Noah/χ - 願いの剣 Ⅱ
ハロ=クト=ペロワは、感染ドロップスだ。
少なくとも、二年前の4の年に手工業用ラクリマとして調整を受けた時は、《塔》の調整官にそう告げられた。
ドール以上に精密な作業が求められる手工業用ラクリマは、感染すなわち欠陥品として扱われる。例に漏れず、ハロもラクリマの販売ラインには乗らずに廃棄された。
ドール以外のラクリマを守る法はほとんど存在しない。そもそもドール運用規則はドールという戦力を守っているのであって、ラクリマを守っているわけではない。ゆえに手工業用ラクリマの廃棄はいとも容易く行われる――そう、殺処分によって。
ラクリマを殺処分する場所は一般向けには規定されていないが、《塔》や軍が行う場合は近場の涙の遺跡が処分場となる習わしだ。というのも、《塔》の教義的にはラクリマは星から人間への天使を通じた贈り物であり、それを使うことなく突っ返すからには礼を尽くすべしとかなんとか、そんな理由があるそうだ。
どこで殺されたって本人にとっては一緒だと思う反面、ハロはその習わしに感謝もしていた。縛られて涙の遺跡に運ばれる途中で神獣に遭遇し、戦闘のどさくさに紛れて漁夫の利をかっさらいに来た奴隷商人に拾われていなければ、あの日に自分は星に還っていたはずなのだから。
(ししょー……カイお兄ちゃん……)
奴隷商人から自分を買ったのは、フィルツホルン一の名工と謳われるシンギ=チューデントだった。オークション会場でハロが感染個体の手工業用だと知るや否や興味を失う人々の中で、彼だけがまともな金額を入札したのだ。
『鉄を打つにゃあ心が必要なんだよ。こいつは器用な上にそれを持ってんだ、買わねぇ訳がねぇってもんよ』
訝しむ司会の男にシンギはそう言った。感染ラクリマだからこそできることがあり、それは短所ではないのだと彼は繰り返した。
『父上……また落札してきたのか?』
『一目見て分かった、こいつぁ伸びるぜ。俺の鍛冶師のカンがそう告げてんだ』
『また適当なことを。……まあいい、ついてこい。工房を案内する』
シンギの息子だと言う少年カイは、あまりハロに興味がないようだった。しかし感染個体であるハロを避けるようなこともなく、モノ扱いすることも無く、ただ一人の見習いとして扱ってくれた。同じように弟子や見習いをしている人間や他のラクリマ達も、笑顔でハロを迎え入れてくれた。最初こそ緊張したものの、すぐに溶け込むことができた。皆優しい人ばかりだった。
工房での仕事の内容は当然、武具を作ることだ。しかしハロは最初、人を傷つける道具を作ることに大きな抵抗があった。作った剣が人を斬るというのは、ラクリマである自分が人間を傷つけてしまうことになるのではないかと。
そのせいで迷いが生じ、上手く武具を作れなくなっていた時、カイがアドバイスをくれた。
『いいかハロ、武具は人を傷つけるためにあるのではない。自分や大切な人を守るためにあるのだ』
『まもるため……でも、わるい人につかわれちゃったら?』
『そいつが悪い。何せ悪い人なのだからな』
『でも……ハロが剣を作ったせいで、その人はわるくなっちゃったのかも』
『ふむ……なら、願いを込めるといい』
『お願い?』
父上がよく言っているだろう、とカイは笑った。
『鉄を打つには心が必要だ、とな。言い換えれば、心を込めて打てば武具はそれに応えてくれるのだ。良い武具になるようにとお前がしっかり願ったなら、きっとそれは良い人の下に届くだろう』
『ほ……ほんとに?』
『本当だ。疑うなら、他のラクリマ達にも聞いてみたらどうだ?』
ハロは先輩ラクリマ達にも話を聞いて回った。皆一様にカイと同じようなことを言ったので、そういうものなのだと思った。実際、この工房の武具が悪事に使われることはとても少ないらしい。
心を込めて武具を打つ、ということを意識し始めた途端、不安はどこかへと消えていった。ハロの作る武具はシンギにも褒められるようになり、やがて先輩ラクリマ達を追い抜かして弟子の身分まで手に入れてしまった。
