〜悲しみの先に〜 残された僕にできること。
ありふれたいつもの日常。
当たり前にずっと続くと思ってた。
でも、違ったんだ。
なんの前触れもなく突如 奪われた幸せの日々。
あの日、
あんな事が起こるって分かってたら、
今もみんなで笑えていたのかな。
第1話 悲劇
これは、桐谷世七が高校1年の時に起きた出来事。
世七はいつもの様に自分の部屋で寛いでいると
コンコンっと扉をノックする音が聞こえる。
「セナ 入るよ?」
世七の姉・桐谷美咲が入ってくる。
「みさねぇ どうしたの? まさか・・・」
「へへ。セナ感がいいね。そのまさかだよ。
私の明日の服装選んで。」
「明日は、家族で買い物に行くだけだよ?
いつも通りでいいじゃん。」
「何言ってるの。明日は私とセナのデートだよ。」
笑みを浮かべて、楽しそうに話す美咲。
「違うよ みさねぇ。ただの家族で買い物ですよ。
てか、僕より4つも年上なんだからそろそろ…」
冷静なトーンで返答する。
「ガビーン!!!!!! 私はこんなにセナが大好きなのに。
ブラコンなのに……もう泣いてやる。」
床に座り込み泣き始める。
「みさねぇ。自分でブラコンとか言わない。
あと、服選ぶから泣かない。」
するとすぐに立ち上がり、セナに2着の服を見せる。
「やったー! 嘘なき作戦大成功。
じゃぁ、どっちがいいかな。
右:赤のセータに黒のズボンか左:青と白のワンピース。」
「嘘なきは気づいてたから大丈夫。
じゃぁ、とりあえず左かな。」
嘘なきがバレて少し同様している表情みせる。
「嘘なき? なんのことかな。ははは。
じゃぁ、こっちのワンピースね。
ありがとう。セナ。
明日は一緒にショッピングモール内周ろうね。」
「うん。多分、明日も
父さんと母さんは2人でデートするだろうから。」
その返事を聞き、なぜかドヤ顔を見せる姉が口を開く。
「ほらね。デートになったでしょ。」
「だからみさねぇ。
僕らは兄弟だからデートにはならないよ。
もし、これがデートになったら世の中の
浮気や不倫は兄弟間でも該当しちゃって。大変になるよ。」
美咲はさっきまでの笑みが消え、真顔になる。
「さすが高校生 高度なツッコミ。でも馬鹿だから処理不可。」
「もうみさねぇ。いつもそれで誤魔化すんだもんなぁ。」
2人で笑い合い、温かく和やかな空気が2人を包む。
「明日いっぱい楽しもうね。風邪引いちゃダメだよ。」
「うん。みさねぇもゆっくり寝なよおやすみ。」
「おやすみ。セナ。」
―翌日―
世七と美咲がリビングへとやってくると、
父と母はすでに出掛ける準備
いや デートの準備をしていた。
父「お前たちも早く準備しろよ。」
母「お父さんがおいしいお昼ごはんを
ご馳走してくれるみたいよ。ねぇあなた。」
いつも以上に仲の良いイチャイチャする2人を。
苦笑いでで対応する世七と美咲は急いで支度を行った。
そして、車へと乗り込み、行き先はショッピングモールへ。
世七「ところで父さんお昼ごはんなに?」
美咲「私も気になるよー。お母さん知ってるでしょ。」
母 「少し豪華な焼き肉だそうよ。」
美咲「やったぁ〜。でも…夕ご飯白ご飯だけとか。」
父 「美咲 感がいいな。そのとおりだ。
だから、しっかり食べておくんだぞ。」
世七「まじで…………それは………嫌だなぁ。」
2人はただただ口をあけ固まっていた。
すると、父も母も笑いながら
母 「ただのお父さんの意地悪よ。真に受けちゃだめよ。」
父 「いつまでたってもお前たちをイジるのは楽しいな。」
そんな楽しい会話をしている間に目的地へと車は到着。
ショッピングモール内は多くの人で賑わっていた。
桐谷家は、時間帯もお昼だったことから、
先に昼食をとる事にし、モール内でも有名な焼き肉屋へ。
世七「父さん まじでこのお店?」
美咲「すごく高そうなんですけど…」
その店は店内だけではなく、外観も豪華だったことから
世七・美咲そして母までもが驚きを隠せずにいた。
っとそんな家族の表情も気にすることなく、
父は入口へと向かい、席へと店員に案内される。
父 「何してる。 早く行くぞ。」
美咲「待ってよ。お父さん!」
父の後を追いかける3人。
席につくと父は程よい量を注文し、食べ始める。
世七「ヤバッ! めちゃくちゃおいしい。」
母 「タンもすごくコリコリで美味しいわ。」
そんな家族の姿を見て、幸せそうな表情を見せる父。
父「気にせず、お腹いっぱい食べていいからな。」
美咲「ほんとにおいしい。しあわせ〜。
でもなんで焼き肉になったの?
