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2ー3

 宿屋に着く頃には、ビリーはようやく目を覚ますところだった。


 とはいえ、猫耳族と人化したイヌワシと首が後ろ前についている男の三人連れは目立ってしまう。


 ここは、ワッシャンの人化センサーにより、宿の質と安全性、そしてお値段などを吟味した上で宿を決めることになった。


「まぁ、この辺くらいがちょうどいいだろう」


 ワッシャンが決めたのは、そこそこな酔っ払いが集まる安宿だった。


 ワッシャンいわく、高値の宿ではかえって目立つから、酔っ払いがいた方がセキュリティ的には安全かもしれない、とのこと。


 さすがはワッシャン。たよりになるぅ。


 そして、あたしが結婚することになりそうなビリーにんだけど、目が覚めたところで首が後ろ前についていることには違いがないので、よろよろと歩く彼をサポートしなければならなかった。


 おのれぇ。結婚したらいっぱい殴ってやるんだからねっ。


オンラインで予約しておいたから、すぐに体力回復メニューを食べることができたんだけど、これはこれでまたビリーが自分で食べにくいことが判明。


 気の毒に思いながらも、あまやかしてはいけないからと、自分のお皿を空にしてから手伝ってあげた。


「酒、飲みたいなぁ」


 食後にビリーがポツンとつぶやいたけど、あたしはお酒の気分じゃなかったから、周囲の酔っ払いおじさんたちにからかわれて、大道芸人扱いされてるのがムカついたわ。


「すごいなぁ、姉ちゃん。頭が後ろ前についてる男と、人化したイヌワシと一緒に旅してるなんてさ」

「おう、なにが目的なんだ?」


 なんなら手伝ってやらないでもないぜ、とばかりにからかわれたから、ノリオという男を探していると伝えると。


「ノリオ? 聞いたことのない名前だな? この辺では珍しい名前だけど。東洋人?」

「あたしも会ったことがないからわからないんだけど。この人の首を後ろ前につける魔法かけられたのを解きたいのよね。で、魔道士協会に電話で問い合わせてもわからないっていうし。誰か知らない?」


 俺は知らない。俺も。と、興味を引いていた目的がなくなったせいか、あっという間に波が引いていった。


 そっか、そもそもノリオは金持ちのボンボンだから、レベルの高い宿屋に泊まってるんだろうね。なに様だってのよ。


 あたしなんてねぇ、宿代をケチるために、ワッシャンとビリーとおなじ部屋なんだからねっ。

 

 なにかあったら、ただじゃおかないんだからっ。


     つづく

 



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