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僕は父さんとの約束を破ってしまった。だからこれはきっと因果応報と言うやつなんだろうか。
「おいガキ共そこで大人しくしてるんだぞ。」
粗暴な男達は子ども達を乱雑に扱い牢屋に放り込んだ。
リアンは怖いと騒ぐ周りの子どもた達とは一転、落ち着いて状況を整理していた。
ここに至るまでの経路や男達の特徴、どうこの状況から抜け出すか。
♢
「父さん、あそこにある串焼き食べてみたいな。」
「買ってくるからそこの噴水の所で座って待ってるんだよ?」
リアンが迷子に…いや誘拐される前に振り返ってみよう。
父親に待っているように言伝を受けて大人しく噴水で座っていたのだがとある光景が目に入った。
「お嬢ちゃん迷子かな?、おじさんねお母さんの場所知っているから一緒に行こう。」
「本当に?ママの場所知ってるの?」
「あぁ、本当だよ、ほらこのキャンディーもあげるからね早くおいで。」
あからさまな誘拐現場を目の当たりにしてリアンの良心はそれを見て見ぬふりすることは出来なかった。
認識阻害マスクをつけているためリアンを狙う事は絶対と言っていいほど確率が低い 、なので後を追って警備隊に報告することにした。今現在連れ去られている女の子の他にも誘拐されている子どもがいるかもしれないと踏んだからだ。
だがそう簡単ではなかった。
男達のアジトを突き止めた迄は良かったのだが、警備隊に報告した瞬間リアンは鳩尾辺りを思いっきり蹴り挙げられた、そこでリアンの意識は途切れ冒頭へと戻る。
「おいガキ共そこで大人しくしてるんだぞ。」
「う゛ぇぇぇん怖いよぉぉお~ママァぁああ」
「黙れ五月蝿いんだよ、そのガキの口縛っとけ。」
しまったな、警備隊もグルだったのか…
「ふぇぇ、怖いよぉ、ママに会いたいよぉ~」
子どもは僕含め7人、この子達全員を連れて出ていくのは難しいな。
「ふふっ大丈夫よ、助けてくれると決まっているのよ、泣かないでお嬢さん。」
リアンよりもいくつか年上の少女が泣き叫ぶ女の子を励ましていた。
「お姉ちゃん本当?」
「えぇ、そうでないとおかしいもの。」
身なりや言葉遣いからも明らかに相応の身分や財力を持つ家庭の子供だとリアンは踏んでいた、となると護衛達がこの子を捜索する。
「ねぇお姉さん、君を探してる護衛がいたりするのかな?」
「……んん~そうね探してる人ならいると思うわよ。」
「僕がここを抜け出してその人達に君の居場所を伝えるよ、だから特徴を教えてくれないかな?」
「必要無いわよ、きっともうすぐ来るはずだから…安心してお兄さん。」
何かを知り尽くしたように語る様にリアンは違和感を覚えた、そして驚くことに言葉通り警備隊では無いが何やらローブをまとった集団が押しかけてきた。
「おい!!なんだお前らは!!…ゔっ!!」
威嚇する誘拐犯達を諸共せず切り捨てていた。
誘拐犯達の断末魔さえ響く暇が無いほど呆気なくそれは終わった、子供達は怯えて泣いていたがリアンは一先ず誘拐犯に売られることは避けられる、助かったと胸をなで下ろした。
「ねっ、言ったでしょ大丈夫だって。」
少女は仮面を被っているのにも関わらずドヤっとしているのが伝わって来る態度を取り、鼻で笑っていた。
「あの人達はお姉さんの雇っている人たち?」
「うーん難しいわね、でも違うと言っておいた方が正しいかしら?」
リアンは少女の白黒つかない返答を深堀はしなかった。変に問い詰める必要も無いからだ。
「おーいお嬢ちゃん坊主達~泣かないでくれ困っちまうだろ。俺子供の相手するのは苦手なんだよ。」
面倒くさそうにローブの上から頭を軽く掻き、困った声で泣いている子供を宥めていた。
「ほーら今鍵を開けてやるから焦らず出てこーい。」
手刀で素早く鍵の部分を壊して子供達を1人ずつ顔や体を確認して、ほかに待機していた男達に預けそれぞれの保護者の元へ届けるように指示していた。
「最後は坊主だな、怪我してないかだけ確認してやるから仮面を取れ……お前…随分と高価なもんつけてるのな。」
「あの、怪我はありませんから確認は結構です。」
「…認識阻害マスクなんてそう易々と手に入るもんじゃねぇぞ。」
「……普通の仮面ですよ。」
リアンが誤魔化そうとしたがそうはいかなかった。
男がリアンの仮面を素早く取り上げると目を丸くし顔から血の気がひいていた。
「…デ…ク……のか。」
小声でごにょごにょと話している男の言葉はリアンには聞き取れなかった。
僕の顔がなんだって言うんだ、どうしてこの男はこんなに青ざめているんだ。
「なぁ坊主、お前父親はいるか、生きてるか?」
「…どうしてそんなことを尋ねる必要があるんですか、理由が無いならお答えできません。」
「……坊主お前の父親は…いや早合点かもしれない、いやでもあまりにも似過ぎてる…そこで待っとけ、な!?」
なんなんださっきから。
早く父さんに会いたい、謝らなくちゃ、約束を破ってしまった。
男はもう1人男を連れて来た、黒い仮面を被って顔は見えないが何故か不思議な感覚に襲われた。
「な!?絶対そうだって!!ガキの癖にクソ生意気な所だって小さい頃のあんたにそっくりだしさ!!」
「その舌斬られたいのか?」
「…すみません。」
「だがよくやった、間違いないこの子は…俺の息子だ。」
「……息子?」
間の抜けた声を漏らすリアン、急に現れた男が自分の父親だと称するのだから無理は無い。