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第十章  「大海獣 咆哮す 前編」

8月11日 PM22:00 日本国沖縄県 沖縄本島南東沖



 鋭角的な艦体が鏡の如き海原を割る。しかも巨体であった。


 獲物を求めて海を駆ける鮫を思わせる、流麗さと筋肉質とが融合した船体が海を征く。甲板上に聳える山の如き艦橋、そして頂のさらに上で蠢く林の如きアンテナの群がりは、半世紀以上前に滅び去った「戦艦」と称される種族の面影を余すところなく夜の海上に投掛けていた。


 おれがいま操艦(あやつ)ってるのは、まさに戦艦だ!……と、艦を与るセルゲイ‐ククシュキンは思った。それも、地中海でクルーザーでも乗り回す様な感覚で操ることの出来る戦艦だ。艦上構造物の深奥、再建にあたり新たに設置された戦闘指揮室は、戦闘用艦艇の操縦室とは思えぬほど快適で、清潔感に溢れている。例えて言えば、「スタートレック」のエンタープライズ号の艦橋に雰囲気が似ている……とククシュキンは思う。


 もっとも、レストアの過程で操艦から兵器管制に至るまで、全てがこの戦闘指揮室に集約される程に自動化が取り入れられたのには訳がある。生まれ変わる前のこいつ――正式な名も付かない内にスクラップ同然に打ち棄てられた「母なるロシア(レジーナ・ロシア)」――は、本来通りの運用をするならば優に七百五十名近い人員を必要とする。「重原子力ミサイル巡洋艦」の通り名も伊達では無い。それをたった百名そこそこの数で操艦するということ自体、今の技術を以てしても無謀である。


 ククシュキンは、元々ロシア海軍の士官で、この「仕事(ビジネス)」に誘われるまでは艦船装備の開発に従事していた。従来の五倍近くの報酬と、母国ロシアでももはや生ける伝説と化したキーロフ級の末裔を自由にできるという条件さえ提示されなければ、この仕事は受けなかったかもしれない。根っからの軍艦屋たる彼にとって、今回の仕事はそれ程に魅力的に見えた。それはまた、彼に従って戦闘指揮室に詰める十名近くに及ぶ乗員たちも同じだ。世界各国の海軍出身という、ククシュキンと似たり寄ったりの経歴を持つ彼らは、やはり彼と同様の待遇を提示され、そして新しい玩具を与えられた子供の様な純粋さで竣航なった「母なるロシア」の扱いに習熟していった。


 「依頼人」は気前がいい。抜け殻同然だった彼女を買い取った彼らは、戦わずして西側に敗れ去った祖国の海軍整備計画の挫折に伴い、無法にも「母なるロシア」から剥ぎ取られたもの全てを取り返してくれた。強力な巡航ミサイル、対空防御システム、そしてガスタービンという新たな「心臓」――進水の時点で、厄介きわまる原子炉が実装されていなかったのは幸いだった。それが収まるべきスペースに埋められた最高出力三万馬力のウクライナ製ガスタービンエンジン二基、巡航用にやはり搭載されたドイツ製五万馬力級ディーゼルエンジン二基と艦体の相性は極めて良好だ。「母なるロシア」は海上の移動砲台として海空より迫る日本の奪回部隊より宮古島を防備――否、封鎖する役割を課せられてバングラディッシュの「船の墓場」より復活――否、出航し、その任務の大半を果たそうとしている。


 今回の「作戦航海(コンバットクルーズ)」は間もなく終わるが、彼らの仕事はこれ限りでは無い。作戦が滞りなく終われば、「母なるロシア」は尖閣諸島と宮古島とを平定した中国に「投降」し、艦そのものは中国に接収される。彼らも残り、中国人が本艦に習熟するまでの教官として、やはり破格の報酬と待遇が見込めるであろう。歴史あるロシアの艦が中国人に好き勝手されるのは正直気に食わないが、これもまた「仕事(ビジネス)」だ。