今となってはハロも知っている。チューデント工房の武具は生活に困って罪を犯すような「悪い人」がホイホイ手を出せるような安値では売られていないのだ。しかも主な取引先は個人ではなく組織、それも《塔》や軍といった信頼に足るところばかりで、犯罪組織に流れていかないようにシンギが目を光らせている。悪事に使われる率が低いのは当たり前なのだ……と、他の先輩弟子たちが最近教えてくれた。
まだ何も知らない、しかも《塔》に処分されかけたばかりのハロにそれをそのまま伝えるのは難しいと判断し、カイや先輩たちはシンギの言葉を引用して安心させてくれたのだろう。
だからこそ、ある「計画」を実行する準備として闇市で武具を売りにいくと決めたときは、とても不安だった。値段を高めにしても、中には大金持ちの悪い人もいるかもしれないからだ。
しかし、誰が悪い人なのか、ハロには分からなかった。生まれてから今まで出会った人は皆いい人だったのだ。
調整される前のことはよく覚えていないが、ハロを処分しようとした《塔》の人達は真面目に仕事をしているいい人だし、涙の遺跡に運ばれる途中で出会った神獣からハロを抱えて逃げてくれた奴隷商人は当然いい人だし、《裏庭》というオークション会場の人達は毎日ハロにご飯をくれたいい人達だ。悪い人なんてどこにもいないように思えた。
しかし工房の誰もが口を揃えて言うことには、闇市は悪い人だらけらしい。
さてどうしようかとハロは悩んだが、計画を成功させて工房の皆を笑顔にしたいという気持ちは、自分の打った武具が悪い人の手に渡ってしまうことの不安よりもずっと大きかった。
それにきっと――心を込めて打てば、武具はそれに応えてくれる。かつてのカイの言葉をハロは信じた。あれがその場の方弁だったとしても、きっとまるっきり嘘なわけでもないと、工房の皆を見ていて思ったから。
だから、願った。強く願った。心の底から、全身全霊を込めて、金槌を通して武具に語りかけた。
――お願い。どうか、人を傷つけないで。
――大切な人を守るための、いい子な武具でいてね。
すると、何かがスッと胸の奥から武具へと入っていくような気がした。自分の願いが武具に届いたのだと、そう思った。
そして――その願いは、本当に届いていた。
『なっ……魔剣!?』
『嘘だろ、だってそれはハロちゃんが打ってから一度も……誰の、手にも……』
あの時、大きなお客さんがハロの剣で力持ちお兄ちゃんを斬ろうとしたら、剣が勝手に曲がってお兄ちゃんを避けたのだ。
普通の剣は勝手に曲がらない。固い鉄でできているのだから当たり前だ。それが可能なのは魔剣だけであり、魔剣を打つには《塔》のギフティアが天使様の力を剣に込める必要があるのだと、ムースお姉ちゃんは言っていた。
『まさかギフティアを《塔》に突き出すのを邪魔はしねェよなァ? えェ?』
『ぐっ……』
ギフティアは《塔》の持ち物――誰だってそんな当たり前のことは知っている。ハロを守ろうとしてくれたお兄ちゃん達だって知っている。その決まりを破ることがどれだけ悪いことかも、もちろん知っている。
『……ごめん……ハロちゃん』
『おにい、ちゃん……』
『……っ』
だからお兄ちゃん達がハロを助けるのをやめてくれて――ほっとした。
『よかっ、た……やっぱりお兄ちゃん、たちは……いい人』
『は!? 何言って、俺らはハロちゃんを――』
『カイお兄ちゃんに、よろしく……ぽぎゅ、っ!?』
『ハロちゃんッ!』
『あーうるせェうるせェ! 黙ってやがれクソラクリマと虫ケラ共が!』
胸とおなかの間で、何かが折れたような音がした。
それだけ分かったけれど、とても痛くて、頭がチカチカして――フッと目の前が真っ暗になった。
大きなお客さんとお兄ちゃんたちがケンカするような声が聞こえたような気がして……すぐに何も聞こえなくなった。
目を覚ますと、ハロは両手を縛られて天井から釣られていた。
きっとこれから《塔》に連れていかれるのだ。そう思ったが、近くに座っている大きなお客さんは全く動き出そうとしなかった。
『《塔》につれていくんじゃ、ないの……?』
『るっせェな、喋んじゃねェ!』
『ぇぶっ……っ』
顔を、叩かれた。
……痛い。
どうして? どうしてこの人は、こんなにひどいことをするの?
