第8話 ゾンビ
「なら、そこの校長室にでも行こう」
俺達は校長室に入り、鍵をかけた。
校長室には、ソファーが2つと社長が座るような立派な椅子があった。
豪華な机も。
そして、壁には日本刀が飾ってあった。
「これ本物?」
「さぁ、さ~ちゃんが触れば分かるわよ」
さ~ちゃんは、日本刀を掴んだ。
「次はどいつだぁ~」
どうやら本物のようだ。
こんなところで良い武器が手に入った。
「後は何かないの?」
メリーさんは、校長室の豪華な机の引き出しを漁っている。
「あっ!!」
なにか見つけたみたいだ。
「なにがあっ……」
「え~テステス、恒例の校内放送のお時間です」
俺の言葉を遮るように、また校内放送が流れた。
今度はなんだ?
「数々の試練お疲れ様でぇす。でも、そんな努力はもうおしまいでぇす。な・ぜ・な・ら、ゾンビ進化の最終回だからでぇす」
最終回?
あの走ったりとかのやつだっけ?
「その進化とは~、今いる複数のゾンビが駆け回れるようになりま~す。でもでも、そんな可愛いゾンビちゃんも残り僅か。爆破されちゃったのですから」
今回はよくしゃべるな。
「だから、もう一つの最終フェーズ、メイン、私がお前達をミナゴロシだぁ~!!」
校内放送が終わった!
「敵が来る」
俺達は急いで校長室を飛び出した。
「どこで戦う?」
「屋上はどう?」
メリーさんからの提案があった。
「広い所の方が戦いやすいかな?」
「そうだね」
「なら、エレベーターで七階までいきましょう」
「賛成、でも、早くしないとゾンビが来ちゃう」
俺達は急いでエレベーターに向かった。
エレベーターのボタンを押して到着を待った。
ポン
エレベーターが到着したみたいだ。
ゆっくりとドアが開く。
中には髪がボサボサで血まみれの服を着て、斧を持った少女がいた。
肉は腐れ始めている。
この子があの校内放送で言っていた残りのゾンビなのか?
少女は斧を持っている手を振り上げ俺達に向かって走ってきた。
「このゾンビ、まさか……」
斧を池田に向かって振りかざしてきた。
やはり、俺たちを認識している。
視力がある最後のゾンビだ。
俺はとっさに池田を突き飛ばした。
池田は床に倒れたが、間一髪、斧をかわした。
俺の足になにか当たった。
池田が持っていた硫酸の瓶だ!
「メリーさん、急いでエレベーターを上の階に、それと、硫酸を持っていって、さ~ちゃん、少しだけ足止めして」
「硫酸? あ~もしかして……」
メリーさんは急いで上の階にいった。
さ~ちゃんは、手に入れた日本刀を抜いた。
刀身がすごく綺麗だ。
「斬りきりきりきり~」
さ~ちゃんのテンションが上がっている。
さ〜ちゃんの日本刀でゾンビを足止めしている。
エレベーターのドアは閉まり、上に上がっていく。
「池田、大丈夫か?」
「なんとか。でっ、どうするの?」
「それは、こうするんだ」
俺は池田の持っていた、もう一本の硫酸をゾンビに投げつけた。
「ぎゃ~」
ゾンビは苦しんでる。
「よし、池田!! エレベーターの扉をこじ開けるから手伝って。さ〜ちゃんはそのままゾンビの足止めを」
「えっ?」
「いいから早く」
「分かった」
2人で扉をあけた。
「よし。後は」
俺は大きく息を吸い込んだ。
「メリーさん、後30秒後に宜しく」
俺は大声でエレベーターの中に響くように叫んだ。
「はぁ~い」
小さくメリーさんの声が聞こえた。
準備は出来た。
後ろを見るとゾンビが苦しんでる。
「さ~ちゃん、ゾンビをエレベーターの中に落として」
その言葉を聞いて、さ~ちゃんは日本刀でゾンビを切りつけ、そして、刀でゾンビを押し、エレベーターの中に押し込んだ。
「メリーさん!!」
そう叫んだ瞬間、上の方ですごい爆発音が聞こえた。
シュルルルル
ズドーン
エレベーターが物凄い勢いで落ちてきた。
あっという間の出来事だった。
ゾンビはエレベーターの下敷きになった。
「やった!!」
作戦成功だ。
上からメリーさんが降りてきた。
「やったみたいね」
「うん、メリーさんがすぐに理解してくれたおかげだ」
硫酸でエレベーターのシャフトを溶かして落とそうと言う作戦だった。
「よく言うわよ。硫酸だけで溶ける訳ないじゃない」
「えっ?」
「硫酸とグリセリンと硝酸を混ぜて即席ダイナマイトを作ったのよ」
ダイナマイトって……。
爆発音の正体はそれだったのか。
「でも、グリセリンと硝酸なんてあったの? それ以前にダイナマイトって、そうやって出来てるの?」
確かにそんな物はなかったはずだ。
硫酸ならあったけど。
「あ~、校長室の机の中にあったのよ」
そういえば、メリーさんはなにか見つけていた。
あれがそうだったのか。
「かなり小さい瓶に入ってたけど、持ってて良かったわ」
メリーさんは得意気だった。
「メリーさんって博識だったんだ。ありがとうメリーさん」
「待って、お礼を言ってる暇はないみたいよ」
メリーさんは真剣な顔で階段を見つめている。
「ミナゴロシ~」
やつだ。遂にやつがきたんだ。
「校庭に出よう。そこなら戦えるはず」
俺は提案した。
「もう、遅いみたい……」
振り返るとそこには、見覚えがある顔があった。
「えっ……、ワタ……シ……」
池田が動揺している。
そう、やってきたのは、現実世界で会ったコピー池田だった。
放送室の奴ではないのは確実だ
「ミナゴロシ〜」
理性がなくなっているのか、ミナゴロシと言う言葉だけを繰り返し口にしている。
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