壊れた世界の日常 前編
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太陽が一日の始まりを告げる時間、もはや町の面影すら感じさせない瓦礫がれきの間を、一人の少年が駆け抜ける。
やけに大きく聞こえる自分の呼吸を聴きながら、目的地を目指す、ここ数年の日常と言えるだろう。
もちろん後ろから追いかけてくるゴブリンの群れも。
コツン、カコン、と自分が通った道から聞こえてくるその音は、ゴブリンたちの投擲物、かわいい音を鳴らしているが当たった時の威力はかわいくないだろう。
「クソッ、二度と人なんて信じない」
と言いつつも、もはや何度目か分からないその言葉に自分でも呆れてしまう。
この世界では三歳児でも知っている常識となった、「他人を信じるな」これを無視し続けるのは世界広しと言えど、自分ぐらいしかいないだろうと、根拠のない自信に胸を張る。
しかし、そんなもので状況が良くなるはずもなく、この追いかけっこもルカにとって嬉しくない形で終わりを迎える。
「行き止まりかよ!!」
一本道を進んだ先、たどり着いたのは登るには時間がかかる高さのがれきの山、投擲物を持つゴブリンから逃げながら、登り切るのは不可能だろう。
「キャキャッキャ」「ギャギャギャ」と嬉しそうに鳴くゴブリン達。
「戦うしかないか」そう覚悟を決めたルカは不敵に笑うと、狙い通り獲物追い詰めたと信じ、ニヤニヤ顔を浮かべるゴブリンたちに向き合い、腰に付いている剣を右手で構える。
すると構えた剣が淡く光り始めた。
獲物の予想外の顔つきと持ち物に少し怯みながらも圧倒的な数の差に余裕を取り戻すゴブリン達。
ルカが剣を構えて数秒両者の間に沈黙が走る。先に沈黙を破ったのはゴブリン達、三匹がルカに向かって走り出す。
それを見たルカは淡く光っていた剣をさらに光らせると、ゴブリン達に振り下ろし魔法を発動させると見せかけて、左手で隠し持っていた白い球をゴブリンに投げつける。
その結果、ゴブリン達の中心に煙幕が広がる。
ルカの予想外の行動に呆気あっけに取られたゴブリン達は煙幕の中「キャーキャキャ」と鳴くことしか出来ずにいる。
ルカはその隙に来た道にひき返そうと走り出し、その瞬間、瓦礫の山の中腹部から「え、戦わないの!?」 と間の抜けた声が聞こえてくる。
その声の方向に振り返ると、自分より小さな体格の少女が瓦礫の山からちょこんと顔をだしていた。
目が合ってすぐ少女はルカに「これ、使って」とそこそこ丈夫そうなロープを投げる。
ルカは一瞬戸惑ったがロープの状態を見るなり、つかみそれを辿って瓦礫の山を駆け上がった。
向こう側から力の入ったロープを握りしめ、ロープの出どころにたどり着くと、ルカがギリギリ抜けれそうな穴がある。
穴を通り抜けると、少女が地面から起き上がり、服を払っていた。少しなだらかな瓦礫の山を慎重に下ると、ロープを回収し終わった少女が少し残念そうにこちらを見ていた。
少女の表情を意に介さずルカはお礼を言おうとして、「どうして戦わなかったの?」と少女の落胆した声に遮られてしまう。
この世界では標準的な、赤茶色の髪色をした少女は、ルカの腰に掛けてある剣を指さしながら、今度は顔を輝かして言った。
「それって、魔剣でしょう。」
「え?」
「ええ?」
間抜けなやり取りを挟んで、ルカは笑いながら言う
「ははは……これは剣だよ、ただ魔力を込めるとちょっと光るだけのね」
そう言うと少女は少し顔を赤くして言った。
「なななんでそんな剣持ってるのよ」
「さっきみたいにゴブリンなら魔剣だって騙せるだろう?」
「私がゴブリンぐらいの知能しかないってこと?」
「ゴブリンは別にバカじゃないよ」
「そういうことじゃない!!!」
少女は顔を膨らませるとフンッとそっぽを向き歩き出した。
ルカは、少女の微笑ましい怒り方に癒されながらも、慌てて後をついていった。
――――――――
ルカは何とか少女の機嫌を取り戻し彼女の住むコロニーに案内されることになった。
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前はルカ、きみは?」
「私はジェイミーよろしくルカ!」
環境にそぐわないほど元気の良い挨拶を返してくるジェイミーに感心していると。
「ほらルカ見えてきたよ、あれが私が住んでいるコロニーよ」
「ジェイミー走ったら危ないよ」
ジェイミーの楽しそうな雰囲気とは裏腹に、見えてきたコロニーを見てルカは特段感想を抱かなかった。この世界では普通のコロニーだ。
