第4話 氷華の過去
遅くなってすみませんでした!その分いつもよりちょっと長めです。
~氷華サイド~
「私出ていく。私はコイツがいる限り家には戻らないから!」
(そう、これでいいんだ。あんなやつがこの家にいる限り戻りたくない。とりあえず、荷物をまとめようかな…。)
氷華は出ていくにも荷物が必要だと思い一旦部屋に戻り荷物を纏める。かと言って長く時間をかけたくないため、必要最低限のものしか持っていかない。その中で奥底にあった1つのアルバムを見つける。
(これは、小学生の時の!どうしてこんな時に!)
氷華はアルバムをゴミ箱へ投げ捨てると荷物を持って部屋を出ていった。
~大和サイド~
「すみませんでした…、僕が余計な事を言ったせいで…。」
せっかく仲良くやっていこうと思っていたのにあんなに嫌い発言をされて大和はかなりへこんでしまった。泣きそうな顔をしているのに気づいた京香は大和を抱きしめる。
「ゴメンなさいね、あなたは悪くないの。とりあえず、アナタと凍華は氷華を探しに行ってきて。」
「わかった!」
「わかった、とりあえず魔法で探してみるよ。わかったら連絡入れる。」
そういうと祐一郎と凍華は出ていった。
「大和はちょっと長くなるけど、氷華の事について知ってもらいたいから話すわね…。」
それは氷華が小学5年生の時だった。代々5つの一族は魔法を扱える者の中でも特に魔法の才に恵まれており、一般に魔法を扱える者は16歳から17歳ぐらいで目覚めるのに対し氷華は11歳で目覚めた。大人達から見れば天才やさすが一族の娘などと誉めたりするが子ども達から見たらそういう訳にはいかなかった。
「おい、化け物が来たぞ!逃げろ~!」
子どもは純粋である。純粋であるが故に自分達はまだ魔法を使えないのに早く魔法が使え、しかも魔法を使うと水色の天使の羽根が出てくる氷華は化け物としか思えなかった。
「私は化け物じゃないよ!」
「い~や、化け物だね!教室で飼っていた金魚が死んだり、ずっと雨が降り続けるのもお前のせいだろ!」
「そんなことしないよ!」「お前だね!家に帰れや!カ・エ・レ!カ・エ・レ!」
「「「カ・エ・レ!カ・エ・レ!」」」
「う…、うぁ…。」
男子全員に言われ、氷華は泣き出したが男子はそれを見て笑い、女子は心配はするも誰もかけよって助けようとはしなかった。
氷華はいじめの事を親や先生に相談したかった。だが、先生には言うなと男子から口止めされ、親はその当時父も母も混沌の女神壊滅の為に出ていた為家におらず、誰にも相談出来なかった。
誰にも相談出来ぬままいじめが続いたある日の放課後。氷華が荷物を纏めていると男子が氷華の背中を押し氷華が倒れる。その際にランドセルの中に入れてた物が広がる。
「うわぁ~、汚いのに触れちまった!逃げろ~!」
男子達はいじめに満足したのか、すぐに逃げていった。
「うぅ…。酷いよ…。」
氷華は泣きながら散らばった物を纏める。すると誰かが氷華の荷物を纏めるのを手伝ってくれた。手伝ってくれたのは、普段いじめには参加していない唯一の男子だった。
「大丈夫か?って大丈夫な訳ねぇか…。」
「私に触れたら汚いよ…。」
いじめられて心が弱っていた氷華はつい自己嫌悪する。
「汚くないだろ、お前。そんなの言うのあいつらだけだし。お前はもうちょい強く言い返せ。っとこれでよし。んじゃ帰るわ。」
氷華の荷物を纏め終えると自分の荷物を持ってさっさと帰っていった。
「あ…、お礼言えなかった…。優しくされたの久々…。強く言い返せか…。出来るかな…。」
その男子の一言が氷華は嬉しく、明日はちゃんとお礼を言って男子にはちゃんと言い返せれるように頑張ろうと思った。
~翌日~
「(強く言い返す、そうすればもういじめられない。)」
「おい、化け物が来たぞ!」
「うわぁ!気持ちわりぃ!」
「(昨日までなら、落ち込んでた。だけど今日は…。)はぁ?私はあんた達と違って才能があるから早く目覚めただけだし。あんた達もあと数年したら魔法が使えるかもしれないのよ。魔法が使えたらあんた達も私と同じ化け物だね。」
「はぁ~?お前は翼が生えてるじゃねぇか。それが化け物の証拠だ!」
