資料6:修道院食堂の『献立および配膳記録』
【資料ID:F-02】
執筆者: 厨房係長(氏名不詳)
対象日: 1348年12月8日
形状: 壁に掛けられていた木板に、チョークと炭で書かれている。日付ごとに消して書き直すものだが、この日の記録は消されずに残っていた(あるいは、証拠として保存された)。
[昼の部]
・主菜: 昨夜の残りの麦粥。
・副菜: なし。
・飲料: 川の水。
・備考: 粉袋の底が見えてきた。明日の分より、一人当たりの配給量をパン半分に減らすこと。不満が出ても無視せよ。これは院長命令である。
[夜の部]
・主菜: 乾燥キノコと香草の濃厚ポタージュ。
・副菜: 硬焼きパン。
・飲料: 薄めたワイン。
・備考: 院長より特別配給の許可あり。「寒さが厳しいゆえ、体を温めるものを」との慈悲により、備蓄庫の奥から古漬けの乾燥キノコを使用する。 また、風味付けとして、先日購入した「東方の粉薬」を隠し味に加えるよう指示あり。
[配膳当番]
・調理担当: ミシェル修道士
・配膳係(食堂): 見習いトマ
・配膳係(院長室): 厨房係長
・配膳係(地下): [この部分は指で擦って消されているが、「院長」と読める]
【編纂者注】
注1: 昼食の粗末さと、夕食の豪華さの対比が不自然である。まるで「最後の晩餐」を演出したか、あるいは強い味のスープで「何か」の味を隠そうとした意図が感じられる。
注2: 「東方の粉薬」。資料2(会計係の帳簿)で、医務係ベルナールが受け取ったはずの「薬売りの粉」が、なぜか厨房に回ってきている。そして、資料4(医務係ベルナールの記録)によれば、死体からは「アーモンド臭」がした。つまり、スパイスとは名ばかりの「青酸系の毒物」が、調味料として鍋に投入された可能性が高い。
注3: 調理担当ミシェルは元薬草師であり、キノコの知識がある。この配置は偶然ではない。もしスープに毒が入っていたのなら、院長は即座に「ミシェルが毒キノコを混入させた(あるいは選別をミスした)」として、彼に罪をなすりつけることができる。完璧なスケープゴートの配置である。




