第1話 プロローグ
勉強なんて大嫌いだ。
俺の名前は松本浩一。
今は塾に来ている。
勉強が大嫌いな俺が何故塾に来ているかと言うと、親に勝手に申し込まれて通わされているだけなのだ。
(中学校で勉強するだけでいいだろ?)
そんな事を思うのは俺だけだろうか?
ただ、この塾通いに一つだけ感謝している事がある。
「今日も宜しくお願いします」
ショートヘヤーで小柄な女性、胸は今一歩の少女が入ってきた。
この女の子こそが、俺の感謝だ。
彼女の名前は池田佳奈。
俺の初恋の女性にして、絶賛片想い中の娘なのだ。
片思い歴9年である。
小学校1年の時に一目惚れしてそのままなのである。
まさか同じ塾になれるとはツイている。
まぁ、塾だから喋れないのだけど。
時間が経過する。
「今日はこれまで」
やっと終わった。
「よっ、今日は一緒だったんだ」
池田が声をかけてくれた。
池田とは片想い中ではあるが、小学一年の時に一目惚れしただけあって友達関係にはあった。
「ああ、みたいだね」
俺はなんて返して良いか分からず、素っ気ない返事をした。
「まぁ、終わったし帰ろっか?」
「だな」
俺たちは一緒に帰ることになった。
2人で塾を後にして、外に出た。
「さて、今日は買い物して帰らないと行けないから、ここまでだね」
池田は用事があるみたいだ。
しかし、せっかく池田が一緒なのに、ここで帰るのはもったいない。
「あのさ、俺もついて行っていいか?」
俺はそう口にした。
「んっ? 良いけど?」
「なら、行こうぜ」
俺は池田と近くのスーパーに向かった。
池田は買う物を選んでる。
カートは俺が押す。
なんか、デートみたいで凄く気持ちがはしゃいでいる。
池田は調味料等をカゴに入れている。
買い物は親に頼まれた物みたいだ。
暫くして買い物が終わり、帰路についた。
歩いて二人の母校である、小学校の前までやって来た。
ここが二人の家に向かう、別れ道だった。
池田は真っ直ぐに行くが、俺は右に行かなければならない。
だが、せっかく2人になれたのだから、もう少し一緒にいたい。
そんな想いが伝わったのか、池田が塾の事とかを話し出した。
俺達は、しばらくそこで日常会話をする事になった。
しかし、俺の頭の中では、ここで告白するべきではないかと考えている。
「さて、そろそろ帰ろうかな? 今日は買い物に着いてきてくれてありがと」
「あっ、いや、別に良いよ。じゃあ、また学校で」
「うん、またね」
だけど、ヘタレなせいで今日はそこまでだった。
後から思うに、絶好の告白チャンスだったと今でも思う。
その夜、酷い嵐になった。
激しい風と落雷が鳴り響いていた。
「ふぁ~、眠い」
今日も学校があると思うと余計に眠くなる。
空を見ると、どんよりとした雲が広がっていた。
俺は身支度をして、学校に向かう。
学校の楽しみも、もちろん池田に会える事だ。
同じクラスだし、必ず会える。
更に、部活も一緒なのだ。
小学校でも何回か同じクラスになっている。
それなのに、今だに告白1つできないヘタレな俺がいるのだが……。
「おはよ~」
クラスメイトに挨拶する。
彼女はまだ来てない。
「おはよ、松本君」
声をかけてきたのは、ロングヘヤーで長身の巨乳美女、篠原恵だった。
見てくれは美少女なんだけど、苦手な人だ。
「おはよ」
俺は軽くかえした。
「朝からそんな顔しないの」
「あ~、はいはい」
「も~、このわたしが声をかけてあげたんだから、喜びなさいよ」
そんなやり取りの最中。
「おはよ」
彼女が入ってきた。
(んっ?なんかいつもと違うよな?)
俺は違和感を感じた。
「おはよう、池田さん」
「おはよ、篠原さん」
他の人は普通に接している。
気のせいか?
しかし、小学一年から片想いしている俺は、違和感をぬぐえないでいる。
授業が始まった。
彼女は、普通に授業を受けている。
だけど、俺にはどうしても本人に思えなかった。
(別人? そんな事あるはずないけど、でも違う)
放課後になった。
クラスメイトは次々に部活に行ったり、帰宅したりしている。
最後に俺と彼女が残った。
彼女と2人きりになったのだ。
そこで、俺は決意した。
「なぁ」
彼女に声をかけたのだ。
「なに?」
返事が返ってきたが、やはり昨日までの池田と違う。
「いや、その……」
口ごもる。
「用がないなら、行くから」
彼女が行こうとした。
俺はとっさに彼女の腕を掴んだ。
「待って! ……お前は誰だ?」
言ってしまった。
「なんのこと?」
彼女は少し驚いた顔をしたが、すぐに普通に戻り、冷静に返してきた。
「いや、お前は誰だ! 俺には分かるんだ!あいつじゃないって」
俺は真っ直ぐに彼女を見て言った。
暫く沈黙が続いた。
「……疑ってないな……」
「えっ?」
「分かったわよ。正解」
「正解?」
「そっ、私は別人。正確に言えば、池田晃子のコピーだけどね」
さらっと、驚愕する事を言った。
「コピー?」
俺は混乱した。
別人なのは直感で感じたに過ぎなかったが、コピー?
せめて、妹とかが入れ替わっているくらいだと思っていた。
まぁ、池田に妹がいるなんて聞いた事なかったが……。
「なんで分かったか知らないけど、バレたら仕方ない」
「本物は何処にいる」
「視聴覚室に行ってみな……」
「視聴覚室?」
あそこは、パソコンの授業で使うくらいで他はでっかいスクリーンがあるくらいの部屋のはず。
「視聴覚室だな。なら、お前も来い!! あいつに何かあったら許さないからな!!」
俺と彼女は、視聴覚室に向かった。
勢いよく視聴覚室に入ったが、その部屋には誰もいなかった。
人の気配もしない。
「おい、池田は何処にいるんだよ!」
俺は彼女に聞いた。
すると、とあるパソコンを指指した。
「パソコン? 手掛かりでもあるのか?」
俺は一台のパソコンをみた。
この一台だけ、起動していた。
「んっ? 学校のゲームか?」
パソコンには、学校が舞台と思われるゲームがついていた。
いろんなゲームをやって来たが、これは始めてみる。
自作か?
「これがなんだって言うんだ!!」
俺は彼女を問い詰める。
「よく、画面を見なさい」
俺は言われるまま、画面をよく見てみる。
「えっ? まさか、嘘だろ?」
そこには、池田が映りこんでいた。
「分かった? 彼女はそこにいるの」
笑いながら彼女は喋った。
「そっ、そんな事あるはずないだろ」
俺は動揺している。
「これは現実よ。あなたは家族ですら気が付かなかった私に気が付いた。だから、教えた」
「……どうしたら助けられる……教えて……くれ……」
俺は藁にもすがる思いで尋ねた。
「それは……あっ……」
何かを言いかけた時、彼女の姿が薄くなってきた。
「時間か……」
「時間?」
「そう、あんたに正体がバレたから、私は消えるの」
「ちょっ、まて!! あいつは、池田はどうなるんだ!!」
俺は焦っている。
「……気が付いたご褒美に、送ってあげる……後は自分でなんとかしなさい」
「えっ? 送る? 何処に?」
すると、辺りが眩しくなって、意識が遠退いて行く……
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