表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からっぽやみな魔王(おれ)とチートな愛人(つま)たち  作者: 甲陽晟
エピソード1 おいしいプリンと魔王討伐
13/97

幕間 そのころ…

 五人が魔王城で卵を探している頃、おれは、沼の上の屋敷の中で、昼食を食べたリビングルームの長椅子に身体を横たえ、アイマスク代わりにタオルを顔にかけて、惰眠をむさぼっていた。

 夢のなかで五人に囲まれて、いちゃいちゃしていたとき、おれの頭の中に警報(アラーム)が鳴り、夢から現実に引き戻された。

 おれは、顔からタオルを取ると、警報の原因を調べるため、探索の鏡(サーチオブミラー)を起動させた。

 目の前に楕円形の鏡のようなものが出現し、そこに原因となる場面が映し出される。おれは、それを寝ころびながら眺めた。


 鏡に映し出されたものは、玄関の前に立つ二人の男。

 二人とも革製のベストと丈夫な布で織られたズボン、長年履き続けたであろう薄汚れたブーツ姿で、腰には短剣とポーチをベルトにぶら下げていた。ベストの下は、鎖帷子(チェインメイル)を着こんでいる。

 お世辞にも人相のよいとはいえない二人組は、玄関の前でこの屋敷の中を伺っている。

 一目で盗賊と思える二人は、玄関の扉をそっと開けると、慎重に中に入ってきた。ゆっくりとした動作は、屋敷の中に人がいないか、警戒しているのだろう。

おれは、眠りを妨げられた憤懣と、厄介事にかかわりたくないという思いから、屋敷の警戒装置(セキュリティ)に、二人の始末を頼んだ。


 殺すのは、更なる面倒になりそうだから、追い出すだけでよいと思い、そうした指示をだす。

 セキュリティからの了解の返答を受けると、おれは再び長椅子のうえで眠りにつき、先ほどの夢の続きをと願った。


 くだんの二人は、一階を捜索するため、部屋をひとつひとつ探り始めた。

 「なかなかの金持ちの家のようだな。」

 痩せて、細長い顔にちょび髭の男が、三番目に開けた部屋の中を見ながら、しみじみと感想を述べた。

 「ラウル、早いとこお宝見つけてずらかろうぜ。なんか、気味悪いよ、この家。」

 もうひとりの丸顔に、もみあげの長い男が、ラウルと呼んだちょび髭の男の裾を引っ張りながら語りかけた。

 「臆病だな。ガンツは。大丈夫だよ。おれの探知魔法サーチでは、この屋敷に人はいない。」


 ラウルとガンツは、冒険者と名乗りながら本業は盗人だ。

 依頼を受けながら金持ちの貴族や商人の家から金品を盗んでいる。すばやく金品を盗むことや被害額が些少であることから、被害者から訴えられることがあまりない。しかも、街から街、国から国へと移動し、同じところで仕事ぬすみを続けないということも捕まらなかった理由だ。


 そんな二人がこの屋敷に目を付けたのは、偶然だ。

 仕事をしようとした貴族領が、魔王の軍勢に襲われ、大混乱になり、仕事どころではなくなり、命からがら逃げだした。そして、できるだけ魔人たちの目から逃れるために、森の中を逃走したのだが、その途中の沼地でこの屋敷を発見したのだ。

 はじめは、幻かと思ったが、手に触れられる現実のものと知ると、とたんに盗人根性を発揮し、この屋敷の中に侵入したわけだ。

 鍵もかかってない屋敷に、罠を警戒したラウルだったが、屋敷の中に入っても何も起こらない。ラウルのもつ危険探知エマージェンシー能力スキルにもなにもひっかからない。

 この能力があるからこそ、ラウルはいままで捕まらずにすんだ。ゆえにその能力には絶対の自信を持っている。


 ラウルは、静かに部屋の中に入っていく。そのあとに、ガンツが恐る恐る続いた。

 ここは衣裳部屋のようだ。様々な衣装がクローゼットの中に納まっている。

 「ガンツ、あたりだぜ。」

 ラウルがタンスの引き出しを開けて叫んだ。

 引き出しの中には指輪やネックレス、サークレットなどが収められている。一目見て高価な宝物とわかる品々だ。

 「ラウル、やったな。」

 ガンツは、ラウルの肩越しに引き出しのなかの宝物に目を見張った。

 「袋を出せ。全部、持っていくんだ。」

 ガンツから袋を受け取り、引き出しのなかの装飾品を手に取ろうとした時だった。

 「物質転送トランスポート

 聞きなれない言葉と金属質の声が、二人の耳に届いた。

 「えっ?」

 二人が同時に聞き返したとき、目の前の部屋の光景が消え、まったく別の光景が広がった。


 遠くに森と山が見える。上空は一面の青空。そして、足元は緑色に染まる湖。

 戸惑う二人の身体に急速に重力がかかる。

 そのまま、湖に落下していく。

 水面に叩きつけられる衝撃による痛みと、水中に落ちていく息苦しさで二人は、すぐに両手両足で水をかき、水上へと浮き上がろうとした。

 多少というよりかなりの量の水を飲みながら、ラウルとガンツは水面に浮き上がり、すぐに周りを見渡した。


 周りにはなにもない。

 侵入したはずの屋敷は影も形もなく、ただ、満面の水をたたえた湖とそれを囲む森林が見えるだけだった。


 「侵入者の排除を確認。二十キロ先の湖に転送しました。」

 おれの頭のなかにセキュリティの報告が響く。

 それを煩わしく思いながら、おれは寝返りをうった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