第3話 メリーさん
ピッ!
操作をしてないのに、通話中になった。
「わたし、メリー、今、駅にいるの! 」
ツーツーツー
「えっ? 」
「ちょ、メリーさんって、あのメリーさん! えっ、なんで? 」
俺達は二人とも混乱していた。
メリーさんは有名な都市伝説の一つだ。
何度も電話がかかってきて、その度に自分がいる場所に近付いてくるのだ。
そして最後の電話の後には……
ピリリリリ、ピリリリリ!
また着信がなった。
ピッ!
「わたし、メリー、今、コンビニの前にいるの! 」
ツーツーツー
「やっぱり! にっ、逃げないと……」
池田は後ろに下がりながら言う。
「だけど、本当にメリーさんなら、何処に逃げても……」
ピリリリリ、ピリリリリ!
ピッ!
「わたし、メリー、今、大きな橋の上にいるの! 」
ツーツーツー
池田は座り込んだ。
恐怖からか、力が抜けたのだろう。
もう、声もでないようだ。
「だっ大丈夫だ!! ゲームなら、なんとかなるはずだ」
俺は身構えた。
(池田を守れるのは俺しかいないんだ、しっかりしろ俺!! )
メリーさんなら、後ろから来るのが定番だ。
神経を後方に集中した。
ピリリリリ、ピリリリリ!
ピッ!
「わたし、メリー、今、昇降口前にいるの! 」
ツーツーツー
「きた!! 」
次の電話が鳴ったら、全力で後ろに攻撃だ。
昇降口なら、次はの電話は「貴方の後……」って言うのが定番だ。
ピリリリリ、ピリリリリ!
ピッ!
「今だ!!」
しかし、攻撃は空を切る!
「わたし、メリー、今、あなたの頭の上にいるの! うふふふふ」
ツーツーツー
上を見ると大きめな人形が頭の上に浮かんでいた。
(なんで上なんだよ。最後も定番で来いよな……)
メリーさんは降りてきて俺の頭の上に乗った。
「うぁ~」
俺は必死に振り払おうとした。
「うふふふふ。うふふふふ」
しかし、メリーさんは笑うばかりで頭に乗ったままだ!
俺は、壁に向かって走り、メリーさんを落とそうとした。
ゴン!
「いてぇ! 」
メリーさんは直前で離れ、俺だけ痛い思いをした。
「あ~、面白い」
メリーさんは、空中をフワフワ浮きながら、笑っている。
「なっなんか、イメージしてたメリーさんと違うような……」
座り込んでいた、池田がいつの間にか立ち上がっていた。
「たっ、たしかに……」
噂通りだとしたら、もう攻撃されて、死んでいるはずだ。
「あんた達、わたしをなんだと思ってるの? わたしは、正義のメリーさんよ。うふふふふ」
「「正義のメリーさん? 」」
二人の声がかぶった。
「そっ、わたしは、あなた達を導く存在なの」
どうやら、このメリーさんは味方のようだ。
一気に緊張が溶けて、力が入らなくなった。
「まっ、時間ないから手短に説明するわね」
メリーさんは、説明を始めた。
その話で分かった事は……。
・ゾンビは時間経過で進化する事
・最初はただいるだけのゾンビ
・音に反応するように進化
・ゾンビ数が急激に増える
・走るゾンビに進化&ゾンビの中の一体だけが、視力をもつ
・手掛かりを繋いでいき、クリアを目指す
・ゾンビ以外にも恐ろしい存在はいる
このくらいだ。
池田が見た大量ゾンビ達はオープニングみたいな物だとメリーさんは説明してくれた。
「もっと、具体的なクリア方法は分からないのか? 」
俺はメリーさんに質問する。
「わたしに分かるのはこれくらい。それと、もう安全な時間は終わるよ」
「えっ? 」
キーンコーンカーンコーン
校内スピーカーが鳴り響く。
「校内放送です。ただいまを持ちましてチュートリアルを終了致します。では、本編をお楽しみください。きゃははは~」
キンコンカンコ~ン
「なっ、なんなの、今のふざけた放送は」
まさしくそのとおりだった。
「あれは、お飾りゾンビ時間が終わったお知らせよ。これから、どんどん進化していくわよ」
親切なのか、不安を煽るのか分からない放送だ。
「なら、急いでクリアしないと。さっき、メリーさんが言ってた最後の視力のあるゾンビが出てきたら最悪じゃない」
「そっ、そうだな。なら、急いで図書室に行こう。今ならまだ、聴力だけだし、数も多くないはずだ」
俺たちはメリーさんを仲間にして、図書室に向かった。
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