お父さんお酒飲めないじゃん。しんどくない?」
父 「うん。ビールほしい。でも、車で来とるし
これからデートやからな。酔ったらなぁ……」
世七「夜のビールもなくなるね。じゃぁなんで焼き肉にしたの?」
父 「母さんのリクエストだからに決まっとるやろ。」
世七と美咲は「あ〜」と頷くと共に
他にも理由があると母を見てすぐに理解した。
家族仲良く色々な会話をしながら、楽しい時間を過ごしていた。
世七「もうお腹いっぱい。食べれない。」
美咲「私も〜。大満足。」
父 「それはよかった。よかった。
じゃぁ、ここからは母さんとデートしてくるから。」
母 「今が14時だから19時には、駐車場の車の前に集合ね。」
そう言うと会計を済ませ、父と母は人混みへと消えた。
美咲「じゃぁ、私達もそろそろ散策行こうよ。セナ。」
世七「そうだね。じゃぁ みさねぇ。どこ行きたい?」
そう言って世七と美咲もショッピングモール内を散策し、
美咲が帽子が見たいと言うことで、ファッションフロアで
足をとめる。
美咲「どれにしよ〜。ありすぎて決まんないよ。
あっ!そんな時はセナぁ 帽子決めてぇ」
弟のセンスに身を委ねる美咲。
世七「じやぁこれ!」
美咲が自分で決めれなく、
声がかかるのを予測していた世七は
すぐ商品を美咲の元へ持ってきた。
美咲「えっ!」
世七「前々から新しい帽子ほしいって言ってたから。
大体 目星つけてたんだ。」
美咲「そんなことされたらもっと好きになるよ〜。」
世七は、帽子を持ちレジへと向かい定員に渡す。
美咲「お会計は私がするからいいよ。」
世七「あれ、今日は、デートじゃなかったの?
だから、帽子くらいは勝手にあげる。」
その言葉にいつになく、顔を赤くして、喜ぶ。
美咲「セナ 愛してる。」
その後も買い物をしながら
兄弟仲良くモール内を楽しく周る。
美咲がクレープ屋を見つけ、仲良く食べていると、
大きな音と揺れが店内中に響き渡る。
美咲「えっ。なに? すごい揺れた地震?」
世七「なんかやばくない?」
その時・・・
美咲「セナ 危ない!」
その声と共に美咲が世七におおい被さり、
世七の視界は真っ暗になる。
第2話 孤独と悲しみ。
世七は爆弾で大きな被害を受けたショッピングモールから
病院へ搬送された。
Dr「頑張れ、戻ってこい。死ぬな。戻ってこい。」
必死に手術で命を助けようと最善を尽くす主治医
Dr「頑張れ。頑張るんだ。桐谷くん 死ぬな。死ぬんじゃない。」
オペは8時間以上かかり、手術は無事成功
その頃世七は暗闇の中にいた。
世七「ここは…どこ? なんでまっくら。」
すると、目の前に父が現れ、
父「お前はこっちに来るんじゃない。世七、生きるんだ。」
後ろから母が抱きしめるかのように
母が「大切な時期に側にいてあげられなくてごめんね。強く生きて。」
世七「えっ! どうゆうこと? わからないよ。」
母も父も世七からゆっくり離れていく。
世七「どこ行くの? 待ってよ。待って。
どうゆうことか分からないよ。待ってよ。父さん、母さん。」
父「強く生きろ。世七。強く…強く生きるんだ。」
手術を終えたものの、世七の意識が戻るのに1ヶ月かかる。
(1ヶ月後)
世七「……………………。」
意識がもうろうとする中、自分の状況を理解しようと辺りを見渡す。
世七「………病院? なんで?」
(ガラガラガラ…)
看護師がやってくる。
看護師「うん。安定してる。あとは目を…」
ふと顔を見ると意識が戻ってるを見て、すぐナースコールで
主治医を呼ぶ。
看護師「すいません。桐谷さん意識戻ってます。すぐ谷Dr.を」
するとすぐにドクターがやってきた。
谷Dr.「桐谷さん。桐谷さん 私の声聞こえますか?」
