3-1:人生は糾える縄なんですね。
禍福は糾える縄の如し
禍福ってのは糾える縄のように災禍と幸福が裏表でお互いに絡み合って出来ていると言うことわざだ…偉い人が残した言葉というのはなるほどと納得させられることが度々だ。
おぉ神よ、人生は糾える縄なんですね。
「結婚しようデレク…」
家の天使と共にこの魔王まで召喚されてしまった。
「いや無理です…頼みますからどうかお引き取りください。」
死んだ魚の目をしたデレクこんな彼の塩対応ですら愛おしそうに見つめる男。
デレクは頭を抱えこれでもかと溜息を吐きまくった。
「は゛ァ゛ぁ~~…」
♢
リアンを探し回るデレク。
彼の脚は長時間探し回った事による疲労でふらつき盛大に転けてしまったのだ、足首はぐねり酷く腫れた、更には体力は底を尽き、地面に着いた体が持ち上がらなくなっていた。
情けない…動け!!…動いてくれよ…何が父親だ。
自分の子どもさえ守れないなんて父親失格だ、俺一人で絶対にあの子を守ると決めたのに。
このままあの子が帰って来なかったら俺は…俺は。
「大丈夫か。」
下を向き歯を食いしばるデレクに男が声をかけた。
黒い仮面にローブをまとった男は、足をくじいたデレクに膝を着き手を差し伸べた、デレクはなんだかその男に懐かしいようななんとも言えない既視感を覚えていた。
「すみません息子が…息子が迷子なんです…なのに足がその…立ち上がるのに肩お借りしてもいいですか…すみませっ…」
心を焦らせ早口になり、手を差し伸べる男に神仏の石像でも拝んでいるのかと言うほど深々と頭を下げた。
とその時、聞き馴染みのある可愛らしい声がデレクの耳に入った。
「父さん!!…ごめんなさい、約束破って本当にごめんなさい…僕のせいで父さん足を痛めたの…ごめんなさい、ごめんなさい…」
「リアンっ…!!!、良かった、無事だったんだね良かった、良かった!!!」
おいおいと泣くリアンをこれが火事場の馬鹿力なのだろうか?デレクはスっと立ち上がりリアンの元へ駆け寄ると力強くめいいっぱい抱きしめた。
「全く…ダメだろ何も言わずにどこかに行ったら、一人で泣いていないか心配で心配で父さん死んじゃうところだったん…だか……ら…」
限界が近いのだろう、強く抱き締めた腕は力を無くし、言いかけた言葉も中断してしまった。
「父さん…?大丈夫ッ」
ーバタッー
デレクは後ろの方へ倒れ込みそのまま床に落ちるかと思われたが手を差し伸べた黒仮面の男が自分の体の方へと抱き寄せクッションになるように支えた。
「…デレク…やっと見つけた。」
そうするとデレク横抱きして、少しでも息がしやすいように仮面をずらしてやった。
「家に案内してくれ…どうにかする大丈夫だ泣くな。」
リアンに不器用ながら優しい声をかけるとハッとしたように泣きやみ、コクンと首を縦に振った。