『――日本艦、再び接近してきます。距離五万』

 オペレーターの報告に、ククシュキンは広角ディスプレイの一端を凝視した。芥子粒のような宮古島、その海岸線から百キロメートルの距離を維持しつつ、衛星のように島を周遊する「母なるロシア」。あらかじめ設定してある彼女の針路に、複数の日本船の針路が重なっているのがディスプレイの示す情報から判る。救難活動を名目に周辺を遊弋している日本の海上警察の船だ。かれらが警戒にも攻撃にも値しない脆弱な存在であることは、彼女の前方五十キロメートル余り先を飛ぶ艦載無人偵察機(UAV)の搭載カメラが教えてくれる。


 だが現時点で彼女に同航しつつ、距離を詰めたり広げたりを繰り返している二隻のフネの影は、それがさすがに四時間も続けば不快さが先に立つ。日本 海上自衛隊の護衛艦だ。彼らは優に三時間以上に亘り、群れから逸れたヌーを追うハイエナのように此方に密着を続けている。愚かな連中だ……自分たちが追っている相手がヌーでは無く虎であることに、彼らは何時気付くだろうか?

「――艦長、攻撃許可は出ないんですか?」

 砲雷担当のオペレーターが苦笑交じりにククシュキンを顧みた。元インド海軍、軍人時代からククシュキンと付き合いのある彼とて焦れている。相手に立腹しているというより、自らの手で彼女の威力を揮い、敵を虐げたいという歪んだ欲求が彼の場合勝っている。与えられた玩具の効用を、この場である意味最も知っている男だ。

「そうだな……」

 この日十何本目かの煙草を挟んだ手で顔を覆いつつ、ククシュキンは考えた。そろそろ頃合いか……日本人を、もう少し委縮させる必要がありそうだ。そしてこの海で最も強いのが誰であるのかも――


「『ユグドラシル』に目標の位置を捕捉させろ……ケツにくっついてる二隻の日本艦だ」

「待ってました!」

 インド人がコンソールに飛び付く様に向き直った。戦術情報表示端末の一角に、無数の衛星が地球の軌道上を巡る略図が表示される。コンソール操作でカーソルが浮び出、インド人は自艦に近い位置を巡る複数を選択した。

「アクセスコード入力!……繋がりました」

 直後、ディスプレイの一面を使い、洋上を行く二隻の船影――否、艦影が粗く表示される。展開より南西諸島を睥睨するユグドラシル‐システムの一角を為すレーダー画像衛星の視界だ。その画面の中で、表示と同時に艦体を慌しく蠢いていたカーソルが、やがて艦の中央で止まった。


「ユグドラシル、目標位置捕捉。追跡中」

「ほう……此処からでもちゃんと動いてくれるんだな」と、ククシュキンは半ば感嘆の声を上げた。

「ユグドラシル」の威力を、彼らはすでに目の当たりにしている。宮古島侵攻の初期、防衛部隊の戦力を減殺することに貢献したクラブK巡航ミサイル、さらには「脅し」目的で宮古島から打ち上げた中国製ミサイル――「ユグドラシル‐デバイス」を装着した改造DF‐21――は、ユグドラシルによる着弾位置選定と発射後の誘導に忠実なまでに従い、彼らの望む効果をもたらした。今度は我々がこいつの効果を試す番だ……!

「位置データを取得しろ。発射筒AとBにデータを送信」

「データダウンロード。発射筒ABにデータ入力」

 オペレーターが復唱し、コンソールに指を走らせる。ユグドラシルの管制プログラムが優秀に過ぎるのか、艦自体も自動化が進んでいるせいか、こいつの操作は拍子抜けするほど簡単だ。自宅でPCに向かい株取引をしているのと感覚は全く変わらない。そればかりではなく、ユグドラシルは衛星軌道上からその電子の眼に捉えた目標の詳細すら、持てる艦船データベースを以てディスプレイに表示してくれる。目標――あるいは獲物――の艦名は「はたかぜ」と「さみだれ」。紛うこと無き日本 海上自衛隊の護衛艦。その持てる性能、そして兵装すら相手とするに不足は無かった。