世七「はい。聞こえます…」
谷Dr.「よかった。意識がもどって
君は1ヶ月も寝ていたんですよ。」
世七「そうなんですね。。。あの…僕はどうして病院に?」
谷Dr.「はい。その説明もしなきゃいけません。が
今はまだ目が覚めたばかり、意識がはっきりして
食事が取れるようになった時、全てをお話しします。
ですから、今はもう少しゆっくり休んでください。」
そう言い残すとDr.は部屋を後にした。
その後も世七は、病院スタッフに状況を聞くが、
口を揃えて「谷Dr.より、お話しされますので、
お待ちください」とのことだった。
そこから意識が安定し、食事も取れるようになるまで
半月の時間が必要だった。
谷Dr.「よくここまで回復しました。ほんとによかった。
ですが、ここからリハビリが必要ですからね。」
そう笑顔で伝えると、世七は真剣な表情でDr.に言い寄る。
世七「そろそろ教えてくれませんか?」
すると笑顔だったDr.は真剣な顔へと変わり、
Dr.「わかりました。ただ気をしっかりと待ってください。
君には深刻な話しになります。」
そう告げると、ナースに小さな声で何かを話した後
椅子へと腰掛け、ゆっくりと話し始めた。
今の世七の体の状況から始まり、
ショッピングモールで起きたこと
大量殺人犯が捕まるのも時間の問題と悟り、
最後にショッピングモールで大量の爆弾を使った自殺で
それに桐谷家を含めた多くの被害者が出たこと
そして、軌跡的に助かったのは世七を含め10人程度
だったことが谷Dr.の口から話された真実だった。
世七「じゃぁ、父さんや母さん 姉さんは…」
Dr.は黙って頭を下げ、
谷Dr.「すまない。私が救えたのは君だけだ。
君のご家族がここに運ばれた時にはすでに…」
世七はDr.のその言葉を聞き、意識がない時に見た
父と母の言葉が繋がり、大粒の涙と共に混乱で
パニック状態になる。
世七「どうして…父さん…母さん…みさねぇ。
1人でなんて生きていけないよ。どうして…
先生どうして僕だけ助けたんだ。1人で生きるくらいなら
一緒に死にたかった。助からない方がよかった。」
その言葉に穏やかなDr.が世七の両肩をしっかり持ち声をあげた。
谷Dr.「君の気持ちは理解できる。だが、亡くなった人達は
君より小さい子供もいたんだ。君はその子達の分まで
強く生きていかなきゃ他の人たちが報われない。
君の家族だって。同じだ。」
世七「そんなのきれい事だ。家族をみんな失った。
ただ僕は1人で生きていくくらいなら
死んだほうがマシだ。」
谷Dr.「君が見つかった時、お姉さんが君を庇うように
君の命を守るような体制だったそうだ。
君は、お姉さんのその決死の行為すら無駄にしたかったのか。」
それを聞いた世七は、頭に美咲との思い出が走馬灯ように
流れ、何度も「みさねぇごめん。」と繰り返していた。
その日からの世七は放心状態の日々が続く、看護師の呼びかけに
対してもうわの空、食事も喉を通らない状態だった。
只々過ぎていく時間。よく時間が傷を癒やすと言うが、
あまりに大きい世七の心の傷は癒やされることはなく、
それでもなんとかリハビリや食事は取るようになり、
退院した時には1年以上の時が経っていた。
1年半ぶりに帰る我が家は、より一層世七に孤独感を与え
すぐ自室へとこもり、ただ美咲に対し、
世七「みさねぇほんとにごめん 僕のせいで 」
と繰り返すばかりだった。そして世七が
死のうと思ったとき…
「セナ。セナってば」
それは、美咲の声だった。幻聴まで聞こえてきた世七は
さすがに笑い
世七「やばっ 幻聴まで聞こえてきた。
でも久しぶりにみさねぇの声だ。すぐ行くね。」
