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2.働かざる者食うべからず

男が礼をとっても、遊香(ゆうか)は動かなかった。

聞いているのかいないのか、間の抜けた顔でイルデブランドを名乗る男を見つめているだけ。


(マスターって、私……だよね。プレイヤーのことだし。でもって、このイケメンはURのナイツだ……イルデブランドって人気投票でも見覚えある、し……)


しばらく停止していた遊香は、一気に覚醒した。


「きゃー! ナイツだナイツだ、イルデブランドだ! 目の前にリアルでナイツがいるってヤバイ! いやリアルじゃなくて夢だけど~!」


「マ、マスター?! あの、ちょっ、そこは……!」


目の前に現れたイルデブランドを()で、叩き、その感触を確かめる遊香。


「感触までしっかり味わえるとか、この夢サイコー!」


「あの、マスター……」


「あ、まだ10連があったんだった!」


「マスター……?」


「よし、ポチっとな~♪」


困惑するイルデブランドをよそに、遊香はスマホをタップした。

先程と同じように、まばゆい光が辺りを包み込み……男達が現れた。

今度は総勢10人だ。


「うっわ……イケメン集団の圧がすごいッ!」


フォロウ・ナイツのキャラは全員イケメンと決まっている。

ショタからマッチョまで、ありとあらゆるイケメンが詰まったゲームだった。


「すごーい、みんなボイス聴き放題?! 触り放題?!」


テンションがマックスになった遊香は、目の前に現れたナイツ達を触りまくり観察しまくり、話しかけまくるのであった。




***




「は~、どうしようかな……」


ひとしきり騒いだ後、遊香は少し困っていた。

夢から覚めないことではない。

夢を見てる間の時間感覚はあてにならないので、いくら時間が過ぎた気がしても起きた時には翌朝になっているだけだ。


問題は、夢の中の生活のことだった。

つまりは――お金だ。


「ナイツなのに食費や宿代がかかるだなんて、詐欺だよねぇ」


「マスター。いくら我々でも食事や睡眠は必要です」


「え~だってナイツだもん~キャラだもん~。ゲームの時は24時間いつでも戦ってたじゃん~」


「そのゲームが何かは分かりませんが、現実でそれは無理です。マスターのためならば力の限り戦い抜く覚悟はしておりますが……」


遊香の側にいるのは、UR確定ガチャで引いたイルデブランドだ。

今は亡き王国では英雄と呼ばれた騎士だったが、今や形無しである。


(超イケメンだし、カッコいいことも言ってくれるけど……けどなぁ……)


遊香の抱える問題を解決はしてくれなかった。

男は甲斐性も重要である。


遊香達が働くには、ある障害があった。

それ故に、ナイツ達の誰にもこの問題を解決することができなかった。


働くには――『国籍』が必要だったのだ!


「もー! せめて国籍ぐらいは標準装備しててよー!」


「マ、マスター……我々は召喚された身ですので……」


「私だって似たようなもんだよ! 私達、揃いも揃って不法入国者よー!」


「マ、マスター、そういった不穏な言葉は……」


遊香の叫びは召喚の間に響き渡ったが、幸いなことに他の人間はいない。

いくらでも叫び放題だ。


「何か良い方法無いかな~。せっかくこれだけのイケメンが揃ってるんだしさ~」


「は、はぁ……」


もういっそ、夢なんだから好き放題やってやろうか。

イケメンぺろぺろして遊び倒してやろうか。


遊香がそんな不穏なことを考えていると――


「そうだ……! イケメンが働くって言ったら、アレでしょ!」


殊更(ことさら)、不穏なことを思いついた。


「ふふ、イケるわ……イケるッ!」


「マスター、我々にどのようなご用命を……?」


遊香の邪悪な笑みに、不穏な気配を察知するイルデブランド。

その心配を吹き飛ばすように、遊香は堂々と宣言した。


「――みんな! ホストクラブを作るわよ!!」

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