『ギフティアなんざ知ったこっちゃねェんだよ! てめェは餌だ! ナツキのクソ野郎をおびき出すためのなァ! 奴をぶち殺したらてめェもズタズタのミンチにしてやらァ!』
『なづ、き……おねぇ、ちゃんを……?』
『喋んなつってんだろがァ!』
『ぁ、ぐぷっ――』
おなかを、叩かれた。
何かが喉の奥からせり上がってきて、たまらずべちゃりと吐き出した。真っ赤な血の塊だった。
『やめ、で……はろ、ごわれ、ちゃぅ……』
ギフティアをわざと傷つけたり壊したりするのは、とても重い罪だったはずだ。このままではこの人は悪い人になってしまう。
『てめェがぶっ壊れようがどうでもいいんだよォ! ククッ、俺様の命はどうせあと三日だ、何やろうが自由……あァ、いや待てよ……そうだ、てめェで奴を罠に嵌めてやるかァ』
『わ、な……?』
『俺様ァてめェを殺さねェ。てめェをぶち殺すのはナツキのクソ野郎だ! く、ククッ、クハハハハッ、ゲホッ、ガハァッ!』
『なづき、おねぢゃ、は……そなこと、じない……』
『俺様が誘導するんだよォ! ククッ、あァ、もしてめェが生き残ったら肉壁として使ってやるぜェ、感謝しなァ!』
ああ――分かった。
これがきっと、工房の皆が言っていた「悪い人」なのだ。
両手両足の代わりにはまっている金属の武具は、かわいそうに、悪い人に使われてしまっているのだ――
『――ハロ!』
思考を遮ったのは、聞きなれた声だった。
『カイ、おにぃ……ぢゃん……』
『あァ? 誰だァ、てめェ……?』
その場に飛び込んできたカイは、ハロを見るなり泣きそうな顔になり、悪い人を睨みつけた。
ぶっきらぼうで、ラクリマに興味なんてないなんて言いながらも、実は工房で一番ハロたちラクリマのことを考えてくれていた、カイ。
きっと助けに来てくれたのだ。しかし――ハロはもう、チューデント工房の持ち物ではなくなってしまった。ハロが帰らなければならない場所は《塔》になったのだ。
だから、もしカイがハロを工房に連れ帰ったなら、それは誘拐だ。カイまで悪い人になってしまう。そんなことになったら、ハロの「計画」は台無しだ。
『オレはカイ。そいつの所有者、シンギ=チューデントの息子――』
『ハッ、何を言うかと思えばてめェもか。いいか、こいつァギフティアだ! 俺様は《塔》にこいつを突き出しに行くんだよォ! それを邪魔するたァ言わねえよなァ? 《塔》への反逆罪はクソ重いもんなァ?』
『っ……』
そうだ、その通りだ。
血で喉が詰まって、ちゃんとお別れを言えないのが悲しい。
せめて最後は笑っていよう。ハロの笑顔には皆を元気にする力があると、工房の皆には評判だったのだから。
そう思って、精一杯の笑顔をカイに向けた。
ハロの「計画」は最後まで出来なかったけれど、きっといつかカイをにこにこ笑顔にしてくれる。だからそれまで、カイはいい人のままで――
『……それが、何だ』
『あァ?』
『それが、何だ!』
カイが叫んだ。
ハロの笑顔を見て、何かに気づいたかのように顔を上げ、叫んだ。
『ラクリマ? ギフティア? オレはそんなものに興味はない! オレはただ――大切な家族を、連れ戻しに来ただけだ!』
……かぞく。
ハロとカイが、家族?