すると、また
「セナ。セナってば 顔上げて」と聞こえ
世七が顔を上げると…そこには 美咲の姿が
第3話 再開とそして…
涙を流しすぎた世七の目は腫れていたが
そこに立っていたのは、紛れもなく美咲の姿だった。
霊感など全くない世七は目を見開く。
美咲「お父さんもお母さんも今のセナじゃ心配だって。」
世七「えっ!」
美咲「私も、見てられなくて来ちゃった。大好きなセナが
そんなに泣くから…。仕方ないけど…。
セナ生きててよかった。ありがとう。」
悲しい表情をする中にも笑みを浮かべていた。
美咲「でも…今、死のうとしたでしょ。ダメだからね。」
真剣な表情ではっきりと伝えた。
世七「みさねぇ。ごめんなさい。僕をかばったせいで…」
美咲「いいの。私はセナに生きていてほしかったから。
だから。もう私のことで悲しまないで。強く生きて。」
世七「先生たちにも言われた…でも・・・」
美咲「世七が前を向けるその日まで側にいてあげる。
そんなに時間はないけど…世七も頑張ってその間に。」
そう言うと世七の隣に座り、頭を撫でるかのようにし、
いっぱいの笑顔でほほえんだ。
触れることはできないが、世七は美咲のぬくもりを確かに
感じていた。
その日から少し不思議な幽霊の姉と世七の期限付きの生活が
始まった。
次の日
世七「みさねぇ!」
何かを不安に感じたのか不意に飛び起きる世七。
美咲「ちゃんといるよ。大丈夫。」
やさしい笑みを浮かべて返事をする。
朝、テレビを点けるとあの事件跡が偶然にも映し出された。
美咲「今日 セナ学校は?」
世七「まだ行く気がしない。」
少し難しい顔をし、口を開く
未咲「じゃぁ お願いあるんだけど…事件跡に連れて行って」
思わぬ美咲の提案に表情が暗くなる。それはそうだ。
自分の家族を…自分が意識不明になった場所なのだから。
美咲「どうしても行きたいの。わたし死んじゃったから…
よくわからないままなの。」
少し、考え…
世七「うん。わかった。行こう。」
そして、2人はショッピングモールの事件跡地へと向かった。
そこには、テレビでは、伝わらないほど悲惨な光景が
広がっていた。その光景を目にした2人は言葉を…なくし
息苦しさすら感じていた。
世七「こんなひどい事件だったんだね。
犯人は生きていてほしかった。死より苦しいものになれば…」
美咲「大丈夫。今も地獄を味わってる。全てを後悔する程の地獄を」
唇を強く噛み、世七以上に怒りを表情が表していた。
世七「どうゆうこと?」
美咲「私達を殺した犯人は、死の瞬間の苦しみを何度もくり返し
焼ける痛みと刺される痛みを意識が失うことのない所で
行われてるから。
まぁ それでも怒りは収まらないけど」
世七「どうして、そんなこと知ってるの。」
美咲「無差別に奪われた命は、その奪った犯人の状況を
聞かせてもらえるのよ。少しでも念を浄化できるように」
死後の世界の状況を真剣に伝えた。
少しでも弟の怒りが収まるように
2人が話していると、目の前をおばあさんがスーと通って
跡地の真ん中辺りで何かを探し始めた。
世七「どうしたんだろ?」
おばあさんに駆け寄る。
世七「どうしたんですか?探しものですか?」
おばあさんはその声に反応することく、探し続ける。
第4話 亡くなった者の未練
ショッピングモールの真ん中で何かを探すおばあさん。
セナが何度か声をかけるが、反応がない。
セナは、美咲の顔を見て、ハテナの表情をしていた。
美咲「おばあちゃん 何か探してるの?」
おばあさんは美咲の顔を見ると…
「あんたもこの場所でかい! お互い未練が残るねぇ。」
美咲「はい。おばあちゃんはここで何してるの?
