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戦乙女ドールズ、ただ今参上!  作者: フミヅキ
第三章 いざ、新しい日々へ!
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いざ、新しい日々へ!②

 気合い入れも終わり、俺達はノートパソコンの縁に腰掛けながら、三和が適当にページをジャンプするネットの画面をネタに無駄話をしていた。


「あ、そういえばさ、ローズ達の姿って他の人にも見えているの?」


 ミワ坊の疑問に、ローズが頷いた。


「はい。『鬼』は精神体なので普通の人間には見えませんが、我々の組成は半分が魂、半分がレジンキャストですので、普通の方にも視認できます」

「巨大化した姿も見えるはずさ。ちなみに、アンタ達二人が『鬼』を見えるのは、半精神体のあたし達のキットと長く触れていたからってことだと思うよ」


 梔子がそう補足したところで、三和が残念そうに口を尖らせた。


「どうした、ミワ坊?」

「いやあ……だったら、みんなをウチには連れて帰れないなあと思って」

「ああ、そっか……」


 俺も残念顔になると、マーガレットが首を傾げた。


「どういうことなのだですー?」

「あー……その……ミワ坊んちは、フィギュアとかドールとかが苦手な……っていうか、嫌いな人がいてさ。もしその人に見つかった時に、みんながフィギュアの真似してくれたとしても、やばいんだ」

「うん。だから、わたしのフィギュアやドールはナオの――ほら、あそこの棚に置いてもらってるんだ」

「そうだったのですか……」


 沈んだ表情になってしまった三和に、ローズが気遣うような表情を向ける。俺もノートパソコンの上に登り、三和を元気付けるべく、キーボードの上にある三和の手の甲をペシペシと叩いた。


「俺の部屋にみんないるんだからさ、いつでも来いよ。今までだってそうしてきたろ!」

「うん。そうなんだけど……。でもさ、でも……だとすると、心配なことがあるんだよ」

「何だよ?」


 傾げた俺の頭を、三和がツンと指先でつついた。


「ナオがローズ達の寝込みを襲わないか心配なんだよ!」

「は……?」

「ナオみたいな変態と一つ屋根の下でローズ達が暮らさないといけないと思うと……もう心配で心配で……」


 顔を不安げに歪めるミワ坊の姿に、名誉を傷つけられた俺はフツフツと怒りが沸いてくる。


「お、お前、三和……! なんてことを言うんだ! 俺は変態じゃない!」

「だって、ぱんつ塗装……」

「黙れええええええええ!」


 薄ら笑いなんか浮かべやがって、なんなんだ、この女は!

 この小型化した体では、訴えもままならず、口惜しい。くそ、アイツ、バカにしたような目で俺を見やがって。


 俺がフンと顔を反らしてやさぐれると、隣で梔子が口の端を持ち上げて笑っていた。


「可愛いねえ、三和は。そうやって防衛線張ってさ。大事な人は盗られたくないからねえ?」

「ち、違うよ、そんなんじゃないよ!」


 ん? 梔子は何を言っているんだ? それに、どうしてミワ坊は真っ赤になって首をぶんぶん横に振っているんだ?


「ご安心ください。私達は三和様を裏切るような真似はしません」

「そうなのだです!」


 力強く宣言するローズとマーガレット、そして、真っ赤に染まった顔に困惑しきった表情を浮かべたミワ坊。なんなんだ、この女子達のよくわからない団結力は?


