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5. ミセビ=ラカス

「いやー、やっと到着したわねー! ゆっくり眠りたいわー!!」


 ミルナが疲れた様子でそう呟く。道中、運よく魔物等には遭遇しなかったものの、先ほどの戦闘からほぼ休まず村まで歩いて来たのだ。やはり疲労もたまっており、日も傾き始めている。


 だが、太蔵は冷静に村を眺め、そして首を傾げた。


「おかしい……気配も、声も、匂いもしない……」


「気配? 声? 匂い?」


「ああ、女性の気配も、スカートの声も、パンツの匂いも……」


 ミルナは太蔵をジトっとした目で見てから


「変態!!」


 と一言告げるのだ。


「でも、太蔵の変態は置くとしても、この時間帯ならお家の煙突から煙が出てたりするものなのに……」


 そう、生活している様子が見えない、どういうことだ? とミルナは首を傾げている。


「人を見た事無いとか言ってた割には詳しいな」


「エルフの村も大体同じだからね。それより、休むところの確保、出来るのかしら?」


「さーてね……とりあえず行ってみよう」


 と、太蔵が村に向かって歩いて行ったところ……


ーースッ


 と急に周囲の空気が冷えた気がした。


「な、なんなの?」


 ミルナが訳も分からずにそう呟くが、太蔵には分かった。


 間違いない、この気配は……


「この気配、スカートとパンツだ!!」


「ふっ、どうやら、わらわの気配を感知できる程度の実力はある……は? スカート? パンツ?」


 奥からもったいぶって出てきたその女は……


「まあよい、女神が差し向けた勇者などと言うのは貴様だな?」


 身長はちんまくてかわいらしく


「おい、何か反応せんか!」


 こう、お嬢様的なロールのツインテに角が生えており


「無視するな!! わらわにもっと構わんか!!」


 この、高圧的な発言をしているようで、その実寂しがりなかまってちゃんで


「むー!! い い か ら こっちを向け!!」


 ちょっと涙目で八重歯なところが


「ああ、すまない。じゃあ一言いいか?」


「な、なんだ?」


 無視を続けられたていたと思ったが、反応が返ってきたことにホッとしたようだ。だが次の瞬間、太蔵の口から


「かわいい、スカートめくらせてくれ!!」


 ……


 …


「「はぁ⁉」」


 唐突な太蔵の発言に、ミルナとその女の子がハモった。


「な、ななな、何を!!」


「そうよ、流石に今のはタイゾーがおかしいわ!!第一」


 ミルナはその女の子を指さし


「こいつ、まだ自分の素性も、名前も名乗ってないのよ!! こんなに長く無駄話しておいて、自分の情報を一切話さないなんて、きっと、私たちの敵よ!! しかも、それ相応の強さを持ってる可能性があるわ!!」


「わらわが強いのは否定せんが、わらわが名乗れなかったのはお前らが無視するからじゃ!!」


 その少女はこほん、と咳払いをして


「わらわは魔王軍四天王が一人、ラカス!! ミセビ=ラカスじゃ!! 勇者よ、悪いがここで沈んでもらおう!!」


「!! お前、まさか、そのために村の人を⁉」


 先ほどから村に人の気配が無い、そして、待ち構えていた諸悪の根源、魔王の四天王、ということは……


「クックック、気が付いたか……そうだ!! あの村の村人は老人から幼児まで漏れなく……」


 ゴクリ、と喉が鳴る。まさか、ラカスの手に掛かってしまったのではないか……と、太蔵とミルナの頭に嫌な予感が頭をよぎる。


「わらわのポケットマネーで温泉旅行に招待したのじゃ!! 間もなく帰ってくる!!」


 平和的な子でよかったなー。


「だが、貴様の力はあまりに邪だ!! 我らが魔王様の教育上よろしくない!! よって、ここで殺す!!」


「うんうん、応援してるわ!! ラカス、是非ともタイゾーを真人間にしてあげて!!」


 一々正論をぶつけてくるラカスにミルナが同意してしまっている、だが、殺す、と言われたのだ。


「悪いが、俺はまだ世界中のスカートをめくっていない……ここで死ぬわけにはいかない!!」


 そう宣言する屋否や、タイゾーはファイティングポーズを取りながらミルナに


「おい、ミルナ! 俺が今から時間を稼ぐ、お前は今からパンツを履き替えろ!!」


 そう指示を飛ばす。だが、ミルナの反応が微妙だ……太蔵に嫌な予感が走った。


「……ないの……」


「え? 何て?」


「私、パンツは今履いてるこの1枚しか持ってないの!!」


「おま、それじゃ、道中どうしてたんだ!!」


「1日履いたら、次の日は洗って干しながら歩いてたの……」


「え?つまり、その時はパンツは……」


「履いてないわよ……」


 ……


「ラカス様、どうか、俺の事は見逃してくれないでしょうか?」


 太蔵はラカスに対し、命乞いを始めた。先ほどのグリズリーですらスカートめくりの力が必要だったのだ、ラカスと戦う事になるとするなら、最低でもあの武装は必要だ。

 だが、今は武装が無いため、今戦うと確実にやられてしまう。マズい!! そう感じ取ったからこその、完全な命乞いである。


「私はどこに出しても恥ずかしくない好青少年です!! どこから見ても、魔王様の目指すべき素晴らしい人物としてあるべき人間像を体現していると思います!! 何卒、よろしくお願いします!!」


「先程のお主とそこの娘のやり取りを見て、わらわが騙されるとでも思ったか⁉」


 無理だった。

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