太陽との再会 ※
「ハロ!?」「ハロちゃんなのです!?」
「わわっ!?」
ナツキとアイシャの驚愕の叫びが重なり、ムースしか見えていなかったらしいハロは飛び上がってこちらを向いた。
「えっ、えっ? うん、ハロだよっ?」
闇市で出会った時にはフーデッドローブに隠れて見えなかったその姿は、思った通り小さな女の子だった。ナツキやアイシャより小さいがにー子よりは大きい、六、七歳くらいに見える風貌である。着ているオーバーオールはサイズが合っておらずぶかぶかだ。他の鍛冶師が使っているのと同じものであろう金槌も、小さな手の中ではずいぶん大きく見えた。
山が二つ左右に垂れ下がっている不思議な形の帽子の下、大きな翡翠色の瞳がぱちくりと不思議そうにナツキとアイシャの顔を見つめる。どうやら二人が闇市で出逢った客だとは察していないようだ。
「お二人はハロ先輩のこと知ってたんですか?」
「いや、まあ……うん、ちょっとね」
「ナツキさんが一度だけお話したことがあるです」
ハロが闇市にいることは秘密、と言われていたのを思い出して言葉を濁す。ムースは首を傾げたが、それ以上は追及してこなかった。
「ううーん? 思い出せないよ……ハロ、どこかで会ったのかな?」
ハロはしばらく記憶を探っていたようだったが、やがてこてん、と可愛らしく首を傾げた。後ろで小さく二つ結びにされた髪がぴょこんと揺れる。
「一度会っただけだしお互い顔も見てないよ。っていうか、ボクたちは名乗ってすらなかったしね。ボクはナツキ、こっちはアイシャ。よろしくね」
「ふーん? えーっと、ナツキお姉ちゃんと、アイシャお姉ちゃん……うん、ちゃんとおぼえたよ、よろしくね!」
にこー、と太陽のような笑顔が咲いた。フード越しでもその輝きは分かったが、生で見るとさすがに破壊力が違う。思わず手を伸ばして撫でてしまうところだった。……それから、ナツキにお姉ちゃんと呼ばれて悶絶するリリムの気持ちが少し分かった気がした。
しかし――
「(それにしても……まさかハロが、ね)」
「(はいです、びっくりしたです)」
なんとなく声に出さずにアイシャと共有した思いは、思いがけぬ再会に対する驚きでも、笑顔の眩しさでも、お姉ちゃん呼びに対する悶絶でもない。
ハロの髪は白いメッシュの入った鮮やかなオレンジ色だ。にー子の明るい黄緑やムースの薄紫色と同じ、この世界でも人間の地毛にはなり得ない色である。そしてアイシャやムースと同じように、首には継ぎ目のないつるんとした金属の輪が嵌められていた。そこから導かれる結論は一つしかない。
「ハロ、ラクリマだったんだね」
「うん! ハロはね、長い名前だと、えーっと……ハロ=クト=ペロワ? っていうんだ!」
普段全く使わないのか、ハロは自分のフルネームを思い出すのに少し時間を要した。「ハロ」以外は名前というよりコードに近いので、この環境で必要になることが無いのだろう。
クト、は数字の4に対応する。アイシャより精神年齢が高くは見えないし、2年前に調整されたラクリマなのだろう。
「ペロワ種です? じゃあその帽子の中は……」
「うん、おしごと中はちょっとじゃまだからしまってるんだ。ほら!」
特に躊躇もなくハロが帽子を取ると、二つの山の中から大きな垂れ耳が出てきた。ウサギほど大きくはないそれは、日本で早朝に家の近所を歩いているだけで遭遇するあの動物の耳だ。
「じゃじゃーん、ペロワⅡ型だよ! ばうわうっ」
ハロがくるんと後ろを向くと、オーバーオールの腰の部分に開いた穴から飛び出しているふさふさの尻尾がふりふりと揺れるのが見えた。
そう、ペロワ種の忌印は――犬娘のそれであった。
それからハロとムースに話を聞いた限りでは、このチューデント工房がラクリマにとって非常に住み良い環境であることは間違いなさそうだった。
