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『サン・ピエール修道院の崩壊に関する調査報告書』  作者: と゚わん


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資料5:ギヨーム院長の『修道院年代記』(抜粋)

【資料ID:A-03】

執筆者: 院長ギヨーム・ド・ヴァランス

対象日: 1348年12月8日

形状: 仔牛皮紙にブラックインク。文字の乱れは一切なく、非常に美しいカリグラフィーで記されている。

[主の年 1348年 12月8日]


本日は、悲しみと、それ以上の大いなる祝福がこの修道院を包んだ日として記憶されるであろう。 我らが兄弟、ジャック修道士が天に召された。


夕餉の最中であった。 ジャックはいつものように感謝の祈りを捧げ、神から与えられた糧を口にしていた。温かいスープで体を温め、満ち足りた様子であった。 その時、ふと彼の手が止まり、まるで天使の歌声を聞いたかのように天井を仰いだ。 次の瞬間、彼は静かにテーブルへ突っ伏し、そのまま永遠の眠りについたのである。


医務係のベルナールを呼んだが、すでに彼の魂は肉体を離れていた。 苦しむこともなく、呻くこともなく、ただ蝋燭の火がふっと消えるような、まことに安らかな最期であった。これは彼が生涯を通じて積み重ねた徳の結果であり、神が彼を愛した証拠に他ならない。


ベルナールは何かを言いかけたが、私は彼を下がらせた。 死者の顔に浮かんだ平安を見れば、医学的な詮索など無意味であることは明白だ。 老いた体は冬の寒さに耐えかね、魂の衣を脱ぎ捨てたのだ。


直ちに埋葬の儀を行った。 本来ならば雪解けを待つべきかもしれないが、遺体を長く地上に留め置くことは死者の安息を妨げる。 裏庭の凍てついた土を掘り、彼を神の御元へと送り返した。 雪が白い経帷子となって、彼の墓標を覆っていくだろう。


我々の食卓から一つの席が空いた。 だが、嘆くことはない。 これで、残された者たちが分け合う糧が少し増えたのだから。 主の計らいは、常に慈悲深く、合理的である。




【編纂者注】


注1: 記述の矛盾。資料4(医務係の記録)にある「激しい嘔吐」「全身の痙攣」「眼球の突出」といった症状は、この年代記では完全に抹消され、「天使の声を聞いた」「安らかな最期」へと書き換えられている。


注2: 「何かを言いかけたベルナールを下がらせた」という記述は、院長が医務係による「毒殺の告発」を未然に封じたことを示唆している。


注3: 最も恐ろしいのは最後の一文である。「糧が増えた(=食い扶持が減った)」ことを「主の慈悲」と肯定している点だ。この冬、食料不足が深刻化する中で、院長にとってジャックの死は「悲劇」ではなく「口減らしという解決策」として歓迎されていた節がある。


注4: 急ぎすぎた埋葬。通常、キリスト教の修道院において通夜も行わずに即日埋葬することは異例である。遺体から毒の痕跡(特有の臭気や変色)が露見することを恐れ、冷気で保存される前に土中へ隠蔽したと考えられる。

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