表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からっぽやみな魔王(おれ)とチートな愛人(つま)たち  作者: 甲陽晟
エピソード2 温泉旅行と魔竜退治
17/97

3 温泉旅行を邪魔されたアウローラの怒りの矛先は…

 「アウローラ、そんなところに立ってないで、俺とくるんだ!」

 しかし、怒りに燃えるアウローラに俺の声は届かない。

 「誅殺だ!」

 そう叫ぶと、アウローラは自分のスカートを半分以上引きちぎり、白い足を顕わにすると、赤いハイヒールを脱ぎ捨て、割れた窓から外へ飛び出していった。

 「……いってしまった……」

 無力感に落ちた俺に支配人が声をかけた。

 「お客様、早く避難してください。」

 見るとレストランには俺と支配人以外だれもいない。

 「あ、ああ」

 アウローラを気にしながらおれは、支配人の後についていった。


 外に飛び出したアウローラは、大通りをわき目も振らずに駆けた。

 大通りの真ん中には、黒竜の巨体が見える。

 彼女に気が付かないのか、建物を破壊しては、その瓦礫を逃げ惑う人々に投げつけている。

 「黒竜(チンピラ)、あの世で後悔しろ!」

 アウローラが別空間の箱(サブスペースボックス)から刃渡り2メートルほどの長刀を取り出した。

 愛刀の朝霧丸だ。

 黒竜がアウローラに気が付くのと、朝霧丸が横に一閃するのがほぼ同時だった。

 黒竜はなにが起こったか、知る間もなく、その首と胴体を切り離される。空中を一回転した首は、そばの建物に頭頂部から突っ込み、それに少し遅れて胴体が大通りに地響きをたてて倒れた。

 粉塵が舞い上がる中、アウローラは朝霧丸を軽く振り、別空間の箱(サブスペースボックス)に戻そうとした。そのとき、耳をつんざく咆哮が辺りに轟いた。

 アウローラがその方向に目を向けると、空に先ほどと同じ黒竜が3匹、こちらに向かって飛んでくる。

 「まだ、いたのか。」

 アウローラの目が残忍に光った。

 戻そうとした朝霧丸を肩に担ぐと、アウローラの背中から羽根が現れた。その羽根がひとはばたきすると、アウローラの身体が猛スピードで上空に飛び上がった。

 3匹の黒竜が飛び上がってくるアウローラに向かっていく。

 それぞれの口が開き、灼熱の息吹(ヒートブレス)が次々とアウローラに向かって放射された。

 それを難なく躱したアウローラは3匹の間近に急接近する。

 黒竜の鋭い爪がアウローラを引き裂こうする。

 そのとき、朝霧丸が一閃した。

 途端に黒竜の指が飛散する。

 激痛の叫びがあがる。

 「指が切られたくらいで、大層な声をあげるんじゃあないよ。」

 怯む黒竜を肩から斜めに袈裟懸けに斬る。

 絶叫をあげて落ちる黒竜を尻目に、後ろから襲い掛かる黒竜の首に朝霧丸が突き刺さり、後頭部に切っ先が突き出る。

 今度は声も上げられず、黒竜は落ちていった。

 残った黒竜は本能的に恐怖を感じたのか、逃げようと向きを変える。

 「自分だけ逃げようなんてさびしいことしないで、仲間と一緒になかよく地獄へ行きな。」

 朝霧丸が縦に一閃する。

 黒竜の動きが止まる。

 慣性で進む黒竜の身体が、真ん中から左右に分かれ、そのまま地面へと落ちていった。

 3匹の黒竜を余裕で切り捨てたアウローラは、冷めた目で地面に転がる黒竜の亡骸を確認すると、自分の戻るべき場所へ戻ろうとした。


 アウローラが黒竜と戦っているとき、おれは支配人に連れられて宿屋の外へ避難していた。

 「こちらに避難小屋(シェルター)があります。急いでください。」

 支配人に先導されておれは、急いで避難小屋に向かった。

 「もうすぐで……」

 おれの方を向いた支配人の言葉が急に途切れた。

 その目が恐怖で大きく見開かれている。

 その視線の先が気になったおれは、その方向に顔を向けた。

 向けた先に、宿屋の屋根の上に乘ってこちらを睨んでいる黒竜がいた。

 「ひ、ひぇ~」

 素っ頓狂な叫びをあげた支配人は、その場にへたり込んだ。

 黒竜の目は明らかに俺たちを狙っている。

 その証拠に黒竜の口が開き始めた。

 灼熱の息吹(ヒートブレス)を放つつもりか。

 「早く逃げろ!」

 と言って、振り返った先で、支配人が気絶して横たわっていた。

 「こんなときに」

 もう一度、黒竜の方に顔を向ける。

 黒竜が口を大きく開けている。

 「まずい。」

 灼熱の息吹(ヒートブレス)が放たれる。


 咄嗟に俺の口から言葉がこぼれる。


 目の前で放たれた灼熱の息吹(ヒートブレス)が、こぼれたおれの言葉とともに切り取られたように消えた。

 その現象に黒竜が戸惑ったような顔をする。そして、今一度、灼熱の息吹(ヒートブレス)を放つため、口を大きく開けた。

 今まさに灼熱の息吹(ヒートブレス)を放とうとしたその口の中に、先ほど消えた灼熱の息吹(ヒートブレス)が突然出現した。

 灼熱の息吹(ヒートブレス)灼熱の息吹(ヒートブレス)がぶつかり、黒竜の口の中で爆炎が広がった。超高熱の炎は黒竜の頭を内部から焼き尽くし、あっという間に黒焦げにして、四散していった。