ディスプレイの一角を占める「母なるロシア」全体の模式図。前部甲板の兵装区画が赤に灯る。

「データ入力完了。何時でも撃てます!」

「…………」

 無言――ククシュキンは前に親指を突き出し、そして下に向けた。

「ぶちかましてやれ」




『――不明艦! ミサイル発射!』

 ミサイル搭載護衛艦 DDG‐171「はたかぜ」の艦橋にあってその様を注視する見張員の視界と、戦闘情報室(CIC)に在って3次元レーダースクリーンを注視する電測員の眼前に破滅は出現し、そして漆黒の空と海を照らし出した。鬼気迫るミサイルの上昇だった。

「目標は本艦か!?」

 CICの指揮シート上に在って、艦長が声を張り上げた。電測員の応答は悲鳴そのものだ。

『――ミサイルA、本艦方向に接近! 右20度! 水平線!』

「右対空戦闘! 目標ミサイルA、撃ち方はじめ!」

 唐突の理不尽に対し、真っ先に反抗の一手を打ったのは「はたかぜ」の艦首から飛翔したスタンダードSM‐1対空ミサイルだった。太い白煙を曳き破邪の光が天空を昇る。矢を番えては放つように、次々と天空に飛び出していく誘導弾。そこに二門の127mm単装速射砲が続く。砲身よりポンプのように吐き出される速射砲弾が、回避機動に入った「はたかぜ」の直上で重厚な弾幕を張る。舳先で白波を割り急回頭する「はたかぜ」の各所から、誘導弾の嗅覚を晦ますべくチャフ、電波デコイが噴き出し艦の前途を華々しく飾る。日頃の訓練通りに進行する個艦防御の手順――それでも戦闘情報室を与る乗員たちは、奇襲に対する混乱から完全には脱していなかった。いきなりの実戦に放り込まれたのもさることながら、攻撃の前にはレーダーなり何らかの脅威電波の照射――あるいはその種の兆候――あるものと、彼らは彼らの軍事上の常識から信じ切っていたのである。


「ミサイルA! 撃破(インターセプト)!」

 報告――しかし喜ぶべき秋はとうに過ぎていた。3次元レーダーの管制スクリーンの中で、「はたかぜ」に殺到するミサイルの数が増えている。発射上昇――目標直前で急降下の過程で音速の二倍に達した対艦ミサイル――それも、未知の誘導機構を有する――が五十キロメートル程度の距離を踏破することなどわけ無いことだ。「はたかぜ」はその防御火力と乗員の練度で三発のミサイルを墜としたが、迫り来る四発目にCIWS 20㎜多銃身機関砲の命中弾を与えたところで彼女の運命は決まった。被弾してもなお運動能力を保った四発目は、惰性で音速に等しい速度を維持したまま「はたかぜ」の機関部に突入、そこで炸裂した。大音響――夜空と生命を焦がす火柱が、一瞬で昇る。


『――「はたかぜ」撃破』

「全弾を『さみだれ』に集中しろ」


 インド人が口笛を吹きコンソールに指を走らせる。瀕死の「はたかぜ」に向かい飛翔中、新たな獲物を提示された対艦ミサイルがディスプレイの中で軌道を換え、意思ある生物のように遺された「さみだれ」へと喰らいつく――


 僚艦の「はたかぜ」が死に瀕してもなお、護衛艦「さみだれ」は戦い続けた。「はたかぜ」より充実した電子兵装、そしてSM‐1より射程と即応性に優れた発展型シースパロー(ESSM)を搭載していることが、「さみだれ」の継戦を可能にした。だが彼女の生存も、共に火線を張り敵の火力を引き受ける僚艦あってのことだ。炎に呑まれた「はたかぜ」がその艦体の過半を海面下に没するのと同時に、高空より加速し海面を這うミサイルが多数、「さみだれ」の対応し得る飽和点を軽々と越え、そこに終焉が訪れる。艦尾格納庫、機関部、そして艦橋――図った様な同時着弾の次に、紅蓮の炎が「さみだれ」全体を包む。艦体の抗綻性に乏しい現代軍艦の宿命というには、その沈みゆく様はあまりにも呆気無さ過ぎた。


