第5話 闇VS水
多分お気づきの人もいると思いますが呪文は火属性なら火に関する、水属性なら水に関する言葉を入れないと上手く詠唱できないというのがこの世界のルールです。
また無詠唱でも魔法は発動出来ますが、詠唱した魔法より威力が下がるというのも特徴です。
~氷華サイド~
なんでよ…、なんでこんなときにこいつが現れるの!
「苦労したぜぇ~、全くよぉ~。」
「な、何の用よ。」
「聞いてなかったのか?俺と一緒に来てもらうぞ。」
「嫌!」
「-ファイアボール-」
グリオールは無詠唱で唱えると火の球を氷華へ向けて放った。わざと外した為氷華には当たらなかったが後ろにあった柱が砕けた。
「怒らせない方がいいよぉ~、次は当てちゃうからさ!」
「ふざけないで!アンタと一緒に行くぐらいならアンタを倒す!」
そうよ、AMFがない今なら魔法を発生できるしファイアボールぐらいの下級魔術しか使えないなら勝てる!更に言えば母さんに負けてるし、体も弱ってるはず、いけるわ!
「おいおい、勘違いしてるようだから優しい俺様が教えてやるよ。まず1つ、昔と違ってAMFを発生させる装置も能力も今持ってないから今は魔法が使える。2つ、さっきファイアボールを使ったがアレだけが俺の使える魔法じゃねぇ。3つ、確かにお前の母親にボコられて体は昔より衰えて闇の支配者から降格しているが、だからってお前が強くなった訳じゃねぇだろ。まぁその間に代わりに得た物もあったしな。」
な…。何で私の心を…。
「不思議がってるなぁ~、俺はな心が読めるんだよぉ~。」
「そんなのあり得ないわ!」
「嘘だと思うなら得意魔術でかかってきな。」
舐めたマネを!一瞬で倒してやるわ!
「水の煌めき、敵を流し込む波となれ!-ウェーブ・スパイシー-」
今のは水属性中級魔術ウェーブ・スパイシー!奴の体に向かって水の波が囲むように襲いかかるから逃げ場はないわ!
「-ヒートボディ-」
グリオールはヒートボディだけ唱えると動かぬまま波に飲み込まれた。
ふん!私を舐めているからよ!
「甘い、甘すぎるぜぇ、全くよぉ~。」
グリオールは立っていた。しかも無傷であった。
「今のがアンタの最強の術か?これが水瀬次期頭首の実力かと思うと悲しくなる。」
「嘘でしょ…、何で無傷なのよ…。」
「魔法を理解してない限りお前は俺に勝てねぇよ。水の専門と火の専門を考えてみろよ。まぁ実力も分かった所でこっちからいかせてもらうぞ。悲しき沈黙の宴-ネガティブ・サイレント-」
「氷の壁よ!私を守って!-アイス・シールド-」
詠唱を終えると氷華の前に氷の壁が出現した。その後に氷華の下から黒色の魔方陣が現れその魔方陣が結界となり結界の中を黒く包み込んだ。
「今のは俺の得意な上級魔術だ。そんな前方しか発生してない氷の壁で防げる訳ないだろ。まぁさっきの魔法はそれごと包み込むから関係ないけどな。」
魔方陣が消え氷華が現れる。氷華は倒れ込むとそのまま意識を失った。、
「俺は闇属性の中でも精神を攻撃するのが得意なんでね。やっぱり精神はなかなかに鍛えられないからな。んじゃ連れて帰りますかね。」
グリオールが氷華を運び出そうとした瞬間、目の前に水色の魔方陣が現れた。
~大和サイド~
「着いたけど、アレ?何で氷華が倒れてるんだ?」
「誰だ貴様?」
「アンタこそ誰だ?まぁ見た目からして片翼しかないけど悪魔か?」
「そうだぜ、皆が恐れる悪魔様ですよ。今ならお前にはケガを加えねぇからさっさと消えな。俺はそこのガキを連れていくんだからよ。」
「氷華を連れていくのか?」
大和の反応にグリオールの顔が笑う。
「何、彼氏さんすか!?いやぁ~ゴメンね!この子が抵抗するもんだから、ちょいとお仕置きしたわけ。んじゃ連れていくから消えろ。」
「ふざけんな!氷華は連れていかさねぇ!」
「ふ~ん。生意気な態度だねぇ~、ムカついた。お前殺すわ。-ファイアボール-」
「うわぁ!」
手を伸ばせば掴める距離しかいなかった為、大和はファイアボールを直接 受け転がる。
