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エピローグ~恋のプロローグ

「光輝くん・・・ごめんね、急に・・・漏らしちゃって」


柔らかな木漏れ日の差す芝生の上に立ち、光輝が栞の前にしゃがんで、栞の濡れたサブリナパンツを脱がせていた。近くの地面には、細身の栞がつくったとは思えない、大きな水しぶきのあとが、まだ消えずに残っている。


「うぅん、気にしないで。栞、いっぱいおしっこ、我慢してたんだね」



心をよぎったほんの少しの甘えと引き換えに包まれたのは、目から火が出るような、大変なことをしてしまった感覚。でも、同時に感じたのは、まるで生まれ変わったかのような気持ち・・・


幼稚園のときに感じた気持ちが甦ってきて、栞はうれしくなった。



光輝は続けた。


「・・・でも、栞、あのときびっくりして漏らしちゃったって思ってたけど、そうじゃなかったんだね?」


光輝の不意の質問に、栞は戸惑い、そして急に恥ずかしくなった。自分がおもらししたのが光輝のせいじゃなかったことを、彼に悟られてしまったからだった。栞は思わず、はぐらかすように光輝に言った。


「あのとき、先生の前で、光輝くんを泣かせちゃって、ごめんなさい。私のせいで」


恥ずかしさに気持ちが高ぶった栞は、そう謝ったものの、光輝には強がりに聞こえてしまったようだった。


「おしっこ漏らしちゃった子が何言ってるの? 十分恥ずかしい思いをしたのは、栞のほうじゃない?」


「・・・うん」


「でもよかった、栞がずっと傷ついているんじゃないかって思ってたから・・・、やっと安心した」


光輝の言葉に、栞ははにかんで微笑んだ。


ぐっしょりと両脚に張りついた薄手のサブリナパンツが、まるで剥がされるようにして脱がされるにつれ、自分の濡れたショーツや太ももが風ですうっと冷たくなり、それが光輝の目の前に露わになっていった・・・。


栞は、自分がおしっこを漏らした事実をあらためて実感したかのように、恐る恐る光輝に訊いた。


「きょう、私がおもらししちゃって、びっくりしたでしょ?」


「うん・・・でも、本当言うと、あのときの栞の姿、素敵だった。ずっと目に焼き付いていて、僕はいつの間にか栞を好きになってた。だから、今日の栞を見て・・・うれしかった」


光輝はそう言うと栞を見上げ、優しく微笑んだ。栞は、自分の気持ちを伝えようとしたが、言葉にならなかった。すると光輝は、おしりの上のほうまでぐっしょりと濡れた栞のショーツに手を触れながら、言った。


「何も言わなくていいよ。これが栞の気持ち。それが分かったから、僕がぜんぶ受け止めてあげる。いい?」


そう言われるなり、たっぷり水を含んだ栞の白いショーツが彼の手に掛かり、そして脱がされていった。


おしりに張りついていた冷たさがすっと抜けて、裸になった下半身はまだ濡れたまま、彼の視線にさらされている。それは、セックスのときに服を脱がされるよりも、ずっとずっと恥ずかしかった。


でも光輝は言った。


「あのときは、栞のそばにいてあげられなくて、ごめんね。でも、今日はずっと、そばにいてあげる。やっと栞のお世話ができたね」


もし、今日おもらししなければ、きっとこんな言葉を掛けられることはなかっただろう。栞は、恥ずかしさに取り乱すこともなく、静かな気持ちで彼の言葉を聴くことができた。


身体の濡れた部分に、光輝の持つ乾いたタオルハンカチがしっかりとあてがわれた。そして、ポーチから取り出した毛糸のパンツを穿かせてもらうと、栞の冷たくなっていたおしりが彼の優しい手に包まれてふたたび温かくなった。


《これが、ずっと今まで抱き続けて、自分でも気づかなかった、私の気持ち・・・》


傍らに置かれた、ぐっしょり濡れたサブリナパンツとショーツを見て、栞は思った。


信じられない、大変なことをしてしまったはずなのに、栞の気持ちは思いのほか爽やかだった。


それはまるで、今朝、朝日がつくる透きとおった陰の中で栞が感じた、胸のすくようなときめきに似ていた。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「あのときは遠くから見ていただけだけど、すごく素敵だね、その毛糸のパンツ」


光輝が、自分のことをずっと見てくれていた。そして、ブラウスの裾から見え隠れするブルマーのような毛糸のパンツが、彼の視線を引き続けていた。


《このままずっと、このまま外を歩きたい。コテージに着かなければいいのに・・・》


彼の前に駆け出し、いたずらに、木の葉を背伸びして採るような仕草をしながら、栞は祈った。


(終わり)

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