おばあちゃんの未練と関係ある?」
「お前さんには関係ないからほっといとくれ。自分で探せる。」
世七「何を探してるの? 僕も手伝うから教えてよ。」
はやり、世七の声には反応を、見せないおばあさん。
美咲「おばあちゃん 弟の声聞こえてるよね?
セナはおばあちゃん見えてるから大丈夫だよ。」
するとびっくりした表情を見せ
「この子ワタシが見えてんのかい!なんてこった。
お前さんは優しいこのようだね。
でも大丈夫。私のことは気にせんでおくれ!」
世七「じゃぁ どうして? そんな寂しそう顔するの。
せめて教えてよ。おばあさん。」
美咲「教えてよ。おばあちゃん 私知ってるよ。
あの世へ行くとき、
おばあちゃんが迷わずここに残った事」
「お前さんたちは、どっちもおせっかいだね。」
気持ちの強さに負けたのかゆっくりと話し始めた。
「ワタシは、あの日、孫のプレゼントをここに買いに来たんだよ。
そこで巻き込まれ、死んでしもた。
でも、孫と約束したんじゃ 絶対にばっちゃんが買ってやる。」
話しが進むとおばあさんは涙を流していた。
そこには、お孫さんへの強い想いと
約束を守れなかった悲しみが入り混じっているように感じる2人。
「ワタシは普段から孫に約束は守れ、
守らなければ嘘つきになってしまう。それはかっこ悪いぞ
ずっと話してきたのに、
ワタシが約束を守れてない…それが
1番嫌なんじゃ。辛いんじゃ。
だからせめて買ったものだけでも
見つけたくてな。それがワタシの未練なんだよ。」
その時、世七は初めて知ったんだ。
残された人は失った悲しみは想像もできない程つらい
けど、亡くなった人も同じくらいに
いや、もしかしたらそれ以上に辛いんだ。と言うことを。
第5話 叶えたい思い
世七「僕に教えて。なにを探してるのか。
でお孫さんへ渡しに行こうよ。」
美咲「ちょっとセナ。」
世七「だって、おばあちゃん可愛そうだよ。約束守れないのは
おばあさんせいじゃない。
でも、そのせいでおばあさんは、行かなきゃいけない所に
行けない。可愛そうだよ。」
美咲「セナぁ。」
おばあさんは、その言葉に少し気持ちが楽になったのか
とても優しい顔に変わった。
「ありがとう。ほんとに…ありがとう。」
美咲「ところでプレゼントって?」
「くまのぬいぐるみでねぇ 少し特別なやつなんだと。
たしかクマの足に20と書いてあってな。」
そのおばあさんの話しを聞いて、世七も美咲もいくら
探してもない事は容易に想像がついた。そして、おばあさんも
その事に気づいていることも…
「ここにはもうない…そんな事わかっとる。ぬいぐるみなんじゃ
一緒に燃えてしまうのは、当然じゃ。だから…」
世七「じゃぁ 他のお店に探しに行こう。同じの探して
渡しに行こうよ。」
その言葉に美咲もおばあさんも目を大きくあけ、
ビックリしていた。
ただ 世七自身も“アニバーサリー限定“早々すぐには
見つからないだろうと言うことは…
その日から世七は虱潰しにそのくまを探した。
そして…捜索から1週間かかったが同じものを見つけことができた。
美咲「よかったね。見つかって。でもここからどうするの?」
世七「まったくわかんいけど…とりあえず行ってみよう。
あとおばあさん見つけるの遅くなってごめんね。」
おばあさんは世七の気持ちに涙しながらありがとうっと微笑んだ。
そしてお孫さんの住所をおばあさんに聞き、むかった。
お孫さん宅の前着くなり、すぐインターホンを押す。
(ピンポーン ピンポーン)
「はーい。どちら様でしょうか?」
世七「すいません。いきなりで申し訳ないです。僕、
数谷清おばあさんとのお約束をしまして…
お預かり物を持ってきたのですが…」
「母とですか? 少しお待ちください。」
お待たせしました。と出迎えてくれたのは、おばあさんの
娘さんだった。
「ところで随分とお若いですが、母とはどちらで?」
世七「あのショッピングモールです。」
「えっ! どうゆうことでしょうか?」
美咲が心配そうに見つめる
世七「あのショッピングモールで事件のあった日に
おばあさんと会い、お預かりしました。
それをお持ちしたんです。」
「じゃぁ、あなたもあの場にいて、母と会ったにも関わらず
助けず、人形だけ預かったということですか?」
事実とは、違うでも頷くしか選択がなかった。
「どうして…どうして…母を助けてくれなかったの?