しかしどんなラクリマでも、というわけではない。そもそも工房の主にして従業員達の師匠、カイの父親でもあるシンギ=チューデントのお眼鏡にかなうことが最低条件なのだ。保育園でも孤児院でもなく職場なのだからそれは仕方がない。
「感染していること、ドールじゃないこと。それがまず前提だって師匠が言ってました」
「うん、ハロもそう思うよ。だってそうじゃないと、剣に気持ちをこめられないもん」
感情のない通常の調整済みラクリマでは、職人技と打ち手の個性が必要な鍛造には向かないのだそうだ。ドールが不適とされるのは、普段アイオーンに寿命を吸われているせいで剣という概念に生理的な拒否反応を示しがちだからだとムースは説明し、アイシャも「ちょっと分かるです」と肯定した。
つまりシンギもカイと同じく、世間の一般的な考え方など気にもとめず、一方でラクリマの人権など露ほども考えていないのだ。ただしより良い武具を作れるように、充分な食事と寝床、人間と同じ挑戦機会と報酬、そして健康な精神を養える環境を与えている――と。
「いや、高度なツンデレか何かなの!? そこまできてラクリマの権利なんか知らんって言い張る、普通!?」
「?」
思わず空気に向かってツッコミを入れてしまったが、ムースとハロから向けられたのはよく分からない、という表情だった。
「ラクリマはラクリマですよ? 私たちが人間さん達と同じ権利なんて持っちゃったら、この工房の外にだって出れちゃうわけで……そんなの変じゃないですか」
「……。ムースはどうして、それが変だと思うの?」
「え……だって、私たちはシンギ師匠の所持品ですよ。人間さんと同じように喋って考えて動ける感染個体ですけど、だからって勝手に持ち主から離れるなんて……変ですよ。ね、ハロ先輩」
「えっ? えーとね、ハロ、むずかしいことはよくわかんない……けど、ハロたちはししょーのモノだから、ししょーやししょーのたいせつな人たちが喜んでくれることをするんだよ。ラクリマだもん!」
至極当然のことを話すような口調だった。
実際、彼女達にとってはそうなのだろう。二人にとってこの工房は閉じた世界で、特に不自由もしておらず、境遇に疑問を抱くこともなく、外に出たいとも思わない。
「でもそれは……」
「二人の気持ち、わたしも分かるです」
「アイシャ?」
割り込んできたアイシャはムースとハロに歩み寄った。
「ムースちゃん、ハロちゃん。今、幸せなのです?」
そんなアイシャの問いに二人が返したのは、心からの笑顔。
「もちろん幸せですよ! 剣に囲まれる毎日、最っ高です!」
「ハロも毎日たのしいよ!」
しかしそれは現状以上の環境を、当然持っているべき権利を知らないが故の感情だ。本当ならアイシャやにー子のように――と考えかけ、ハッと気づく。
「いや……そっか。同じなんだ」
アイシャはナツキのドールだ。ナツキは対等に扱っているが、法的にはアイシャはナツキの「所有物」にあたる。耳や尻尾を出して一人で町中を出歩いているのが見つかれば、「紛失物」として捕まえられて軍に届けられてしまう。
にー子は《子猫の陽だまり亭》で「育成」されている未調整ラクリマだ。皆には愛されているが、法的にはギフティアであることを除いても黒よりのグレーであり、それを咎められないよう行動範囲は店の周囲に制限されている。
「はいです。でもわたしもにー子ちゃんも、毎日充分幸せなのです」
二人とも救ったつもりでいたが、二人が享受しているのはムースやハロと同じく制限された自由だ。その制限を取り払うべく今後も動いていくつもりではあるが、現時点のナツキに現状以上の環境を用意することはできない。それなのに現状の問題を説き「お前は不幸だ」と告げるのは――何よりも相手を不幸にしてしまう行為だ。
