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自分  作者: 沙希 涼青
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自分


 アルコールが、また俺の脳みそのハンドルを握り始める。ハンドルを握るといっても、世にいうアル中の様なものではない。頭にかかったモヤが晴れていくような感じだ。社会に放り出されてもう三年目。俺の脳みそにはモヤのようなものがかかり続けていて、見えていたものも見えなくなっているみたいだった。でもそれも、夜になった時、夜になって酒を飲んだ時だけ嘘みたいに消えていく。

 嫌なものは嫌で、好きなものは好き。好きな人は大好きで、嫌いな奴らは殺したい。労働に忠誠を誓っているような人たちとは全く仲良くできなくて、ただ会いたいから会う人たちとはまだもう少し一緒にいたいと思う。

 俺は、ずっと俺でいたかった。仲間たちとただふざけて遊んで、hiphopを聴いて、小説を読めていればよかった。ただの気まぐれで人やガキに優しくして、それに見返りは求めない。ただしたいからしてるだけ。地位も名誉もいらない。ただそれだけでよかったのに。

 俺は、今俺でいれていない。善意が強制されたサービス残業に仲間たちの時間を奪われて、鏡に映った顔は死にそうな顔をしている。休日に時給四百八十円の小銭みたいな賃金の労働に責任感なんて求められて、アホくさいのに、どこだか俺もそれを当然のことのように思い始めてる。fuck the 公務員。

 俺が俺でいなくなることが一番怖かった。金も地位も仕事もなかった二十二の頃、俺は、一番満たされてた。明日食う飯もあるか分からないのに、満たされてた。昔からの大事な人たちが一緒にいてくれて、今日の自分をより良くするために勉強をして、身体を鍛えて、感謝を忘れずに眠りにつけた。

 今の俺とは真逆だな。

 金も仕事もあるのに、今の心はひび割れて今にも壊れそうだ。一瞬でも気を抜いたら粉々になりそうなそれを、無理矢理繋ぎ止めてる。

 今は、その日食べたいものを食べられて、病気になったら病院にもいける。読みたい本だって新冊で読めちゃうし、そんなに高すぎない欲しいものならいつだって買えるし、コンビニで買い食いも、発泡酒じゃなくて生ビールを買うのだって余裕。

 土日をほとんどサビ残の仕事で当たり前のように潰されて仲間と会える時間がどんとんとなくなっていくのも、帰ってきても何も食べる気がしないのも、身体の不調があっても病院に行く気力がないのも、読みたくても本を開くことができないのも、もう何も欲しくないのも、発泡酒と生ビールの違いももうどうでもいいのも、全部普通。

 顔が笑ってても目が笑ってない。

 Jin doggのfuck loveのワンバースが脳みそをよぎる。

 俺なんで労働なんてしてんだっけ?

 本当に大事だと思ってたもの手放して、俺は一体、今何してるんだ?

 キモい社会に毒されつつある脳みそでこの文章を綴っています。

 俺が俺でいなくなり始めた時、ここに戻ってくることを祈って。

 Help myself, yourself. fucu the society.

 

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