表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からっぽやみな魔王(おれ)とチートな愛人(つま)たち  作者: 甲陽晟
エピソード3 ショッピングと篭絡の魔女
25/97

1 かわいい娘には、買い物をさせろ、ということで…

 おれの城に朝がきた。

 しかも、晴天の朝だ。

 気候魔法(ウェザーズマジック)で昼夜を作り出しているが、そのさい、天候についてはランダムに変わるように警戒装置(セキュリティ)によって設定されている。

 四季の移り変わり、それに合わせて晴れたり、曇ったり、雨や雪、雷、嵐さえ起こるようにしている。

 もちろん、おれの希望をいれて天候を変えることはできるのだが、なるべく、手を入れず、警戒装置によるランダム設定にまかせている。


 カーテン越しに部屋に差す日差しを心地よく思いながら、おれはベッドから起き上がる。パジャマを脱ぎ捨て、傍らにあるクローゼットからいつものシャツとチノパンを取り出し、さっさと着替える。

 どこかの王家や貴族のようにメイドが来て、おれの着替えを用意したり、手伝ったりとかは、ここではない。

 五人の娘たちにもそんなことはさせない。

 共寝をしたときは別だが…

 おれの性格だからと、好き勝手にさせてもらっている。


 着替えたおれは、警戒装置(セキュリティ)にアクセスし、今日の朝食を食べる食堂を尋ねる。

 この城には食堂が五つある。ちなみにおれの部屋は七つある。

 警戒装置(セキュリティ)は五つある食堂のうち、西側の食堂を指定した。

 その返答に頷いて、おれは長い廊下を西側の食堂へ歩いていく。

 廊下の窓のカーテンもすべて開け放たれ、さわやかな陽光が廊下を奥まで照らしている。

 廊下の窓から見える中庭の花園には七色の花が咲き乱れている。アリスが手入れしている花園のひとつだ。

 そんな光景を微笑ましく眺めながら、おれは長い廊下を歩いて行く。数分ののち、おれの前に目的の食堂の扉が現れた。


 扉の前に立つと、扉がひとりでに、横に動く。

 目の前に広がるのは、異国の食堂だ。

 三方を、動物や鳥が描かれた襖と呼ばれる異世界の壁が部屋を囲み、一方は障子と呼ばれる紙と木でできた扉が開け放たれ、先ほどとは違う庭が広がっていた。

 岩と樹木が規則的とも不規則ともいえる配置で置かれ、その間を澄んだ水が流れる小川が走っている。

 一段あがった床には、これも異世界の畳と呼ばれる床材が敷き詰められ、そのうえに黒い木でできた足の短いテーブルが乗っている。

 一番奥には、床の間と呼ばれる木でできた、少し奥に引っ込んだ部分があり、その正面の壁には掛け軸と呼ばれる絵が掛けてある。

 そして正面と両脇にそれぞれ座布団と呼ばれる、これも異世界の敷物が置かれていた。

 テーブルの上には、きれいな絵が描かれた皿に盛られた料理が、所狭しと並んでおり、食堂の傍らにはアウローラを先頭に、ローザ、アリス、ティアラ、そしてプリムラが、皆がそろいの(いわゆる旅館で女中さんが着ているような)着物を着て、並んで正座していた。

 

 「おはようございます。ご主人様。」

 アウローラが真っ先に挨拶し、それに続いて4人の娘たちが、「パパ」「主様」「マスター」「旦那様」とそれぞれのおれの呼び名を口にして、お辞儀した。

 「おはよう」

 軽く返答すると、おれは靴を脱いで上がり、当然のように一番奥まった場所、異世界では【上座】と呼ばれる場所に進んで、座った。

 それを見て、プリムラが傍らに置いた茶色で円筒形の器の蓋を取った。中から湯気がふわりと上がり、何とも言えない香りが漂ってくる。

 瓢箪のような形をした平たい道具で、器の中から白い湯気のたった粒々のものを取り、もう一方の手に持ったやはり鮮やかな模様がついた食器に、その白い粒々を盛り、傍らのティアラに渡した。