『かい、おにいぢゃん……でも、はろ、は……もぅ……』
『お前だって帰りたいだろう! 工房へ!』
『っ……』
『ムースも二アリーもビルマもエクシアも、工房の全員、父上やオレだって……お前の笑顔で帰ってくるのを、待っている! 皆お前が好きなんだ、ハロ!』
『……はろ、も……みんな……だい、すき、……だよ、でも』
いつも笑顔を返してくれる、頭を撫でてくれる、工房の皆の顔が次々と浮かんでは消えていった。
もう彼らには会えないのだということが、どうしようもなく悲しくて――気づけば、涙が溢れていた。
『ゆえにまず貴様を倒す! 面倒なことは後から考えれば良い! いざ、参るッ!』
カイはハロから悪い人へと視線を移し、剣を構えて突撃――
『……ん、あァ……茶番は終わったのかァ?』
『何っ――!?』
一瞬前まで悪い人が立っていた場所には何も無く、カイの剣は空を切った。
『どこに――』
『死ねやァ!』
『がッ、――!?』
瞬間的に空中に跳び上がっていた悪い人の飛び蹴りが、振り返ったカイの背中に叩き込まれた。
あまりの威力にカイは宙を一直線に飛び、洞窟の壁に激突して倒れ伏した。
『がいおにいぢゃ、ぇぽっ……やめ、で……がいおにちゃ、は、わるぐ、ない、の……!』
『弱ェなァ……ナツキのクソ野郎の前座にもなりゃしねェ』
一生懸命訴えても、悪い人は全く聞いてくれなかった。
強烈な一撃を食らったはずのカイは、それでもふらふらと身体を起こし、
『ぐっ……お前……今、ナツキと、言ったか』
『言ったぜェ? ククッ、俺様がぶち殺してェのはあのクソガキだけだ……てめェなんぞ殺したところで何も面白くねェんだよォ! さっさとくたばりやがれッ!』
『が、はッ――!?』
『おにいぢゃんッ……!』
もう見ていられない。
ハロを助けるなんて、そんな些細なことのために命を捨ててはいけない。カイには他にやることが、大事なことがあるはずなのだ。
『がいおにいぢゃん、ひるねおねえぢゃんは、どうするのっ!?』
力の限り、叫んだ。
『はろより、がいおにぃ、ぢゃんが、ぢゃんと……かえって……あげ、て』
『ぐっ……それは、だが……だが!』
『あり、がと……ぅ、ぉにいぢゃん……はろ、は……だいじょ、ぶ……だか、ら』
頭がくらくら、チカチカする。
体のあちこちが痛い。目が霞んできた。
『だが、ら……おねが、い……にげ……て……』
『クソ……クソッ、う……ぁあああああああッ!』
消えていく視界の中で、カイが出口へと走っていくのがうっすらと見えた。
悪い人は追いかけようとはしない。興味を失ったようだった。
ああ、よかった、カイが死なずに済んだ。カイが悪い人にならずに済んだ。
きっとカイは、工房の皆やナツキにも現状を伝えてくれるだろう。工房で一番強いカイが全く敵わないほど強い人がハロを連れ去ったこと、そしてハロがギフティアだったことを。
そうすれば、この悪い人の目的であるナツキはハロを探しに来ようとはしないはずだ。オペレーターとドールとはいえ、アイシャは人間を傷つけられないし、ナツキはまだハロと同じくらいの大きさの子供なのだから、勝てるわけがない。
――そう、思っていた。
「ハロ!」
ナツキはやって来てしまった。しかもアイシャを連れずに一人でだ。