確かにこの人形は母が息子俊之と
約束したものなのは知ってます。」
残された者の悲しみが、今の世七には痛いほど苦しいほど
伝わってきた。
「でも、それでも私は、たすけてほしかった。」
今の世七にかける言葉は見つからなかった。
自分が今日来なければ、この涙は流さずに済んだのだから
その時、孫の俊之が携帯を持ってヨチヨチと歩いてきた
そして、偶然にも携帯のカメラでセナを写した。
「バァバ ばぁば」
その言葉に反応した俊之のお母さんが携帯をみると
そこにおばあさんが写られていた。
「どうして母が…どうしてあなたの後ろに。。。」
カメラ越しに写された事でセナは…全てをそのまま伝えた。
自分もあの事故で大怪我を負い、つい最近まで病院にいた事
あの事件で同じように家族を失ったこと
このプレゼントのことを知ったのは一週間前で
亡くなったおばあさんに会い、届けたこと。
そして、なにより孫との約束を亡くなってなお守ろうとしていたこと
全てを話した後、俊之のお母さんの涙は
悲しみだけでなく、おばあさんへの感謝の気持ちを含んだ
涙になっていた。
「ごめんなさい。あなたは私達以上に辛いのにひどい事を
言ってしまって。そして、ありがとう。」
最後は、笑顔になっていた。
俊之くんの家を出ると
「アンタには辛い思いをさせてしまった。ほんとに…ありがとう
おかげで孫にも娘にも会うことができた。ありがとう。」
世七「よかった。これでもう大丈夫だね。おばあさん。
僕の方こそありがとう。少し元気もらえたから。」
「そうかい。じゃぁ 最後にお節介を言わせておくれな。」
世七「どうしたの。おばあさん。」
「お前さんは今1番寂しいかもしれんが一人じゃない。
頑張るんじゃ。お前さんのお姉さんの分まで」
そう言うと笑顔で消えていった。
第6話(最終話) 同じ悲しみと一つの答え
美咲「いい子としたね。セナの笑顔久しぶりに見たよ。」
世七「うん。ほんとに…よかった。最後は笑ってくれたから。」
あの事件依頼 笑顔を見せなかった世七は今回の一件で
色々な事を知り、一歩を踏み出す勇気になった事は言うでもない。
その帰り道、川にさしかかると
美咲「セナ あの子 危なくない?」
そう言われ、視線の先をみると
1人の女の子が身投げをしようしていた。
世七「危ない。」
急いで走り、助ける世七。その思いとは逆にお願い死なせてと暴れる。
世七「奏音さん?」
その女の子は世七と同じ学校に通う
奏音 梓だった。
梓「桐谷くん? 退院してたんだ。」
世七「奏音さん どうしてなにがあったの?」
すると、少しの沈黙のあと口を開く。
梓「私ね。自分のお兄ちゃんを殺したの。」
その言葉にびっくりする2人
世七「えっ!どうゆうこと? よかったら話してくれないかな。」
梓「私のお兄ちゃんもあのショッピングモールの事件で
なくなったの。」
世七「それなら…奏音さんのせいじゃな…」
梓「ううん。私のせいなの。私があの日モールに忘れものさえ
しなかったら、お兄ちゃんは事件に巻き込まれることは
なかったから。」
その表情に明るさはなく、
事件以来ずっと罪悪感に苛まれている顔をしていた。
梓「私ね。お兄ちゃんが大好きだったの。ずっと側にいて
怒られるくらい。だからそんなお兄ちゃんが自分のせいで
死んじゃって…どうしたらいいか分かんなくて…
で思いついたんだ。私もお兄ちゃんのとこ行こう。って」
世七はこの時、もし美咲が居なかったらきっと同じ事を
していたんだろうと強く共感する気持ちがあった。
世七「その気持ち分かるよ。僕はあの事件でひとりになったから
きっと僕も同じことをしてたと思う。奏音さんと」
姉が大好きだったからこそ、容易に共感できた反面
世七は死なせたくないと思った。
それは、美咲が初めて世七の前に現れた時
「生きていてよかった。」と言ってくれたから。
世七「もし、お兄さんが奏音さんを追いかけて死のうとしたら?