「ナツキお姉ちゃん、どうしたの?」
「ごめん、なんでもないよ。それより……ねえハロ、ムース。普段ここのラクリマ達がどんなことしてるのか、もっと聞いてもいいかな?」
掘り下げるのをやめ、話題を変えた。ムースとハロは嬉しそうに頷き、口々に工房での生活を語り出した。
工房にラクリマは計五人いるが、ハロはシンギ=チューデントに弟子として認められた唯一のラクリマなのだという。他の弟子達とも対等な関係を築き、鍛冶の技術面では頼りにされているらしい。他はムース含め全員見習いであり、ハロは彼女らの憧れの的なんだとか。
しかし憧れの的であっても見た目や言動はハロが一番幼く、それを面白がった人間の職員達に逆に「姉御」なんて呼ばれてからかわれているらしい。変な呼び方やめてって言ってるのにー、と口では言いつつも、少し照れているあたり満更でもなさそうであった。
「実はですね、ハロ先輩の打った剣、一度も検定に落ちたことないんですよ」
「ふふん! すごいでしょ!」
「ふぇ……検定、って何なのです?」
「出来上がった武具をシンギ師匠に見せて、工房の作品として売っていいですか、ってチェックしてもらうんです。結構厳しいんですよ?」
「へえ、審査があるんだ。ハロはシンギさんも認めるすごい鍛冶師なんだね」
「えへへぇ」
ナツキが褒めると、ハロは得意げに平たい胸を張ったままふにゃりと嬉しそうに笑った。背後でふさふさの尻尾がぶんぶん振られている。
……わしゃわしゃ撫でて褒め殺してあげたい。手が伸びそうになるのを必死に堪える。
「そ、そういえば、武具って一日にどれくらいできるものなの? っていうかむしろ、一日でできるものなの?」
「うーん、作るものにもよりますし、人にもよりますよ。鎧なんかは一週間くらいかかっちゃいますけど、同じナイフをたくさん作る人とかは一日十本とか……」
話題を変えがてら少し気になっていたことを聞いてみたが、その辺りの感覚はラグナと同じくらいのようだった。周囲の鍛冶師達が鉄を打っている様子からしても、鍛造の基本的な仕組みは同じと見てよさそうだ。
「あと、一人一人のポリシーにもよりますね」
「ポリシー?」
「例えばハロ先輩は、何度も途中まで試行錯誤して、納得のいく一本ができたらそれを完璧に仕上げるタイプですよね」
「うん! ……だからししょーに見せられるのは、三日にひとつくらいかなぁ」
そう言うハロは少し悔しそうに見えた。しかしその表情はすぐにやる気に満ち溢れたものに変わり、
「あのね、ハロね、もっとれんしゅうして、まい日すごい剣や盾を打てるようになるんだ! それでね、ししょーやカイお兄ちゃんにいーっぱいほめてもらうの!」
そう宣言するハロは、まるで地上の小さな太陽のように輝きを放っていた。ああまさに、純真無垢とは彼女のためにある言葉だったのだと、
「むぎゅっ?」
気がつけば、無意識のうちにハロを抱きしめてしまっていた。自制なんてものはなかった。本能だった。
「な、ナツキお姉ちゃん……?」
「はっ!? ご、ごめん、あまりに尊くてつい」
「分かります分かります! 私もよくやります! えいっ」
「わわっ、ムースお姉ちゃんまで……!?」
慌てて離れようとしたナツキごと、逆側からムースが抱きついてきた。二人に挟まれたハロの目がきょろきょろと暴れている。混乱しているようだ。
しかしハロはすぐその表情を緩め、
「えへへ……ぽかぽかだぁ」
ふにゃ、と身体の力を抜いた。嫌ではないらしい。
視界の端でアイシャが何やらうずうずしていたので手招きしてやると、恐る恐るやってきた。すかさずナツキとムースの腕が伸び、アイシャを取り込む。
「ふぁ……あったかいのです」
「ボクらみんな体温高いしねえ」