「魔法が使えるようになったのも天使様のお陰じゃない!その天使様の子孫である私に翼が生えるのは当たり前だし!私を馬鹿にすると言うことは天使様を馬鹿にすると言うことよ!」
「(な、何なんだ…。やけに強気でめんどくせぇな…。)ちっ、めんどくせぇな!」
そういうと男子達は自分の席へ戻って行った。
「(いつも、オドオドするか泣くかのどっちかだったからいじめられてたけど、今日はいじめられなかった…。お礼を言おう…。)」
いじめられなかった事に驚きつつ、さっきの事を報告してお礼を言おうとしたがもうすぐで授業が始まるので、早く授業が終わらないかと願う氷華だった。
~放課後~
「結局、放課後まで話す機会がなかった…。まぁいいや、とりあえず探そ…。」
放課後になり、探そうとするがすでに、その生徒は教室から出ていた。
「あの~水瀬さん?」
まだ帰ってないはずだから追いついると思い、教室を出ようとすると、クラスの女子に声をかけられる。
「どうしたの?」
「何かね、琢磨君(探している男子)から体育館裏に来てほしいってさ。んじゃ伝えたからね。」
「体育館裏?何でそんな所に…。」
理由は分からないが、氷華は体育館裏に向かう事にした。
~体育館裏~
「来たか。」
「いったいどうしたの?」
「…。」
琢磨の表情が無表情な事に気づき、一瞬不安になる。その隙をつき、琢磨は氷華の首に手刀をあて氷華を気絶させた。
~????~
「ここは…。確かに琢磨君に…。」
意識を取り戻した氷華は立ち上がろうとしたが、立ち上がれない。見ると両手を後ろにそして両足を縛られていた。魔法で壊そうとしたが魔法を発動することが出来ない。
「無駄だよ。今この場にアンチマジックフィールド(通称AMF)が発生しているからね。」
氷華の後ろから声がする。その声に聞き覚えがあった。
「まさか…、琢磨君?」
目の前に琢磨が立つ。
「半分、正解。俺は琢磨だ。だがな琢磨じゃねぇ。俺の名は…。」
その瞬間黒い球体が琢磨を包み込み、出てきた時には今までの氷華が知ってる琢磨ではなくなっていた。
「その翼!まさか!?」
「我が名はグリオール。混沌の女神軍の中でも上位種、闇の支配者〈ダークロード〉 だ。これでも、第五位である。」
氷華は今の琢磨だった者の姿を驚いていた。今の姿はもう琢磨ではなく、背中には悪魔の翼が生え髪は黒髪から銀髪になり更に体が子どもから大人の姿に変わっていた。
「ガキの姿は疲れる。第四位の命がなければ、あの姿はコリゴリだ。」
「私をどうするつもり!?」
「さぁ?四位の命は水瀬のガキの捕縛だ。だが、無傷にしろという命はない。だから…。」
グリオールは氷華の腹を思い切り蹴った。ガードする事が出来ない氷華はそのまま受けるしかなかった。
「ひゃはははははは!!!いいねぇ~!ガキを虐めるのは楽しいねぇ!」
「ゴホッ、ゴボッ…。痛いよぉ…。やめてよう…。」
「やめるかよぉ~、バーカ!俺はなぁ~、お前が大嫌いだったんだよ!うざってぇんだよ、あんぐらいの事でビービー泣きやがってよぉ~!俺が少しだけ関わったら調子に乗りやがって!まぁお陰で計画は簡単だったがなぁ~!」
「そ、そんな…。」
氷華は涙が止まらなかった。腹を蹴られた痛みもあったが、やっと信頼出来るかと思ったら裏切れてそれが凄く悲しく、もう誰を信じていいのか分からなくなった。
「AMF発生中は俺も魔法が使えないのはイライラくるからなぁ~、第四位が来るまでお前は昔でいうサンドバッグか?それになってろ!」
グリオールは引き続き氷華を蹴り続ける。
「(痛いよぉ!誰か助けて!)」
氷華が痛みに耐えながら助けを願う。すると突如壁が壊れ、一人入ってくる。入ってきたのは京香だった。
「氷華!」
「お…、お母しゃん!」
「これはこれは水瀬家頭首様。どのようなご用件で?」
「殺すぞ。」
今まで聞いたことのないドスのある声に氷華は震え、グリオールも思わず身構える。
「殺すですか。何と物騒な。だがお忘れですか?あなたは私に喧嘩をうった。そして私のそばにはあなたの娘がいる。これがどういう事かお分かりかな?」
「人質かよ…。」
「えぇ、その通り。しかもこの場所はAMF発生中魔法が使えない。どうやっ…。」
