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白い貴婦人 前編

 早くいかないと午後になったら大変だからなあ、キヌちゃ、いかんいかん、クイーン・シルキー様、だった。今回の許可を貰わないといけないのに名前を間違えると機嫌悪くなるからなあ。


「失礼します」

「おお、これは木の精様ようこそ」

「鹿ノ舌さん、いきなり頭下げたら角が刺さるよ」

「これは失礼を致しました」

「相変わらずモッフモフしてますね」

「自慢ですから、モフモフ部分だけだったら触っても大丈夫なんですよ?」

「いえ、セクハラで訴えられたら僕なんて負けちゃいますよ」

「大丈夫で御座いますよ、多分?」

「ほらね、そうやって最後に?マークが付く時点で怪しさ満点ですよ!」

「木の精様は私達に理解がありますからね、大丈夫だと思いますきっと」

「いえ、いいんですよ慰めてくれなくても」


 おっといけないついつい話し込みそうになってしまった。


「あの今日は連絡が来てるかと思うのですがシルキー様に会いに来たのですけども」

「はい、伺っております、まだ午前中ですからシャッキリしておられますよ」

「前回は遅れちゃって大変でしたからね」

「あの時はグッタグタでした……」


 そうクイーン・シルキーは午前中は正に女王という風格で仕事もバリバリこなすのだが昼になると力尽きてやる気成分が抜け落ちるので大変機嫌が悪くなる。


「ではご案内致します」

「しかし何時見てもそのスーツはカッコイイですね」

「そ、そうですか。ちょっと派手すぎるかなーなんて思ってるんですけど」

「いえいえ、表地にその毛皮部分を持ってきてるのは中々素晴らしいと思いますよ」

「ちょっと知り合いのタンナーが珍しい加工ができるっていうからデザインから作ってみたのですよ」

「そうなんですか」

「ええ、なんでも最後に燻製で仕上げるらしくて」

「なるほど、それでこんないい匂いがしてるんですね」

「はい、それにこの匂いだと虫も飛んで行くので」

「ああ、あの対策ですか」

「ええ、本能的な部分ですが色々と対策をされているので私共も陰ながら支えております」

「執事の鑑ですね」

「いえいえ、まだまだ修行がたりなくて」


 コンコン、ノックを羊子さんがして取り次いでくれる。館も中々に大きく避暑地としては最適なのだろう。


「クイーン来客をお連れしました」

「どうぞ」


 来客の事も考えて広く設計された謁見用の部屋。空気も強制的に湿らせているがなにより匂いを残さないための設備のようだ。周りの家臣が如何に気を使っているかが伺える。


「本日はお時間を頂き有り難う御座います」


 自分に課せられた役目を果たすべく交渉のテーブルへとついた私は女王の前まで進み方膝をついた。


セクハラ、ダメ、ゼッタイ。モフモフはあくまでモフモフでありモフモフ以外の何の意図もありません!

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