第5話 口裂け女とテケテケ
教室までは、数体のゾンビは見たが、気が付かれず教室前まで来れた。
「待って! 中に誰かいる」
メリーさんから制止の声がかかった。
「確認するわ」
ピリリリリ、ピリリリリ。
「わたし、メリー、今、教室の前にいるの」
あたかも当然のように電話するメリーさん。
「あ~、分かったわよ。中にいるのはさ~ちゃんね」
「さ~ちゃん?」
誰だかわからない。
「でも、声がおかしかったのよね?
金ちゃんの時のような事、あるかもだから、用心して入りましょ」
俺は池田に少し後ろに下がるように指示し、扉を開けた。
中には、長身の女性がうずくまっていた。
「さ~ちゃん!! 大丈夫? どうしたの? お腹痛いの?」
メリーさんは声をかけているが、その内容はボケてるのだろうか?
「しくしく」
泣いているようだ。
「なにが悲しいの?」
「……あ、あいつが、わたしの……しくしく」
2人が会話している最中に誰かを確認する。
すぐに、分かった。
口裂け女だった。
あんなに口が裂けてるんだから、口裂け女以外はいないだろう。
「しくしく、あんた達誰?」
口裂け女は俺達に気がついた。
「わたし、メリーさんよ」
「しくしく。メリーは知ってる……友達だから……」
泣きながら、答える口裂け女。
イメージと違う。
「俺は松本浩一だ」
「私は池田佳奈よ」
いつの間にか池田が後ろにいた。
下がってろって言ったはずなのに……。
「でっ、さ〜ちゃんは、なんで泣いてるの?」
メリーさんは問いかける。
「しくしく、何時ものように、保健室にいたら、いきなり、襲われたの。わたし、必死に逃げてきたの……しくしく」
誰かに襲われたようだ。
しかし、保健室なんて口裂け女らしい場所だ。
やはり、口裂け女と言ったら保健室が定番だと思うからだ。
「さ~ちゃん泣かすなんて、許せない。保健室よね?」
メリーさんは確認する。
「そうだけど? なにするの?」
ピリリリリ、ピリリリリ。
「わたし、メリー、今……キャッ!!」
「えっ、メリーさんどうしたの?」
池田が心配そうに、メリーさんに駆け寄る。
「……逆に探知されちゃったみたい……、しかも、襲った相手って……テケテケ?」
メリーさんは口裂け女に確認する。
「……うん……」
弱々しく答える。
「来るわよ。あいつ」
「えっ? 来るって? テケテケが?」
「そっ、バレちゃったからね」
そんな、明るく言われても……。
「なら、早く逃げないと。テケテケってあの有名なやつでしょ」
池田は急いで逃げると言うが、足が震えてるのが分かる。
「保健室……行けば、武器あるよ……」
口裂け女は、提案してくれた。
「よし、すぐに行こう」
武器があるなら取りに行った方が良い。
今の俺達は戦力不足も良い所だからだ。
俺達は急遽、保健室に向かう事にした。
しかし、教室から出たとたん、急に辺りが冷え込んだ。
さらに、奥の階段から上半身しかない化け物が視界に飛び込んできた。
あれは、よく知っているテケテケの姿だった……。
「きょ、教室に戻れ~!!」
俺は叫んだ!
俺たちは急いで教室に戻った。
机と椅子、教卓を扉の前にごちゃごちゃに起きバリケードを作った。
ズシャ
扉に鎌が刺さった。
テケテケの持つ大鎌だ。
テケテケは鎌で扉を破壊しようと、何度も鎌を叩きつけてきた。
「なんとかしないと……」
「ねぇ、ロッカーになにかないの?」
池田が提案する。
「そうか、バリケードが破られる前になにかあるか探すんだ」
俺と池田は大急ぎでロッカーを開けた。
しかし、何も見つからない。
ただ一ヶ所、鍵のかかったロッカーを除いて。
俺は図書室で手にいれた鍵を使って扉を開けた。
やはり、ここの鍵であっていた。
ドシャン
開いたと同時にバリケードが破壊され、テケテケが中に入ってきた。
メリーさんが体当たりをする。
しかし、テケテケには全く効いてないようだ。
体当たりをしたメリーさんはぶつかった反動で床に倒れていた。
口裂け女は、オロオロしているだけで役に立ってない。
「ねぇ、ハサミとカッターが入ってる。これでなんとかならない?」
池田はロッカーの中を見て話している。
「そんなんで、なんとかならない……」
俺はメリーさんの方をみる。
立ち上がったメリーさんは、椅子を投げたりしながら、応戦しているが、旗色は悪い。
「貸して……」
いきなり口裂け女が割り込んできた。
口裂け女はハサミとカッターを手にした。
「いっくぜぇ~」
急にテンションが変わった。
ハサミをクルクル回しながらテケテケに向かっていく口裂け女。
さっきまでとは別人の様な変わりようだった。
テケテケも気がついたようで大鎌を振りかぶる。
口裂け女よりもテケテケの大鎌が早い。
大鎌は口裂け女を目掛けてきた。
ガキン
口裂け女は持っていたハサミで防御した。
さっきまでオロオロしていた口裂けではない。
どうやら、武器を持つと性格が変わるようだ。
防御している口裂け女だが、力はテケテケの方が上らしく、押し込まれてる。
そこに、メリーさんの投げた椅子がテケテケの頭を直撃した。
テケテケが一瞬怯んだ。
その隙を口裂け女は見逃さなかった。
ハサミで大鎌を弾き、カッターでテケテケを刺した。
「ぎょえー!!」
テケテケは寄生を上げて暴れている。
口裂け女が止めをさそうと、ハサミを振りかざす。
しかし、テケテケが暴れだし、出口に超スピードで向かい、逃げ出した。
「……たっ、たすかった~」
俺は何も出来なかったが安堵した。
池田も声にならず、その場で座り込んでいた。
だが、テケテケを倒したわけではないので、安心は出来ない。
だが、それでも、俺は安堵していた。
「ねぇ、さ~ちゃん、あいつ、何処に行ったの?」
メリーさんは、そんな俺たちにお構いなしにテケテケの行方を口裂け女に聞いていた。
「あいつなら、きっと保健室だぜ。あたしの寝込みを襲いやがったし、そこには職員室のカギや武器になりそうなもんあっからな」
どうやら、口裂け女は寝ているところをテケテケに襲われ、ここまで逃げてに来たみたいだ。
しかし、職員室の鍵は手にいれたい。
それがあれば他の教室の鍵も手にはいるだろうから、是非欲しい。
手にいれるには、テケテケとの再戦はさけられないが……。
「分かった、保健室に行こう」
俺は皆に告げた。
本作をお読みいただきありがとうございます。
よろしければブックマークと評価をお願い致します。
感想も宜しくお願い致します。
それでは引き続きお楽しみくださいませ。