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『サン・ピエール修道院の崩壊に関する調査報告書』  作者: と゚わん


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資料10:会計係による『入出庫帳簿および雑記』(抜粋)

【資料ID:B-09】

執筆者: 会計係(氏名不詳)

対象期間: 1348年12月20日〜12月28日

形状: 破れた羊皮紙。ページ全体が油と煤で汚れ、赤黒いワインの染みが広がっている。筆跡は荒く、所々ペン先が紙を突き破っている。

[12月20日:食料在庫]


小麦粉: 残 2袋

・処置: 尽きた。明日より、ドングリの粉とおがくずを混ぜてパンを焼く。

・不満: 修道士たちが「木を食わせる気か」と騒いだが、無視した。食えるだけありがたいと思え。私も腹が減っているのだ。


塩漬け肉: 在庫なし

・備考: 帳簿上はゼロだが、院長室の横の棚から脂の匂いがする。鍵がかかっている。

・独り言: ギヨームめ。独り占めか? それとも「あれ」に食わせているのか?


[12月24日(降誕祭前夜):消耗品]


太蝋燭: 出庫 30本

・用途: 院長命令。「地下の闇を払うため」。

・備考: 狂っている。あと1週間で照明が尽きるぞ。院長は夜通し地下で何をしている? 祈り? 違う。あれは「監視」だ。

・追記: 地下から戻った院長の指が、黒く汚れていた。土か? いや、煤だ。地下で何かを燃やしている?


[12月25日(降誕祭):特別支出]


ワイン(上等な古酒): 1樽 開封

・用途: 主の降誕を祝うため……ではない。

・行先: 院長が手桶に入れて、また地下へ運んでいった。

・記述の乱れ: [以下、インクが滲んで判読困難] ……俺たちには酢を飲ませておいて……神の愛などない…… ……トマの奴、また院長に媚びてパンの端をもらっていた……あのガキ…… ……寒い。手が動かない。


[12月28日:修繕費]

鉄の鎖と錠前: 倉庫より出庫。

・用途: 扉の補強

・備考: どこの扉だ? 外部の扉は雪で埋まっている。中から鍵をかける必要などない。

・推測: これは「何かを閉じ込める」ためか、あるいは「私たちが逃げ出さないようにする」ためか。


[余白への書き殴り]


数字が合わない。 人数が減っているのに、消費量が合わない。「もう一人」いる。 地下に、ミシェル以外の誰かがいる。 院長が運んでいるあの大量の飯とワインは、人間の胃袋一つ分にしては多すぎる。 怪物か? それとも、我々が崇めているのは神ではなく、大食らいの悪魔なのか?




【編纂者注】


注1: 食料の枯渇と格差。 一般の修道士が「おがくず入りのパン」で飢えを凌ぐ一方、院長(および地下の何か)は肉とワインを消費し続けている。この極端な格差が、修道士たちの忠誠心を限界まで摩耗させている。


注2: 異常な蝋燭の消費。 12月24日の記録。院長は地下で「何かを燃やしている」疑いがある。古い文書の証拠隠滅か、あるいは暖房器具もない地下で「客人」を暖めるための火か。


注3: 「もう一人いる」という気づき。 常に数字を管理していた会計係だからこそ、物理的な消費量の矛盾から「隠された居住者」の存在に勘づいてしまった。これは彼にとって、真実に近づきすぎたことを意味する。死亡フラグである。

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