『――「さみだれ」撃破、周辺に脅威なし』

「対艦ミサイルの残弾を確認しろ」

『――対艦ミサイル、残弾14発』


「弾を……使い過ぎたかな……」

 ディスプレイに瞬く、「撃破」を表す指標がふたつ――それがククシュキンの眼前ですぐに消え、後には空虚にも似た閑静が生まれ始める。


 



8月11日 PM23:00 日本国沖縄県 宮古島


 眼許から上を海面から出して見る。遠方に人間の蠢きを認める。装輪装甲車と戦闘員の影。防波堤の影に在って、それが過ぎ去るのをじっと見守ることにする。


 敵が動く……という、堀内一尉の確証には根拠があった。敵は宮古島全島の制圧を為し得るだけの兵力を有していない。その少ない兵力の過半が市中枢、そして宮古島空港の防備に集中している。この状態で海岸線を守るのに少ない兵力をどう使うか……と言われれば、取り得る方法は「巡回」ぐらいなものだろう。

「…………」

 海面と一体化し様子を見守る堀内の眼前で、装甲車が轟音を上げて動き出す。北側に向かい持ち場を離れるまでの間、装甲車のハッチから身を乗り出した戦闘員が機銃の銃口を後方に向けている……相当の手練だと直感する。

「――カモメ1より第二分隊へ、敵の警備兵がそっちに向かった。装輪車が二両だ。警戒せよ」

『――第二分隊、了解』

 交信を切り、堀内は潜んでいた防波堤の影から陸に上がった。防波堤に面した道を横断したところで膝を付き、HK416自動小銃を周辺に廻らせつつ警戒する。防波堤の影から出た部下に、手信号で侵入と散開を命じた。

「サクラ、こちらカモメ本隊。松原に出た。これより市中央に向かう。おくれ」

『――サクラ。本隊の位置を把握した。別同隊は現在海岸沿いに北上中。本隊は警戒しつつ県道243号線まで東に向かえ。敵の密度が小さい』

「カモメ了解。おわり」

 

 言ってくれるものだ……内心で呆れつつ、堀内は手信号で部下に道路から外れるよう命じる。田畑と林の交互に点在する島内、それも県道まで一キロメートルも満たない距離を走る。

「止まれ!」

 拳を上げて叫び、手信号で散開を命じる。南から低空で迫る質量を伴った影。それは迫るにつれてメインローターの爆音を伴って来る。林、あるいは畑の陰に潜み影の接近を待つ。サーチライトを振りかざし頭上すぐの空を航過するヘリコプター――

 

『――第二分隊、水路に潜入した。これよりパイナガマビーチに向かう』

「カモメ1、了解」

 交信しつつも、その眼は旋回を繰り返すヘリコプターを追っていた。写真や動画資料でしか見たことの無いポーランド製の軍用ヘリコプター。そいつの実物がおれの眼前、それも我が物顔で日本の領土上空を飛び回っている……腹が立つというより奇妙な気分だった。悪夢とは言わぬまでも、自分が不条理な目に遭っている夢を見ている様な感覚だ……但し、夢はどのような形であれ何時かは醒める。

「敵機通過……行くぞ……!」

 

 敵機の航過を見計らい、堀内は分隊を前進させた。県道243号線沿いに隊を北上させ、目標の監視と評定に適した地点を目指す――過去本土で何度も繰り返した訓練、フィリピンで経験した任務。但し、現在彼らが浸透を続けているのは、身を隠す場所には不自由しないミンダナオの原生林と違い人工的に区画され、造成された街なのだ。建物は戦闘員を隠すのに格好のシェルターとなり、その屋上は格好の監視ポイント、あるいは狙撃ポイントとなる。気は抜けなかった。

