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戦乙女ドールズ、ただ今参上!  作者: フミヅキ
第二章 いざ、鬼退治へ!
6/25

いざ、鬼退治へ!③

 茶髪軍団は高橋を人気のない校舎裏に連れて行くと、さっきと同じように「お土産」の強要を始めた。


「アホ臭い奴らめ」


 俺はビデオを回すミワ坊の横で溜め息をついた。本当に罰があたっても知らないぞ。

 高橋はカバンを抱えながら怯えた表情をしていたが、軍団からの小突きや嘲笑によく耐えていた。


「そろそろ俺、出てってもいいよな」

「うん。もう録れ高は充分だよ。これだけでもいじめとか脅しとかに認定できると思う」

「よっし!」


 俺は高橋を助太刀すべく、気合いを入れて木陰から一歩踏み出そうとした。


 その時、強い風が吹いた。

 俺は思わず、目を手で庇う。


「え……?」


 再び手をどけた時、俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。目を見開いて動きを止める。

 信じられないことが目の前で起こったからだ。


 俺達と高橋達の間の空間に『鬼』がいた。


 比喩ではなく、見たままの話だ。


「は? なんだよ……これ……?」


 弁解のしようもない。目の前に『鬼』としか表現しようのないモノが急に現れたのだ。


 最初は黒の靄のようなものが地面から湧き上がってくるのが見えた。それは徐々に明確なシルエットを得て、胴と四肢と頭部になった。黒い体は大きく、猛々しく、頭には二本の角が生えた異形の姿が目の前にいる。


「な、なに? いったい、なん……?」


 見えるものが理解できない。俺は金魚鉢の中の金魚のように口をパクパクさせることしか出来なかった。


 コスプレ?

 ドッキリ?


 いや、そんなチープなものではありえない。登場の仕方からして普通ではないのだから。

 何度も瞬きして、さらに目をきつく擦ったが、その『鬼』らしきものは消えてくれなかった。


 異形の纏う禍々しい雰囲気にあてられたのか、俺は気分が悪くなった。変な汗が首筋から背中から吹き出してダラダラ流れていく。

 俺の頭か目がおかしくなったのか……?


「な、なあ、ミワ坊……」


 恐る恐る横を伺うと、三和も青白い顔で呆然としていた。俺の見間違いではないってことか……?


「なんなんだよ、アレ……!」


 その『鬼』の真っ黒な体は、高校生の平均身長と平均体重を持つ俺よりも頭二つ分は大きい巨躯で、厚い胸板に太い手足を持っていた。真っ黒な顔では暗い金色をした二つの目が爛々と輝き、大小の牙がぎっしりと並んだ口内は血のような赤い色をしている。口からは粘りけのある唾液が溢れ、ボトリボトリと地面に落ちた。


『鬼』は高橋と茶髪軍団をじっと見つめていた。俺は堪らずに叫び声をあげる。


「た、高橋……み、み、みんな、逃げろ!」


 高橋達がびっくりしたようにこっちを向いた。


 その瞬間、『鬼』が跳躍した。


 人の背丈など軽々と越えるくらいの高さまで飛翔し、『鬼』は覆い被さるように高橋を押し倒した。高橋に覆いかぶさったまま、『鬼』は何かを犬食いするよるなアクションを繰り返す。


「な、なんだ? どうした? 高橋のやつ、急に倒れやがったぞ?」

「やべーよ。熱中症か?」


 茶髪軍団は少し慌てるような素振りを見せているが、逃げ出す様子はない。


「もしかして、『鬼』が見えてないのか!」


 さらに悪いことに、地面からまた新たな『鬼』が湧き出してきた。それらは、今度は茶髪軍団に飛びつく。


「やめろ……!」


 高橋のように茶髪軍団もバタバタと地面に倒れていく。新たな『鬼』達も軍団に覆い被さりながら、何かを捕食するような行動を見せていた。しかし、体に牙が突き刺さったり、血が噴き出す様子はない。


「いったい……何してるんだ、奴らは……?」


 俺が目の前の光景に圧倒されていると、後ろで悲鳴が上がった。


「きゃああああ!」


 ハッとしてミワ坊の方を向くと、まさに別の『鬼』か三和に飛び付こうとジャンプしたところだった。


 俺は咄嗟に三和の腕を引っ張って引き寄せる。


 結果、『鬼』は無様に地面に激突したが、すぐに起き上がってまたもやこっちに向き直ってきた。しかも、さらに三体が地面から湧き上がり、俺達は『鬼』達に取り囲まれてしまう。


