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7ー1

 ビリーさんは驚いた顔でずっとあたしを見ているんだけど、ごめんなさい。本当にあなたのことは知らないんです。


「いやそのっ。あ、この本返却しようと思って。どうぞ」


 なにやらやたらへどもどしているビリーさんは、へっぴり腰でワッシャンに本を手渡した。


「どうも。それで? ビリーさんはこの本でなにかわかったことがありましたか?」


 やけに棘のある言葉。ワッシャン、どうしたの?


「いや、俺なんかが読んでもちんぷんかんぷんでした。いや、お恥ずかしい」


 そう言うなり、頭をかくビリーさん。


 あれ? あたし、どうしてずっとビリーさんのことを見つめているの? なんで、胸の奥からあたたかい気持ちがせり上がってくるの?


「じゃあ、俺はこれで」

「待って!」


 思いがけず大きな声が出てしまい、恥ずかしくなった。


「あのっ。よかったら少し、話しませんか?」

「ミリー、俺との約束が優先だ」

「わかってる。でもっ」


 離れたくないっ。


 !?


 わかった。塩顔の男って、ビリーさんのことかもしれない。口下手でやさしくて、不器用で、だけど、どうしてここまであたしがこだわるのだか、それを知りたいの。


「わかりました。では、俺は外の広場で待ってます。ゆっくり調べ物をしてきてください」


 彼が背中を向けた瞬間、甘酸っぱい気持ちがわいてきた。


「本当に、待っていてくださいね」

「はい。もちろんです」


 振り返り、人のいい笑顔を浮かべるビリーさんと、一秒も離れたくなくなる。


「さぁ、ミリー。俺の調べ物に付き合ってくれ」」

「ああ、うん」


 あたしはワッシャンに肩をつかまれるまで、彼の姿を目で追い続けていた。


 これは、恋?


 それとも、因縁?


 ワッシャンが言ったように、前世の記憶のせいなの?


 わからない。だけどワッシャンにうながされるまま、席に座る。


「俺はあと数冊本を借りたいんだが、一緒に来てくれるか?」

「うん。いいよ」

「そうなると思ったんだよ。でも、今とは思わなかったな」

「え? なに? ワッシャン」

「なんでもない」


 なんでもないような顔じゃないんだけど、どうしたんだろう?


「これと、これと、これ」


 ワッシャンは人化していてもなるべく本を直に持たないように心がけている。イヌワシだけに、するどく尖った爪が本を傷めてしまうのを避けるためだ。


 一方、猫耳族のあたしも爪があるけど、普段は爪を立てたりしなければ、本を傷めたりしないのだ。


 そんなわけで三冊の本を抱えて机の前に置いた。


「では、変幻するから、肩にとまるぞ」

「オッケー」


 なんて軽く答えながら、頭の中はビリーさんのことでいっぱいだった。


     つづく


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