 頭を失くした黒竜は棒のように仰向けに倒れ、その衝撃で俺達の泊っていた宿屋は押しつぶされてしまった。

 「ああ、せっかくの宿屋が…」

 もったいなさそうな顔をしながら、おれは倒れている支配人を抱きかかえ、避難小屋に運んでいった。


 そのころ、俺の元へ戻ろうと、街の上空を飛んでいたアウローラは、今までとは違う、巨大な魔気(オーラ)を感じ、思わず後ろを振り返った。

 視線の先に全身が青白く輝くひときわ大きい竜が、エンホーデンの上空にホバリング状態で浮かんでいた。

 その後ろに5匹の黒竜を従えている。

 「人間どもよ。我が名はゼネリュウス。魔王ジン様の4支柱のひとり。」

 ラジオが壊れたようなダミ声が街中を響き渡る。

 街中の人間がその姿とダミ声に釘付けとなった。

 「汝らに命ずる。これよりこの地は魔王ジン様の支配下となる。そこに存するすべての種族は魔王ジン様の隷属となる。抵抗は許さぬ。この(めい)、絶対なり。」

 ゼネリュウスは、その緑に輝く眼で街並みを一睨みした。

 人々が恐怖に慄くのを感じ取りながら。

 そのとき、街に倒れている黒竜の姿を目にし、ゼネリュウスは不快の息を吐いた。そして、続けて恐ろしいほどの咆哮を街に向けて放った。

 「抵抗はゆるさぬと言ったはずだ。抵抗すれば絶望が待っているだけだぞ。」

 威嚇の声をあげたとき、自分に近づいてくる人間があることにゼネリュウスは気づいた。

 羽根の生えた女だ。

 真っ赤なドレスに長刀を担ぎ、漆黒の髪を靡かせて、かなりのスピードで自分に近づいてくる。いままで見たこともない種族だ。

 「だれだ⁉おまえは!」

 再び、ラジオの壊れたようなダミ声で、アウローラに向かって叫んだ。しかし、アウローラはその声を無視し、すぐ目の前まで迫ってくる。

 変な威圧感といやな予感を感じたゼネリュウスは、その女の排除を即断した。

 口を大きく開け、その奥から強力な吐息(ブレス)

 真に(エクストリーム)冷たき吐息(コールドブレス)を吐いた。

 青白い吐息(ブレス)がまっすぐアウローラに向かって走る。

 空気中の水分が氷結していく。

 「ふん」

 アウローラが一息吸い込んだ。

 迫るゼネリュウスの吐息(ブレス)に向かって、一気に息を吐く。

 アウローラの息吹に真に(エクストリーム)冷たき吐息(コールドブレス)が四散し、逆流した。

 「うお‼」

 ゼネリュウスとその後ろにいた黒竜にその吐息(ブレス)が吹き付けた。

 一瞬で凍り付く。

 ゼネリュウスは身体を振って、氷を振るい落とすが、黒竜5匹は完全に凍り付き、凍死状態で地面に落ちていった。

 それを見てアウローラが笑う。

 「さすがに親方は丈夫のようね。」

 「おのれ!」

 ゼネリュウスの長い尻尾がアウローラを掃う。しかし、まともに受けたアウローラの腕に弾かれる。

 「!」

 ゼネリュウスに驚きの表情が浮かぶ。

 それは驚異と警戒となり、全力でアウローラを倒そうという決意になった。

 尻尾と太い足、そして凶暴な牙を使い、アウローラに攻撃を仕掛けたが、アウローラはそれを余裕で躱し、弾き、そして態勢の崩した所で、ゼネリュウスの腹部に拳を叩きこんだ。

 「ぐあ!」

 ゼネリュウスが生きてきた中で、味わったことのない激痛に思わずあげた叫びが、ゼネリュウスを恥辱と怒りで満杯にした。

 「おのれ、おんな‼」

 ゼネリュウスの目が紅く染まり、再び真に(エクストリーム)冷たき吐息(コールドブレス)をアウローラに向かって放った。

 今度は以前の倍する威力だ。

 しかし、アウローラは平然としている。

 持っている朝霧丸を回転させると、真に(エクストリーム)冷たき吐息(コールドブレス)に向かって突進していった。

 吐息(ブレス)がアウローラを飲み込もうとする。

 それを回転する朝霧丸が蹴散らしていく。

 その様子にゼネリュウスは驚愕した。

 「なんだ!なんなんだ‼」

 初めて覚える恐怖に混乱しながらゼネリュウスは、アウローラを噛み砕こうと口を大きく開けたが、その寸前、朝霧丸がゼネリュウスの頭を水平に両断した。

 ゼネリュウスの頭の上半分が宙を舞う。

 迸る血潮が自らの吐息(ブレス)で瞬間的に凍結した。

 アウローラは朝霧丸を別空間の箱(サブスペースボックス)にしまうと、ゼネリュウスに興味を見せず、そのまま背を向け、飛び去っていった。

 その後ろでは、ゼネリュウスの巨体が地面に落ちた地響きで、辺りを揺らしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