いざ、運命に決着を!⑤
病院の中庭で少し休み、三和が落ち着いたところで、自転車に乗って帰途についた。
「三和様……」
俺の斜めがけバッグから顔を出したローズは、心配そうに三和の顔を覗く。
「ローズ……ナオも、心配かけてごめんね」
ミワ坊は普通のペースで自転車を漕いでいたが、顔が青白く見えるのは宵闇のせいだけではないだろう。三和は感情を誤魔化すみたいに口を開き始めた。
「ねえ、ローズ。前にちょっと話したでしょ。うちの家は本当のお父さんとお母さんじゃないって」
「はい」
「今の家はお父さんの妹夫婦のおうちなんだ。お父さんとお母さんが亡くなって、わたしと祐二兄さんを引き取ってくれたんだよ」
「そうだったんですか……」
三和は気を張った表情のまま、溜め息のような息を吐く。
「わたしの名前が三和で、兄は祐二って二が付く名前でしょ。本当はその上に姉がいたんだ」
「姉上が……?」
「そう。一花っていう、ちょっと年の離れたお姉さん」
その瞬間、ローズが青い目を見開いた。
「ローズ?」
問いかけた俺に、ローズは少し狼狽えた様子で頭を振った。
「い、いえ……なんでもありません。それより、『いた』というのは?」
「死んでしまったの……わたしのせいで……」
「ミワ坊、それは違うだろ!」
「だって……」
それきり黙ってしまった三和をローズが心配そうに見つめる。俺はミワ坊の代わりに、前に本人から聞いたことをローズに話すことにした。
「ミワ坊の昔住んでた家に強盗が入ったんだ。子供達を守ろうとしたお父さんとお母さんはそれで……。子供達はまだ犯人達に見つかってなかったから、一花さんは三和と祐二くんを抱えてクローゼットの中に逃げ込んだんだ。声を出さないよう二人を必死に宥めながら……」
斜めがけバッグから覗くローズが青ざめた顔をする。
「でも、そんなの小学校上がる前の子供が無理だろ! 三和は泣き声をあげてしまって……」
「まさか……」
「一花さんは咄嗟に近くにあった洋服なんかで二人の口を塞いで、クローゼットを出て行ったんだ。泣き声を聞きつけてやってきた犯人に、一人っ子のふりをして……」
ローズが息を飲むのが分かった。
「だから、一花姉さんが死んだのはわたしのせいなんだ」
ポツリと三和が言った。俺は強めの口調で反論する。
「だから何度も違うって言ってるだろ! 不可抗力だし、悪いのは強盗犯だ!」
「でも……。わたしが泣かなければ一花姉さんは死なずに済んだかもしれない。だから、一花姉さんが大好きだった祐二兄さんは、だからわたしのことを恨んでいるの……」
「ミワ坊、やめろ! そんな風に考えることないんだって!」
「でも……」
それきり三和は口を噤んでしまい、俺も声を掛けづらくなってしまう。そのまま家まで自転車で走って、俺達はサヨナラの挨拶もしないで、それぞれの家に帰った。
※
翌朝、土曜で学校が休みだったのにも関わらず、俺は早い時間に目が覚めてしまった。気分がもやもやして落ち着かず、なんとなくスマートフォンを手に取るとミワ坊からメッセージが来ていた。
「え!」
「直蔵様、どうかしましたか!」
ローズが俺達手作りのドールハウスから飛び出して来た。ローズも俺と同じように眠れなかったのかもしれない。
「祐二くんが帰ってきてないって!」
「昨日、あの時に別れてから……ですか?」
「そうみたいだ」
俺は慌ててミワ坊に電話を掛ける。
「おい、ミワ坊、大丈夫か!」
「ナオ……祐二兄さんが……」
「とにかく、そっち行くから待ってろ!」
俺は手早く着替えて斜めがけバッグを背負う。そのカバンにローズが飛び乗った。
「私も行きます!」
「おう!」
俺は寝癖もそのままに部屋を飛び出し、隣の家に飛んで行った。
ミワ坊の家のインターフォンを鳴らすと、心配そうなおじさん・おばさんと、憔悴した顔の三和に出迎えられた。
「電話は?」
「通じないの。メールも何も返してくれない……」
「祐二の行きそうなところ、どこか心当たりはないかな?」
おじさんが俺とミワ坊を交互に見ながら言った。
「いや、僕は……」
返答に困る俺の隣で、三和がハッとして顔を上げた。
「もしかしたら……」
三和がある場所を言ったので、おじさん・おばさんには祐二くんが帰って来た時のために家に残ってもらい、俺と三和とでその場所に行ってみることにした。