「ナオ……」

「だ、大丈夫だ、三和!」


 真っ青な顔で目に涙を溜めた三和を守るように、俺は三和を庇って前に出た。

 合計四匹の『鬼』達は俺達を嘲笑うかのごとくゆっくりと距離を詰めてくる。奴らがあと数歩踏み込んできたら、あの黒い腕に絡め取られるてしまうだろう。


 絶体絶命ってやつか――?


 俺は後ろの三和を振り返る。

 なんとかコイツだけでも守ってやる方法はないだろうか。コイツだけでも、なんとかこの場から逃せられないだろうか。底抜けに明るいくせに、時々ひどく落ち込んでしまう俺の幼馴染。誰でもいい。俺の代わりにコイツを守ってくれる奴はいないのか。


 誰か、お願いだ、三和を助けてくれ!

 俺は血が滲むほどに唇を噛んだ。


 その時――。


「直蔵様、三和様、戦闘許可を!」


 突然、凛々しい女性の声が聞こえた。


「だ、誰だ……?」


 驚いて周りを見回してもそれらしき人影はない。


「空耳……?」


 だが、どうやら気のせいではなかったらしい。


「ここなのだですぅ。なおぞーさま、みわさま、こっち、こっちぃ!」


 今度はさっきの女性とは別の、舌っ足らずで幼い声が聞こえた。さらに三人目、やや気だるげな女性の声が続く。


「アイツらを討伐したいんだろう? だったら、さっさと許可して頂戴な」


 すべて俺の近く、やや下の方から聞こえてきたように思う。俺は訝しく思いながらも、視線を下げる。

 そして、目を瞠った。


「ローズに、マーガレット、梔子……?」


 俺が肩から下げた通学用の斜め掛けカバンの上に彼女達がいた。俺の部屋の棚にいるはずの、ローズとマーガレットと梔子の三体のフィギュアだ。


 それだけでも驚きなのだが、彼女らは俺の部屋にいたときとは違うポーズでそれぞれの武器を構え、俺達を見上げていた。さらに、体を動かしながら、口々に「戦闘許可を!」と叫んでいる。


「な、な、ななな、なん……!」


 混乱しまくる俺を、ローズの青い瞳が真っ直ぐに見上げる。


「三和様を守りたければ、直蔵様、『戦闘を許可する』と、そう一言おっしゃってください!」

「え? な、なに? 戦闘?」

「直蔵様、『戦闘を許可する』です。早く! 三和様をお守りしたくはないのですか!」


 俺は小さなローズの剣幕に気圧されるまま、呻くように言った。


「せ、戦闘を、許可する……?」


 途端に、ローズとマーガレット、梔子は凛々しい笑みを口元に浮かべた。


「御意」

「マギーはやってやるのだぁ」

「任せて頂戴」


 三人の小さな美少女達はそう言うと、それぞれの武器を手に、俺の鞄の上から大きくジャンプした。高く、高く、ジャンプして……。


 ん? あれ? なんか、変だぞ?


 彼女らがどんどん大きく――というより、周りのミワ坊とか校舎とか木とか、とにかく、全部巨大化していくんだけど、なにこれ!


「うわわー! ナオがちっちゃくなっちゃったよ!」


 ミワ坊の驚愕の声に、俺はハッとする。

 周りが大きくなったんじゃない、俺が小さくなったのか!


 改めて周りを見てみると、三和のスニーカーが腰掛けるのに丁度いいくらいのサイズになっているし、地面の砂の粒子もいつもより大きく見える。


 だが、ローズとマーガレット、梔子の三人が巨大化したのも間違いないようだ。ミワ坊と同じくらいのサイズになった三人がそれぞれ武器を構えている。


「ど、どうなってんだ、こりゃあ……」


 呆然としながら、俺はミワ坊とローズ達を見上げた。


 というか。

 この位置から見上げるとスカートの中身が……ががが……丸見……え……。


 俺があまりの光景に呆然と立ち尽くしていると、ローズが三和に向かって叫んだ。


「三和様、直蔵様を保護してください」

「え? あ! わ、わかった!」


 俺はミワ坊の手にヒョイと掴まれ、持ち上げられる。


「ちょ、待っ……! ミワ坊! うわああああああ!」


 遊園地のフリーフォールかと錯覚するくらいの物凄い浮遊感に俺は襲われる。


 つーか、高えよ! 怖えええええ!


