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『日本改造計画』外伝:その伍<『多夫多妻』ドラマ(3)二十年後_三十年後>

 あれから二十年後……舞奈は44歳になっていた。

 子供達の年齢と食事は、以下の通り。

 美奈(第一子、19歳)には。ご飯、コロッケ、インスタントのみそ汁。

 桜(第二子、17歳)には、ご飯、焼き鮭、インスタントのみそ汁。

 時雄(第三子、15歳)には、ご飯、生卵。

「自分で使った食器くらい自分で片づけなさいね。」

 そう言って、自分で食したハンバーガーとポテトと飲み物の容器を捨てた舞奈。

 そのまま自室へ戻る後姿は、年相応の肥満体であった。

「よしっ。お母さん部屋に戻った。」

 妹の言葉をBGMに、ご飯にみそ汁をかけると、流し込む美奈だった。

「じゃ、あたしバイト行ってくるから、あたしの分いらないわ。」

 すると、収納スペースなどのスキマに隠しておいた野菜類を取り出す時雄。

 そして、包丁やまな板などにヤカンで沸かした湯をかけてから野菜を料理した時雄。

「お姉ちゃん、いつものレストランだね。あそこのマカナイ料理美味しいの。」

「まあね。あたしの父親、去年から養育費打ち切ったからご飯ショボイし。」

「あぁーーあ、あたしもバイト探そうかな。魚飽きたし。」

「いってきます。」

「いってらっしゃい。」

「行ってらっしゃい。」

 そして、さっさと外出する美奈。

 残された二人は、姉の残り物と時雄が調理した野菜とご飯とみそ汁で食事を済ます。

「あたし、魚要らない。食べていいよ。」

 そう言いおいて、自室に戻る桜。残り物で食事を済ませ、洗い物もした時雄。

 自室では、スマホで調べた受験予定の高校入試過去問題を中心に勉強している。

 数年前までは、姉達のお下がりの問題集や参考書で勉強していた時雄だった。

 何としても全寮制の学校に入りたかった時雄だった。


 * * * 


 あれから二十年後……忠大44歳、那奈40歳。

 子供の年齢は、以下の通りである。

 勇希(第一子、23歳)同居(社会人一年生)

 幸子(第二子、15歳)別居

 憲希(第三子、14歳)別居(野球部所属学生寮で生活)

