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6.夢醒めて

「いっく~ん! ちょっとこっち来て~!」


姉弟水入らずの会話をしていた遊香に呼び出されるイルデブランド。

何事かあったのかと控室に入ると、耳を疑うような言葉を聞かされた。


「私、帰ることになったから」


「え……?」


「まぁ帰るっていうか、目を覚ますだけなんだけど。最後に挨拶しろーって楽人がうるさくてさぁ」


「え? え??」


「ホストクラブ『ナイツ』は、いっくんに任せた! 全国展開を目指してもヨシ、店を畳んで魔王討伐を目指してもヨシ! 頑張ってね!」


「マ、マスター?! 本当に居なくなってしまわれるのですか?!」


「うん」


「そんなッ……!」


慌てふためくイルデブランドと、全くいつも通りの遊香。

そして、同情するような目を向ける楽人。


目を覚ます方法を二人であれこれ考えた結果、ゲームから『ログアウト』すれば良いのではないかという結論になった。

遊香の手に握られたスマホには、『ログアウトしますか?』というウインドウが表示されていた。


あとはタップ一つで夢が終わる。


「私もお供いたします! このイルデブランド、召喚された日より武術の鍛錬は怠っておりません。必ずや、御力になってみせます!」


「日本じゃ戦う場面なんて無いのよねぇ……」


「た、戦いが無くとも、いつでもお側に……!」


「ゴメン! 連れていきたいのは山々なんだけど、リアルにイケメンを召喚する方法なんて分かんないからさー」


そんな方法、あったら教えてほしい。

そう強く思う遊香だが、無いものは仕方がない。


「姉ちゃん、ホントに良いのかよ。こんなイケメンに惚れこまれるなんて、現実じゃ絶対有り得ないぞ。もったいなくね?」


「いっくんはナイツだし、(マスター)と良い感じになるのはしょうがないんだってば。そういうゲームなんだから」


フォロウ・ナイツは乙女ゲームではないが、イメケンばっかり出てくるゲームなので当然とも言える流れだ。

一緒にいれば親密度が上がり、マスターに懐くようにプログラムされている。

遊香はそう考えているが、イルデブランドにはそんなこと分かりようもない。


「私は、自らの意思で、貴方と共に居たいと……!」


「ありがとね、楽しかったよ。今までで一番の夢だった」


「マスター……」


「お礼と言っちゃなんだけど、今日から推しはいっくんにするから! また、ゲームで会おうね!」


わずかな躊躇(ためら)いもなく、遊香の指がスマホを叩いた。



「……マスター! …………遊香ッ……!!」



イルデブランドの叫びを最後に、遊香と楽人の意識は途絶えた。




***




――チャラララ~ララ~、チャララ~♪


スマホから大音量の音楽が鳴り響き、遊香は目を覚ました。


(この音……は……)


ふと横を見ると、なぜか楽人がいた。

遊香のベッドの脇で眠りこけている。


――チャラララ~ララ~、チャララ~♪


繰り返し鳴り響く音楽。

まだボーっとする頭のまま、記憶をたぐり寄せる。


(この音楽、は…………最終アラームだっ!)


「やばい! 遅刻するっ!」


慌ててアラームを止め、布団を跳ね飛ばし、ついでに弟を足蹴(あしげ)にする。


「楽人、あんたも起きなさい! なんで私の部屋で寝てんのよ!」


「うっ……ね、姉ちゃん……?」


「ほら、着替えるから早く出てって!」


寝ぼける楽人を追い出し、急いで出勤の準備をする遊香。

無遅刻無欠勤の記録をこんなところで止めるわけにはいかないと、猛スピードで支度を完了させた。


(そういえば、すっごくイイ夢見たなぁ……ハチャメチャすぎたけど)


夢の中の自分は、あまりにも自由だった。

しかし何より、イケメンに好かれるだなんて最高でしかない。

もっと見ていたかった……。


夢の余韻に浸っていたい遊香だったが、時間は有限。朝は戦争だ。


「スマホ、スマホっと……よし、準備オッケー! 行ってきます!」


遊香の手には、スマホが握られている。



画面には『ログインしますか?』の文字が踊っていた。


これにて完結です。

短い間ですが、お付き合いありがとうございました。


最後に評価・感想など頂ければ、作者が小踊りします!

是非ともよろしくお願いします。

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