 俺はミワ坊の手に必死でしがみつくしかない。ローズ達が人間サイズになったのに対し、どうやら俺は逆にフィギュアと同じ、八分の一サイズになってしまったらしい。


 なん……なの……? これは……一体……?


「混乱」の二文字が俺の頭の中をぐるぐると回る。


「みんな、行きますよ!」


 一方、三人の戦乙女達は戸惑う様子も見せず、『鬼』に向かって飛びかかる。


 ローズは双剣を構え、プリーツスカートをはためかせながら、『鬼』に向かって両の刃で斬りつけた。『鬼』は手に生えた長い鉤爪でそれを受け止めるが、ローズは素早く離脱。すぐに二撃目、三撃目、四撃目を加えていく。


「やあああああああ!」


 赤い髪を翻しながら気合いと共に放たれる連撃は、目で追うのがやっとの速さだった。『鬼』もその剣撃に追つけなくなっている。


「とどめだ!」


 ローズは叫び、裂帛の気合いと共に左手の剣で『鬼』の頭を薙ぎ払った。


「スゲー!」


 頭部が吹き飛ぶと共に、『鬼』の体が煙のように掻き消える。

 だが。


「危ない!」


 ミワ坊が悲鳴を上げた。ローズの背後に別の鬼が迫っていたのだ。


「ローズ!」


 だが、ローズは慌てた様子はない。振り返りざま、叫ぶ。


炎鬼閃(スカーレット・グロー)!」


 声に合わせて振り抜かれた双剣は臙脂色に輝くと、やがて炎を纏った。燃え盛る紅い刀身は迷いなく『鬼』を捉え、その胴を薙ぐ。その剣圧に、ローズのスカートの裾が翻った。


 同時に、『鬼』の身体が突如着火し、全身が燃え上がる。


「ぐおああああああ!」


『鬼』は断末魔の悲鳴を上げ、炎の残像と共に消えた。


「ローズ……す、すごい……!」


 ミワ坊が感嘆の溜め息を漏らす。無駄な動きが全くない、演舞のような美しい剣撃と、強烈な炎の攻撃には、俺も戦いだということを半分忘れて魅入っていた。

 だが。


「痛、痛たたたたた!」


 手に汗握る攻防に、ミワ坊は思わず手に力が入ったのだろう。しかし、その手には小さくなった俺が握られているのだ。


「うわー! ナオ、ごめん!」

「ゲホ、ゴホ、いや、全然大丈夫……」


 俺は血反吐を吐きつつ強がってみる。

 いや、マジで肋骨イカレタかもとは思ったけど、多分大丈夫。


 そんな俺たちの回りに残った『鬼』はあと二匹。これらは梔子が相手にしていた。


「ハッ、ハッ、ハア!」


 長身な梔子よりもさらに大きなサイズの槍を苦もなく操り、梔子は二匹の『鬼』を翻弄する。梔子の槍撃の度、着物風衣装の袖や裾が艶めかしくはためいた。


「散りな」


 冷たい声と共に繰り出される槍の一閃。

 片方の『鬼』の脇腹に梔子の大槍が突き刺さり、その『鬼』は呻き声を上げながら消えた。梔子はその槍を引き抜きざま、もう一体に斬りかかる。


「よっしゃ、捉えた!」


 俺は思わず叫んだのだが、その『鬼』は予想外の行動を見せた。

『鬼』は梔子の槍を、自らの体を左右二つに分裂することで避けたのだ。右半身と左半身はそれぞれ形と色を変え、赤と青の小さな背丈の二匹の鬼となった。


「そんな……!」


 俺は驚きに目を見開くが、梔子は余裕の笑みを口の端に浮かべていた。


「ふうん。面白いことができるんだねぇ」


 梔子は再び、赤青二匹を相手に槍を振るう。

 だが、『鬼』は小さくなったことでスピードを増したようだ。小さな二匹の『鬼』は梔子の斬撃を紙一重でかわし、隙あらば鉤爪で切りつけてこようとする。


「梔子……!」


 手に汗握る俺。そんな俺を胸の前辺りで掴んでいるミワ坊が首を傾げた。