「無能力者のお前にはこんな下級魔術も防げねぇだろ。さぁさぁ!彼女を守るんだろ!守りたかったら俺を倒してみな!-ファイアボール三連弾-」
ファイアボールが3つとなりまだ起き上がってない大和に向かって襲いかかる。
「(どうする!今の俺は魔力が低下してるから絶対に勝てない!指輪を外せば奴に勝てるが、もし外した姿を途中で氷華に見られたら…。こうなったら今のままでいくしかねぇか…。)岩石よ!俺を守る盾となれ-ロック・シールド-」
ファイアボールが当たる寸前に岩の盾を出現させ攻撃を防ぐ。
「へぇ~、魔力のオーラ感じないから無能力者かと思ったが使えるんだな。こりゃ楽しめるな!岩からして地属性使いか。だったら次はこれを喰らいな!揺らめく火の球-ファイアボール十連弾-」
「何!?だが全部防いでやる!-ロック・シールド-」
ファイアボールは大和を狙って飛んできたが途中で軌道を変え別の所にファイアボールが飛んでいった。
「まさか!?」
「水瀬の彼女さんを守るんだろ!?だったら守ってみな!」
「氷華は絶対に傷つけさせない!」
ロック・シールドを発動させたまま氷華の前まで走り込みファイアボール全弾を大和は受け止めた。ロック・シールドを発動していたとはいえ、十連弾を防ぐ事は出来ず身を焼かれた。
「無詠唱から詠唱ありにした分だけ魔力が上がってるからなぁ~、今のは効いたろ?しかも十連弾だ、立っていられるかなぁ~。」
「くっ…。」
大和は片足を地面に付ける。シールドでダメージを軽減したとはいえ、全部を防ぐには無理があった。
「さぁ~て、お前と遊ぶのも飽きた。そこのガキを連れていくぞ。それでこの俺、グリオール様は闇の支配者へ再び昇格出来る!」
「!!!お前がグリオールか!!!」
大和の顔が苦しみから怒りの顔に変わる。
「何、どうしたの?グリオール様ですけど何か?」
「お前が小学生の時氷華を傷つけたんだな!」
「何、知ってるの!そうだよ、俺がやったぜ。いやぁ楽しかったねぇ~!」
その時大和の中で何かが弾ける。
「そうか…。分かった、お前は生かして帰さん。あの時の氷華と同じ目にあって貰う。」
「まだやるんすか?明らかにお前に勝ち目はねぇのに!」
「安心しろ、今からお前は死ぬから。」
大和は左手薬指にはめていた指輪を外した…。
~グリオールサイド~
「安心しろ、今からお前は死ぬから。」
なんすか!?あんなにボロボロなのにまだ勝つ気があるってあり得ねぇ!
「だったらこれでお前もあのガキと同じ目にあいな!悲しき沈黙の宴-ネガティブ・サイレント-」
奴の足場に魔方陣が発生した!何か指輪を外そうとしてるがもう逃げられねぇ!
ネガティブ・サイレントの魔方陣が消え、大和が現れる。だがさっきの大和と違う事にグリオールは気づいた。大和から白い翼が生え髪も銀から黒に変わっていた。
「誰だ貴様?」
「俺は水瀬…、いや黒神大和だ!」
~氷華サイド~
「………黒神大和だ!」
誰?この人…。と言うより私グリオールの魔術で悪夢見せられてたんだ…。あの人の声のお陰で目を覚ます事が出来たんだ…。
「ははは!!そうかい!お前が黒神大和か!こいつはツイてる!お前も連れていけば間違いなく闇の支配者上位になれる!」
「やれるもんならやってみな、クソ悪魔。」
「ムカつくなてめぇ!もう一度喰らいな!悲しき沈黙の宴-ネガティブ・サイレント-」
逃げて!あの魔術は捕まったら悪夢を見せつけられるわ!アレ…、声が出ない…。まだ体にダメージ残ってるから、起きあがるどころか声が出せない!
「またその魔法かよ。つまんねぇ。聖なる光、その光は汚れし闇を拒絶する-ブライト・ウォール-」
魔方陣が大和を包み込むが大和の放つ光によって魔方陣は消滅した。
「馬鹿な!ネガティブ・サイレントは闇属性上級魔術だぞ!」
「馬鹿だな、お前。単純にお前より俺の方が魔力が高いだけだ。」
ネガティブ・サイレントはかなりの魔力を消費し防ぐにはそれ以上の防御魔術を使わないといけないのに、簡単げに言うあの人はただ者ではないわ。話には聞いたことあったけど、かなり強い!