今現在、人類三大都市を除いてまともな居住地は世界に存在してない。ほとんどの場合、町や都市は崩壊してかろうじて生き残った人々が集まって、このような居住地が密集しているコロニーを形成している。
なぜこのような事にになっているか、その要因は一概には説明できない。
戦争・疫病・災害そのどれもが滅んだ理由にできず、また理由ではないとは言い切れない。
ただ人類は成長しすぎ・対応できず・世界の怒りに触れた、ただそれだけであった。
コロニーの周りは様々な素材で作られた柵で囲われており出入口は一つしかなかった。
ジェイミーに連れられて正門にたどり着くと、警備兵というには随分と軽装な門番がいた。
「レストおじさん帰ってきたよ」
「おかえり、ジェイミーいつもより帰ってくるのが早いな。それでそっちの子は?」
「初めまして、ルカと言います、よろしく」
そう言ってルカは右手を差し出す。レストの表情は険しくなり、差し出した右手を払いのける……なんてことにはならず、レストは笑顔でルカの手を握りしめた。
意外そうな表情見せるルカをよそにレストは嬉しそうにいう。
「その大きなリュックを見るにルカさんは旅商人の方ですね。」
ルカは(このパターンか)と内心でつぶやく。当たりだ、と言わんばかりのレストの表情を見ながら、ルカは気まずそうに訂正する。
「紛らわしい格好ですみません。僕は旅商人ではくトランスポーターです」
その言葉を聞いてレストは気恥ずかしそうに謝罪した。
「いやはや、早とちりでしたか、すみません」
「レストおじさんの気持ち分かるよ。私も同じ事聞いたからね」
なぜか自慢げなジェイミーは全く同じことをルカに聞いていた。
「ルカの持っているバッグ、旅人にしては大きいよね」
「いやぁ、私はそのバッグ魔道具かと思いましてね」
意味の分からない理由を陳列するジェイミーとは違い、レストはなかなか目利きがきくようだ。
「正解です。これはトランスポーターの仕事には欠かせない物なので。」
「トランスポーターってどんなお仕事なの」
そう言って目を輝かせるジェイミー。聞きなれない仕事に興味深々と言ったご様子。
「トランスポーターは依頼された荷物を運ぶ荷運び専門の仕事だよ。」
「そいうことならこのコロニーがあなたを断る理由はありませんね。ようこそリグタールへ!!」
今更ながらに町の名前を言われ変な感覚を覚えるルカはジェイミーに手を引かれコロニーの門をくぐる。ルカはジェイミーやレストの様子から少しだけ期待していた。このコロニーがルカの知っているようなところではないと。しかし、現実はそう甘くはない。
コロニーはジェイミーの太陽のような明るさとは正反対に空気は澱んでおり道行く人も大半が俯いている。太陽はすっかり体を空にさらしているというのにコロニーは雲に覆われているようだ。
つまらない様子のルカを意に介さずジェイミーは歩きながらルカに話かける。
「ルカはこの後どうするの?」
「う~ん、早く荷物を届けると、言いたい所なんだけど、流石に疲れたなぁ。昨日の夜から歩きっぱなしなんだよね」
魔物が多く住む森や荒野ならいざ知らず、人里に近い場所では夜のほうが危険なのだ。そういった理由から歩きっぱなしのルカは疲れていた。
「じゃあじゃあ、家においでよ」
「え、いいの?」
願ってもいない申し出にルカは聞き返す、ジェイミーは楽しそうにしゃべる。
「もちろん!でもその代わりルカの旅の話きかせてよ。」
「それとお母さんとも会ってほしいから」
その言葉を聞きルカは違和感を覚えていた少女に理由を悟る。この世界では母子ともに生きていることを幸運と呼ぶほかにないだろう。特にこのような崩壊した町のコロニーでは。
その後他愛もない話をしながら二人は歩く。しばらくしてジェイミーは嬉しそうな声を上げる。
「みてみて、あれが私のお家だよ」
そういいながら少女は走り出す。その背中を追いながら、ルカは考えてしまう。(あの少女がずっとあんな風に過ごせたらいいのに)と。
この世界は誰にだって平等だ。ここに例外なんてものない。
ジェイミーは元気よく「ただいま!!」と言う。いつも通りの光景なのだろう。しかしいつも通りではないことが一つ。
後から入ってきたルカはその光景と立ち尽くしているジェイミーを見て思わずため息を一つ。
いつも通り何て、この世界には存在しない。目の前の血だらけの死体が残酷な事実を証明していた。
初めまして!TATOTATIと言います?最近小説を書き始めました。
わからないことだらけなのでアドバイスや感想をもらえるととても嬉しいです。
自分のペースで書いていくのでもし興味があれば読んでみてください。