グリオールが言い終える前に京香の姿は消えていた。
「消えた?いったいどこへ?」
「ここだ、カス。」
京香はグリオールの後ろに既に回り込んでいた。
「水瀬流…、水神零下!〈すいじんれいか〉」
京香は回り込むとグリオールを後ろから抱き締め 手から冷気を出し体を徐々に凍らせる。
「馬鹿な!今は魔法が使えないはすだ!」
「残念、これは体術だ。水瀬は体術でも水や氷を発生出来るんだよ。まぁ魔法より劣るけど。このまま全身氷漬けもいいけど…。」
京香は一度離れるとグリオールを蹴り飛ばしグリオールを地に倒すとそいつの左の悪魔の翼を瞬間冷凍させ砕いた。翼にも神経が通っているため、グリオールに激痛が走る。
「ぐわぁぁぁ!!!わ、私の翼がぁ!」
「お前はすぐには殺さん、娘以上に痛みつけて殺してやる。」
「させません!」
突如地面に赤い魔方陣が発生し、そこからグリオールと同じ歳ぐらいの銀髪の女が現れた。
「第九位!何の用だ!」
「グリオール様を助けに来ました!」
「あらあら、お仲間。ちょうどいいわ、グリオールが弱ったからAMFも無くなったしあなたも一緒に…、死ね。」
「嫌ですよ!オバサン!」
少女はポケットから魔方陣の書かれた紙を床に置き魔方陣を発生させた。
「グリオール様!とりあえず怪我の手当てを!」
「ちっ!水瀬家頭首!次に会ったらお前を殺してやる!」
グリオールの言葉を最後に二人は消えていった。
「くっ!あのやろう!私をオバサン扱いしやがって!そんな事より氷華大丈夫!?」
「けっこう痛いけどどうにか…。」
「今治癒術使うね。聖なる癒しよ、傷を癒す聖水となる。-ホーリー・ウォーター-」
上位治癒術をかけると氷華の傷は一瞬で無くなった。
「ゴメンね!本当にゴメン!あなたをこんな目にあわせて!」
「いいよ、大丈夫だよ…。ただ…。」
「ただ…?」
「理由は言えないけどお願い、学校を転校させて…。」
氷華が泣きながら頼んできたので理由も聞かず、京香は承諾し1ヶ月後には女子校へ転校した。後に京香が学校で辛い思いをしていたのをしるのは転校して3ヶ月後の事であった。
~水瀬家~
「あんな事があって以来男の子を信じれなくなってしまったの。更に今のあなたは銀髪だから尚更にあの事を思い出して嫌だったんだと思う。」
「氷華さんにそんな事が…。」
「だけど男の子に恐怖を感じてるだけであなた自身には恐怖を感じてないから大丈夫よ。何かきっかけがあればね…。」
「なかなか、そういうのは克服できないですよね…。」
「この問題は少しずつ解決していきましょう、そろそろ『お~い!京香!氷華の場所が分かったぞ!』いいタイミングね。」
「氷華は今公園にいる!迎えにいこう!」
「そうね。だけどその前に10分だけ行くのやめましょう。代わりに最初は大和だけで行ってきて。」
いきなりの大和発言にちょっと驚いてしまった。
「え?何でですか?行くのは全然構わないですけど、何故自分だけですか?」
「これは勘なんだけど、大和が行ったら上手くいくような気がするの。大丈夫、10分後には私達も向かうから。じゃあ公園まで魔方陣出すからお願いね。」
そういうと京香は地面に魔方陣を発生させた。
「分かりました、やれるだけやってみます。」
そういうと大和は魔方陣の中に入りワープしていった。
~氷華サイド~
「公園まで来たけど…、どうしようかな…。」
いきなり飛び出したもんだから全然考えてなかった…。
「とりあえずベンチに座って考えよ…。」
特に行く場所とか決めてなかったからとりあえずベンチに座ることにした。
「別にあいつは悪くないとは思う…。だけどやっぱり怖い…。また裏切られそうで…。」
「見つけたぞ、水瀬のガキ。」
地面から赤い魔方陣が現れる。そこから1人の人間が現れた。
その声は!まさか、嘘でしょ…?何でこんなときに来るのよ…。
「俺はグリオール。計画 の為に来てもらうぞ。」
重たい…。書いていて思いました。やっぱりいじめはよくないですね、そう思います。
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