「あれ? なんだか、いい匂いがしない、ナオ?」

「ん? あれ? そういえば……」


 臭いを嗅ぐと、なんとも芳しい、甘い香りが漂っている。意識がとろんと蕩けてしまいそうな匂い。


「って、それどころじゃねえ!」


 二匹の素早い『鬼』の攻勢に、梔子が押され始めていた。何度もの攻防を繰り返すが、打破のきっかけがつかめない様子。

 梔子が『赤鬼』の鉤爪を槍の柄で受けたところを、絶好の機会だと見た『青鬼』が梔子の背後に飛びかかる。


「梔子!」

「わあああ!」


 俺と三和は思わず悲鳴をあげた。

 だが。


「ギエエエエエエエエエ!」


 断末魔を迎えたのは、飛びかかろうとした『青鬼』の方だった。


「く、梔子が、二人……?」


 梔子の背後をとった『青鬼』の、さらにその背後に二人目の梔子が現れ、『青鬼』の背に槍を突き立てたのだ。一人目の梔子が『赤鬼』の鉤爪を槍の柄で受けた状態でまだそこいるのにも関わらずだ。


「どういうことなの……?」

「おい、二人どころの話じゃないぞ!」


 三人、四人、五人、六人……。最終的には十人を越えた梔子が、『青鬼』も『赤鬼』も取り囲み、一挙に槍を突き立てる。


「グガ、ガアアアアア!」

「グゴ、ゴオオオオオ!」


 二匹の鬼は、絶叫と共に塵となって消えた。


「月華夢幻流壱の秘術、百花繚乱」


 梔子が低く言い放つと、一瞬後には、たくさんの梔子が元の一人だけ残して消えた。


「す、すげえ……」

「うん……わけわかんないけど、とにかくすごいね……」


 俺とミワ坊は感嘆の言葉しか出てこない。


 そんな中で、俺達の背後ではマーガレットが小さな体にロケットランチャーを構えたまま、じっと身を伏せていた。

 この子は戦わないのか?


 ちらりと様子を覗うと、どうやらそうではないらしい。マーガレットは幼い声で何か呪文のような言葉を呟いていた。


「東にあっては光の門、南にあっては炎の門、西にあっては風の門、北にあっては闇の門。我は今、西に向かいて御祈り奉る。西を守護せし青の戦女神よ、我が祈りに応えてその尊き御姿を現したまえ。その稀少なる奇跡を現したまえ。青き息吹にて、邪悪なる者を滅したまえ」


 言い終えると、マーガレットはロケットランチャーの引き金を引いた。


風荒女神の愛撫(デッドエンド・ウェザー)


 あどけないマーガレットの声に合わせて、ロケットランチャーの、本来なら砲弾が発射されるべき場所から、青い光が迸った。


「なっ……!」


 青い光は地を這い、蛇行しながら進み、やがては大きな鳥のような形をとった。青く輝く鳥は、高橋や茶髪軍団に取り付いている『鬼』達を次々と貫通していく。


「グ、クオオオオオオ!」


 青い巨鳥に触れられた『鬼』達は、苦悶の悲鳴を上げながら、さらさらと砂のように崩れ落ちていく。


「ああ、『鬼』達が消えた……!」


 残ったのは地に伏せる高橋達だけ。


「み、みんな、大丈夫?」


 ミワ坊が駆け寄って高橋を揺すると、彼は目を閉じたまま、「うーん」と呻き声を漏らした。他の奴らも、気を失ってはいても脈も呼吸もある様子で、俺はひとまずホッとする。


「ご安心ください。このくらいであれば、魂を喰らい尽くされることはありませんので」


 ミワ坊の傍らに寄ったローズが言った。三和は困惑の表情を浮かべる。


「あ、あなた、ローズ……なんだよね……?」

「はい。私達は直蔵様と三和様に作って頂いた戦乙女【ヴァルキリー】シリーズ・聖乙女騎士団の戦士です。ご存知のとおり、マーガレットと梔子、そして私、ローズの三名からなるユニットです」


