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戦乙女ドールズ、ただ今参上!  作者: フミヅキ
第五章 いざ、運命に決着を!
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いざ、運命に決着を!⑦

「あ~あ、見てらんないねえ……」

「なのだです」


 耳元で聞き慣れた声がした。


「え?」


 俺は信じられないという驚きと、二度と聞けないと思っていた声への懐かしさとで、目を見開いた。


「あんまり心配だから、戦女神様に頼み込んで、ちょっとだけこっちに戻ってきちまったじゃないか」

「マギーは梔子といっしょに、パパとみわさまとローズを助けるのだです!」


 俺の隣に梔子とマーガレットがいた。

 二人とも人間サイズで、梔子は着物風の衣装を着て槍を携え、マーガレットは迷彩柄のワンピースにロケットランチャーを抱えたいつもの姿だった。ただ、二人とも半透明に透けている。


「梔子、マーガレット……いったい……?」

「そんなことより、この戦いを片付けないとね。あたしらも、ちょっとは力になれるはずさ」


 梔子がニヤリと笑いながら、俺の肩にそっと触れる。

 その瞬間、体の奥から力がみなぎってくるのを感じた。手の感覚が戻り、体の疲労も回復する。それどころか、筋肉が何倍にも膨れ上がるような、爆発的なパワーが湧き上がる感覚があった。


 それと同時に隣の半透明な梔子は縮み、フィギュアサイズとなって俺の肩の上に立つ。


「マーガレット、あんたはローズをフォローしな!」

「りょーかいなのだです!」


 半透明なマーガレットが部屋の中に入っていった。


 そんなことが目の前で起きているのに、祐二くんはただただ俺に対する打撃を繰り返していた。もしかしたら、二人のことが見えていないのかもしれない。


「死ね。死んでしまえ。死ね。死ね、全部、死ね」


 真っ暗な瞳で呟き続ける祐二くんの顔は、『鬼』よりも鬼らしく見えて、俺はぞっとした。でも、俺の背面で『鉈』にやられた苦しい体を耐えながら、祐二くんに謝り続けるミワ坊の気持ちを考えると、悲しくてしかたなかった。


「祐二兄さん……ごめんなさい……ごめんなさい……」

「祐二くん、お願いだ。もうやめてくれ。もう、三和を許してくれよ……」

「死ね、死んでしまえ、全部、全部、あいつが悪いんだ。全部、死ね、死ね、あいつもあいつを庇うお前も、全部、消えてなくなれ」


 実の妹を呪う言葉を履き続けることしかできない祐二くんの心を思うと、悲しくてしかたなかった。


「祐二くん……お願いだ……もう……」

「直蔵様!」


 俺と祐二くんの攻防を遮るように、凛とした声が響いた。

 部屋から出てきたローズは人間サイズの体で、一本の剣を構えた。肩にフィギュアサイズになった半透明のマーガレットを乗せている。


「お前、復活したのか!」


 祐二くんが俺への攻撃を止めて、ローズを振り返る。


「直蔵様、共に戦いましょう!」

「俺が、戦う……?」

「一度『鬼』に魅入られた者を助けるには、『鬼』を取り除くほかありません。梔子の力を一次的に借りた直蔵様にはその力があるはずです」


 祐二くんを、この剣でってことか……?


 さっきまでみたいに攻撃を受け止めるのではなく、祐二くんへ斬りかかることができるのかを考えて、俺は唾をゴクリと飲み込んだ。子供の頃のケンカ以外で、俺は人を殴ったことすらほとんどないのに。


 いや、でも、やるしかない!