 

『――こちら第二分隊。390号線付近に到達。戦闘員多数と装輪戦車三両を確認!……警備が厳重過ぎて入れない!』

「ここからはさらに隊を分け、別ルートで目標ポイントに浸透する」

『――了解』

 部下を顧み、堀内は手信号を送った。幾下の分隊をさらに分けること。敵の監視を掻い潜るべく各隊が別ルートで個々の評定ポイントまで到達することを命じる合図だった。菅野と三上、意を受けた両二等海曹が三名ずつ個々の部下を引き連れ、堀内に先駆けて夜の街に消える。堀内には二名の部下が残された。

「もう少し球場に接近する」

 部下に告げ、光の一切存在しない夜の小路を走る。

「サクラ、こちらカモメ1、390号線を北上する。敵の位置報せ」

『――合同庁舎及び243号線沿いの市営住宅屋上に敵影複数。カモメ1の位置から接近は無理だ』

「390号線に敵影はどうか?」

『――宮古空港方面より車列の北上を確認。接近して来る』 

「――――!」

 舌打ちと共に、部下に隠れるよう指示する。潜伏場所に県道脇の商店の塀を選ばざるを得なかった程敵の動きは速かった……否、この島が狭いということか。


『――こちら第二分隊! 敵に発見された!』

「二分隊、こちらカモメ1、敵を惹きつけつつ海まで後退しろ。あとはこちらでやる!」

 孤島の、それも潜伏地点に乏しい場所で敵に見つかるのは時間の問題だった。ただ、こちらの接近が露見するまでに、目標まで可能な限り距離を詰めておくことが至上命題だった。浸透は強襲へと変わったが、露見するタイミングが今という意味では作戦は当初の計画通りに進んでいる。交信を終えた直後、速度を上げた車列の重厚なエンジン音が道と空気を揺るがしつつ迫り、潜む堀内たちの直前を通り過ぎていった。箱に車輪が付いただけの様な歪な外見、装輪装甲車の車列だ。


『――こちらサクラ、第二分隊の後退を確認』

「行くぞ!」

 路地に向かい走り出した堀内たちの頭上を、ローターの奏でる爆音が舐めるように通り過ぎる。平良港の方向だ。同時に市営球場に隣接する公園の上空でヘリが停まるのを見る。公園まで駆ける堀内の眼前でヘリはキャビンからロープを下し、戦闘員の群を吐き出す様に地上に向かい降ろし始めた。全員の降着を終えるのと同時にヘリは上昇し、緑色の曳光弾が機体から地上の一点へと勢いよく吐き出されるのを見る。すでに公園に入った別働隊を捕捉したのだ。

『――こちら菅野班、公園南口にて敵と交戦中』

「カモメ1了解。こちらはこのまま西方面から突入する」

『――援護する。健闘を祈る』

 南口で、銃声と手榴弾の炸裂が連続している。立ち上る煙から、彼我の位置を撹乱する煙幕弾までが使われているのが判る。派手に動くことで菅野二曹らが敵の注意を惹いてくれている。一方路地の出口から垣間見える公園の入口。そこに隣接する展望台は組み付けられた銃座と遮蔽物で一個の要塞と化していた。予想通りだが忌々しいことこの上ない。そのとき――


『――こちら三上班、ポイントBを確保。おくれ』

「こちらカモメ1、そちらから公園の全容は見えるか?」

胸を弾ませ、堀内は聞き返した。上手く行けば打開点が探れるかもしれない。

『――全容とは言えませんが展望台とその周辺は確保できております』

「展望台の位置を評定し、砲撃を要請しろ。脅威を排除した後こちらが突入し球場を狙う。おくれ」

『――三上、了解!』


 ミニマイクを摘み、堀内は「母艦」を呼び出した。これからの三十分あまりで、宮古島はおろか日本の命運が決まる。




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