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7. ベアーズ・ハンドとメクリスト

 熊手、それは、先端が幅広く広がった、よく学校などでも野外用用具箱などで見る、落ち葉などをかき集める道具。


 そして、正月などに見る、商売繁盛を祈念した縁起物。


「ええい、そのような貧弱な武器が手に入ったところで、わらわの敵ではないわ!!」


 ラカスはありったけの力を籠め、エネルギー弾を太蔵に向かって大量に放つ。


 それはいかに素早い太蔵であっても躱せるようなものではなく、これで太蔵の命運も尽きたかと思われたが


「ふん!!」


 太蔵が熊手を一振りする、すると……


「な、なんだと!!」


 ラカスの放ったエネルギー弾は1か所に「かき集め」られ、そのまま互いがぶつかり合い、空中で爆発した。ラカスはその爆発の風圧に一瞬、顔を背けていたが、ラカスが顔を正面に戻すとそこにあったのは


「はぁぁぁぁ!!」


 熊手を振りかぶってラカスに正面から襲い掛かってきた、太蔵であった。


「くらぇぇぇぇ!!」


「くっ!!」


 ラカスも魔王四天王の端くれ、むざむざと攻撃を食らってやる義理はない、すぐさま迎撃態勢を取るが


(!! 魔力が!!)


 太蔵にあまりに簡単に躱されるので、ラカスはずっと全力で攻撃をしていたのだ。さらに、先ほどの攻撃は勝負を決めるつもりで放った一撃、そのため、魔力が足りていない。


(くっそ、魔法を使ってスカートめくれの呪いさえかけなければ……そもそもわらわは何故スカートがめくれる呪いなどをかけたのだ?)


 あー、これはアドレナリンで脳がいっちゃってましたね、間違いない。


「せいやぁぁぁぁ!!」

「ぐはっ!!」


 太蔵がラカスの脳天を熊手で殴る。痛い、実際、すごく痛い。だが、鉄器や鈍器が武器として当たり前のこの世界、太蔵の攻撃はダメージという意味ではそれほどではなかった。


――何故か、ラカスの頭から大量に飛び散るお金を除いては


 太蔵は無言で熊手を横に薙ぐ、すると、そのお金は一つにまとまり、何故か袋に入り、太蔵の手元に集まる。


「ゆ、勇者よ……今のは……?」


「これは、この熊手の効果だ、攻撃1発につき、相手の持っているお金の10%を巻き上げる事が出来る」


「わ、わらわのお小遣いが……!!」


「うん、結構持ってるな。あと数発叩かせてもらえば、暫くの間お金には困らなさそうだ」


「や、やめろぉぉぉぉぉ!! そ、そこの娘!! 勇者がか弱い魔王四天王からカツアゲしてるのじゃ!! 助けてくれ~!!」


「見ないで、見ないで~!!」


「よし、ラカスよ、お前のお金、もらい受ける!!」


「いやぁぁぁぁ!!」


 傍から見ると


 幼い女の子が青少年に襲われ


 青少年は幼い女の子からカツアゲをし


 その横で痴女が「見ないで~!」といいながらパンツを見せつけているという


 この光景を他の人に「魔王四天王と勇者の戦いである」と説明しても首を傾げられるか、鼻で笑われるような光景であったが、運がいいのか悪いのか、この光景についてツッコミを入れる人間はそこに一人も居なかった。


***


「わ、わらわのお小遣いが~!!」

「所持金の7割くらいで勘弁してやるか。3割もあればおこちゃまのお小遣いとしては十分だろ」

「見ないで、見ないで~!!」


 数分後、そこにはカツアゲされ泣き崩れる幼き魔王四天王と

 カツアゲで懐が温まりホクホク顔の勇者と

 その横で痴女が「見ないで~!!」と言いながらずっとパンツを見せつけている、そんな光景が広がっていた。


 魔王四天王ミセビ=ラカスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の勇者を除かねばならぬと決意した。


「くっくっく、だがわらわの魔力は回復した!! これで終いじゃ!! 覚悟しろ、勇者!!」


 ラカスはそのまま魔法を展開、さらに太蔵の攻撃が届かないギリギリの間合いを取る。遠距離では魔法は避けられるか防がれる、近距離ではカツアゲされる、ならば、勇者の攻撃が届かない範囲で、ものすごく早い攻撃を繰り出せば……勝機はある!!


「なあ、俺が何故、この熊手を武器にして平然と戦っていると思う?」


 魔法の攻撃を用意しているラカスに向かい、太蔵はそう告げる。ラカスはそんな太蔵の行動を「時間稼ぎか?それとも、命乞いか?」などと思って見ている。


「どうした?命乞いか?お金を返して土下座すれば命までは取らないでやるぞ?」

「見ないで、見ないでよぉ~!!」


 散々ボコボコにされたはずなのに、簡単に許してくれる魔王四天王様である。


「違うな、今から俺に倒される四天王に、せめて倒される理由を教えてやろうと思ってな」

「やだぁ、見ないでよぉ~!!」


「倒される、だと?何故そう断言できる⁉」

「えーん、見ないでぇ~!!」

「そこのパンツ丸出し痴女は黙っておれ!!」


「俺の居た世界では、この『熊手』というのは、小さい頃から学校などで使う機会が多くてな。それでもって、俺の能力は、その幼い頃の力を増幅させたものなのだ、つまり」


 太蔵はラカスに向け、熊手を突き出す。ラカスも構えるが、ラカスはギリギリ攻撃の射程外に出ているのだ。仮に当たったとしても、軽く掠る程度であろう。


「俺の特殊能力と、最高にマッチするんだよ!!」


 太蔵は先ほどのように熊手を握っておらず、熊手の先端をつまむような形を取っている、そして


――ペラッ


 太蔵はラカスに突き出した側の先端で、スカートをめくる。


「なっ!!し、しまった!!」よもや自分のスカートをめくってくるとは思わなかったラカスが驚愕の表情をしている。

「ほう、これは……」パンツの柄を確認した太蔵は感激のあまり言葉が出ない。

「うぅぅ……えーん」誰も相手してくれなくなったミルナは若干ガチ泣きである


 ラカスのパンツの柄、それは


――LOVELY ピンク ハート パーンツ!!


 いつものカタコトさんがいつものようにそう告げたかと思うと


――アクマ 娘の LOVELY ピンク ハート パーンツ!!

――ULTRA RARE パーンツ!!

――LOVE ハート パーンツ!!

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