 俺は後ろでうずくまるミワ坊を見ながら決心し、剣の柄を握り直した。


「やるしかないんだな!」

「はい。それがみーちゃんとゆうちゃん――三和様と兄上を救うことになるのです」

「え……?」

「直蔵様、いきますよ!」

「お、おう!」


 一瞬、ローズの言い方に違和感を覚えたが、俺は剣を見よう見まねでローズと同じように構えた。


「無駄だ。まとめて全部消す」


 祐二くんが吐き出した言葉に呼応するように、纏った『鎧』からドロドロと濁った黒い靄が吹き出した。その靄が凝固し、『鎧』はさらに逞しく頑強な装甲となり、右手に加えて左手にも、もう一本の『鉈』が形成される。


「三和も、直蔵も、わけの分からないその女も、全部消す」


 祐二くんの禍々しい姿に圧倒されそうな俺は、頭を振って気力を奮い立たせる。


「ローズ、俺はどうすればいいんだ!」

「霊体である梔子とマーガレットを通して私と同期して頂きます。直蔵様と私の持つ剣が『炎鬼閃スカーレット・グロー』で燃え上がる姿を心に強くイメージしてください!」

「わかった!」


 何がどうなるのかはわからない。だが、とにかく、ここは戦いのプロであるローズの言葉に素直に従うべきだろう。


 俺は今まで見てきたローズの戦闘シーンを思い浮かべた。学校で初めて戦いを見た時、病院での一回目の戦い、樹利亜ちゃん宅での戦闘、病院のコスモス畑での戦い、そして、今日。それらで見たローズの『炎鬼閃スカーレット・グロー』を強く強く心に描いた。


 すると――。

 構えている剣の銀色の刀身が、わずかに赤い色を纏い始めた。それは少しずつ濃くなり、さらに俺の手はチリチリと熱気を感じ始めた。そして――。


――燃え盛る炎が心で見えた!


炎鬼閃スカーレット・グロー!』


 俺とローズの声が共鳴した。

 俺とローズは同時に飛翔し、同時に剣を振り上げ、同時に振り下ろす。俺とローズの握る刀身はまったく同じ臙脂色に輝くと、同時に着火し、同じ形に燃え上がった。


「うおおおおおおおお!」


 だが、祐二くんは余裕の笑みを浮かべる。


「無駄だ」


 俺とローズの燃えたぎる剣を、祐二くんは両腕の『鉈』で受け止めた。


「そんな炎で僕の『鬼』は消えない」


 祐二くんの『鉈』は「炎鬼閃スカーレット・グロー」を食らった部分は確かにさらさらと砂のように崩れていっている。しかし、そのそばから、祐二くんの体から湧き上がってくる黒い悪霊の靄が『鉈』を再生していくのだ。

 でも――。


「祐二くん、俺達の炎だって!」

「あなたの『鬼』を倒すまで消えることはありません!」

「うおおおおおおおおお!!」


 俺は叫びながら、刀身がさらに大きく燃え上がる光景を心に強く思い描いた。


「なに……!」


 祐二くんが『鎧』の下で目を見開く。


――ガリガリガリガリ……!


 俺とローズの剣から生み出される炎が、さらに巨大な火焔を描いた。巨大な炎を纏った剣は、さっきよりも大きく祐二くんの『鉈』を削っていく。


「なんだ……くそ!」


 祐二くんが苦しげに呻いた。悪霊で再生するスピードが間に合わず、『鉈』がどんどん削られ、塵と化して消えていく。

 祐二くんが半狂乱で叫ぶ。


「やめろおおお! 熱い、熱いいいい!」


 ついに『鉈』が消えた。俺とローズの「炎鬼閃スカーレット・グロー」が『鎧』を捉える。


「ぎゃああああああああ!」


 俺とローズの挟み込むような攻撃を受け、祐二くんが絶叫した。『鎧』が不快な軋み音を上げ始める。


――メキ、メキョ、メキ……


 炎の双剣に挟まれた『鎧』に、たくさんの亀裂が走る。もはやそれを再生するだけの悪霊を祐二くんは持っていない。


「これで終わりにしよう、祐二くん!」


 俺とローズは同時に叫ぶ。


超・炎鬼閃(アルティメイト・スカーレット・グロー)!』


 ひときわまぶしい閃光が迸った。爆炎が空間を埋め尽くす。

 たまらずに、俺は目を閉じた。

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