 ティアラは、その食器をお盆に乗せ、おれのところに持ってくる。

 プリムラは同じように食器に次々と白い粒々のもの、異世界では【ごはん】と呼ばれている食品を盛っていった。

 それぞれがそれを持って、各々の席につく。

 やがて、ひととおり配り終わり、最後にプリムラが席に着くと、待っていたようにアウローラが号令をかけた。


 「いただきます。」

 「「「「いただきます」」」」


 おれも「いただきます」と言うと、さっそく箸と呼ばれる二本の棒をとり、それを器用に使って、ごはんを掬い、口に持っていく。

 「うまい」

 顔を綻ばせながら、おれは目の前の料理に次々と箸をつけていった。

 料理とごはんを交互に食べながら、おれは朝から至福のときを過ごした。

 その間に、プリムラに命令されたゴーレムが、【みそ汁】と呼んでいるスープを木の食器に入れて持ってくると、各自の前に置いていった。

 「プリムラの料理はやはりうまいな。」

 そう褒めながら、おれは出されたみそ汁に舌鼓をうった。それを見ているプリムラは本当にうれしそうな顔をしている。

 娘たちの喜ぶ顔が、おれにとっては一番うれしいことだ。


 ひととおり料理を平らげ、食後の緑色のお茶を飲んで、満腹感を味わっているとき、ティアラがおれの顔を見て、なにか言いたそうな表情をした。

 「どうした、ティアラ?」

 「あの、マスター、お願いがあるのですが…」

 「なんだ、言ってみなさい。」

 おれがプリムラにもう一杯、お茶を頼むと、ティアラがおずおずと口を開いた。

 「買いたいものがあるのですが…」

 「買いたいもの?なんだい。」

 「本です。ほしい本が三冊ほどありまして。」

 「ほお、いいよ。買ってきなさい。」

 その即答にティアラの顔がパッと明るくなった。

 「ねえ、なんの本を買うの?」

 ローザが興味津々に聞いてきた。おれも多少、興味がある。

 「て、天文に関する本よ。最近、きょ、興味を持って集めているの。」

 ティアラにしては、すこし慌てている。めずらしいことだ。


 「どこで買うの?」

 プリムラがおれの前に茶碗を置きながら尋ねた。

 「この前行った世界の大陸に、イースドアという都市があるの。そこへ行くわ。」

 「イースドアか。」

 その都市名には聞き覚えがある。六つのギルドが集まり、その中から選ばれた十二人の評議員が、最高決定機関として都市運営をしているという。軍隊も存在し、一つの国として独立性も保っているとだれかに教わった気がする。

 「交易都市のイースドアね。たしか、港もあるんだったわよね。私もついて行こうかしら。」

 プリムラが何気なく言うと、ティアラが少し驚いたような顔をした。

 「ついてくるのですか?」

 「なに驚いているのよ。そうね。あそこには珍しい食材があるから、興味があるわね。」

 プリムラの頭の中に様々な食材が浮かんだ。

 「交易都市ってことは、なんでもあるの?」

 ローザがプリムラに尋ねる。

 「そうよ。およそ、あの世界で存在するあらゆるものが、あの都市で取引されているわね。」

 「珍しいアイテムとかもあるの?」

 ローザが身を乗り出した。

 「もちろん、鍛冶工房もたくさんあるし、交易も盛んだからローザの見たことのないアイテムもあるかも。」

 「ええ、行きたーい。」

 ローザの目が好奇心たっぷりの子供の目になった。


 「みんなで行ってくればいいじゃあないか。」

 おれの提案にみんなの目が一斉にこちらを向いた。

 「行ってもいいんですか⁉」と、ローザとアリスが同時に叫んだ。

 「ああ、泊りがけで買い物三昧もいいんじゃあないか。たまにはおまえたちだけで行くといい。」

 「ご主人様は?」

 アウローラが尋ねてくる。

 「おれは、留守番をするよ。」

 「なら、私も残ります。」

 と、アウローラが手をあげた。

 「だめ、アウローラも一緒に行くの。」

 ローザが頬を膨らませて、アウローラの提案を却下した。他の娘たちも同調してくる。

 「アウローラ、見え透いてますよ。旦那様と二人っきりになろうとしているのでしょ。」

 プリムラも睨む。

 「そんな(よこしま)な考えじゃあないわよ。その都市(まち)に行ったって、私の興味のあるものはないですから。」

 「闘技場があるわよ。」

 すこしからかうような口調でアリスが発した言葉に、アウローラの眉がピクっと動いた。

 「そうですね。闘技場がありますね。」

 ティアラが街の様子を思い浮かべるような仕草で、アリスの発言を肯定した。

 「それに、飛び入りもOKだったはずよね。」

 アリスのダメ押しのような言葉に、アウローラの琴線が大いに震えた。


 「まあ、外出するのもひさしぶりだから一緒に行ってもいいわね。」

 しぶしぶ同意する様子を見せるアウローラに、アリスがクスっと笑った。それを見て、プリムラがアリスに顔を向けて尋ねた。

 「アリスはどこか行くところがあるの?」

 「決まっているじゃない。」

 アリスが自信たっぷりに胸をはった。

 「え、どこ?」

 ローザが尋ねると、アリスは意味深な笑みをローザに向ける。それを見て、おれも興味がわく。

 「アリスのことだからカジノかなんかでしょ。」

 じらそうとしているアリスの思惑をアウローラが簡単に答えた。それを聞いてアリスが頬を膨らませる。

 カジノか、アリスらしいな。

 そう思いながら皆が羽根を伸ばす姿を思い描く。


 「決まりだな。みんなそろって行ってくるといい。ゆっくり遊んでおいで。」

 おれの一言で買い物旅行は決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