 ローズが恭しく頭を垂れながら答えた。マーガレットがロケットランチャーを引き摺りながらローズの左に、梔子が軽々と槍を振り回しながらローズの右に寄り添った。


「まさか……本当……? それに高橋くん達に飛びついてたあれは何なの……?」

「彼奴らは人間の魂を捕食する恐ろしい敵なのです。便宜上、我々は『鬼』と呼んでいますが」

「魂を食べるの!」

「今回は食べ尽くされる前にお助けできましたので、安静に休息されたら元通り元気に回復されるでしょう」

「よかった……!」


 安堵の溜め息を漏らす三和。

 俺は聞きたいことが山ほど頭の中にあったが、先にしなければならないことを処理することにした。


「ミワ坊、ともかく先生達に高橋達が倒れてることを知らせて、保健室に連れてくか、救急車を呼んでもらおうぜ」

「で、でも、なんて言えば……?」

「うーん……。とりあえず、たまたま校舎裏を通りかかったら倒れてるクラスメイトを見つけたってことにしとくか」

「わかった!」


 ミワ坊は俺をローズに手渡して駆け出していった。俺は黒縁メガネの位置をクイッとずらしながら、改めてローズを見上げる。


「それで、俺の状態はどういうことなわけ?」

「我々は『鬼』を滅するために燕先生が作り出した戦乙女【ヴァルキリー】システムによって生成された存在です」

「燕さんが!」


 俺は半分驚きながらも、半分納得する。

 燕さんが絡んでいるのは当たり前かもしれない。彼女らの原型と材料を用意したのは燕さんなのだから。


「十分な戦闘力を得るためには、創造主である直蔵様、あるいは三和様の生命エネルギーをお借りする必要があるのです」


 ローズの話を補足するように、マーガレットが口を開く。


「えっとぉ、『せんとーをきょか』というのが、エネルギーをもらう合図なのだですー」

「逆に『武装を解除する』って宣言すれば、直蔵もあたし達も元に戻るよ」


 蓮っ葉な調子で梔子がさらに補足した。


「ふーむ。なるほど。信じられないけど、事実こうなってるからには、そういうことなんだろうな……」


 俺はローズの手の平の上でバランスを取りながら立ち、腕を組む。


「とりあえず、元のサイズに戻るか。先生達が来たらヤバいからな。えーと。『武装を解除する』!」


 俺がローズに地面に下ろしてもらってから宣言すると、説明のとおり三人がどんどん縮んでいく。


 すげえな。これ本当に夢じゃないのかな。


 あっという間にローズ達三人は現状の俺と同じ、フィギュアサイズとなってしまった。あとは、俺が元のサイズに戻れば一安心だ。


「よし、これで俺も元のサイズに戻れるんだな!」


 俺は両手両足を広げ、巨大化に供える。なかなか巨大化が進行しないが、縮小化より時間がかかるのだろうか。

 しばらく待ってみる。


 何も起こらない。


 もうしばらく待ってみる。


 何も起こらない。


「えーと……?」


 不安に駆られてローズ達の顔を覗いてみた。三人とも微妙な表情で俺を見つつ、やけにそわそわした様子で互いに視線を交わし合っている。


「あのさ……。もしかして、俺が元のサイズに戻るのって時間かかるの?」

「いえ、そんなことは……ないと思いますが……。なにぶん、我々も初めての事なので、勝手がわからず……。申し訳ありません、直蔵様」


 おいおい! どうしてそんな険しい顔つきで頭を下げるの、ローズ!


「ほら、エネルギーの受け渡しに遅延があるのかもしれないだろ。もう少し待ってみたらどうだい?」


 とか言いながら、なんで俺から気まずそうに視線を逸らすんだ、梔子!


「これはぁ……もしかして、もしかしてかもなのだですぅ……」


 ちょっと! なんでそんな泣きそうな顔してるの、マーガレット!


「そうですね。もしかしたら、燕さんの作った戦乙女【ヴァルキリー】システムにバグが発生したのかもしれません」


 ついにローズが沈痛な面持ちで切り出した。


「ちょ、ちょっ、マジかよおおおおおお!」


 俺の悲痛な叫び声が校舎裏に響き渡った。

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