「アナタ、大切ナはなしがアリマス。」

「どうしたんだい。那奈。」

「ワタシいろいろモライました。ワタシ何才ノとき、日本に来たのかオモイ出せません。

 コキョウも、オヤのコトもオモイ出せません。でも。アナタに出会えました。

 アナタが。ケッコンしてくれました。アナタの子供ウメました。

 アナタのオバア様、オトウ様、オカア様が、ワタシの帰化をみとめてくれました。

 おカゲで、ベーシックインカムも手に入りました。全てアナタのおカゲです。

 ケド、ワタシもう子供ウメません。」

「どうしたんだい。そんなに辛いなら明日にしようか。那奈。」

 むせび泣く那奈を気遣う忠大だった。

「ダイジョウブ……大丈夫デス。ダカラ、アタラしいオクサンもらって下さい。」

「何を言うんだ。お前が、いなければ今の俺だってない。俺こそありがとうだよ。那奈。」

「デスガ、アナタは、スグレたオス。もう一人オクサンもらって子供作るベキです。」

「分かった。そこまで言うなら、次の妻を娶る。だが、君の仕事が無くなった訳じゃない。

 次の妻の教育、父さんの介護、母さんだっていずれ介護の必要が来るだろう。

 一生、俺の事を支えて欲しい。いや、君にしかできないんだ。頼む、俺の妻でいてくれ。」

「分かりました。これからも幾久しくおネガいします。アナタ。」


 * * * 


 あれから三十年後……時雄は25歳になっていた。

端練宝一はたね・たかかずさんですね。称行時雄あげゆき・ときおです。」

「ああ……初めまして……だね。時雄君。」

「色々話すべきこともあります。何しろ25年分ですから。ですが、まず一つ。

 『何故、貴方は、自分の子供の養育費に、月1万円だったのか。』ですね。」

「それは、一つに集約される。何しろ私には、借金があった。金額は『約400百万円』。

 つい先日完済できたが、月1万円ですら、絞りつくした結果だった。」

「『400百万円』? では、二つ目ですが、使用用途はなんでしょう。」

「全て私の子供、君の為さ。詳細を語ると、半分は『デート資金』。

 もう半分は、君の高校進学と大学進学に、それぞれ100万円ずつだった。」

「『デート資金』に200万円? そんなにかかるものですか。」

「最初は、予算1万円だった。が、1回のデートで、着信拒否ブロックされた。

 そこで、予算を5万円にした。が、デート回数が、2回に増えただけで結果は同じ。

 そこで、10万円にした所、デート回数が、3回に増えただけで結果は同じ。

 そんな事が、3人立て続けにあった。そんな時に、君の母親に出会った。

 彼女が要求する通りデートコースを設定した所、1回50万円。2回で行為に至った。

 結果、君が生まれた。ちなみに10万円にして以降、借金せざるを得なかった訳さ。」

「貴方のご両親は、何もしてくれなかったのですか。」

「私が、3歳の時、両親は死亡した。」

「……失礼しました。それなら生命保険があったはず。」

「知らない。そもそも3歳児に、そんな事知る由も無かった。」

「では、貴方は、両親死亡以降誰に養育されたのです。」

 児童養護施設だと知らされると、その住所と電話番号をメモした紙を受け取った時雄。

「ありがとうございます。そう言えば、借金は完済したと言いましたね。」

「そうだ。君の母親が、裁判で勝ち取った権利は、借金は完済まで面会禁止だった。」


 * * * 


「分かりました。」

 後日、再度面会する時雄と宝一だった。

「これは、『詐欺事件』ですね。」

「詐欺? それは、児童養護施設の園長先生が何かした訳かい。」

「ええ。貴方のご両親は、生命保険5千万円をかけていました。しかも事故死でした。

 よって、保険会社から支払われた事も確認済みです。が、その支払い相手が問題です。」

「へぇ。随分勿体付けるね。きちんと説明してくれるのでしょう。」

「はい。児童養護施設は、貴方の親類縁者全員を回って『親権即時無償譲渡同意書』に、

 署名させました。これにより、自分を唯一の『親権保持者』にして受け取ったのです。

 例の生命保険5千万円を。本来、貴方の養育費以外の用途で使ってはならないお金です。

 デート資金も然りです。ですから『詐欺事件』と言いました。」

「成程、そう言えば、私は未だに親類縁者の事を何も知らない。

 園長先生も、『知らぬ存ぜぬ』で、何も教えてくれなかった。でも今更だろう。」

「残念ながら、園長先生は、既に死去。児童養護施設も閉鎖されていました。

 園長先生が、幾ら『横領』したのか、全く不明どころか調べようもありません。

 が、現在は『相続禁止』である以上、責任は国に移っています。

 よって、国を相手取って裁判を起こす事が、可能です。」

「そうかい。でも、弁護士費用なんて払えないな。諦めるしかないだろう。」

「大丈夫ですよ。僕、弁護士です。僕が引き受けますよ。お金は要りません。」


 * * * 


 判決、被告(日本帝国政府)は、原告(端練宝一)に、成人までの養育費を支払う事。

 金額は、月5万円×18年間で、1080万円とする。

「よかった。こちらの主張が、全面的に認められました。上告も無いそうです。」

「要らないよ。こんなお金。もらっても使い道がない。」

「ですが、貴方のご両親が、残したお金ですよ。」

「なら、君の弁護士費用で、支払うよ。法廷初勝利おめでとう。時雄。」

「ありがとうございます。……………………お父さん。」


<END>


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