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『サン・ピエール修道院の崩壊に関する調査報告書』  作者: と゚わん


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資料1:ギヨーム院長の『修道院年代記』(抜粋)

【資料ID:A-01】

原題: Chronicon Monasterii Sancti Petri

執筆者: 院長ギヨーム・ド・ヴァランス

推定執筆時期: 1348年11月下旬〜12月初旬

形状: 仔牛皮紙にブラックインク。筆致は極めて整然としており、装飾文字が用いられている。

[主の年 1348年 11月24日]


今朝、朝の祈りを捧げ終えた頃、空が鉛色に変わったのを見た。 正午には最初の雪片が舞い降り、夕刻には慈悲深き白き幕が、俗世と我らとを完全に分かつこととなった。 麓の村へ続く山道は、もはや馬でも通ることはできまい。春の雪解けまで、我々は神の掌の中に孤独に置かれることとなる。


だが、憂いはない。 我らが修道院には、私を含め23名の忠実なる神の僕がいる。 貯蔵庫は満たされている。昨日、会計係より報告を受けたが、小麦、塩漬け肉、乾酪(チーズ)、そして暖をとるための薪に至るまで、冬を越すには十分すぎる量が確保されているとのことだ。 この冬は、俗事の雑音に惑わされることなく、ただひたすらに祈りと瞑想に耽るための、祝福された季節となるであろう。


[主の年 1348年 11月30日]


静寂。 雪は降り止まず、修道院全体が深い綿の中に包まれたようだ。 回廊を歩く修道士たちの足音も、雪に吸い込まれて消えていく。


見習い修道士のトマが、私の部屋へ薪を運び入れてくれた。 彼はまだ年若く、親元を離れて日も浅いが、その瞳には純粋な信仰の光が宿っている。彼のような無垢な魂を指導し、立派な修道士へと育て上げることもまた、私に課せられた使命である。 彼は「夜になると風の音が獣の遠吠えのように聞こえて恐ろしい」と漏らしたが、私は「それは己の心の弱さが生み出す幻聴である」と諭した。彼は恥じ入ったように頷き、祈祷室へと戻っていった。 修道院の規律は保たれている。全ては主の御心のままである。


[主の年 1348年 12月5日]


本日の昼食後、医務係のベルナールより些細な報告があった。 古参の修道士ジャックが、腹部の不快感を訴えているという。 ジャックは老齢であり、冬の寒さが体に障ったのであろう。あるいは、備蓄の塩漬け肉が彼の弱った歯には硬すぎたのかもしれない。 ベルナールには、薬草庫から消化を助けるハーブを処方するよう指示した。 大事ではない。我々の生活は何一つ揺らぐことなく、厳格な規律の中で営まれている。 今夜も雪は深い。神の沈黙こそが、我々の友である。




【編纂者注】


注1: 11月24日の記述にある「貯蔵庫は満たされている」という一節は、後述する【資料B:会計係の帳簿】の数値と明白に矛盾している。当時の気候記録を照らし合わせると、この年は冷夏による凶作で、近隣の村々でも食料不足が深刻化していた。院長が虚偽を記したのか、あるいは会計係が院長に虚偽の報告をしていたのか、この時点では定かではない。


注2: 老修道士ジャックの体調不良に関する記述は、これが最初で最後である。彼はこの数日後に死亡することとなる。

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