キノコの娘を愛する男
彼が事故にあった経緯から説明しよう。
これは閻魔帳に記されている事だから真実であり、なればこそ私はこの計画の為に彼をスカウトする為「特例」まで使用するに至った。
普通人は道を歩いていても周囲に花があるだけでは立ち止まったりしない。子供ならまだしももう少しで成人する大人なら分別もある。
しかし、森畑惣二は違った。なにせキノコの娘が好きになってから猛勉強の末に農業大学へと進んだ程だ。小学生時代には普通の少年として田舎で過ごし、中学3年の最後に山の中でキノコの娘に出会う。残念ながらこのときのキノコの娘が誰なのか記載がない。もしかすれば新種の可能性もあるな。高校は普通の高校へと進んでいるが、進学後猛勉強を開始、様々なキノコの娘に関する文献などを収集しだす一歩間違えば完全な、いや完璧なキノコの娘専門家と化していた。
故に、道端でキノコを見かけた彼が立ち止まったのはキノコを発見したからである。
そして運命は皮肉にも彼を交通事故へと導いた。
高校からの彼のライフワークが山の散策になっている事からもキノコへの愛情が伺える。そんな彼だからこそこの事故が起きたのが不幸な出来事。急に立ち止まった彼が三歩下がって観察していなければ路面を滑ってくるバイクに巻き込まれなかった。
そして即死を免れたのもキノコを調べようと体を丸めて居た為なのだが、それでも植物状態になったのだ。
だが彼はそのキノコ、そしてキノコの娘への愛情が故に天界の特例によって治癒される事が決定した。奇縁といっていいだろう。
さて、重要な役職を任せるのですから挨拶に伺いましょうか……
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「初めまして、森畑惣二さんですね」
「え、はいそうですが」
「突然お邪魔してすいません、事故に遭われたことは覚えていらっしゃいますか」
「アハハハ、死んじゃったんですか、こうなんだかフワフワするんですけど」
「いえいえ、死んでいませんよ、ここは貴方の夢の中、ちょっと獏さんに頼んでお邪魔した次第です。私木の精と申しまして、この度は貴方をスカウトにやってきました」
「あれ、ここ夢の中ですか、そうか天国とかだったら研究の続きも進むかもと思ってたんですが」
「流石ですね、この状況でもキノコの研究ですか」
「え、はいよくご存知ですね」
彼に今回の計画についての説明をする。何が便利かって、夢だから時間の概念が認識速度によって変わる為に、実際に会ってお話する数倍から数百倍の体感時間を作り出す事ができる点ですね。
「それじゃ、私がキノコの娘を人々にアピールする為の仕事に就くって事ですか」
「そういう事です」
「是非やらせて頂きます!」
「では大学の方などは私共から便宜を図っておきますので、退院後に来る迎えと共に職場へと向かって下さい」
「解りました! この森畑惣二、キノコの娘ついてはこの世界の誰よりも愛してやまないと誓えます、何としてもキノコについて世の中にもっと知ってもらうこの計画成功させて見せますよ!」
イメージの世界だけあって彼の後ろには炎と共にキノコの娘への愛のオーラまで立ち上っていますね。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
ふと回想に耽ってしまっていました。
さてと、では建築現場へと向かいましょう。クイーンにも了承を頂きましたし、この山間の中に最高の環境を整えなくてはなりません。
やはり本当に人の手が入っていない土地というのは里山や植林された山と違って気持ちいいです。
ちょっと森畑さんには生活環境が厳しいかもしれませんが、まああの方のキノコへの愛があればそれぐらい乗り越えてみせるでしょう。
建設計画書だとこの区画を使わせてもらうのが良さそうですね。材質もブナやクヌギ、様々な木と土……耐久度は神通力でなんとかして頂きましょうか。この時代に完全木造建築でとは流石ですね。これならキノコの娘達も満足がいくでしょう。宿泊施設は一人一人の環境に合わせた素材になっていますし。スプリンクラーや送風設備までついてますね。
「お疲れ様であります」
「ああ、桜さん相変わらずキリッとしてますね」
「有り難う御座います」
キリットしているのですが、色々ツッコミ所が満載なのは変わりませんね、もしや自主的に見回りをしてくれていたのでしょうか。服装が軍服なのにスカートだとか迷彩服なのに桜色で目だって仕方が無いとかその辺りは気にしてはいけない。まあ軍服娘だと言えばそれまでです。腰の刀も本物ではありません、あれ、違いますよね?
「お姿を拝見したので挨拶に来たのであります」
「そうでしたか、有り難う御座います」
「いえ、ところでこちらへは何を」
「実はこの辺りに施設を建設する予定なのです」
「はあ」
「桜さんにも通達があると思いますので楽しみにしていて下さい」
「了解であります、では引き続き行軍訓練にいってまいりますので失礼するであります」
「はい、お気をつけて」
「大丈夫であります、この娘鉄峰越があれば怖いものはないのです」
なんですかその刀、大丈夫でしょうね。ちょっと確認が必要ですか?
というか峰越って貴方の名前でしょう。いつから鍛治師の一族に生まれたのですか。非常に可愛い娘なんですが、なんでしょね。無駄に軍人風ですからねえ。もっと乙女に過ごして欲しいのですが、まあ、その為のキノコの娘教育計画があるのですね。
挨拶を済ませたら後はスタスタと山を登っていく姿は人を轢き付けますが、遭難事故とか起こしそうで危険ですね。やれやれ、色々と問題は抱えそうですが森畑さん期待してますよ。さて、この土地を使うとして土木作業なんかの手配もしないと……
やっと主人公?登場。




