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戦乙女ドールズ、ただ今参上!  作者: フミヅキ
第二章 いざ、鬼退治へ!
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いざ、鬼退治へ!①

「みんな、おはよう!」


 高校の夏服を着た俺は、黒縁メガネの位置をクイッと直しながら、目の前に並ぶ美少女達に向って朝の挨拶をした。いつもの朝の定例会である。隣では、今日も登校前に俺の部屋に寄った同志・ミワ坊が顔を綻ばせている。


「みんな、いつもにも増して一段と可愛いよー。さあさあ、今日もきちんとビデオ撮ろうねー」


 そう言うと、ミワ坊はリュックから取り出したハンディーカムで少女達を舐めるように撮影し始めた。


「ぬふふ。ぬふふふふふ。微妙な光と影の変化でみんなの表情が色々なニュアンスを見せる――ああ、なんて、繊細な美しさ! 写真もいいけど動画も素敵過ぎぃ!」


 大きな赤いリボンのついた白のブラウスにチェックのスカートという普通の女子高生スタイルのミワ坊だが、カメラを覗きながら異様なテンションを見せ始めていた。


「ああ、際どい! あと一ミリ下から撮ったら、スカートの中のパンツが映っちゃうよぉ。やばいよ、やばいよ!」


 気が付くとミワ坊の鼻息が暴れ牛のように荒くなっている。


「やめろ! 彼女たちを冒涜するような映像は俺が許さんぞ!」

「わかってるってば。見えそうで見えない! そういう角度が一番素敵なんだから。そうでしょ、ナオ?」

「む」


 まあ、否定はしない。


「まかり間違っても、このわたしが彼女達の神聖なるおぱんつを映すようなヘマはしないって」


 再びカメラに向き直ったミワ坊は、そのまま女の子達を順々にカメラに収めていった。


「さて。最後は昨日から仲間に入った、三人の女の子達だね。戦乙女【ヴァルキリー】シリーズ・聖乙女騎士団の精鋭達だよ!」


 ミワ坊のハンディーカムは三人の美少女をフォーカスした。


「まずはローズちゃん!」


 ローズは三人のうち中央に立っている女の子で、真っ赤な長い髪が印象的な双剣使いだ。整った顔に凛々しい微笑みを浮かべながら、今にも敵に斬りかからんと両手に剣を構えている。上着は濃紺色をベースにしたナポレオン風のきらびやかな軍服で、その上からも大きな胸の膨らみがわかるくらいスタイルがいい。細かいプリーツの入ったミニスカートからは、すらりと伸びた美しい脚が覗いていた。


「お次はマーガレットちゃん!」


 マーガレットはローズの三分の二ほどの身長しかない幼女だ。金髪のおかっぱ頭に、ゴーグルの乗った迷彩柄のヘルメットを被り、自分の身長ほどもあるロケットランチャーに寄りかかるようにして立っている。ついでに腰ベルトには軍用ナイフも装備。衣装も迷彩柄のワンピースで、その裾からはかぼちゃパンツの裾が覗いる。思わずぎゅーっと抱きしめたくなる可愛らしい笑顔を浮かべてこちらを見つめていた。


「そして最後は梔子くちなしちゃん!」


 梔子は背の高い女の子で、長い黒髪を結い上げ、細面の顔は艶然とした笑みと切れ長の瞳が印象的だ。手には彼女の身長よりも大きな槍を構えている。丈の短い紫色の着物風衣装からは、むちむちして柔らかそうな胸元と太腿が覗いている。セクシーで大人な雰囲気の少女だった。


 ミワ坊は念入りにこの三人をカメラに収めると遠ざかり、他の少女達も全員カメラに収まるようにズームを調整した。


「新しい三人とみんな仲良くしてね。ってことで、以上、二学期始業式朝の光景でした!」


 そう締めて、ミワ坊は録画を停止する。俺はその映像をブログ「花ヶ塚美少女名鑑」の記事作成画面に貼りつけた。



タイトル:今日から二学期! & 新メンバー紹介!

本文:ついに! 俺と同志とで作り上げた少女達の楽園に、戦乙女【ヴァルキリー】シリーズ・聖乙女騎士団の三人が加わりました! みんな仲良くしてくれよな!

 それじゃ、俺と同志は学校行ってきます。二学期も、ガレージキット&ドールな日々を過ごします!



「記事はちゃんと投稿できたかなっと」


 ブログ画面を開くと、記事も動画も問題なく表示されている。だが、画面を覗き込んでいたミワ坊が首を傾げた。


「あれー? なんかおかしいなあ」

「ん? どうした?」

「ローズとマーガレットと梔子、こんなポーズだったっけ?」


 俺は黒縁メガネの位置を直しながら動画をもう一度再生し、さらに、棚にいる実物に目を移した。結果、三和と同じく頭を傾けることになる。


「確かに、昨日完成させた時と微妙に印象違うな。なんだろう?」

「でしょ?」

「光の当たり方が違うからか?」


 俺の部屋は東向き。昨日の完成時は蛍光灯の光で彼女たちを見ていたが、今は朝の太陽光がもろに入ってきているので、室内の状態が違うというのはある。


「だとしても何かが違うような……って、ヤベエ! もうこんな時間じゃないかよ!」


 時計を見てびっくりする俺の言葉にハッとしたミワ坊も、急いでリュックを背負う。


「新学期早々遅刻するわけにはいかん!」


 俺は通学用の斜め掛けバッグを引っ掴み、母親に「行ってきまーす!」と叫びながら庭に置いてある自転車に飛び乗った。


「そういや、ミワ坊、祐二くんは?」

「うーん……今日は行きたくないみたい……遅れて登校するかも……?」


 ミワ坊は困ったような表情で俯いた。祐二くんは一学年上だが、俺達とは同じ学校だった。


「そっか」

「うん……」


 暗い表情になってしまった三和。俺はその肩を軽く叩いた。


「ま、誰だって休みたいことはあるしな。大丈夫だって。それより、時間危ないぜ。いつもよりペース上げてくぞ!」

「……うん!」


 三和が顔を上げて笑った。俺はほっとして、自転車のペダルに足を掛ける。

 高校一年、二学期初日。九月のまだまだ暑い日々の中、俺達は久しぶりないつもの道を自転車で滑るように走り抜けた。

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