自分のせいでナツキが殺されてしまう。そう思い泣きそうになるハロだったが、ナツキが殺されることはなかった。あのカイが手も足も出なかった悪い人相手に、攻撃をひょいひょいとかわしながら反撃までしていた。
(すごい……これが、オペレーターなんだ)
オペレーターというのは、ただドールに命令するだけの人間の仕事だと思っていた。それが間違っていたのか、ナツキが特別なのかは分からないが、とにかくナツキはただただ強かった。
「まさかお前……チャポム!?」
「クソが……ようやく思い出したかよォ!」
悪い人はチャポムという名前らしかった。チャポムは前にも悪いことをしてナツキにこらしめられたことがあって、それで怒っているらしい。変な話だ。
ナツキはチャポムに誘われてハロに攻撃をしかけたけれど、すぐに気づいて剣を止めた。その後に顔にキックされてたけど、全然大丈夫そうだった。オペレーターは体も頑丈みたいだ。
そしてナツキはついに、チャポムに一撃を入れた。目を片方見えなくしたのだ。
これなら勝てるかもしれない。
いや、でも……勝って、どうする?
ハロを工房に持ち帰ったら、ナツキが悪い人になってしまう。
しかし――
(……もう一度だけ、みんなに会いたいな)
工房の皆には、ちゃんとお別れも言えていない。
そうだ、別れる時にあいさつをするのは大事なことだ。あいさつをしにちょっと戻るくらいだったら、きっと《塔》の人だって許してくれる。
だから……帰ろう。そのために自分が出来ることは何だろう?
……決まっている。自分はギフティアなのだから。
そしてその役目を果たす時はきっとすぐに訪れる。戦う前にチャポムが教えてくれたことだ。
「まァいい……ククッ、俺様の弱点は目ん玉だってのはご明察だがなァ、てめェにだってこォんなクソデケェ弱点があるんだぜェ?」
チャポムはそう言って、ハロを盾みたいに持った。ぶんぶん振り回されて体のあちこちが痛い。しかしその痛みに負けてはいけない。この時を待っていたのだから。
(……しっぱい。っ……うぅ、またしっぱい……)
上手くいかない。すぐに別の手に持ち替えられてしまうのだ。
ナツキはハロを傷つけたくないらしく、攻撃できないでいた。きっとカイ達と同じ、とても優しい人間なのだ。
まずは作戦を、自分にできることを伝えなくては。
「なづき、おねぇちゃ……らい、じょぶ……だよ」
息をする度ズキズキ痛む胸が、声を小さく、途切れ途切れにしてしまう。それでもナツキはしっかり耳を傾けてくれた。
「ハロ!」
「ハロ、は、ぎふでぃぁ、だ、から……ハロ、も……ぃっじょ、に……」
「バカ! そんなことできるわけ――、……!」
最後は声にならなかった。しかしナツキはハロの意思を理解してくれたようだった。
直後にナツキは吹き飛ばされてしまったのに、何故理解してくれたと分かるのかと言えば、
「(ハロの異能は刻印――武具を魔武具にする力、だよね?)」
そんなナツキの声が頭の中に響いたからだ。驚きつつも小さく頷くと、
「(時間は稼ぐから、右手をお願い)」
ハロは何も言っていないのに、全てを理解したような言葉が飛んできた。
そして――作戦は成功した。
チャポムの右拳は、ナツキの顔に触れる寸前、まるで義手がナツキを避けたかのように、バラバラに弾けてナツキの脇を後方へと飛んで行った。
ハロが「誰も傷つけないでいて」と必死に願いを込めたチャポムの右手が、ナツキを傷つけることを拒んだのだ。




