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王妃の資格  作者: 行見 八雲
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・王妃(未)の歌



 咲良の周囲の人達は、咲良の歌が大好きだ。



 白い雲がぽこぽこと浮かんだ、真っ青な空と、眩い日差しが降り注ぐ、この日。


 咲良は、王宮の裏庭の一角、王にもらった小さな土地で、趣味の庭いじりに精を出していた。


 木の柵で囲まれたそこに植えられているのは、色とりどりの野菜達だ。青々と色づいた葉と、水滴の輝く野菜の出来栄えは、もはや庭いじりというよりは、立派な家庭菜園である。

 しかも、これらの野菜は、この国で一般的なものではなく、咲良がクロラムフェニルヴァイトに教えてもらったり、モクレンに見つけてきてもらった、地球のものに良く似た野菜達だ。トマトに似た紫色のもの、キュウリに似た黄色のもの、じゃがいもに似た赤いもの、など等、色はバラバラだが味は比較的地球のものに近かった。そこで、懐かしがった咲良が、自分で育てると言い出したのだ。


「~~~♪ ヘイッ♪」


 一人で作業をしているとき、咲良はつい地球の歌を口ずさんでいたりする。


 この世界では、音楽は楽器で奏でるものであり、その曲に合わせて歌うという文化は無かった。だから、歌というものは存在していなかったのだ。

 そのため、この世界で歌を歌うことができるのは、咲良だけだったりする。もちろん、咲良が歌を教えれば、他の者も歌えるようにはなるのだが。


 咲良の歌う歌は、日本語、時には英語で歌われているため、咲良以外には歌詞は分からない。しかし、その歌の曲調からどのような感じの歌なのかは、大体分かった。


 そして、咲良はその時の気分で、POPだったり、アニソンだったり、学校で習った合唱曲だったり、童謡だったりと、様々な歌を歌っている。

 時にテンションが上がりすぎて、調子っぱずれになったり、音程がおかしかったりすることもあるのだが、それも聞いている者達にとっては楽しくて仕方がないのだ。


 しかし、咲良は人がいると恥ずかしがって歌ってくれないため、咲良の周囲の者達は、咲良に気付かれないよう、身を隠してこっそりと聞いている。


 なので、咲良は知らない。


 すぐ傍にある樹の幹の向こう側に、サフィールがいることも、樹の枝の上でクロラムフェニルヴァイトが昼寝をしていることも。

 そして、裏庭に面した建物の二階の、咲良の畑をちょうど見渡せる部屋が、いつの間にか王の第二執務室になっていることも。



 この大国を収める王は、窓の外から聞こえてくる咲良の元気な歌声に、耳を楽しませながら、政務の書類に目を通していた。

 今日はテンポのいい歌を歌っているらしく、窓から見える咲良は、頭を揺らしながらノリノリだ。

 その様子に、目を細めて愛おしそうに微笑んで、王はまた書類へと目線を戻した。


 そんな時。


「我が君。あと一時間ほどで、ハルラーサ夫人のマナーの授業です」


「あ! そうだった!」


 突然現れたモクレンの言葉に、咲良はぱっと顔を上げた。


「そろそろ支度をなさいませんと、また怒られてしまいますよ」


 柔らかく促すモクレンに、咲良は「分かったわ……」と肩を落としながら、しゃがんでいた体を起こした。


 それから、よっぽどマナーの授業が嫌いなのか、足を引きずるように歩きながら、咲良は一人呟くように暗い歌を歌いだした。


 そんな彼女に、「分かりやすい」と、モクレンが口元を抑えて微笑んだのも、サフィールが呼気を漏らしたのも、クロラムフェニルヴァイトが目を閉じたまま口角を上げたのも、王が誰も見たことのないような柔らかい笑みを浮かべたのも、咲良は知らない。



 ほのぼのな日常風景も好きなので書いてみましたが、読まれている方には、期待外れでしたら申し訳ありませんm(__;)m


 こんな感じで、短編形式で色々と書いてみたいと思います。

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