資料8:ミシェル修道士の『供述書(代筆)』
【資料ID:G-04】
原題: Confessio Haeretici(異端者の告白)
記録場所: 地下牢・尋問室
日付: 1348年12月10日
形状: 湿気でカビた羊皮紙。インクは上質だが、紙面には黒ずんだ飛沫が散っている。
[告白の言葉]
私、ミシェルは、全能なる神と聖なる教会に対し、以下の罪を認め、悔い改めるものである。
一、私は悪魔ルシファーの甘言に耳を貸し、自らの魂を売り渡した。
一、修道院の裏庭にて、夜な夜な不浄なる儀式を行い、毒草を育てた。
一、ジャック修道士の死は、私が育てた毒草を用い、悪魔への生贄として捧げたものである。
一、私の目的は、この聖なる修道院を穢し、ギヨーム院長様の徳高い支配を転覆させることにあった。 一、院長様が私を見抜かれたことは、神の御力が院長様に宿っている証拠である。私はその聖なる威光の前にひれ伏し、全ての罪を白状する。
私は死に値する罪人である。 慈悲深き院長様が、即時の火刑ではなく、地下牢での祈りの時間を与えてくださったことに感謝する。 私は闇の中で腐り果て、二度と太陽を拝むことはないだろう。
[署名]
[震える手で書かれた、判読不能な線] M... i... c...
[立会人・代筆者署名]
ギヨーム・ド・ヴァランス
【編纂者注】
注1: 筆跡の不一致。 この「供述書」の本文は、ミシェルの筆跡ではない。資料1(院長の年代記)と比較した結果、筆跡が完全に一致した。つまり、院長が自分で文章を書き、ミシェルに署名だけを強要したものである。
注2: 文体の違和感。「院長様の徳高い支配」「聖なる威光」といった、自らを賛美するような表現が多用されている。拷問を受けている人間が、自分を陥れた相手をここまで称賛するだろうか? これは院長のナルシシズムが透けて見える「自作自演の脚本」である。
注3: 署名の揺れ。署名の筆圧は極めて弱く、インクが途切れている。これは、ミシェルが瀕死の状態であったか、あるいはすでに意識のないミシェルの手を、院長が無理やり握って書かせた可能性を示唆している。




