第2話 合流
絶賛片思い中の俺は、好きな子と一緒にゲームの世界から脱出する。
「ね……お……」
なにか聞こえる。
「ねぇ、お……て」
聞き覚えのある声がする。
「おきろー!!」
俺は目を覚ました。
「あっ、あれ?」
目を覚ますとここは天国か?
池田が目の前にいた。
「あれ? 池田? んっ、さっきのは夢?」
この池田に違和感は感じられない。
間違いない本人だ。
「何言って……しっ、隠れて!!」
なにかを言いかけてたが、急いで身を隠した。
先生でも来るのか?
しかし来たのは先生なんかじゃなかった。
「うぅぅぅ~」
(なんだあれ?)
ゾンビ映画に出てくるであろう、ゾンビそのものが、廊下をゆっくりと歩いている。
声を潜め、身を隠す二人
暫くするとゾンビは去っていった。
「なんなんだよ、あのゾンビは……」
俺は池田に尋ねた。
「知らないわよ。目が覚めたらここにいて、あいつらが辺りを動き周っているのよ……」
「……てっことは、さっきまでの事は夢じゃない?」
「なんなのよ、いったい!! なんでこんな事になってるのよ! 誰もいないのにゾンビはいるし……それに、なんであんたがここにいるのよ?」
かすれた声で話しいる。
よくみると、泣いた跡があった。
かなり怖かったんだろう。
「助けに来たんだよ!! って言ってもなにもわからないんだけどな」
もっと、カッコいい言い方出来なかったのか、我ながら情けない言い方だ。
「なんで、助けに来るのよ。私がいなくてもなにも変わらないでしょ……」
今にも泣き出しそうな顔をしながら言っている。
俺はさっきまでの事を池田に話した。
「そんな……じゃあ、ここはゲームの中って事?」
「ああ、そんなバカなって思うだろうが、ゾンビもいたし本当なんだろう」
実際、俺もバカなって思っている。
「だったらどうしたら良いよ」
困り顔だ。
その顔も可愛い。
だが、今はそんな場合ではない。
「ゾンビものなら脱出がお決まりだな。これがゲームなら、クリアすれば出られるかもしれない」
俺は数々のゲームをクリアしたゲーマーだ、お決まりくらいわかる。
「とりあえず、いろいろ見たいから移動しよう。歩けるか?」
ここに置いていくわけにはいけないし、一緒に来てもらうしかない。
なにより、俺が一緒にいたい。
「あんたでもいないよりはマシか……」
「大丈夫だ。何があっても……」
「んっ? なに?」
「いっいや、なんでもない。行くぞ!!」
思いを口にしようとしたが、慌てて
誤魔化した。
やっぱりヘタレだった。
俺は、廊下を確認する。
ゾンビはいないようだ。
「学校はどんな感じか分かる?」
俺は池田に聞いた。
「んっ? 怖くてこの教室に隠れていたから、ここの他は分からないよ」
どうやら、池田はこの教室から動いていなかったようだ。
ゾンビ達に見つかってたらと思うとゾッとするが、まぁ無事で良かった。
「なら、まずは昇降口を確認しよう。外に出れるかもしれない」
ここは、3年6組で俺たちの教室だ。
3年生は、3階で、寄りにもよって、校舎の端の方だった。
しかも、この学校の昇降口は、2階の渡り廊下を渡って、別の校舎の端だった。
俺たちは、昇降口を目指して慎重に進んでいる。
しかし、教室で見たゾンビ一体だけで、他は見かけなかった。
「なんかゾンビの数がさっきより減ってるよ。いっぱいいたから、あの教室から動けなかったんだから……」
どうやら、ゾンビはかなりの数がいるらしい。
今はいないのでチャンスだ。
ゾンビがいなかったからか、なにごとも無く、昇降口にたどり着いてしまった。
ガチャガチャ
扉は開かない。
「あかないか……」
「どうすんのよ」
「とりあえず、上履きじゃ走る時とかキツいから、靴に履き替えるか」
そう言って、自分達の靴箱をあける。
「あっ」
池田が声をあげた。
「どうした?」
靴を履き替え、池田に近寄る。
「これ……」
靴箱の中に、鍵が入っていたみたいだ。
「なんの鍵だろう?」
池田に心当たりはないようだ。
「んっ? これ、図書室のじゃないか?」
図書室委員であった俺には、見覚えがあった。
「図書室……行って……みる?」
「だな。これがゲームなら、手掛かりを追いかけていけば出れるはずだし」
その時!!
ピリリリリ、ピリリリリ!
俺のスマホが急に鳴り出した。
知らない番号からだった。
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