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6. ベアーズ・ハンド

「あっはっはっは!どうした、勇者よ!!」


「くっ!!」


 ラカスは間隙を入れずに太蔵に向かいエネルギー弾を飛ばしており、太蔵はラカスに近づけないでいる。


「こ、この!」


「ハッハッハ!!ふん!」


 ミルナが弓で太蔵を援護しようとするが、ラカスはその矢をことごとく撃ち落とす。


「どうしたどうした!わらわに抵抗して見せろ、勇者!!」


 対してラカスの方は余裕の表情であった。だが


(まずい、もうそろそろ村人が温泉旅行から帰ってくる!! 今月お小遣いが厳しいから1泊2日にしたのは失敗だったな)


 実はラカスも余裕があったわけではない。太蔵が予想以上にしぶとく、素早いのだ。


「ミルナ! そんなハエほども役に立たない援護はいらん! さっさと村人の家に潜入し、テキトーにパンツ盗んで来い!」


「タイゾー、あんた、パンツ見たいからって私を犯罪者にする気⁉」


「違う!! パンツが見たいんじゃない!! スカートめくりがしたいだけだ!!」


「どっちでも一緒じゃない!!」


「ええい!! わらわがそこそこ本気で攻撃してるのに、その中で漫才始めるんじゃない!!」


 地味にプライドが傷付くラカスであったが、ふと気が付いた。

――勇者はなぜ、パンツにこだわるのか……?

――その上でパンツ窃盗まで命じながら、パンツには興味ないという……


 なるほど、そういう事か!!


「勇者よ、わらわは今、お前の力をだいたい理解したぞ」


「なん……だとっ……」


「おぬし……スカートめくりをすることで何か引き起こす事が出来るのだな?」


「!!」


 太蔵の目が一瞬大きく見開かれたのを見て、ラカスは勝利を確信した。そうかそうか、それがこやつの逆転の目、攻撃の要なのだな、と


「う、うぅぅ、嘘でしょ⁉ こんな変態能力を簡単に見破るなんて……やはり魔王は変態……」


 ミルナが、能力を見破ったラカスを信じられないといった目で見ているのを見て、ラカスは余裕しゃくしゃくといった表情であるものの、実は内心、信じられなかった。


(言っておいて何だが、わらわもびっくりだ……なんだその能力は!!)


 だがまあ、と、ラカスは気を取り直して構えた。先ほどと違う構えに、ミルナと太蔵が警戒をしていると……


「ようはスカートをめくれなくすればよいのだな!! 食らえ!!」


 先ほどのエネルギー弾とは違い、何か目的を持った魔法だ。一体何をする気だ⁉ 太蔵とミルナはラカスを最大限警戒する……だからミルナはその変化に気が付くのが遅れた


「え? なに? ちょ!」


「!! しまった、狙いはミルナか! ミルナ、大丈夫……か?」


 太蔵の後方に控えていたミルナが妙な声を上げたので、太蔵が心配して声をかけると、そこに居たミルナの


「ちょ、この服装ってまさか!!」


 スカートの防御力が下がっていた。

 服の材質とかには無頓着で何と例えればいいのか分からないのだが、例えるなら、綿と麻で作られたミディ丈スカートが、ひざ丈のチュールスカートになったような感じだ、と太蔵は思った。


「くっくっく、まだまだわらわのターンはおわってないぞ!」


「なんだと!! まだ何かやる気なのか⁉」


「ふっふっふ、それ!!」


 ラカスが魔法を展開すると、ミルナの居る地面から上方向に向かい、風の流れが発生し、スカートが


――ばささっ!


 とめくれ上がり、常にパンツが見える状態となった。


「勇者よ、貴様は自分でスカートをめくれないと力を使えないのだろう?だからスカートをめくれないよう、わらわが先にスカートをめくっておいてやったぞ!!ハッハッハ!!」


「くっ!! ミルナ! 何とかしろ!」


「だ、だめ、この風、ずっと私のスカートをめくり上げてくる!!」


「ハーっはっはっ!!その風と軽いスカートの呪いは、わらわを倒さねば解けぬぞ! これで貴様も終わりだ! 勇者!!」


「くっ!!」


 かくなる上は、ミルナだけでも逃げさせなければ、と太蔵は考えた。

 スカートが薄くなる呪いと、常にスカートが風でめくれる呪いは解けないだろうが、全ては命あっての話だ。……そういえばパンツ1枚しか持ってないと言ってたな……そこまでは考えないようにしよう。


「やぁぁぁ、やめて、見ないで、見ないでー」


 ミルナはずっとスカートをまくり上げられている事に耐えられず、涙声になっている。かくなる上はミルナだけでも逃がそうと、太蔵はミルナの方を見る。


「ミルナ、お前だけでも逃げ……」


「見ないで!! 見ないで―!!」


 そこには、かわいい子が、泣きながら、めくれ上がるスカートを両手で抑え、パンツを隠そうとしている姿があった。懸命に隠そうとしている、だが、隠れておらず、太蔵は数時間ぶりにミルナのクマさんと再会を果たしたのであった。


――この 光景 アリか ナシか で 言えば


 唐突に響き渡るカタコト。その言葉を聞いた回数は、太蔵は数えきれず、ミルナはさっき聞いた。ラカスは初めて聞いた声のため「なんじゃ? 他にもわらわの敵がいるのか!?」などと狼狽えている。


――KO RE HA KO RE DE A RI !


「よっしゃきたぁ!!」


 特殊技能「これはこれであり」が発動した瞬間であった。この能力は、太蔵が自らスカートをめくった場合でなくとも、その光景が太蔵の心に響いたら限定的ではあるが武装が用意される能力である。


 それでも、太蔵は先ほどのクマの能力を知っている。その力を一部でも使えるのなら、ラカスを撃破する事も可能だろう。


 太蔵の右手に光が収束し、棒状のものが握られる。その武器は、植物で出来ているようだ。先端は先割れしており、例えるなら地面に落ちた枯れ葉などを寄せ集めるのに適している形となっている。


「タイゾー、それ、なに?」


「ああ、これは……」


――KU MA DE !


 熊手、だった。

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