「なあ、さっきから何の話をしてんの?」


 俺が訊くと、ミワ坊はまた、ぶんぶんと首を横に振った。


「な、なんでもないから! 本当に、なんでもないの! そ、それより、考えなきゃいけないことがあるよ、ナオ」

「なんだよ?」

「ローズ達に必要なものを揃えないと」

「必要なもの?」

「もう、ナオってば気が利かないんだから。ローズ達には着替えだって必要だし、お布団だって整えないと!」

「あ、そ、そっか……!」


 さすが、ショートカットにツルペタ体型でも女子は女子。俺はミワ坊の気遣いに感心する。


「わたし、使えそうなもの用意するから、ちょっと待っててね」

「お気遣いありがとうございます、三和様」


 三和の言葉に、三人は嬉しそうに微笑んだ。だが――。


「ふふふ。本当に動くお人形さんが目の前にいるなんて幸せ! そんなお人形さん達がわたしの用意したアイテムを使ってくれるのかと思うとドキドキしちゃうな。デヘヘヘヘ」


 最後の笑い方が中高年の下品なオヤジみたいだったんだけど、この女、大丈夫か。


「こっちのワンピースがいいかなあ? ぐふふ、ちょっと露出が多すぎですかな? ぐふふふふ。こっちのスカートは丈短すぎだけど、チラリズム最高ォ! ぶひひひひぃっ!」


 よくわからない独り言を繰り返すミワ坊は下卑た笑いをあげながら、棚から引っ張り出して来たドール用品箱をひっくり返す。さっきまでにこやかだったローズ達が確実に引き気味の表情になっている。


 まったく、変態はどっちだよ!



 結局、三和は真面目に三人用に着替えの服をチョイスし、タオルやガーゼを縫って簡単な布団を四組製作した。さらに、三人は食事については甘いものが栄養補給源だということだったので、チョコやクッキーなんかのお菓子を砕いたものも持ってきてくれた。


 さすがは、我が同志。真の変態の割にはなかなかやりおる。


 三和はついでに、俺の母ちゃんに「ナオは同級生の家に泊まるって」と言い訳しておいてくれた。後で母ちゃんから「事前連絡もせずに!」「お友達の家に迷惑かけてないでしょうね!」「しかも、ミワ坊ちゃんを連絡係に使うなんて何様か!」の三連コンボを食らうパターンだが、まあ、仕方なかろう。


 三和はさらに三人の入浴用に洗面器にお湯を汲んできた。キタコレ、エロ・シチュエーション!


 だが、三人が着替えやら入浴やらしている間、俺はミワ坊の手により、近所の本屋で出される深緑色の分厚いビニール袋の中に押し込められてしまった。しかも口を縛られた状態で放置され、あやうく酸欠で死にかけた。覗きどころの話ではなかった。


 まあ、チャンスがあっても覗かないけどね! 本当だよ!


 ようやくビニール袋から出されると、ローズ達は既にお着替え後だった。


「このお洋服、三和様が作られたのですか? すごいですね!」

「可愛いのばっかりじゃないか」

「マギーはこの服大好きなのだです!」


 ローズ達には概ね好評の様子。ミワ坊は鼻の下を伸ばしまくってデレデレしている。


 しかし、このドール用の衣装はミワ坊が六分の一サイズの人形のために自作した部屋着的ワンピースなのだが、ローズ達は八分の一サイズだからゆるゆるサイズなのだ。ずり下がりそうな服を引き上げる仕草が、なんかこう……「いいね!」ボタンどこにありますか?

 それに、スタイルのいいローズ、そのローズよりさらに巨乳な梔子は、胸の谷間がなんとも言えず……。


「ちょっと、ナオってば、どこ見てるの!」


 ミワ坊が俺の髪を摘まんで引っ張る。


「な、な、な! 何にも見てねえよ、失礼な奴だな!」

「ふーん……?」


 ミワ坊のジト目が辛い。


「とにかく! ローズ達に変なことしたら、絶対許さないからね!」


 夕方になり、帰らなければならなくなったミワ坊は、俺を睨み付けながら部屋を出て行った。言われなくても、俺は紳士で、変態のお前とは違うから!


「早く寝ちまうか」

「そうですね」


 小型化した体では、電気を点けるのも容易ではない。暗い部屋の床にひかれた四組の布団に俺達は早々に潜り込んだ。

 だが――。


「くすん、くすん。シクシク、ひっく、ひっく、うわーん!」


 マーガレットの布団からしゃくりあげるような泣き声が聞こえてきたので、俺は慌てて飛び起きた。


「どうした、マーガレット!」

「くすん、くすん。やっぱりマギーは一人では眠れないのだですぅ……うわーん!」


 それが波乱の幕開けだった。

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