「あはは、私たち、何してるんでしょう」
「わかんないや……」
幼女四人が抱き合い暖を取る謎の光景は、通りかかった別の鍛冶師に「お前ら、雪山で遭難でもしたのか」と呆れられるまで続いたのだった。
「うーん、どうしてみんな、ハロのことぎゅーってしたり、ほっぺたつんつんしたり、あたまをなでなでしたりするのかな? ムースお姉ちゃんにはしないのに」
「そりゃハロ先輩、工房で一番ちっちゃい子ですし……」
「ちっ、ちっちゃくないもん! この間ニアちゃんと背くらべしたときちょっと勝ってたもん!」
「背伸びしてたし帽子まで測ってたじゃないですか」
「なんで知ってるのー!?」
二人が楽しげに話してくれるラクリマ達の生活は、リモネちゃんから聞いて覚悟していたものとは対極の位置にあるものだった。
しかしここが特殊なだけで、酷い扱いを受けているラクリマの方が多いのだろう。秘密裏に魔武具を作らされているだろうギフティアはきっと――
「あのさ、二人にちょっと聞きたいんだけど……魔武具、って知ってる?」
そろそろ貴族特区までやって来た本来の目的を遂行するとしよう。そう思い切り出すと、まず大きく反応したのはムースだった。
「魔武具! 知ってます知ってます! 特に魔剣、天使様の力が宿った剣……はぁ、一度でいいから抱いて寝たいですぅ……」
頬を上気させ、自分の身体を抱きしめてくねくねと怪しげな踊りを始めてしまった。抱いて寝たい気持ちは全く分からないが、やはり剣マニアにとって魔剣は憧れの品らしい。
「見たことはあるの?」
「はい、前に聖騎士様が視察にいらっしゃった時、帯剣されているのをちょっとだけ……」
その時のことを思い出しているのか、ムースはとろん、とした顔で遠い目になった。まるでアイドルに道端で出会った奇跡を回想しているかのようだが、思い出しているのは聖騎士ではなく剣だけなのだろう。
「ハロちゃんはどうなのです?」
「ハロも知ってるよ! 《塔》がつくってるすごい剣! いつかハロも作ってみたいなー。何でできてるのかな?」
「剣自体はただの鉄らしいですよ? 魔弓や魔盾も、それ自体の材料は普通の弓や盾と同じだってカイ様から聞きました」
ラグナでは星のマナを吸った魔鉱石が何種類もあり、魔武具の材料に適しているのは得てしてその類の材料だったが、ノアではそうでもないようだ。そもそもラグナの環境中にマナが満たされていたのは年に一度の儀式によるものであって、ノアには星のマナの概念が無いのかもしれない。ただそうするといつでもどこでもギフティアが魔法を使える理由が分からないが……今考えても仕方がない。
「えーっ? じゃあ天使様の力はどこに入れるんだろ……」
「それは《塔》のギフティアがすごい異能でどうにかするんですよ」
「そうなの!? それじゃハロ、魔剣つくれないよ……」
「作れちゃダメですよ! 私たちに作れちゃったらレア度が下がっちゃいます。そんなの手に入れたって意味が無いんです!」
「えー? あのね、ハロ、ムースお姉ちゃんの言ってることがたまによく分かんない……」
妙なこだわりがあるらしいムースが憤慨し、何故怒られているのか全く分からないハロが困惑に首を傾げた。
「この様子だと、ムースとハロは関係ないかな?」
「はいです。そもそも、首輪があるのは調整済みってことなのです。だから絶対ギフティアじゃないですし……やっぱり、人間さん達に話を聞いてみるべきだと思うです」
ラクリマがギフティアかどうかは調整時に確定する。それは以前ダインも言っていたことだ。現に、調整済みのドロップスが実はギフティアだった、という事例はこれまで一度も発生していないらしい。
だから探すべきは首輪の付いていないラクリマと、恐らくそれをどこかに隠しているだろう主犯格の人間だ。
