿かせてもらったときの情景が浮かぶことがありました。そして、そのときは恥ずかしさで真っ白だったはずなのに、思い出される感触は、なぜか優しくて、気持ちいいものでした。自分が不安や緊張から解き放たれて守ってもらえている感じや、それでいて恥ずかしい失敗をして注目されている感じなど、よく分からないけれど不思議な感じがしたことをずっと覚えていました。


■してしまったあとの「世界」


大人になって彼と旅行に行ったとき、「暖かな季節」のように、ふとしたきっかけで、彼の前でおもらししてしまったことがあります。高まる尿意に耐えられない、ぎりぎりの状況での選択でした。心をよぎったほんの少しの勇気と引き換えに、やがて目から火が出るような恥ずかしさと、大変なことをしてしまった感覚に包まれました。


でも、あふれていく温かさとともに、まるで生まれ変わったかのような気持ちを感じました。びしょ濡れの服とショーツを脱がされ、タオル越しに彼の手に包みこまれる優しさを感じながら、ほんの少しの勇気をだして、してしまったあとの世界はまるで別世界でした。


幼稚園の頃の純粋な気持ちに戻ったような、それでいて信じられない、大変なことをしてしまったのに、彼に自分の魅力をアピールできたという、胸のすくような高揚感があったのです。


彼には切迫した状況で、ほんとうは我慢もできたのに漏らしてしまった理由と、その気持ちを話しました。そして彼もそのことを受け止めてくれました。でも、到底言葉では表せない思いが、彼の前での恥ずかしい「おもらし」を通して伝えることができたのです。それは彼への甘えや依存心、彼に包まれたい気持ちや、淋しく不安な気持ち、あるいは幼い自分、か弱い自分、可愛らしい自分への憧憬、郷愁などが織りなす複雑な気持ちでした。


彼の前でおもらししたことは、今でも恥ずかしいけれど素敵な思い出です。それは、突然の「おもらし」という出来事が、私と彼の心の扉を「衝撃的に」開けて、恥ずかしさと引き換えに、彼と特別な絆で結ばれる素敵な予感を感じさせてくれたからなのかもしれません。


そんな気持ちを表現したくて、書いてみました。

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