もう一度考えてみて。それで明日ここに来て。」
そう言うと紙に電話番号と住所を書いて奏音に渡す。
そして、橋を渡りきってから世七は先に帰った。
あのまま死なずに明日来てくれることを願って
美咲「大丈夫だよ。彼女がほんとに…お兄さんが大好きなら
死んでほしくないと思うはずだから…大丈夫だよ。」
その言葉に少し気持ちが落ち着く。
世七「みさねぇ ありがとう。」
翌日
(ピーンポーン) チャイムがなる。
急いで扉を開ける世七。そこには奏音あずさの姿だった。
思わず、「よかった。」と声をこぼす。
そして、部屋へと案内する。
世七「ありがとう。来てくれて。あとちゃんと生きててくれて」
その言葉にこくんと首で返事をする。
梓「桐谷くん 昨日言ったでしょ?もし、お兄ちゃんがって
そう考えた時、死んでほしくなかったから。でも…」
世七「僕も同じなんだ。これを話して奏音さんの気持ちが
楽になるかはわからないけど聞いてくれるかな?」
その言葉に美咲は、世七の後ににそっと行き、支えるこのように
見守った。
世七「僕もみさねぇのおかげで助かったんだ。
場所が良かったのと1番はお姉さんが僕に被さる様に
守ってくれたからってそんな中、意識不明の状態の
ときに、両親が出てきて、ずっと謝るんだ。
一人にしてごめん。側に入れなくて
ごめんなさいってさ。でも、それ以上に強く生きろって
言うんだ。でも、それでも最初は、1人になった孤独感に
苛まれて心のどこかで死のうと思った。
そんな時、夢でみさねぇに生きててくれてよかった。って
言われて今も正直どうしたらいいかわかんないし
退院してからすごく寂しいけど
1つだけ分かったことがあるんだ。
強く生きて行くことそれが残された僕にできること。だって」
それを聞いた美咲は世七の後ろで心の底から微笑んでいた。
世七「それに奏音さんは両親が側にいる。悲しませちゃだめだよ。
今、感じてる気持ちをお父さんやお母さんに与えちゃうよ」
梓「そうだね。私まで死んじゃったら、お父さんとお母さん
また、泣いちゃうね…桐谷くんありがとう。
お兄ちゃんの事がショックで見えなくなってた。」
そう言うと自分の家に帰っていった。
美咲「強くなったね。セナ。かっこよかったよ。」
世七は、薄々気づいていたもう美咲に時間が残されてないこと
自分のせいで美咲が天国に行けないこと。だから、世七は
力いっぱい手に力を入れて、
世七「みさねぇ 聞いてたでしょ。」
美咲「うん。ちゃんと聞いてたよ。」
世七の声が涙で震えていた。
世七「僕 ちゃんと強く生きるから。大丈夫だよ。
だから安心していいよ。」
美咲「うん。世七 ずっと見守ってるからね。最後にこれ。
あの時、渡せなかったからポケット入れとくね。」
ずっと後を向いたままの世七。美咲涙を見せないために
世七「みさねぇ ずっと側にいてくれてありがとう。
1番 大好きだよ。」
美咲「嬉しいよ。セナ。これからも側にいるから大好きだょ。」
そう言うと美咲は消えていった。
涙を流しながら、もう一度 ありがとうと強く叫んでいた。
美咲のお父さんやお母さんに届くように
そして、世七がポケットに手をやると、そこには、あの日に撮った
プリクラが貼られたロケットペンダントが入っていた。
その後…
あれから世七は学校もしっかりと通い、奏音さんともあれ以来
仲良くなり、美咲からのペンダントをつけ強く生きています。