「? 魔剣絡みで何かあったんですか?」
「闇市で魔武具が流通してるって噂を聞いたんだ。出処は貴族特区らしいから、何か知ってるかなって思ったんだけど……」
「そうなんですか!? そ、それは欲し……よろしくないですね!」
「今本音漏れてなかった?」
「漏れてないです! 聖騎士様だけが持ってるからこそ価値があるんですっ!」
「分かった分かった……あれ、ハロ?」
慌て気味に怒り出すムースの隣で、ハロは少し考え込んでいた。
「あのね、ハロ、そのうわさ聞いたことある、かも……」
「ほんと? ……あ、そうか」
ハロは闇市に自分で打った剣を売りにきていた。その時に耳にしたのだろう。
「ふしぎな武具のうわさだよね? こないだお客さんが、それがほしいって言ってたの。なーんにもきれない剣とか、とばした矢がぴゅーんってもどってくる弓とか……ほんとにあったら楽しそうでいいなーって思ったんだけど、そっか、魔武具ってそういうのなんだ。ほんとにあるんだ……!」
「違いますハロ先輩! 剣以外のことは知りませんけど、魔剣はもっとかっこよくて、一振りで神獣の使い魔千匹を消し炭にする、とんでもなく強い剣なんです!」
「あ、あれ? うー、ハロ、わかんなくなっちゃった……」
「……ところで先輩、どこでその噂を聞いたんです? お客さんって……販売所は工房の外ですよね?」
「え? ……あっ!」
ムースに訝しまれたハロはしまった、という顔になり、わたわたと慌て始めた。やはり闇市へはこっそり来ていたらしい。スラム街の子供たちと同じく、小遣い稼ぎだろうか。
「ち、ちがうよ? ハロ、こっそり工房をぬけ出したりしてないもん!」
「先輩……またカイ様にお仕置きされますよ?」
「ほほほほんとだもん! だ、だからないしょ! 今のないしょ、ね? おねがいムースお姉ちゃん、カイお兄ちゃんには言わないでぇ……」
相変わらずごまかすのが下手である。涙目になってしまったハロを見てムースは大きく溜息をついた。ムースの口ぶりからして、ハロが工房を抜け出しているのはしっかりバレているらしい。どこに行っているのかまでは知られていないというところか。
持ち主であるシンギが悲しむことはしてはならない、と思ってはいても、子供特有の悪戯心、冒険心がそれに勝ることもあるのだろう。
「ちなみにどんなお仕置きが待ってるの?」
「えーと確か、前回は晩ごはんが全部ピルマ炒めに……」
「わーっ、わーっ! やめてやめて、思い出したくないよー!」
ピルマはピーマンとセロリを足して割ったような野菜である。《子猫の陽だまり亭》でナツキも食べたことはあるが、ナツキが普通に食べるのを見て同じように口に運んだにー子は、次の瞬間それをべっと吐き出し、信じられないものを見るような目でナツキを凝視し、ぽろぽろと泣き出してしまった。
「ピルマは……わたしもちょっぴり苦手なのです……」
アイシャも少し眉を下げた。ピルマは、好き嫌いの少ないにー子やアイシャですらそんな反応をする、この世界での「子供が嫌いな野菜」の筆頭格なのだ。
「……ハロ先輩、カイ様はお優しいから、その程度で済ませてくれてるんです。もしシンギ師匠にバレたら……」
「うっ……い、一週間全部ピルマ炒め……?」
「あはは、まさか。きっと一年くらいはずっとですよ」
「ひっ――じゃ、じゃあぜったい、ぜーったい、ししょーにはないしょ、ね!?」
ハロはさっと青ざめ、逃げるように「そうだ、おしごとしなきゃ!」と炉の前へ戻って行った。
「先輩、抜け出さないって選択肢は無いんですね……」
ハロがピルマ地獄に沈む日もそう遠くないだろう。やれやれと溜息をつくムースと共に、心の中で未来のハロに合掌しておいた。
(2022/06/13)らくがき挿絵追加しました~