「ならこれならどうだ!忌まわしき…『滅びの光、邪を蹴散らす雨となる-シャイニング・レイ-』な!?」
空に無数の白い魔方陣が現れそこから光の雨がグリオールに降りかかる。光の量が尋常ではないため、グリオールは避けきれず倒れた。
「……ぅ…。」
「まだ息がある。しぶとい…。」
「……お前が…生きて……いたと……言うのは予想……外だ…。……この 事は……仲間に連絡さ……せてもらったぜ。」
ダメージが大きい為、言葉は途切れ途切れであり、グリオールはゆっくりとポケットからクリスタルを出した。
「おい!俺が生きているってどういう事だ!」
「……さぁ~てね…。……じゃあ俺は…先に……地獄で…。」
その言葉を最後にグリオールは動かなくなり、その後蒸発して消えていった。
「俺が死んでた扱いになってどういう事だ…。それよりまずは、治療だな。優しき水が、傷を癒す-ヒーリング・アクア-」
大和は倒れている氷華に治癒術をかける。治癒術が効いたのか氷華は起き上がる事が出来た。
「あ…、ありがとう…。」
「どういたしまして。んじゃこれで。(正直この姿を見られたのはマズイな…。だけど、多分気づいてないよな?あんまり能力使いたくないし…。)」
「ちょっといい…?」
そこから去ろうとしたが氷華に声をかけられ、一瞬悩んだが立ち止まった。
「どうして…?どうして私を助けたの?これは私とグリオールの問題であなたには関係ない事なのに。むしろ邪魔しないでほしかったわ。」
その言葉に大和は苛立つ 。
「関係ない!?関係あるから助けたんだよ!俺はお前が本当に心配で!」
「嘘よ!男なんて!嘘ばっかりで信じれない!あの時だって…。」
「…ゴメン。だがこれからは俺がお前を命に懸けても守り抜く。」
「言葉だけなら何とも言えるわ!そうね、じゃあ私の魔法を受けなさい。それでアナタがガードせずに受けていたら信じてあげる。」
「わかった。」
即答で答えた大和に思わず氷華はビックリした。
「へ、へぇ…。まぁ言うだけはタダだし…。水の煌めき、敵を流し込む波となれ!-ウェーブ・スパイシー-」
大和の周りを囲むように波が迫る。大和は何も詠唱しないまま波に飲み込まれた。
「はっ!どうせ、こっそり詠唱をして…、え?」
大和は倒れていた。その後ゆっくりと起き上がった。
「……これで信じてくれたか?」
「嘘よ!私は信じない!水の煌めき、敵を流し込む波となれ!-ウェーブ・スパイシー-」
再び波が大和に襲いかかるが大和は先ほどと一緒で何もしないまま波に飲み込まれた。
「次は魔力をさっきより高めたから威力は強いわよ。さすがに防御魔術を……、嘘でしょ…?」
大和は再び倒れていた。そしてフラフラなりがらも起き上がる。
「何があったかはしらないがアナタが受けた痛みと比べたらこんなの軽いよな…。これでアナタの気が済んでどうにかなるなら俺は喜んで受けるよ…。」
大和はフラフラになりながらも氷華に近づく。
「そんな、あり得ない!敵を飲み込む水の球-アクア・ボール-」
バレーボールぐらいの水の球が大和に向かって飛んでいく。だが大和は避けようともせず、水の球を受けぶっ飛んだ。何度ぶっ飛ばされようが大和は起き上がり氷華の元へ向かう。
「もういいじゃない!倒れてよ!私に構わないで!」
「……ほっとけるわけないだろ…。だって……家族だろ!!!」
「!!!まさかあなた…。」
「俺はお前を守る。すぐに信じれないと思うが少しずつでいいから……信じ…てく…れ…。」
「……わかったわ。あなたを信じ……え?」
いきなりの事に氷華は戸惑いを隠せない。何故なら大和の腹から黒い槍が突き抜けており倒れてしまったからである。
「ねぇ……、大和…?大和…、大和!!!!!」
初めてバトルシーンを書きましたが、上手く伝わったか自信がないです…。
さて、大和が倒れてしまいましたが、誰がやったのでしょうか?その真相は次話に出します。
こんな感じでグタグタ感漂うストーリーですが、応援の方よろしくお願いします。
感想・アドバイスお待ちしてます。