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3.ホストクラブではない何か

遊香の思いつきは、すぐさまナイツ達に共有された。

当然反対されまくったが、色々と開き直って吹っ切れてしまった遊香は主命としてゴリ押しした。


戦う必要が無いからと初期装備を売り払い、その金で物件を借りて店の準備を進めていく。


「……よく考えたら、ホストクラブってどんなのかよく知らないや」


爆弾発言が飛び出す中、『ホストクラブ』のホの字も知らないナイツ達は、ひたすら遊香の指示に従うしかなかった。



「料金設定はー……よく分かんないから、この前行った猫カフェの値段にしよ」


歴戦の勇士達を猫のように扱い。


「営業時間は10時から18時ね。いや~ホワイト企業だわ」


ホストクラブの根底を覆し。


「あとお酒は無し。酔っぱらいって面倒だもん」


もはや、どこで利益を上げるのか分からない店へと変貌(へんぼう)した。




そして、初めてのガチャから一ヶ月が過ぎた頃。

「ホストクラブ・ナイツ」は開店初日を迎えたのだった。




「中々上手くできたんじゃなーい?」


薄暗い店内を見渡し、満足げに呟く遊香。

今はまだ開店したてで、店内には店長の遊香とホストのナイツ達しかいない。


ナイツ達は今や鎧やローブを脱ぎ、スーツに身を包んでいる。

人の少ない店内ではシャンデリアがきらきらと輝き、間接照明がムードを演出していた。


「本当にこれで客が入るのでしょうか? マスターの言っていた『ホストクラブ』とは随分とイメージが違いますが……」


イルデブランドは不安を拭えなかった。


当初イルデブランドが遊香から聞いたホストクラブとは、少しいかがわしい店だった。

薄暗い店で酒を提供し、男の店員がテーブルに付いて接客をする。

通常の飲食店では有り得ない距離感に、恋に落ちてしまう客もいるのだとか。


しかし遊香は、ホストクラブの標準を(ことごと)く投げ捨てた。


「まぁ最初のイメージとは違うけど、何とかなるでしょ! それに、ホストに入れ込んで身持ちを崩されるってのもイヤだしさ」


財布に優しい料金設定(1時間¥1,500/最大3時間まで/学割あり)

酒が一切無いドリンクメニュー(コーヒー・紅茶・ジュース)

コンセプトカフェのようなフードメニュー(お絵かきオムライスもあるよ♪)


……どちらかというと、執事カフェに近かった。


辛うじて残っているホストクラブらしさといえば、スーツ姿と源氏名の存在だ。


「あ、みんな! 営業中はちゃんと源氏名で呼び合ってよね!」


「オレ、ぜってー忘れそう」「私も自信が……」

「……何とかなる」「僕は完璧に覚えたよ!」

「というか恥ずかしすぎるんだが」「それな」

「俺は戦士だ。勇猛なる戦士だ。戦士の……はずなんだ……」


それぞれの心中を口々に(こぼ)すナイツ達。

しかしその姿も、遊香には大して響かない。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ。ここに一覧だって飾ってあるんだし、毎日見てたら慣れるって!」


店内の入口にはナイツの――ホストの写真が飾られている。

写真の下には、遊香の考えた源氏名が書かれていた。


「いっくん! 店の管理、よろしくね!」


「い、いっくん……」


「そう! 私はマスター(オーナー)だから。店の方針に口を出す係だから。ふふふ……これぞ夢の左団扇(ひだりうちわ)生活!」


イルデブランドは今までに呼ばれたことのない名で呼ばれる衝撃に戸惑いを隠せなかった。

しかも遊香からは、面倒なことを全て丸投げされている。

一の騎士になりたかったイルデブランドだが……「こういうことじゃない」と、やるせなさを感じられずにはいられなかった。


が、この場にいるナイツ達は全員同じ気持ちだ。

だからあえて口には出さなかった。


それに、イルデブランドは遊香に弱かった。


「わかり、ました……誠心誠意、務めさせていただきます」


「うんうん、よろしくね!」


不安そうなホスト達に発破をかけるように、遊香は大声で号令をかけた。



「それでは、ホストクラブ『ナイツ』……開店!!」



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